戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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因縁

意識が朦朧とし目蓋が重い中、ハヤトは目を覚ました。

 

目の前がボヤけて見える中でハヤトは動こうと体を動かすも手足は縛られ、何か言おうにも猿轡代わりに布で口を縛られており出る声も出なかった。

 

ハヤトはその状況に溜め息を吐くと手を何度か振って袖から小さな折り畳みナイフを上手く取った。

 

「(これを彼奴が見逃すとはな……)」

 

ハヤトはそう思いながら小さな折り畳みナイフで腕を拘束していた縄を切ると、猿轡代わりにされていた布を剥ぎ取ると足の拘束も切った。

 

自由の身となったハヤトは辺りを見渡すも監禁されていた部屋には何者もなくハヤトはシェイラに逃げられたのだとすぐに察した。

 

「……ん?」

 

ハヤトは部屋を出ようとした時、テーブルの上にハヤトが護身用であり、愛銃として使用し続けてきた9mm拳銃が置いてあった。

 

ハヤトは9mm拳銃を手にしてマガジンを見ると見事に一発だけ残して取られていた。

 

「銃を置いていくなら弾も置いとけよ……」

 

ハヤトはそう呟いて一発だけのマガジンを差し込むと懐のホルスターに9mm拳銃を入れた。

 

ハヤトは一息つくと部屋の扉を少し開け、様子を見てから部屋を出ると静かに移動する。

 

警戒に警戒を重ねて移動するハヤトは会場の元へと行くとそこでは。

 

「あ、ハヤト指揮官!ご無事だったのですね!」

 

グリフィンの部隊が襲撃者の後処理をしていた。

 

「何があった?」

 

「はい!この会場に突然敵が現れて奇襲を受けました。損害は大きいですがこの会場に籠城していた敵の部隊を殲滅し終えた所です。今は別動隊が避難した人達を追っている敵部隊を追跡し、私達はこの場で敵の処理と調査をしております」

 

人形の説明にハヤトは困惑した。

 

「(シェイラの指揮で部隊が壊滅?あのシェイラが黙って部隊の壊滅を見逃したのか?)」

 

ハヤトはシェイラが情も理もなく部隊を壊滅させるまで戦わせるとは思わずルミナスの構成員と思われる者の手持ちから通信機を手にした。

 

「……通信履歴が残っているのか?」

 

ハヤトは通信機の通信履歴を流すと会話が聞こえた。

 

《此方アルファチーム!グリフィンの部隊と交戦中!撤退指示はまだか!聞こえているのかおい!……まさか……シェイラ!!》

 

通信履歴はそこで途絶え、雑音だけが聞こえるとハヤトは近くの人形に通信機を渡した。

 

「……ッ!?お前達、ステンを見なかったか?」

 

「え?いいえ、見てませんが……ハヤト指揮官と一緒なのでは?」

 

人形のその言葉にハヤトはまさかと嫌な考えを抱きながら会場を後にしてステンを探しに行こうとした時、会場の出入口に弱々しく入ってくる者がいた。

 

「ステン……!」

 

「……指揮官?」

 

ハヤトが見たものは服はボロボロでツインテールに結んでいた髪は片方がほどけ、左腕を失い、左足が曲がってはいけない方向に曲がりきった姿をした痛々しい姿をしたステンだった。

 

顔も左目辺りが機械が露出してしまっており、あまりにも酷い姿に会場にいた人形達が言葉を失っている中、ステンが倒れそうになった所をハヤトが駆け付けて支えた。

 

「ステン!しっかりしろ!」

 

「指揮官……無事だったのですね……?」

 

「あぁ、無事だ!それよりもどうした?何があった?」

 

「ふふ……私……駄目でした……指揮官を助けに行こうとしたのですが襲撃者と鉢合わせてしまいまして……必死に戦ったのですがグレネードの爆発にやられて……気絶しちゃいました……」

 

駄目ですねと最後に言ってステンは笑うとハヤトは強く抱き締めた。

 

「駄目なんかじゃない……お前は俺の優秀な副官だ……後の事は任せろ……襲撃者の奴等は必ず叩き潰す……絶対にだ……!」

 

ハヤトはそう言ってステンを横抱きにして近くの人形の元へ行くとステンを差し出した。

 

「ステンを頼む。俺はまだやらなければいけない事がある」

 

「わ、分かりました……指揮官……」

 

人形はハヤトの顔を見て動揺しつつもステンを受け取って駆けて行くとそれを見届けたハヤトは近くにあった銃、M27IARを取ると弾数を確認し、動作チェックを行う。

 

そして構えを何どか変えて扱い方を確かめた後、死体からナイフと幾つかのマガジンを手に入れて懐にしまうと会場を出た。

________

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その頃、シェイラは会場の屋上に立って通信機で指示を出していた。

 

「足止め?相手は?」

 

《グリフィンの戦術人形です!相手は二人……ぐわぁッ!?》

 

通信を取っていた兵士がやられたのを確認したシェイラは暫く通信機を見つめた後、溜め息をつくと再度通信を入れた。

 

「ガンマチームに通達。ベータチームが足止めを受けた。だが、ターゲットの後方を塞いだのは間違いない。ガンマチームはそのまま待機し……ッ!?」

 

シェイラは指示を出そうとした所で激しい音が響き、シェイラは思わず通信機から顔から離した。

 

「……ガンマチーム?聞こえてるの?」

 

シェイラは再び通信を試みようとするが反応は無し……かに思われた。

 

《ガンマチームと言う部隊は既に制圧したわ》

 

誰も繋がらないと思われた通信機から声が聞こえ、シェイラは誰だと思いつつ返答する。

 

「誰?ガンマチームが制圧されたって?」

 

《言った通りよルミナスのリーダー。私達を舐め過ぎよ。貴方達が派手に動いてくれて助かったわ。おかげで貴方達の制圧が容易かったと私の部下が言っていたわ。お礼を言わせて頂戴》

 

通信相手からの強烈な皮肉にシェイラは無言で聞いた後、返答した。

 

「そう。それは良かった」

 

恐ろしく短く、そして冷たい言葉だった。

 

《貴方……自分が何を言っているのか分かっているの?》

 

「えぇ、分かってるわ。そう……良かったわ。おかげで掃除が済んだ。ありがとうね」

 

シェイラのその言葉に通信相手が通信機越しでも分かる様な怒りが見えた。

 

《貴方を信じて徹底抗戦を行ったのよ?それでもそんな事を言うの?》

 

「それで?徹底抗戦したから何?戦争で駒を大事にしても仕方ないの。駒が倒れたなら次を使う。それだけよ」

 

《……屑が……!》

 

通信相手は我慢の限界を迎えたのかそう吐き捨てるとシェイラは笑って答えた。

 

「人間なんてそんなものよ。国家保安局のアンジェリアさん。私の事を嗅ぎ回ってたみたいだけど残念ね。貴方は私に届かない。それじゃ、アンジェリアさん。また駒を揃えたらまた仕掛けさせて貰うわ」

 

「次があればな」

 

「ッ!?」

 

シェイラはその言葉を聞いて振り返るとナイフを逆手に持ち、振り下ろすハヤトを見ると後方に素早く飛び、ナイフを避けた。

 

シェイラはその際に通信機を落としながらドレスから拳銃を取り出してハヤトに向け、ハヤトはM27IARを構えていた。

 

二人は銃口を向けながら会話を始めた。

 

「今の話し……本当なのか……?」

 

「……本当だって言ったら?」

 

シェイラはそう言って微笑むとハヤトは無表情でシェイラを睨む。

 

「変わったな……昔のお前なら……自分に着いていく部隊をみすみす捨て駒になんてしなかった……」

 

「時代が変わる様に人も変わるのよ……歴史がそれを証明しているわ。ドイツではヒトラー。日本では豊臣秀吉。フランスではナポレオン。この三人は自らの手で時代を切り開いてそして変わった。各々が成り上がって国のトップになってどうしたのかしら?三人とも征服戦争に興じた。最初はどんな思想を持っていたのか知らないけど結局、時代が動けば人は変わるしかない。私だってそうするしかないのよ」

 

シェイラのその言葉を聞き終えたハヤトはM27IARを発砲するとシェイラは素早く動いて避け、遮蔽物に身を隠すと反撃する。

 

ハヤトは撃たれる銃弾を避けて遮蔽物に身を隠すと攻撃する隙を探る。

 

「時代時代……煩いんだよ!歴史の授業かよ!お前がテロなんて馬鹿な事を企んでいると思ったら頭はいつの間にそんなオシャカになったんだよ!仲間を誰よりも重んじていたお前は……何処に行ったんだよ!」

 

ハヤトはそう言って顔を出して様子を伺っていたシェイラを撃ち、シェイラはハヤトの攻撃を避けて発砲。

 

そのまま駆け出し、発砲して牽制しつつ場所を移動する。

 

「どうしたのそんなに怒ってるの?貴方らしくないわね」

 

「お前が……お前達が仕出かした事もそうだが……一番気に入らないのはステンを傷付けた事だからだ!」

 

シェイラはそれを聞いて黙った。

 

「情に任せて戦うなんてどうかしている……それは間違いない……非難されたって仕方ない事だ……だが、それでも俺の女を傷付けた奴をこれ以上、好き勝手にさせる訳にはいかない!お前は……俺が引導を渡す!」

 

ハヤトのその言葉にシェイラは静かに聞きながら拳銃をリロードすると笑った。

 

「やってみれば?前にみたいに私を殺し損ねないでね」

 

シェイラはそう言って遮蔽物から体を出し、ハヤトに銃口を向け、それを察知したハヤトも銃口を向けた。

 

パァンッ!

________

______

___

 

その頃、伊丹達は避難通路から出た所で唖然としていた。

 

無数のパトカーと武装した警官、グリフィンの部隊そして正規軍がおり、かなり騒がしい状況になっていた。

 

それいが以外では襲撃者達が血を流して道路に倒れており、何名かは運ばれている光景が何度も目撃され、伊丹達は呆然と見ている中、伊丹は人混みの中から髪を束ねた傷のある女が立ち去る姿を目撃した。

 

妙に印象に残る姿に伊丹は困惑を覚えていると目の前で運ばれていく者を見た時、再び動揺する。

 

「た、隊長……!」

 

「あ、あれは……!」

 

栗林と冨田が動揺する中で見た者は昨日会った岩谷が死体として運ばれている姿だった。

 

その服装は公園で会ったラフな服装ではなく、兵士の様な武装されたものだった。

 

「ふむ……どうやら東洋系……日本人も混じっていた様だな……」

 

いつの間にか側にいたカーターのその言葉に伊丹は視線を向けた。

 

「案ずるな。あれは我々の世界にいた日本人だ。今後の外交に影響はないだろうが……残念だ……今後の北海道統治にも影響を及ぼすだろう」

 

カーターはそう平然と言うと栗林はカッとなって詰め寄ろうとした所を冨田に止められた所でエゴールがやって来た。

 

「今回の襲撃者はルミナス・インフィニティと思われます。この式典を知り参加した要人の抹殺を企てたのかと」

 

「ふん。ロクサットの主義者め……だが、これで国内外の煩わしいロクサット主義の者達も沈黙せざるおえん。結果としては我々に良い手土産を残してくれた事に感謝せねばな」

 

カーターはそう言って不敵に笑うとエゴールと共に迎えに来た車に乗り込みその場を去った。

 

そこからすぐにヴァシリーがやって来た。

 

「今夜は大変な思いをさせて申し訳ありません。我々が十分な護衛を手配し、ホテルへ送りますのでもう暫くお待ちを」

 

「分かった」

 

伊丹はそう短く言うとヴァシリーはすぐにその場を去る。

 

その後、クルーガーとハーヴェル、へリアンがグリフィンの人形の護衛を連れてやって来た。

 

「大変だったな」

 

「えぇ……本当に……」

 

伊丹のその短い返答にクルーガーは暫く沈黙するの話した。

 

「あの日本人のテロリスト……ハヤトの元同僚だったな?」

 

「知っていたので?」

 

「調べれば分かる事だ。岩谷昭汰。階級は二等陸尉。日本の特殊作戦群に属した自衛官で優秀な成績と実績を持つ人材だった。日本の滅亡後は各地の戦場を転々とし、破壊工作、暗殺と言った非合法な依頼をこなす傭兵として知られている」

 

クルーガーのその言葉に伊丹達は言葉を失った。

 

あの人が良さそうな岩谷が日本の滅亡後では汚れ仕事を請け負う傭兵へと落ちぶれていると言うのだから。

 

「ルミナス・インフィニティのメンバーはそんな集まりだ。日本の特殊作戦群を始め、アメリカのネイビーシールズ、イギリスの第22AS連隊と言った特殊部隊出身者を集めたロクサット主義の過激派テロ組織だ。特殊部隊と言っても追放や滅亡によって国を追われた者達の集まりだがな」

 

「ロクサット主義?」

 

伊丹はロクサット主義と言う言葉を聞いて何だそれはと首を傾げているとハーヴェルが説明した。

 

「ロクサット主義とは欧米諸国で急速に拡大するイデオロギーだ。国際連合遺跡科学署の局長であるレーダ・アルベルト・ロクサットが提唱し、この様に呼ばれている。広義の社会主義的や中央集権制的なシステムを参考とし、フラット型の社会資源分配方式を中心に、狭義の階級管理説と高度自動化システム主導型社会によって成り立つ政治理論。まぁ、簡単に言えばAIに任せた資源管理社会にして世界を復興しようと言うものだよ」

 

ハーヴェルの何とも長く眠たくなりそうな説明に伊丹達は困惑する中、クルーガーは続ける。

 

「ロクサット主義の拡大は自然に任せても問題ない程に広がり続けている……だが、近年。ロクサット主義の過激派が現れテロを起こす様になった。それがルミナス・インフィニティだ。奴等はロクサット主義を騙り、テロを行い新ソ連の要人暗殺に度々関与している。本来ならルミナスはそんな組織ではなかった」

 

クルーガーはそう言って溜め息をついた。

 

「ルミナス・インフィニティって昔はそうじゃなかったの?」

 

テュカのその言葉にクルーガーは頷く。

 

「ルミナスは確かに武装組織だ。だが、実態はロクサットの支持者を新ソ連の弾圧から秘密裏に守る組織だ。メンバーが元々が特殊部隊出身者ともあってその高い戦闘力と隠密性で国外へと逃亡を余儀なくされた支持者を助ける役目を背負っていた。ある女がリーダーとなる前まではな」

 

クルーガーはそう言ってへリアンから端末を受け取ると伊丹達に見せた。

 

そこに映っているのはテュカがぶつかって倒してしまった女だった。

 

「こ、こいつ!?」

 

「名はシェイラ・ベネット。アメリカの第一特殊部隊デルタ作戦分遣隊、分かりやすく言えばデルタフォース出身。軍内の最終的な階級は陸軍少佐。若くして大戦前から各地の紛争地帯に赴き、極秘作戦に参加した実績を持つ。大戦後は消息不明だったが最近になってルミナス・インフィニティに参加している姿を目撃され、前リーダー死亡後はシェイラがリーダーとなり活動している」

 

「で、デルタフォース……!」

 

「そんな凄い所の出身なの……!」

 

冨田と栗林が驚く中、テュカ達はデルタフォースがそんなに凄い部隊なのかと首を傾げる。

 

「シェイラがルミナスのリーダーになってからはロクサット主義の過激派として組織を動かし、新ソ連や反ロクサットを掲げる者達の暗殺、爆弾によるテロが目立つ様になった。その為、同じロクサット主義の欧米諸国からも煙たがれ、アメリカでは死刑制度の復活に伴いルミナスの構成員100名近くが処刑された程だ。その苛烈さは同胞にすら危険視される……それが今のルミナスだ」

 

クルーガーの説明を聞いた伊丹達は言葉を失う中、頭上から銃声が鳴り響いた。

 

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