ハヤトとシェイラは同時に撃ち、同時に被弾した。
ハヤトは銃を手に持つ右腕を撃たれ、シェイラは左肩を撃たれた。
ハヤトはM27IARを取り落とし、出血する右腕を抑えているとシェイラは撃たれた左肩など気にせずに血を流しながら歩く。
「惜しかったわねハヤト。今回は私の勝ちかしら?」
シェイラはそう言って不敵に笑うとハヤトは静かに睨む。
「国に捨てられた私にとって戦場が最後の居場所。誰にも奪わせはしないわ」
シェイラはそう言って銃口を向けながらゆっくりとハヤトに近付くと確実に当てられる位置で止まった。
「さぁ……お別れよ……これだけはハッキリと言うわ……出来れば……貴方と一緒に生きたかった……愛してるわ……」
シェイラはそう言って引き金を引こうとした時、シェイラの拳銃が突如として弾かれた。
「ぐぅッ!?」
シェイラは堪らず弾かれた反動で痛みと痺れを感じる手を擦りながら撃たれた方向を見るとそこには。
「はぁ……はぁ……指揮官……!」
「ステン!」
そこにいたのはステンでまだボロボロの状態のまま自身の銃を手にシェイラに銃口を向けていた。
ステンは足を引き摺りながら二人の元へと来るとシェイラに銃口を向けた。
「もう武器はありません……降伏してください……」
ステンはそう言ってシェイラに降伏を促すとシェイラは痺れる手を擦り終えると溜め息をついた。
「武器を無くしたらから……なに?さっさと撃ったら?ほら、どうぞ」
シェイラはそう言って両手を広げて撃ってみろと言わんばかりに笑って見せるとステンは撃つ事を躊躇った。
シェイラはそれを見て確信する様に言う。
「やっぱり撃てない。貴方はそう言うお人形なのよ。人を殺す事に躊躇いを持つ駄目な子。本当に戦術人形なの貴方?」
「これでも遅れは取りましたが貴方の仲間を射殺しています……降伏を」
「ちゃんとトドメを刺した?」
シェイラのその言葉にステンはたじろぐとシェイラはステンに微笑み掛ける。
「確認してないわよね?ちゃんと殺したって言うのなら死体でも何発かはお見舞いしないと後で生きてたら困るでしょ?でも、それを怠っておいて殺したなんて……兵士失格よ」
シェイラのその言葉にステンは動揺する中、シェイラは落ち着いて撃たれて弾かれた拳銃を回収してチェックするとステンに銃口を向けた。
「潰すつもりはなかったけど先ずは貴方よステン。私、貴方が嫌いなのよ。人の男に手を出しといて結婚までするなんて……とんだ女狐ね」
「指揮官を先に捨てたのは貴方です……貴方に指揮官の事を言う資格はありません……」
「言ってくれるわね……本当に大ッ嫌いよ……」
シェイラはそう言って撃つ事に戸惑うステンに引き金を引いていく。
パァンッ!
一発の銃声が響く。
ステンは撃たれたと思い目を強く閉じていたが撃たれた衝撃が来ない事に気付いて体を見るも撃たれた傷はなかった。
「ど、どうして……!?」
ステンは動揺しているとカシャンと言う音を聞いて視線を向けるとシェイラが拳銃を落として口から血を吐いていた。
シェイラは自身が撃たれたと気付いてハヤトに視線を向ければ左手に硝煙が登る9mm拳銃を手にしているハヤトがいた。
「終わりだ……シェイラ……最後の時まで油断するな……お前の言葉だぞ……?」
ハヤトのその言葉にシェイラは腹部に痛みを感じ、手を当てるとドス黒い液体……血が付着していた。
「……ふふ、やっぱり一発残すのは駄目だったわね……」
シェイラはそう言って血が流しながらゆっくりと屋上の端へと向かう。
「もう逃げられないぞシェイラ。大人しく捕まれば治療くらいは受けさせてくれる筈だ」
「それで尋問の末に処刑って訳ね……ふふ……ふははは!そんなのごめんよ!ハヤト!私はね!もう二度と負けて惨めに息永らえるなんてしてやるつもりはないの!……そうなるくらいなら」
シェイラはそう言って屋上の端のギリギリに立った。
「何をするつもりだシェイラ?」
「……此処まで来たら決まってるでしょ?今回の小さな勝利……精々噛み締めなさい……ハヤト……」
シェイラはそう言って屋上から飛び降り、ハヤトは駆け寄ろうとした所で屋内に続く扉が開け放たれ、一斉にグリフィンの部隊が突入してきた。
「クリア!ッ!?指揮官!お怪我を負っているのですか!」
グリフィンの部隊の人形がハヤトを見て焦るとハヤト冷静に返した。
「大丈夫だ。それよりもステンを頼む。こいつ……俺よりも酷い癖に来たからな」
「し、指揮官が一人で行くから行けないのですよ!護衛くらいつけてください!」
「それは俺が悪いがだからってそんな状態で来る事はないだろ」
「だったら心配させないでください!こ、この……馬鹿指揮官!」
ハヤトとステンが口喧嘩を始めてしまい、二人が言い合う姿をグリフィンの部隊の人形達はアワアワと見守る中、そこへ。
「その辺にしておけ。探したぞハヤト」
「ッ!?クルーガーさん」
ハヤトはクルーガーを見て敬礼し、ステンも続こうとするも体勢を崩してハヤトに支えられた。
「す、すみません……指揮官……」
「いいや……俺も悪かった……」
ハヤトがそう言うとステンは笑い、ハヤトも笑った。
「仲が良いのは良いがそろそろ良いか?」
「あ……すみません……」
ハヤトはクルーガーを置いてけぼりにしている事に気付き、顔を赤らめつつも謝罪すると他の人形達に下がる様に合図し、グリフィンの部隊は去っていく。
「ステン。貴方も来て。すぐに修復しないと」
「でも……指揮官が……」
「俺は大丈夫だ。クルーガーさんが来た時点で安全は確保された様なものだ。だから安心して修復されに行くんだ」
ハヤトのその言葉にステンは暫く考え込んだ末、他の人形達の手を借りながら去っていき、残されたハヤトとクルーガーは会話を始めた。
「シェイラ・ベネットは死んだか?」
「分かりません……左肩と腹部を撃ってその後は……飛び降りました……」
「つまりは自殺か……死体の確認は?」
「確認出来ませんでしたね。丁度、グリフィンの部隊が突入して来たので。今から見てみますか?」
「確認しよう」
ハヤトとクルーガーはシェイラの落ちた場所へと足を運び、下を覗き込むと。
「……ちッ。やはりか」
ハヤトが目にしたのは死体らしきものがない路地裏だった。
シェイラらしきものはなく、代わりに血痕が足跡の様に残っている痕跡だけがあっただけだった。
「彼奴が素直に死ぬ訳がないのは分かってました……昔もそうだった様に……」
ハヤトはそう言ってトドメを刺した筈のシェイラが生きていた時の衝撃を思い出して眉間に皺を寄せるとクルーガーが言う。
「お前が言った通りの傷ならば簡単には都市から出られない筈だ。それに奴は自身の手駒を多数失ってもいる。これ以上のイレギュラーさえ無ければ奴は生きていたとしても逃げられない」
「イレギュラーさえ無ければの話ですよね?……彼奴の事だ。周りの全てを利用して生き残るでしょう。我々の予想だにしない方法でね」
「それは元婚約者としての見識か?」
「そんなものです……」
ハヤトはそう言って懐から久しく刷っていなかった煙草を手にすると火を点けて吸うのだった。
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その頃、都市の暗闇や混乱に紛れた逃走するシェイラは痛みと出血で気を失いそうになりつつも気力を振り絞って歩く。
やがて人気の無い道路へと出るとシェイラの前に車が止まった。
「乗れ」
その一言が出るとシェイラは迷わずに乗り込むとようやく一息ついた。
車の中で遠慮なく応急処置を行いながら言う。
「予想外だったわよ。ガンマチームがあっという間に壊滅させられるなんて……貴方達の部隊がやるんじゃなかったの?」
「我々としても予想外だと言わざるおえん。国家保安局が先に動くとはな」
シェイラの隣にいる男はそう言って忌々しそうに言うとシェイラは笑う。
「正規軍が何時如何なる時も有事に対応出来ると言うアピールチャンスだったのに残念だったわね。折角、私がルミナスを焚き付けてテロ組織に仕立てぬいて貴方達の罠の材料にしてあげたのに残念ね」
シェイラはそう言って肩に当たって残った銃弾の摘出を終えると男は忌々しげにシェイラを見る。
「口を慎め。アメリカから追い出され途方にくれていたお前を誰が拾ってやったと思っている?そもそも我々はまだ貴様を信頼していないと言う事を分かっているな?」
「えぇ……分かってるわ。だからこそ信頼を勝ち取る為に新たな仕事を用意しておいて頂戴。もっともこの傷が治ってからだけどね」
シェイラはそう言って今も痛む傷を感じながら言うと男は沈黙を持って答えると車が止まった。
外では二人の男が待機しており、シェイラは車から降りると微笑む。
「では、また後日。ご依頼を……カーター将軍」
シェイラのその言葉を聞いた男、カーターは無言で返すとカーターを乗せた車は走り去った。
残されたシェイラはそれを見届けると側にいた男から通信機を受け取って繋げた。
「カーターの信頼を僅かですが勝ち取りました。僅かでも奴と直接会話出来たのです。今の所の成果としたは十分かと。……無論、油断は出来ません。奴に近付くのに多くの犠牲を払いました。仲間にも汚名を被せてしまいました……貴方にとっては小さなものかもしれません。ですが忘れないでください。……この作戦には多くの名も無き英雄達がいた事を。では、また連絡します」
シェイラはそう言って通信を切ると男達を連れ、都市の暗闇へと姿を消した。