戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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フォルトゥーナの人形達

特地に帰還した伊丹達は今日はフォルトゥーナに泊まり、明日一で第三偵察隊の面々と共にアルヌスへ帰還する事となった。

 

明日には交換連絡員の任期は終わるので伊丹達は次いでに便乗して帰る事にし、あわよくばどさくさに紛れて満喫出来なかった分をトラブル無しで過ごしたいと考え為である。

 

伊丹は荷物を置いて基地を歩けば人形達が歩き、談笑する姿が見える。

 

「やっぱ美少女が多いよな……」

 

伊丹はそう言って人形達を見れば容姿は整った者ばかりでまさに需要の為の姿そのものだった。

 

伊丹は周りを見ながら歩いていると前から歩いていた者に気付かずにぶつかった。

 

「おっとすまな……89式?」

 

「あ……伊丹さん……お久しぶりですね……」

 

伊丹とぶつかったのは89式だった。

 

だが、前まで明るく振る舞っていた印象とは真逆にあまりに暗く、どんよりとした雰囲気が滲み出ていた。

 

謂わば落ち込んでいるのだ。

 

「ど、どうした?そんなに落ち込んで?」

 

「……お米……」

 

「お米?」

 

「……お米!食べたかったんです!私だって!イタリカの件で食べ損なったのは仕方ありませんけどね!64式自が抜け駆けで食べたって聞いて!本当にズルいですよぉ!」

 

89式はそう言ってワンワン泣き出した。

 

伊丹はそんな事あったかと記憶を探れば牛丼にも米があり、それを昼食として食べていたのを伊丹は思い出した。

 

日本人にとっては日本の食卓では米は中心的存在。

 

一部例外を除けば和食や洋食の主食として並び、更に米を使った料理も豊富。

 

切っても切り離せない日本人の魂的存在である米が含まれた牛丼も64式自は当然食べている。

 

それを米を望んで食べたがっていた89式が何処で聞いたのか知らないが落ち込むのは当然かと伊丹は何となく察した。

 

伊丹は思考を巡らせていると他の人形達が伊丹とワンワン泣く89式に注目しており、このままではいたいけな女の子を泣かした男の様に見られかねないと伊丹は考えて行動する。

 

「分かった!分かったから落ち着け!アルヌスに帰ったら米を送るから!」

 

「本当ですか!」

 

伊丹のその言葉を聞いて89式は泣くのを止めたと思いきや目を輝かせて笑顔を見せると伊丹に抱きついた。

 

「ありがとうございます伊丹さん!あぁ、やっぱりお米の神様に祈るものですね!今ならキスしても構いませんよ?」

 

「いやいや!米を送るだけでそんな大袈裟な!?」

 

「いいえ!そっちでは日常的なものかもしれませんが此方のお米は高級食材!目が飛び出る程の値段なんですよ!お米派の私は常にお米の代用品を食べ、本物のお米への渇望に耐え続ける日々!それが今、あと少しで本物のお米が食べられると思えば伊丹さんにこの身体を抱かれたって良いですよ!」

 

「だーかーら!大袈裟だし誤解を招く様な事は言うなぁ!」

 

伊丹はそう言って抱きつく89式を引き剥がそうとするも89式は外れず伊丹に過剰な感謝を言いまくる。

 

それを見た人形達のひそひそ話が伊丹を襲い、悲鳴を挙げさせるのだった。

________

______

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その頃、基地の内部に作られたカフェ施設でハヤトは何処からともなく響く伊丹の悲鳴を聞いた様な気がした。

 

「誰か悲鳴を挙げなかったか?」

 

「そうですか?私達には何も聞こえませんでしたが?」

 

そう言って珈琲を差し出すスプリングフィールドは首を傾げながら言うとハヤトは気のせいかと珈琲を手に取り、飲む。

 

「やはり此処の珈琲を飲むと落ち着くな」

 

「お褒めいただき光栄です」

 

スプリングフィールドはそう言って嬉しそうに食器を洗っているとそこへ倉田達がやって来た。

 

「あ、ハヤト指揮官!」

 

「倉田さんか。それと伊丹達以外は揃っているのか?」

 

ハヤトはそう言って伊丹さん以外に出揃った面々を見るとテュカ達は興味津々とばかりにカフェ施設を見ている。

 

「なんと落ち着きのある場所なのだ。帝国でも此処まで落ち着いた場所は無い」

 

「此処ってどんな場所なの?」

 

「彼女達は飲食を行っている。酒場?」

 

ピニャとテュカ、レレイがカフェ施設を見渡すとハヤトの他に基地に所属する人形達も席に着いて談笑したり、飲み物を飲んでいる姿が見えた。

 

中にはテュカ達を遠巻きに見て興味を持つ人形達もいた。

 

「此処はカフェっス。飲み物や料理を提供してくれる場所で自分も何度かお世話になったんっスよ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

倉田のその言葉にテュカは興味を持った時、スプリングフィールドが話し掛けた。

 

「よろしければお好きな席にどうぞ」

 

スプリングフィールドのその勧めにテュカは戸惑うとそこでロゥリィがハヤトの隣に遠慮なく座った。

 

その瞬間、周りの空気が少し冷えた様な気がしたがすぐに元の気温に戻った……気がする。

 

「な、何か冷えたっすね……」

 

倉田がそう言って両腕を擦る仕草をした時、そこへ二人の人物が訪れた。

 

「あら、皆も此処に来てたのね」

 

訪れた一人は黒川でテュカはその姿を見ると笑顔を向けつつもう一人に注目した。

 

「黒川さん!えーと……」

 

「ちゃんとした挨拶は初めましてかしら?私はPA-15よ。よろしく」

 

そう言ってPA-15は挨拶するとテュカは黒川の手に幾つかの資料を持っている事に気付いた。

 

「それは?」

 

「え?あぁ、これは医学に関する資料よ。彼女は元は医療関係者みたいで彼女達の世界の医療を知れたらと思って何度か此処に一緒に通っているの」

 

「そういえばPA-15は元々は医療人形だったな」

 

ハヤトはPA-15の過去の経歴を思い出してそう言うと倉田が反応した。

 

「そう言えば他の子達もPA-15さんみたいに前職ってあるのですか?」

 

「あぁ、あったぞ。色々な所から流れてきた人形は沢山いる。中には違法行為や犯罪まがいな経歴を持った人形もいるくらいだ」

 

「それはあたしの事を言っているのかボス?」

 

ハヤトはそう呼ばれて振り向くとそこにはギャングやマフィアの様な風貌な人形がそこにいた。

 

「経歴に嘘はないだろトンプソン?ま、俺はそんな事にいちいち気にしてるつもりはない。優秀な人形はいても困らないし何より経歴に泥があるなら俺もそうだしな」

 

「そんな事を言うなよ。ボスの経歴はあたしよりもマシだろ?」

 

トンプソンはそう言ってロゥリィとは反対の方向のハヤトの隣にちゃっかり座り、他の人形達からのジト目を受けた。

 

トンプソンはそんな事も構わず倉田達に視線を向ける。

 

「他には名乗ってなかったな。あたしはシカゴタイプライターだ。仲間からはトンプソンって呼ばれてる。夜露死苦っ!」

 

「何かツッパリ用語が飛び出た様な……」

 

倉田はそう言ってツッコミを入れた後、レレイが辺りを見渡している。

 

「どうしたレレイ殿?」

 

それに気付いたピニャがレレイに聞くとレレイは答えた。

 

「……イタミが来てない」

 

「そう言えば時間が隊長達遅いっスね。伊丹隊長はともかく冨田二尉も遅れるなんて」

 

倉田はそう言って腕時計を見ているとそこへ疲れ果てた伊丹とその隣を歩く冨田がやって来た。

 

「やっと着いた……」

 

「遅れてすまない。二尉が89式に何故か捕まっていたのでそれを助けていたら遅れてしまてしまった」

 

冨田の説明にハヤトやフォルトゥーナ基地所属の人形、倉田達と訳を知る者達は苦笑し、訳を知らないテュカ達は首を傾げた。

 

因みに栗林はPM-9と一緒に楽しく格闘訓練をしており、此処には来ない。

 

「すまない伊丹。89式の駄々に無駄に付き合わせてしまったみたいだな」

 

「いえいえ。後でお米を送るって言う事を確約されだけですから……まぁ、確かに米が食べられないって言うのは寂しいですしね……」

 

「分かります隊長。此処のご飯はとても美味しいっスけどやっぱり長く米を食べてないと寂しくなるっス」

 

「確かに食べられないとなると無性に食べたくなりますよね」

 

「そうですね。アルヌスに帰ったら和食が食べたいですね」

 

ハヤト、伊丹、倉田、冨田、黒川はそう言って米への執着を出す中。

 

「ハヤト指揮官もお米をご所望ですか?」

 

スプリングフィールドがそう質問するとハヤトは少し考えた後、答えた。

 

「まぁ、食べたくないって言えば大嘘になるな。それだけ日本人いや、アジア人にとっては切っても切れない主食だからな。食べられるのならと思えば食べたいって言うのが本音だ。念の為に言っておくがスプリングフィールド達の食事が気に入らないからじゃないぞ」

 

「分かってます指揮官。ステンさんの手料理をあんなに美味しそうに食べてる指揮官を見てれば分かりますよ」

 

スプリングフィールドのその言葉にハヤトは少し照れるとPA-15は何かを思い付いたかの様にポンと拳で手の平を叩くと話した。

 

「だったら89式の分以外にももう少しお米を貰うのはどう?私も聞いて食べてみたくなっちゃった」

 

「成る程な。一人分じゃなくてそれならいっそ多めに貰おうって訳か。だが、流石に迷惑だろ?この基地に何れだけの人員がいると思っている?平時の街中ならともかく此処は戦場の最前線だ。無駄に苦労を掛けさせてやるな」

 

トンプソンはそう言って否定するとPA-15は残念そうに溜め息を吐く。

 

「そうよね~。あーあ……89式が羨ましい。私だって高級食材の米を食べたいのに~」

 

PA-15はそう言って本当に残念だとばかりに言うと伊丹はうーんと頭を悩ませるとハヤトは諌めた。

 

「PA-15。あまり伊丹さんを困らせるな。それにお前は次にアルヌスに派遣される予定だろ?向こうで食べてくれば良いじゃないか」

 

「あれ?バレちゃった?」

 

PA-15はそう言って悪戯ぽく笑い伊丹は密かに迫っていた財布の危機を脱却した事に安堵した時、そこへOTs-14とAK74Mがやっめ来た。

 

「指揮官。それとイタリカにいた自衛隊の方々ですか?」

 

「あ、はい。改めて伊丹です。あの時は助かりました」

 

「やるべき事をしただけよ。彼女もそう思っているわ」

 

OTs-14はそう言って隣に視線を向けると無言で伊丹達を見つめるAK74Mに伊丹は苦笑いする。

 

「相変わらず人付き合いはしなさそうで……」

 

「珈琲を飲みに来た。只、それだけ」

 

AK74Mはそう言ってカフェ施設の奥の席に座りに行ってしまいハヤトは苦笑いする。

 

「すまない伊丹。彼女はプライベートだとあんな感じだが根は優しい奴なんだ。嫌いにならないでやってほしい」

 

「いえいえ!大丈夫ですから!ある意味、女性陣から雑に扱われるのは慣れてますから!」

 

伊丹はそう言って苦笑いし、暫く周りが静まり返った所でOTs-14はクスクスと笑い、他も釣られて笑い始めた。

 

その後、ハヤト達はカフェ施設で交流し合い、普段は接点の無い者同士の交流は成功したのだった。

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