戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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動き出す影

伊丹達はフォルトゥーナでの交流を終え、第三偵察隊の面々と共に帰還する事となった。

 

「約束しましたからね!絶対にお米送ってくださいよ!」

 

「すみません伊丹さん……」

 

「あはは……」

 

89式は念を入れまくって伊丹に米を送る様に言い、それを申し訳なさそうに頭を下げる64式に対して伊丹は苦笑いする。

 

「クリ!また会ったら一緒に訓練しような!」

 

「うん!此方も楽しみにしてるから!」

 

PM-9は栗林との格闘訓練が余程楽しかったなかイキイキとしながら栗林の見送りに来ていた。

 

「はい。お土産です。アルヌスへ帰ったら皆さんと分けてくださいね」

 

「わぁ、ありがとう!」

 

「あなたのお菓子は好きよぉ」

 

スプリングフィールドがお土産の手作りのお菓子をテュカ達に渡し、テュカ達は喜んで受け取っていた。

 

「くぅ!任期さえ無ければ一生いたかったっス!」

 

「そんな事言わないで帰るにゃ。倉田には待ってる人がいる筈にゃ」

 

倉田が帰りたくないと言う言葉にたまたま近くにいたIDWがそう言って倉田を諦めさせる。

 

「一通りは教えたけどまぁ、私もすぐにアルヌスに行く事になるからその時にまた話しましょう」

 

「はい。その時はよろしくお願いします」

 

PA-15と黒川はまだ別れではないと言う雰囲気の中、親しげに会話をしている。

 

各々が各々の別れを言い合った後、伊丹達は出発し、ハヤト達はその姿が見えなくなるまで見送るとようやく解散した。

 

「ようやく終わったな」

 

「はい。とても忙しいかったですね」

 

ハヤトは自身の執務室へ帰りながらステンと話していた。

 

ハヤトは負傷した右腕を軽く動かしながら見た後、ステンを見る。

 

ステンは何事も無かったかの様に歩く姿にハヤトは安堵するとステンは視線に気付いて首を傾げた。

 

「どうしました?」

 

「いや……あの時、お前の損傷の激しさを見て不安だったんだ……もしかしたら取り返しのつかない故障があるんじゃないかって……」

 

「指揮官……」

 

ハヤトの不安を聞いてステンは心配させた罪悪感と心配してくれる嬉しさの両方を感じながらハヤトの方へ体を寄せた。

 

「私は大丈夫です。メンタルも何も問題ないと言ってくれましたから。だから心配しないでください」

 

「そうだな……だが、あの時みたいな無茶はもうしないでくれ。お前に何かあったら俺はもう……耐えられないかもしれないからな……」

 

「指揮官……」

 

ステンはハヤトの不安を感じながら心配する中、後ろから咳払いする声が聞こえ、二人揃って驚いて振り返った。

 

そこにいたのはリューリクで少しニヤついた顔でハヤトを見た後、用件を告げた。

 

「お楽しみの中すみません。指揮官に報告があります」

 

「大丈夫だ。聞かせてくれ」

 

「はい。今回、外交の仲介役となったピニャ皇女との接触を機に新ソ連政府は外交官の派遣を決定した模様です。それに伴い同じく交渉を行う思われる日本との調整の為にアルヌスに赴くので準備して貰いたいと」

 

「外交官の派遣か……多少は交渉する気はあるのか」

 

ハヤトはそう言って新ソ連が特地への本格侵攻を考えてる中で打ってきた意外な一手にハヤトは内心驚きつう言う。

 

「降伏勧告を外交官で通す為でしょう。何しろ電話も何もないんですから。ですが侵攻も何もしてないのにいきなり降伏勧告を行っても相手のプライドを無駄に逆撫でして意地を張らしても仕方ないから多少は交渉する気はあると言う意味で送る意味合いもあるのでしょうね」

 

「確かにこの世界の帝国は俺達に負けるまで戦争で負ける事を知らな過ぎた様だしな。アレだけの大損害を被っても戦争する気力が全く衰えていないと言うのが恐ろしい所だ」

 

ハヤトはそう言って帝国軍、連合諸王国の十数万単位での被害を思い出しながら溜め息をついた。

 

これだけの死者を出したのにも関わらず此方がまともに動かない事を都合の良い様に解釈していると思われる帝国は反撃の為に軍備再編に勤しんでいる姿をハヤトは想像できた。

 

「だが、その再編された軍団は何処へ行くのかだ」

 

「恐らくフォルトゥーナでもアルヌスでもありません。鉄血へ向けるかと思います。現状、最も帝国に食い付く勢力が奴等なのですから」

 

「確かにな……帝国には悪いがそれを利用させて貰う。帝国軍が俺達とは関係ない場所に派兵された場所に鉄血がいる筈だ。馬鹿みたいな数を送る帝国相手に鉄血も流石に急速な戦線拡大は出来ない筈だ。それを何度か辿っていけば自ずと鉄血の侵入ルートを絞り込めるし、何なら帝国が勝手に自滅し続けてくれるなら好都合だ。無論、此方でも探りを入れ続ける。下手したら辿る所か逆に鉄血に侵食され過ぎてゴチャゴチャしたものを見る羽目になるかもしれないからな」

 

ハヤトはそう言って被害の事を考えれば出来れば前者になって欲しいと思いながら溜め息をつく。

 

「話を戻すが此方からも外交官の受け入れを承諾したと言っておいてくれ」

 

「分かりました」

 

ハヤトの命令を聞いてリューリクは離れていくとハヤトはこの先、どんな事になるのかと頭を悩ませていく。

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その頃、特地のとある地域で帝国軍と鉄血の戦闘が繰り広げられていた。

 

帝国軍は戦列を整え、盾と槍を構え、前進するいつもの戦術で鉄血の陣地へと向かっていく。

 

その数、実に二万人。

 

圧倒的な物量に今回の戦いの帝国軍指揮官は勝てると信じていた。

 

「敵は小勢!今こそ悪しき魔女共を駆逐し、勢いに乗ってアルヌスとフォルトゥーナの門を奪還するのだ!」

 

帝国軍指揮官はそう叫びながら前進させ続けていた時、上空から急速に落ちてくる強い光を感じた瞬間、帝国軍指揮官は何をされたのか分からないまま周りの帝国軍共々死んだ。

 

その様子をエクスキューショナーとハンターの二人は見ていた。

 

「話以上だな……固定なのを除けば間違いなく一番の火力だぞ」

 

「そうだな……これをアルヌスやフォルトゥーナの近隣に設置出来れば確実に勝てる。その代わりに門ごと吹き飛ばす事になるがな」

 

「別に構わないだろ。何たって門は二つだけじゃねぇんだからな」

 

「そうだな。この世界での実施試験は終了だ。次は本番だ。それまでグリフィンの奴等に気とられなければ良いがな」

 

ハンターはそう言って目の前の惨状……巨大なクレーターが出来た景色を見ながらエクスキューショナーと共に立ち去った。

 

その様子をグリフィンの偵察用ドローンが捉え、その光景は記録されると速やかに離れ、戻っていく。

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翌朝、ハヤトは頭を抱えていた。

 

偵察用ドローンが鉄血の動きを察知し、偵察した所、鉄血と対峙し侵攻していた帝国を纏めて吹き飛ばす様に放たれた強力な砲撃を観測した。

 

巨大なクレーターが出来る程の強力な火力を持つ鉄血の兵器。

 

唯一該当する物をハヤトは知っており、そして対策に頭を悩ませる事となった。

 

《つまりはアルヌスの駐屯地を纏めて吹き飛ばせる程の高威力の砲台を鉄血は用意していると?》

 

「はい。名前はジュピター。鉄血が正規軍のデータから盗み出した要塞砲です。威力は御覧頂いたデータ通り一発の威力で広範囲かつ高い威力での制圧を主とし、その射的距離も侮れません。もし、万が一にでもアルヌス及びフォルトゥーナ付近にジュピターの設置を許せば結果は悲惨なものになると言っておきましょまう」

 

ハヤトは狭間に連絡を取り、鉄血がジュピターの用意をしている事を伝えると狭間は冷や汗をかく。

 

巨大なクレーターが出来る程の威力の砲撃。

 

そんなものをまともに食らえば幾ら戦術的なアドバンテージ持つ自衛隊でも一溜りもない事態だった。

 

狭間は至急、何としてもジュピターの設置を阻止、及び破壊せねばと考えた。

 

《我々はどうすれば良い?肝心のジュピターを見つけなければ我々でもどうしようも出来まい》

 

「問題ありません。幸いな事にあれだけ大きな砲台です。一度外して運ぶにしても大きな苦労が伴います。それを利用して我々は現在、鉄血輸送部隊を追跡し、位置を把握した後、貴方方、自衛隊に座標を連絡します。その座標を受け取った貴方方は……」

 

《航空支援を持って設置中のジュピターを破壊せよ……ですか?》

 

「はい。ですが更に問題が……」

 

ハヤトはそう言って送っていた画面を切り替えるとエクスキューショナーとハンターの写真が写された。

 

「彼女達はエクスキューショナーとハンター。鉄血のハイエンドです。この二人はスケアクロウとは別に戦闘に秀でたハイエンドです。恐らくは更なる戦力投入を鉄血は開始したと思われます。今後、恐らくはこの二人だけでは済まないでしょう」

 

《戦力の投入……それだけ本気だと言う事ですか……》

 

「この世界の有り余った資源の事を考えれば鉄血が譲りたくないのは確かでしょう。奴等の戦力の増強イコール資源の大量消費ですからね。我々の世界ではジャンシアーヌ指揮官の活躍もあって勝利もそうですがハイエンド達の撃破も何度もありましたから」

 

《彼女ですか。私と一度話しました中々、聡明な人物だと認識しております》

 

「私も何度も気に掛けている新人なんです。最も優秀ですが若さ故に暴走気味にならないか不安ですけどね」

 

ハヤトはそう言って苦笑するとすぐに真剣な表情に戻った。

 

「我々が必ずジュピターの設置位置を見つけ出します。その時はどうか仕上げの方をよろしくお願いします」

 

《分かりました。御期待に添える様に必ず仕上げを成功させましょう。何か他に支援が必要でしたら連絡をください。我々に出来る支援を致しましょう》

 

「助かります。では、その時は遠慮なく連絡をさせて貰います。では、これで」

 

ハヤトはそう言って狭間との連絡を終えると鉄血の動向を探らせている小隊の事を思う。

 

衛星が使えない以前に衛星が無いこの世界において正確に場所を掴み知らせる事の難しさはハヤトはよく知っている。

 

嘗て、大戦において衛星が使用出来ない状況の中に放り込まれたハヤトは正確な情報を掴むのにかなり骨を折る苦労を味わった苦い経験を思い出しつつ偵察に出した小隊の成功を信じた。

 

「頼むぞ。お前達が頼りだ」

 

ハヤトはそう言って偵察の報告を待つのだった。

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