翌日、ハヤトはステンと共にアルヌス駐屯地へやって来た。
「ハヤト指揮官。ご苦労様です」
「いえ、此方こそお忙しい中でお出迎えをして頂いて光栄です。狭間陸将」
ハヤトと狭間は握手を交わすとハヤトはステンを連れて駐屯地の会議の場へと向かう。
一方、駐屯地の診療所の診察室では。
「それでテュカはお父さんと暮らしてるけど姿とか見てないのね?」
「そうなのよ!朝、起きたらいっつもいないし……せめて挨拶くらいはして欲しいのよね!」
診療所ではテュカがPA-15と会話をしていた。
PA-15はテュカの話しを聞きながら診断書に書き記している姿にテュカは疑問を抱く。
「貴方に呼ばれて来たけど……何の診察なの?」
「あれ、言ってなかったっけ?いくらアルヌスが快適でも此処に来た経緯の事を考えたら知らない内に心身の疲労の予兆があるかもしれないのよ?ちょっとした事でもほっとくと大変な事になるから定期的なお話が必要になるのよ」
「ふーん……そうなんだ……」
テュカはそれを聞いて首を傾げつつPA-15の話しに納得する中、PA-15は診断書を書き終えて読み返す内容にある欄を見つめる。
【パーソナル障害の疑い有り、慎重な経過観察の必要が求められる】
PA-15はそれを見つめ、軽く溜め息を吐くとテュカにいつもの笑みを浮かべる。
「定期的に来てね。これは貴方の為の診断なんだから。それじゃ、テュカさんの診断は此処まで。次の来院は外の受付の人に聞いて予定を組んでね」
PA-15はそう言ってテュカを診察室から出すといつもの笑顔から一転して何処か読めない無表情の顔になる。
「人間って不憫だね……あ、エルフか」
PA-15はそう言って入ってきた患者を笑って出迎えた。
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ハヤトが狭間達、自衛隊と会議が開かれる中、アルヌス駐屯地にある避難民キャンプ。
そこはもはやキャンプとは言うにはあまりにも人が集まり、商人が訪れ、新たに住む事になった移住者の建物が並び、傭兵も仕事を求めて集まる。
もはや町と言って良い規模となっていた。
自衛隊の責任で管理される場だがそれでも規模が広がれば治安も乱れるのは常でロゥリィを筆頭とした警邏が組まれ、治安を維持しつつ、人手不足はフォルマル伯爵家の伝を頼って集める形で保っていた。
「わぁ!二度目のアルヌスだけど凄い勢いで発展してるね!」
「そうね。改めて歩いて見ているけどまだ新しい建物を建ててわね」
そう言ってアルヌスの町にやって来たのは64式自と89式だった。
この二人は本来なら別の人形が派遣される筈だったが別件の任務が与えられ、非番だった二人が交代する形で送られたのだ。
「それにしてもラッキーですね!今度こそお米を食べてみせます!今日は食堂開いてなかったけど明日はぜーたい食べますからね!何なら食堂の開く直前に駆け込むくらいで!」
「はいはい……あまり自衛隊の方々の迷惑になる様な事は避けなさいね……ん?あれは伊丹さん達じゃない?」
64式自はアルヌスの町の散策中に伊丹と黒川、桑原そしてロゥリィを見かけた。
「伊丹さーん!」
89式が手を振って声を掛けると伊丹達も気付いた。
「89式さん、64式自さん。そっちも非番で此処に?」
「はい。仕事が落ち着いたのでせっかくだからアルヌスの町を見て回ろうと89式が」
「伊丹さん凄いね!最初はテントとかプレハブ小屋だったのに今や町になってますし!皆もアルヌスの難民支援が凄いって話してて今度、参考として伊丹さんの難民支援プログラムでも聞いてみようかって皆が言ってましたよ!」
「ぷ、プログラム?」
「そんなのありましたっけ……?」
「いいや……全く……」
89式の言葉に伊丹はそんなの作ってないと動揺し、黒川と桑原は伊丹の適当さからそんな物が無いのは分かりきりながらヒソヒソと話す。
「私も是非聞きたいですね。もし、講習を開いてくださるのなら皆も喜んで集まってくれると思いますよ。私達の仕事は鉄血と戦う事だけではありませんから教えてくださると助かるのですが……」
「い、いや……か、考えておくよ……(取り敢えず此処は誤魔化して忘れて貰おう……)」
伊丹はそんな事を思いながらはぐらかすとロゥリィが不貞腐れた様な表情で伊丹達を見ているのに気付いた。
「ねぇ、私は仲間外れなのぉ?」
「あ、わりぃ……二人共、暇だったよな?俺達と飲みに行くか?」
伊丹の誘いに64式自と89式は驚いた表情を見せた後、確認の為に聞く。
「良いんですか?」
「私達は邪魔になりませんか?私達、人形と飲んでも楽しくないと思いますし……」
「別に良いだろ?美人さん二人と飲んで楽しくない奴はいねぇし」
伊丹のその言葉に64式自と89式は少し照れた様な表情を浮かべ、伊丹は黒川とロゥリィにジト目で見られた。
気まずくなった伊丹は64式自と89式を加えた全員で酒場へと向かって行くのだった。