伊丹率いる自衛隊の第三偵察隊と行動を共にする事となった64式自は車両の中でハヤトと通信越しで会話していた。
《まさか過去の日本……自衛隊と接触する事になるとはな……》
「私を耳を疑いましたが……装備こそ少し異なりますが自衛隊の装備であるのは間違いありません。そして使われていた車両に書かれていた文字も漢字です。特派と書かれていますが……」
《特派……特派の特は特別。派は派遣だろう。そこから割り出せば特別地域派遣部隊の略称で特派と考えれば妥当だ。彼らの日本が憲法に縛られていなければ体裁的にはこの異世界を日本国内と考えて派遣してきたなんて強弁を立てて送り込んだと思えば自衛隊がいる理由に説明がつく……》
「……どうしますか?正規軍や新ソ連政府にとって目の上のたん瘤に思われますが?」
《今は友好的に行動するんだ。俺からも上に報告を挙げるが流石にいきなり自衛隊を攻撃しろなんて馬鹿な事は言わないだろう。だが、この世界を手に入れる事を新ソ連政府が諦めるとは思えない……はぁ……早く異世界派遣を正規軍に引き継がせたいものだ……》
ハヤトはそう言って溜め息をつくと64式自はハヤトの苦労を察して苦笑いする。
《ある程度の調査を完了したらトラブルでも無い限りは戻ってきてくれ。頼むぞ?》
「了解しました。また連絡します」
64式自はそう言って通信を切ると溜め息をつき、前を走る第三偵察隊の車両を見つめる。
「あの人達……大丈夫かな?」
「何がだ89式?」
PM-9の問いに心配そうにしている89式は答えた。
「だって……あの人って過去の日本の人達じゃないですか……自分の国が無くなったなんて聞いたらショックを受けますよ?」
「確かにでありますね……ですが確実に我々の知る日本であればの話でありますが……」
「どう言う事だ?彼奴らは過去の日本とかじゃないのか?」
「パラレルワールド……とかですか?」
一○○式のその言葉に四式は頷いた。
「我輩の知る限りでは自衛隊の装備が少々異なっていたであります。この世界の為に用意されたと思えば納得出来るでありますがそれでも記録上では銃以外は彼らの身に付けている装備は我々のデータベースには存在しないであります」
「確かに……私達はとんでもない思い違いをしている可能性もあると言う事なのかかもしれませんね……」
四式の考えに64式自は本当に自衛隊は単なる過去の存在なのかと考え始めた時、森が見えたのは良いが目の前に大きな黒煙が立ち上っているのを確認した。
「64式自。どうしますか?」
一○○式は目の前の事態に指示を仰ぐと64式自はすぐに指示を出した。
「……森林火災でしょうか……自衛隊の方々も気付いた様ですし、我々も追従して様子を伺いましょう」
「了解しました」
64式自の指示を聞いた一○○式はアクセルを強く踏んで第三偵察隊に追従していく。
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第三偵察隊と第六小隊が森から距離を取った所まで到着すると車両から降りて様子を伺った。
森は黒煙の規模に相応しい程に燃えており、とても近付けそうでない雰囲気を醸し出していた。
「燃えてるねぇ」
「大自然の脅威?」
伊丹と倉田は目の前の惨状にそう言い溢す中、64式自は双眼鏡を使って森を見ていた時。
「……ん?」
64式自の視界に一瞬だけ人影らしきものを見つけたが人影はすぐに消え去り、64式自は周辺を見てみるが人影らしきものは何処にも存在しなかった。
「どうしたの64式自?」
「いえ……何でもないわ……」
89式が異変に気付いて64式自に問うも64式自は気のせいだと考えて双眼鏡から目を離した。
「伊丹隊長。どうしますか?」
偵察隊の一員である女性自衛官の栗林が指示を仰ぐと伊丹は少し唸った後。
「栗林ちゃあん。おいら一人じゃ怖いからさぁ。着いて来てくれる?」
「嫌です」
何とも言えない伊丹と栗林のコントに64式自はガクッとまともにボケを受けた様なアクションを起こし、第六小隊の面々も苦笑いする始末だった。
「あ、そう……」
伊丹はそんな反応を予想していた様に苦笑いしていたが何かに気付いたかの様に森の方に視線を向けた。
「あのさぁ……何も無い森が勝手に燃えるなんてあると思う……?」
「そんなに気になるのでしたら隊長ご自身が確認しに向かえばよろしいのでは?」
「(うわぁ……伊丹さん、めちゃ舐められてるじゃん……)」
89式は栗林の言動から伊丹がめちゃ舐められてるのに気付いて64式自をチラ見した時、64式自は森に視線を向けてから目を離していなかった。
「私とした事が……!」
「64式自?」
89式は明らかに動揺している64式自を心配そうに見ている中、伊丹が呟いた。
「村長さんが言ってた……あの森には集落があるって……」
伊丹のその言葉に一同は漸く森に集落があると言う事を思い出し、森に視線を向けた。
「やべぇ……!」
「おやっさん。夜営は後回しかな?」
「了解です。全員、移動準備!」
伊丹達が急いで移動の準備に取り掛かる中、64式自もすぐに指示を出した。
「私達も向かいます!今ならまだ生存者がいる筈!急いで!」
「「「「了解!」」」」
64式自も第三偵察隊に続く為に移動を指示すると車両に乗り込み、第三偵察隊の車両に続いて燃え盛る森へと向かう。
64式自は燃える森に向かう最中に見た人影を思い出す。
あれは生存者だったのか或いは別の何かだったのか。
64式自は嫌な予感を覚えつつ一人でも生きている者がいるか祈った。
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第三偵察隊と第六小隊が森の集落に着く頃には日が昇っていた。
火の勢いがあまりにも強過ぎた為に森の中への侵入は危険を伴うとして断念。
火の手が落ち着いた所を見計らって入るしかなかった。
その為に日が昇ってから集落に来た時には全てが燃えていた。
「これで生存者が生きてたら奇跡っスよ」
倉田の言葉通り生きていたら奇跡と呼べる程に殆どが燃え尽きており、焼けた死体も所々に転がっていた。
「惨いでありますね……」
「そうですね……ん?」
四式と見て回っていた一○○式は焼けた死体の一つを見た時、違和感を覚えた。
「四式。この死体を見てください」
「何でありますか?……これは……」
四式は死体をマジマジと見て一○○式と同様に違和感を感じ取った。
焼けた死体であるが明らかに外傷があり、切り裂かれた様に大きな切り傷があった。
明らかに襲われて殺された跡で二人はこれは単なる事故ではないと考えた。
「64式自達に知らせましょう。これは明らかに襲撃を受けた跡です」
「了解であります」
二人は急いでその場から離れ、64式自の元へと急いだ。
その頃、伊丹は救助対象となる生存者がいないかと捜索こそしたが疲れて井戸の縁に座り込んでいた。
「ふぅ……あの子達、かなり慣れてるなぁ……」
伊丹は集落に入ってからの64式自達の様子を観察していた。
見た目では若く、とても傭兵をしているとは思えない様な風貌の64式自達が焼かれた死体を見て体調を崩さないかと思って心配半分、興味半分で見ていたがそれは樹優に終わった。
64式自達は気分を悪くする所か焼死体に近付いてじっくり観察する程に落ち着いており、逆に第三偵察隊の面々の方が吐きはしなくても気分を悪くする者が多くいた。
それが普通の人間の反応であるが64式自は慣れっことばかりに平気で歩き回っては死体を見ては会話し、気分一つ崩さない姿はまるで。
「戦場を何回か行き来した様な感じだよなぁ……」
伊丹がそう呟いた時、栗林が報告にやって来た。
「隊長。この集落には建物が三十二軒。確認出来た遺骸は二十七体。少な過ぎます。大半は建物の下敷きになったと思われます」
「一軒に三人にしても最低百人だろ?それが全滅?」
伊丹は幾ら大規模な火災だからと言って全滅は行き過ぎだと考えた。
火災なら逃げる機会はまだあり、火災が終われば何人かは戻ってきてもおかしくない。
なのに誰もいないし来ない。
伊丹は火災が本当に事故だったのかと考えながら水を補給する為に井戸にバケツを放り込んだ時、中から気持ちいい程の反響音が鳴り響いた。
「ん?」
「何でしょう?」
伊丹は井戸を覗いて栗林もライトを照らして奧を見てみるとそこにあったものは。
「ッ!?人だ!人がいるぞ!!」
そこにあったものは水に浸かって気絶してしまっている金髪のロングヘアーの女性だった。
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井戸から救出された唯一の生存者は長い耳の特徴から集落に住んでいたと思われるエルフだと判明した。
黒川と栗林が処置を施す中、89式は目をキラキラさせていた。
「エルフだよエルフ!凄いよね!本当にいるんなんて!」
「89式……こんな惨状の中で言っても不謹慎よ?自衛隊の人達を少しは」
「その自衛隊の殆ども89式も同じ反応でありますよ?」
「……私がおかしいのですか?」
64式自は自分がおかしくないのかと頭を抱えながら悩む中、一○○式が真剣な顔で言う。
「発見された御遺体の一部は外傷がありました。切り傷だけだったらこの世界の盗賊の類いに襲われたと考えられるのですが……」
「腹の辺りを大穴があった。刺されたとかじゃねぇ……撃たれたんだ。それもプラズマ弾か何かの焦げた跡だ。なぁ、異世界にプラズマ弾みたいな何かがあるのか?」
PM-9の疑問に64式自は頭を悩ます中、冨田がやって来た。
「皆さん。我々は一度、コダ村経由で帰還しますがどうしますか?」
「私達もコダ村経由で基地に戻ります。トラブルが無い限りでは戻る様に言われてますので」
64式自はそう言うと森の集落で起きた違和感を感じ続ける中、その様子を空から監視する様にカメラを向けている存在に気付く事は出来ないまま移動を開始した。