鉄血工造のリッパーとヴェスピド。
鉄血工造の主力の中でも一二を争う程の膨大な数を揃えられた大量生産型戦術人形だ。
性能はグリフィンのIOP製と比べると劣るものは多いが性能以上に厄介なのは数だ。
大量生産型とあって膨大な数を揃えており、更にプラズマ弾を使用する銃器と鉄血製の装備により性能面をカバーされている。
これによりグリフィン以外のPMCを敗退に追いやっており、侮れない存在なのだ。
それが今。
「クソ!鉄血のクズ共が!」
PM-9は悪態をつきながら遮蔽物に隠れつつ射撃し、他の者達も応戦し続ける。
鉄血の激しい弾幕が第三偵察隊と第六小隊に襲い掛かる中、鉄血のプラズマ弾が村人の一人を貫いた。
「あなたぁッ!!」
撃たれた村人の妻と思われる女性が駆け寄ろうとした所でその女性も何発も撃ち抜かれて死んでしまった。
「クソ!クソ!クソォッ!!」
その光景を見せられた倉田は必死に引き金を引き、リッパーやヴェスピドを倒す中、遠くから一筋の光弾が倉田の方へと飛んだ。
「危ない!!」
それを見た64式自が咄嗟に倉田を突飛ばした時、光弾は64式自の腕に命中し、64式自の腕は粉々になった。
64式自は破損した腕を見ると機械部分が露出し、人工血液が大量に漏れているのを確認した所で64式自は近くで戦っていた冨田に引き摺られて遮蔽物に移動された。
「大丈夫ですか!?」
「え、えぇ……このくらい……!」
64式自はそう言って残された腕で自身の銃を手にして周りを見ると一○○式とPM-9が村人達を庇いながら応戦し、四式が狙撃の出所に向かって狙撃し続けている。
89式も迫る鉄血を惹き付け抑える為に発砲を続けている。
全員、何体かのダミーを破壊され、損傷する中、必死に戦っていた。
64式自は片手で狙いを定めて接近してきたリッパーを倒した時、遠くから更に鉄血の増援を確認した。
「敵の増援が来ます!」
「マジかよ!?まだ来んのか!?」
「もう弾が持ちません隊長!」
伊丹が鉄血の増援に驚き、栗林が弾が持たないと知らせた。
このままでは押し切られる。
64式自は手の打ちようが無くなってたきた時、遠くからプロペラ音が聞こえてきた。
「これは……」
64式自はプロペラ音がする方向を見ると空に二機のヘリが飛んできていた。
ヘリの側面にはグリフィンのマークがあり、第六小隊の増援なのが分かった。
「味方です!味方が来ました!」
「え……あれってうちのじゃないよな……?」
「はい!私達、グリフィンの増援です!」
64式自はそう言って増援を喜ぶとヘリの一機は鉄血の上を飛ぶと中にいた人形達が発砲を開始した。
地上にいる鉄血はヘリを攻撃を仕掛ける隙を突いて残された一機が地面スレスレまで降下すると中にいた人形達が飛び出してすぐさまダミー人形を展開して布陣した。
「お待たせしました!」
「ステン!と言うと事は第三小隊が此処に来たのね?」
「はい!さぁ、早く鉄血を押し返しましょう!あ、貴方方が自衛隊の方々ですか?」
「あ、はい。俺は第三偵察隊の隊長の伊丹です」
「私は第三小隊の隊長を勤めさせて頂いてますステンMK-Ⅱと言います。私達が来たからにはもう大丈夫です。一緒に頑張りましょう!」
ステンはそう言い終えると第三小隊の面々が第六小隊と連携して鉄血への反撃を開始した。
第三小隊はステンMK-Ⅱを隊長とし、IDW、L85A1、ショーシャ、MG34と言った面々が編成されている。
第三小隊の増援によって数の面でカバーされ、村人にも向けられていた攻撃が第三偵察隊と第三、第六小隊の方に向き始めた時、鉄血の後ろを突く様に降り立った第二小隊が強襲した。
第二小隊の隊長の
グリフィンの増援が来た事で形勢が逆転されていき鉄血の部隊が数を減らす中、近くの林から巨大な影が現れた。
「ッ!?マンティコア!?」
「あ、あんな物まであるのかにゃ!?」
鉄血の四脚型無人戦車、マンティコアの出現にグリフィンの各小隊は驚く中、マンティコアは狙いを定めて砲撃しようとしているのをカラビーナが確認した。
「全員!回避行動を!」
カラビーナがそう叫んでグリフィンの各小隊の面々は回避を行おうとした時。
「勝本!あのSFみたいな戦車をパンツァーファーストで撃てぇ!!」
伊丹がそう叫んで勝本にパンツァーファーストを撃つ様に促し、勝本がマンティコアに狙いを定めた所で勝本が急に撃つのを止めた。
「おっと……後方の安全確認!」
「「「「「(馬鹿!とっとと撃て!!)」」」」」
勝本が訓練で染み込んだ後方確認をしてしまい伊丹達が総ツッコミを入れた後で勝本がパンツァーファーストで再びマンティコアを狙った。
だが、それよりも早くマンティコアが砲撃を行い運悪く勝本の近くの地面に着弾して爆発した。
「うわッ!?」
幸い勝本に当たる事はなかったがその際にパンツァーファーストの引き金を引いてしまい、発射されてしまった。
「やべぇ……完全にズレたぞ……」
伊丹はパンツァーファーストの弾頭がマンティコアから少しズレて飛ぶ事を確認し、被弾せずに終わると考えたその瞬間。
マンティコアの足元が大きく爆発し、マンティコアはパンツァーファーストの弾頭が飛ぶ方向へと体勢を崩すとそのまま被弾した。
大きな爆発が起こり、各々がマンティコアの方向に注目する中、硝煙と爆風の煙が消えた所でマンティコアの破壊と近くに巨大なハルバードが刺さっているのを確認された。
「あれってロゥリィさんのじゃない?」
89式はそう言ってロゥリィを見るとロゥリィは不敵に笑っている。
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鉄血の襲撃後、第三偵察隊と第二、第三、第六小隊は生き残った村人達と共に鉄血に殺された者達を埋葬した。
鉄血の襲撃で多くの村人達は殺され、64式自達、第六小隊の面々は予想だにしなかったとは言え、守り切れなかった事を悔いながら安らかに眠れる事を祈る。
埋葬の後、最も深刻な問題に直面する。
「生存者の大半は近隣の身内の所に行くか何処かの街や村に避難するそうです」
「街ったって知り合いとかいないんでしょ?これからの生活大丈夫なのかなぁ……それに彼女達もさぁ……」
桑原の報告に伊丹は移動の用意をする村人達や第六小隊を見つめる。
損傷した64式自の腕は破損し、人工血液は止まってはいるが機械部分が露出したままだった。
89式、一○○式、PM-9、四式も64式自程ではないが損傷し、機械部分が露出した箇所もあった。
「あの子達……本当に人間じゃなかったんだな……」
伊丹はそう言って戦闘後の黒川からの報告を思い出す。
「隊長。負傷者の治療は完了しました。ですが……第六小隊の方々の治療は出来ませんでした」
「出来なかった?」
「はい……彼女達……特に64式自さんの腕を見たのですが……あれは人の腕ではなく、機械そのもの様で……彼女達が最初に言った様に元から人ではないのかもしれません。それに黒紫の魔女……鉄血との戦闘後、検死の為に死体を見たのですが何れも同じく機械の部品が見えていました。恐らくその鉄血も同様の存在なのかと思われます」
黒川のその報告に伊丹は頭をかきむしりながらこれから起こる混乱に頭を悩ませつつ村長の元へと向かってこれからどうするのかと尋ねたら。
『神に委ねる?』
『そうじゃ……薄情と思うかも知れんが濃らも自分等の世話で精一杯なんじゃ……』
村長の言葉に伊丹は何も言えずにいると村長は帽子を脱いで伊丹達を見つめる。
『あんたらには感謝しとるよ……特にあの者は腕を失ってでも濃らを守ってくれた……本当にありがとう……』
村長のその言葉に伊丹はそれ以上は何も言わずその後、村長達、避難民達は一部の者を除いて旅立って行った。
それを見届けた64式自はステンの元へと行く。
「ステン。彼らをどの様にするつもりですか?」
「それは……先ずは自衛隊の方々次第かと。私達があの人達を引き取るかどうかはそれからになる……と、指揮官が仰ってました」
「そうですか……」
指揮官の言う事ならばと64式自は伊丹を見つめる中、伊丹は残った避難民に対して暫く無言だったが。
『だぁ~いじょ~ぶ!ま~かせて!』
現地でのその言葉で言うと避難民達は安心した様に笑顔になり、64式自も安堵した。
「大丈夫そうですね……」
「はい。自衛隊ならきっとそうすると指揮官がそう言っていましたから。私も少し不安でしたけど……」
ステンはそう言って苦笑いすると64式自も笑い、安心して喜ぶと避難民達を見つめるのだった。
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その頃、とある山にて。
山の洞窟を利用して作られた基地、その周辺を巡回して警戒する鉄血兵達がいた。
《グリフィンと会敵しましたか……》
「申し訳ありません……奴らに我々の存在を知られたのは私の責任でございます……」
その基地の司令部で白いポニーテイルの女が画面に映る髪を二つの団子に結んだメイドと話していた。
《構いません。何れはグリフィンに悟られるものと考えていました。それよりも厄介なのは自衛隊です。あれはグリフィンよりも使える手札が多いのが厄介……手を打たなければなりませんね》
「はい。ですがまだその時でないのも確か……この世界での基盤を固め、来る時にグリフィンと自衛隊を始末すればよろしいかと」
《時間を掛け過ぎない事ですよヘアツォーク。グリフィンも自衛隊も時間を掛ければ我々同様に基盤を固めるでしょう。そうなれば我々を潰す為に集められた戦力を結集させてくるのは明白……我々は今、この世界の優位性を失くす訳には参りません》
メイドはそう言ってヘアツォークを一睨みするとヘアツォークは静かにメイドに視線を向けた後、頭を軽く下げて答える。
「存じております。此方も只、手を駒根くつもりはありません。相応の妨害は致します」
《……期待していますよ?それと近い内にそちらにスケアクロウを始めとして追加の戦力を派遣します。上手く使いなさい》
「分かりました。必ず期待に答えて見せます……エージェント」
ヘアツォークはそう言ってエージェントとの通信を切るとそのまま司令部を背にして去り、暫く歩いて基地内にある大部屋へと来るとそこには大きな赤いドラゴンの頭が飾ってあった。
「漸く……作られた意義を示す時が来ましたか……炎龍や前にあった小娘よりも楽しませてくれると良いのですがね……」
ヘアツォークはそう呟いて不敵に笑った。