クー・フーリンのスペックで転生した僕がヒロアカ世界で理想の兄貴になる話 作:佐久間2525
[あの日から10年]
◇SIDE:緑谷
「デク先生!さよーなら!」
「はい、さようなら。気を付けて帰るんだよ」
荷物を持って友達の背を追いかける生徒に、ひらひらと手を振った。
元気いっぱいで、かわいいなあ。
僕らが生徒だった時、相澤先生こんな風に思ってたのかな。
ふと、窓の外を見やる。
どこからか楽しげな笑い声が響いていた。
平和だ。
空は良く晴れて、事件も起きていない。
雲一つないほどに空が青いこんな日は、決まって彼のことを思い出す。
『あんまり気負うなよ緑谷。ゆっくりやろうぜ!』
『え?体術を教えてほしい?いいけど…俺の指導は厳しいぜ?』
『俺の夢かぁ。あんまり人には言えねぇな。…まぁ気が向いたらそのうち教えてやるよ』
『お前もオールマイトファンか!かっけぇよな、あの人。人類の宝と言ってもいい!』
『お嬢さん、荷物持ちましょうか?…んだよ、切島。女性はいくつになってもお嬢さんだろうが』
『ここは俺に任せな』
『貴方と貴方が愛する全てを守り抜くと誓おう』
『この男は、俺が地獄まで連れていく…あんたは畳の上で大往生しろよ、オールマイト』
『いい…じんせい、だったなあ』
記憶の中で棚引いていた青い髪が、真っ赤に濡れていく。
キラキラ輝いていた瞳が、どろりと濁って。
血まみれのまま、地に伏した彼を幻視する。
ああ。…彼のことを思い出すといつもこうだ。
たくさん話して、たくさん笑顔を見たはずなのに。いつも凄惨な死の記憶に塗りつぶされる。
かつてのA組のメンバーは、みんなヒーローになった。
僕も、A組のみんなや発目さんのおかげで、サポートアイテムを使いながら、雄英高校教師とヒーロー業の二足の草鞋を履けている。
あの日の悪夢以来、誰も欠けることなく。
「君に会いたいよ、空風くん」
君だけがいない。
もう君がどんな声をしていたのかも、どんな風に笑っていたのかも、思い出せない。
いつの間にか空は随分と暗くなって、一等星が瞬き始めていた。
「…しまった!職員会議!」
こうして忙しく日々を過ごすたびに、また君の記憶を失っていくんだろうなって。
想像しただけで、少し胸が寒くなった。
◇SIDE:others
「おい!裏口誰か張ってるか!」
『こちらクリエティ!裏口は私とセロファン、イヤホンジャック、チャージズマで固めてますわ!』
「まじか頼もしい!ヴィランは包囲を抜けて裏口に向けて逃走中!」
『了解しましたわ!』
無線でのやり取りを終了し、切島は目の前の敵を殴り倒した。
「爆豪!早くここ片付けて裏口の加勢にいこう!」
「わぁーっとるわ!!」
BOOOOM!!!!
盛大な爆破音とともに中世の鎧を着た兵士が倒れ伏す。倒された兵士はしばらく経つと、青い光の粒子となって宙に消えていった。
「にしてもさ!こんだけ元A組集合して一緒の仕事するの初めてじゃねぇ!?」
「ヴィラン追っかけてる最中にテンションあげてんじゃねぇよボケ!!」
かつての雄英高校A組のメンバーは、各地でトップヒーローとして活躍する面々ばかりである。
当然、一堂に会しての仕事はあまりない。
だが、今日という日は特別な日だった。
彼らのクラスメイト、空風凛の亡くなった日から、ちょうど十年の節目。
緑谷がかけた集まらないか、という声に一も二もなく頷いた。
空風凜はA組のメンバーが今もなお心に抱える大きな傷だった。
全員で墓参りを済ませた後、せっかくだからご飯でも一緒に食べて思い出を語ろう!
そう意気込んで居酒屋に入り、乾杯をしようとした瞬間。緑谷と他数名の仕事用連絡端末が鳴り響いたのだ。
「みんなと一緒に戦えるのはうれしいけど!今日はやめといてほしかったな!」
「ほんとにヴィランのやつもなんだってこんな日に!」
口々に文句を言い始め、その勢いのままに兵士たちが破壊される。
「急に集められたから詳しくは知らないんだけど、敵の個性ってなに!?」
『敵の個性は【英霊召喚】! 過去の偉人を疑似的に召喚する個性と聞いていますわ!エジソンやアインシュタインを召喚して、とんでもない兵器の開発をさせようとしていたところを捕捉され、大規模な捕縛作戦が計画されたそうです!』
「解説ありがとうヤオモモ!!」
目の前の兵士は、過去から疑似的に召喚された人たちだったのか、と納得の頷きを返す麗日。
「兵器の回収は?」
「ショートとシュガーマンが行ってくれてる!確保済みだってさ」
「了解!さ、ここも片付いたし、逃げたヴィランを追おう!」
緑谷の言葉にA組の面々は頷き、研究所の扉をくぐっていった。
・・・・・・・・・・・・・
「…!誰か来る!足音一つ!」
「来ましたわね!セロファン、チャージズマ、作戦通りに!」
「おっけいクリエティ任せろ!」
研究所の裏手側。
正面の入り口を除けば唯一の出入り口を固めていた四人は、八百万の号令とともに動き始める。
扉の両脇に隠れた直後、背後を警戒しながら、白衣を着た男が飛び出してきた。
「くそっヒーロー共め!俺様の崇高な使命を邪魔したこと、必ず後悔させてやる!」
「今です!」
「なっ!!?」
瀬呂が射出したテープがヴィランの足元を固め、八百万が作り出した捕縛布がさらに上から覆う。
敵の個性の使用を警戒に当たっていた上鳴は、なにも戦力を連れていないのを見ると警戒を解いた。
「放せ!俺様はこの世界の歴史を変える偉大なる研究者だぞ無礼者!!!」
「捕獲完了ですわね」
「はいはいおっさん、話は署で聞いてもらってねー」
「なんか大したことなかったな」
ぐるぐる巻きの芋虫状態で地面を転がる敵を一瞥し、四人は苦笑いした。
「まあ俺らがたまたま一ヶ所にいたから付いてきただけで、本来はこんなに大人数のヒーローで当たる任務じゃなかっただろうしな」
「過剰戦力だったな」
「くそっ、くそっ…!こんなところで終わるはずじゃないのに…」
「あれ、誰も無線とらない…。あたしちょっと皆に捕縛完了って伝えてくるね!」
「お願いしますわイヤホンジャック」
ぶつぶつと恨み言を呟いている研究者を転がしたまま、三人は耳郎を見送った。
あまりの呆気なさに拍子にとられているものの、冷静にヒーローとしての業務をこなしていく。
「武器の保持無し。武装完全解除」
「周囲敵影なし。ヴィランの応援はなさそう」
「こちらも手足の完全拘束完了しましたわ」
「…。……」
「なんかコイツずっとぶつぶつ言ってて怖いんだけど」
「聞くところによると何年もかけて国家転覆を狙っていたらしいですわ。計画が水の泡になって呆然としているのでしょう」
「はぁ~。いい個性持ってんのに、なんでんなこと考えんのかね…」
「……………」
油断なく周囲を確認しながらも会話を交わしていると、大勢の足音が聞こえてくる。
残りのA組のメンバーと、呼びに行ってくれていた耳郎だろう。
「捕縛完了ですわ~!」
手を振りながら叫ぶ八百万に、焦った表情の耳郎が全力で駆け戻ってくる。
何かを叫んでいる様子に、一堂に緊張が走った。
「~!ソイツ!呪文みたいなの!呟いてる!!!!!」
「──告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──!」
個性で小さな声も聞き逃さなかった耳郎が警戒を促すも、一歩遅かった。
男が呪文らしきものを唱え終わると同時に、地面が青く発光する。
「チャージズマ!」
「任せろ!放電!」
間髪入れずに上鳴の個性によって電撃が放たれる。個性を使用される前に相手を気絶させてしまえばそれで済むはずだった。
が、突如として蒼い閃光が走った。目視できないそれは電撃の光すらも切り裂き、男への攻撃を断ち切った。
あまりにも一瞬のうちに横切った影に、新たな敵が召喚されてしまったか、と一同は警戒を強める。
召喚の際に光り輝いていた魔法陣が輝きを失い、派手に起きていた土ぼこりが地面へと落ちる。
時刻は宵闇。雲がかかって途切れていた月の光が、風が吹くと同時にあたりを照らし始めた。
耳郎とともに駆け寄ってきていた他のA組メンバーも駆けつけると同時に、月光のもとで、新たなる敵が全貌をあらわにする。
「なっ…!」
「うそ…」
「そんな、そんなはずが、」
声なき悲鳴が喉からこぼれた。
驚愕、絶句、放心。
プロヒーローとして第一線で活動する面々が、揃いもそろって動けないでいる。
かつてのクラスメイトの中で、たった一人。もう二度と会えないはずの人物が、何かの間違いで目の前に立っているのだから。
蒼い髪と、蒼いスーツ。
凛とした立ち姿で愛用の紅い槍を構える姿。
誰が見間違えようか。
誰が忘れられるだろうか。
「よう!サーヴァント ランサー、召喚に応じ参上した。ま、気楽にやろうやマスター」
ああ、彼はこんな声をしていたのだったか。
混乱が渦巻く月の下、場違いにも緑谷はそんなことを第一に思った。
[夢の続き]
◆SIDE:オリ主
…これどういう状況だろう?
倒れ伏すおっさん。なんか見覚えのある…クラスメイトが大人になったらこんな感じかな?的な風貌のヒーロー多数。
取り敢えず召喚者らしいおっさんに向けた攻撃は条件反射で防いだけど、マジでどうしたらいいわけ?
「そ、空風くん!空風くんだよね!?」
「…」
緑色の髪に、優し気な相貌。それでいて聞き覚えのあるこの声は…主人公!主人公じゃないか!
まるで歴戦の戦士のような傷だらけの風貌だが、俺には分かる。こいつは緑谷だ。俺の記憶が飛んでる(というか死んでた)間に何が起きたのか知らないが、随分と大変な思いをしたんだろうな。他の面々も古傷だらけだ。
で、クラスメイトの変化を眺めるのもいいが、今は状況把握の方が優先だ。
薄暗い闇の中、月明かりだけを頼りに周囲を見渡す。視線の先はまさにカオスといった状況だ。
厳重に捕獲されてるおっさん(推定:マスター)。
ヒーロースーツを着た、大人なA組。
急に召喚されたオレ。
…状況はよくわからんが、兄貴っぽい行動その7「信頼してた兄貴が闇堕ち!?」のチャンスじゃないか?!?俺の推測が正しければ、目の前に転げてるおっさん(推定:マスター)と緑谷たちは絶対お仲間じゃないよな。敵対してるよな?
ということは俺は緑谷たちを倒すために土壇場で召喚されたってことだろ。
オール・フォー・ワンぶち殺して満足したところで記憶途切れてるけど、俺はおそらくあの時に死んだはずだ。それは間違いない。
で、何年たったかは知らないがこのおっさんが何らかの手段を使って俺を召喚。
A組は混乱の最中。俺も大混乱。
かつて味方のために死んでしまった兄貴分。
あの時の自分に力があったのなら。後悔を抱える主人公。
そんなある日、敵側にかつて死んだはずの彼の姿!戦いたくはないのに、そうは相手が許さない!闇落ちした兄貴分!
「目を覚ましてくれ○○!」
死力を尽くす主人公!!やられるその瞬間、正気を取り戻し微笑む兄貴!
「…ありがとう主人公…頑張れよ!」
光となって消えてゆく兄貴
涙で見送りながら、主人公はまた一歩前に進むのであった
…これだっ!!!(確信)
素晴らしい、想像しただけで胸が熱くなる。
ここまでの思考約2秒。
黙り込んだまま周囲を見渡していた俺に何を思ったのか、涙ぐんだ緑谷が、一歩、また一歩と近づいてくる。
その歩みを制するように。
スッと槍の穂先をその歩みの延長線上──緑谷と俺との間に構えた。
「あー…わりぃが坊主、多分人違いだ」
「なっ…!」
明らかに敵対を示す行動に、ぽかんと呆けていた面々の顔つきが鋭くなる。いいねぇ、プロヒーローらしい警戒心じゃないの。みんなの成長を感じるな。ただ、目の前の緑谷はショックを受けた表情で固まっている。敵の前で固まるのはよくないんじゃないか──そう思って、何か声をかけてやるかと口を開きかけた瞬間。直感的に横に飛びのいた。
「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇぞ槍バカ野郎!取り敢えず一発殴らせろ!!」
「!!かっちゃん、だめだ──」
俺が飛びのいたコンマ数秒後。爆発音と共に爆豪が殴りかかってくる。相変わらず手の早いやつだ。
「おいマスター!コイツらは敵か!?」
「…そうだ!全部敵だ!俺様の崇高な使命を邪魔する害虫共だ!!ふ、ふふ。まさか、サーヴァントの召喚に成功するとは思わなかった!神は俺様を見捨てていない!!」
「了解。だが…ちと相手が多すぎる。一旦撤退だ!」
昔よりもはるかにキレを増した攻撃をギリギリで避けながら、召喚者の元までバックステップで辿り着く。ぐるぐると巻かれた拘束を槍で切り裂いてやりながら、撤退の糸口を探す。
主人公とやり合うにしても他のメンツが多すぎる!また一対一とかに仕切りなおそう!!な!!!(必死)
一旦場を整えたい!
「撤退!?何をバカな!貴様はサーヴァントだろう!奴らを皆殺しにしろランサー!!」
「は!?」
「〜このおっさん!空風に偉そうに命令してんじゃねぇぞ!」
「そうだぞ!なんだサーヴァントって!!」
「空風さん!私たちのこと分かりませんか!」
「んー…あんたみてぇないい女、一度見たらそう忘れねぇハズだがなぁ。さっぱりだ。けど、そんな怖い顔するもんじゃねぇぜ。美人には笑顔が似合う、ってな!」
「~ッ!変わってないなぁ空風お前!」
「なんで俺らのこと分かんねぇんだよっ!!!」
悲痛な叫び。なんかすごい悪いことしてる気分だ。なんでこいつらこんなに泣きそうなわけ?俺まだ闇落ちムーヴあんましてねぇんだけどなぁ。
兎にも角にも捕まえろ!とばかりに猛攻をしかけてくるクラスメイトからおっさんを抱えて逃げる。
「マスター!交戦は無理だ、撤退する!」
「馬鹿を言うなランサー!何のために召喚したと思ってるこの役立たず!!!!」
荷物のように脇に抱えていたおっさんがボコスカ殴ってくる。別に痛かないが、それを見た級友どもがえらく殺気立っている。
「一先ず説得はあきらめよう緑谷くん!まずは身柄を確保せねば!」
「そうだね飯田君。ごめん、空風くん、あとでゆっくり話をしよう!」
「要は一発ぶんなぐって思い出させてやりゃあ良いって話だろう、がっ!」
「飛び出すな爆豪!!」
《/big》
あ、そんなにガチで逃がす気ない感じ!!?
このおっさん、どんな重大な犯罪起こしたヴィランなんだか。でも召喚された以上、マスターは守るべきだよなあ。どこまで俺の理想通りに事が運ぶか分らんが、いっちょ頑張りますか、っと!
◇SIDE:緑谷
「もう諦めてよ空風くん!ボロボロじゃないか!!」
「気を使ってくれんならよ、そろそろ逃がしちゃくれねぇか、よっ!」
空風くんを除く元A組、総勢20名。全員から狙われているのに、未だに彼は動きを止めない。
かつて、高校1年生だった頃の僕は、空風くんのことを漠然と、強いんだなと思ってた。
相澤先生や他の先生もプロヒーローに劣らない、といっていたから、レベルが違うということも理解していた。
でも、こうして僕らもプロヒーローになった今ならわかる。
彼の強さはプロヒーローから見てもずば抜けている。
でなければこれだけのプロヒーロー、しかも第一線で働くトップヒーロー相手に、戦えない人を守りながら、こんなに長い時間。耐えられるわけがない。
氷を粉砕し。爆風を切り裂き。仕掛けられた罠のことごとくをかわす。
電撃すら切り裂く神速の槍と、常人離れした身体能力が、槍一本で戦うシンプルな彼の戦法を難攻不落の要塞に仕立て上げている。
強い。
その強さに驚嘆すると同時に、当時まだ高校1年生だった彼がそこに至るまでの経緯に思いをはせてしまう。
空風くん。君はどんな気持ちで、たった独り、その強さに上り詰めたんだろうね。
君と話したいことがいっぱいあるんだ。
だから。
「全力で!君を止めて見せる!!」
「…はっ!威勢のいい男は好きだぜ俺ァ!」
『いい啖呵だ坊主!威勢がいい奴は好きだぜ俺ァ』
あぁ、本当に君は変わらない。
「いいだろう、一対一でやろうや坊主。負けたならおとなしく膝をついてやってもいい」
「何をばかげたことを言っているランサー!こいつらを皆殺しにしろと言っているだろ!マスターの言うことが聞けないのか!」
「悪ィがマスター、俺の信条は正々堂々なんでな。戦いのやり方は俺が決めさせてもらおう。一対一の勝負で敗れたのなら、その命、失うのに異論はないだろうな、坊主」
「…うん、いいよ。やろう、正面から」
「いい面構えだ。マスターの命令がなければ、是非オトモダチにでもなりたいところだったな」
「そうだね。覚えてなくても関係ない。また一から仲よくしよう、空風くん!」
サポートアイテムを展開する。
絶対に負けられない。まだ胸の奥でくすぶっていた残り火に、火が宿るのを感じた。
「君を止める!」
◆SIDE:オリ主
「…ははっ、強く、なったな、緑谷」
「空風くん、記憶が!」
「あぁ。…頑張ったんだなぁ、お前」
「~~~~~っ!!!」
地面に膝をつき、傷だらけの主人公の顔を指でなぞりながらの一言。
…かんっっっっぺきすぎる…(自画自賛)
いやあ、ここまで持ってくるの大変だった!
なんかA組のみんなも「絶対逃がさん!」的な感じで全員で来るからさ、そこを凌ぐのがまず大変だっただろ?
そこからいかに兄貴っぽさを保ったまま、一騎討ちに持っていくかにも神経使ってさ。なんか個性もうないらしい緑谷との戦いでどうやってギリギリの戦いを演じて負けるかも難しかったな。最終的に一瞬だけOFAが復活したっぽくて負けたけど。
今回も非常に素晴らしいイベントだった。このまま光の粒になって、微笑みながら感動的に消えられたらHAPPY END!って感じなんだが、一向に消える気配がない。
周りのA組もよかったなあ、って涙ぐんでる。
ちょっと、まだ早いぞ泣くの。俺が消えるときまでとっといてくれ。んでいつ消えんの。
…あ!!そうか、まだマスターの小物ムーヴが入ってないから消えないのかな!?
かっこよく言えば勘が働いて、現実的に言うなら展開のメタ読みに従って、バッ、っと視線を横に向ける。
小さくぶつぶつと「俺様のサーヴァントが負けるなんてありえない!」とか呟いているおっさんが、ブーツに隠していたらしい銃を取り出し、構える。ほらな。絶対そういうことすると思った!
「緑谷!危ない!」
「えっ」
ターン、と。乾いた銃声音があたりに響く。
主人公を庇って背中に被弾した。いってぇ。
「ぐぅっ!」
「なっ、何故お前は俺様の邪魔ばかりするランサー!」
「空風くん!」
「この野郎てめえ!!
」
様子を見ていた切島があっという間におっさんを組み敷いている。先に捕まえとけよとは思うけど、まあ余計な口は出すまい。…背中いってぇ。
「みっともねぇ真似すんじゃねぇよマスター。もう勝負はついた。負けたんだ、俺たちはよ」
「何を、何を言っているのだキサマ!この役立たずめ!お前さえ、お前さえこいつらを殺していれば…!」
取り押さえられたままジタバタ暴れるおっさん。うーん、素晴らしい小物ムーヴ。雇い主に恵まれない感じも兄貴ポイント高いから、俺的には嫌いじゃねえぜ。
「そうだ、あの占い師が言ってた模様…!俺様の手にもある!!」
突然なんかほざき始めたなあいつ。…ってまさか、あの手の模様。令呪なんじゃ────
「令呪を持って命ずる!ここにいる奴を皆殺しにしろランサー!」
「~っ!今すぐ俺から離れろ緑谷ァ!」
グワー!
マジもんの令呪かよ体が勝手に動くー!!!
勘弁してくれよ!!必死に槍を持つ手を押さえてるけど、封印されし右腕を押さえる中学生みてえなポーズになっちまってるだろうが!!
カタカタと手が震える。骨を砕く勢いで握りしめていないと、今にも自分の意思に反して動き出しそうだ。力むと同時に、背中からはボタボタと大粒の血液が滴り落ちる。
「空風くんどうしたの!」
「おいテメェ、槍バカ野郎になにしやがった!!」
「は、ははは!この令呪をもって命令されたことにサーヴァントは逆らうことが出来ない!絶対行使される命令権!!ははは、こいつら知り合いなんだろうランサー!お前の手で殺し尽くせよ!!!」
「っち、このクズが!!」
右腕がミシミシと軋んで、額からは脂汗が滴り落ちた。
──いやこれキッツ!?シンプルに拷問なんだが!?!?
さっき撃たれた背中から血めっちゃ出てるし!!!
「に、げろお前ら…!殺したく、ないっ!」
「だれがお前なんぞにやられるかよダァホ!」
「空風くん、傷が!」
「俺のことは、いいからっ!離れろっ!」
「嫌だ!もう二度と、君を失いたくないっ!」
いやほんと離れてェ!?(切実)
もう腕抑え込むの限界だって!なんかサーヴァントっていう体で来てるからか、昔より俺強いからね!?言っとくけど!!頸動脈とか狙えば皆殺し不可能ではないからね!?勘弁してくれよほんとに!!
「お願いだ、緑谷っ!俺を、殺してくれ!」
「なっ、出来るわけないじゃないか!」
「お前にしか頼めない!」
やめてー!これまで築き上げた完ぺきな兄貴ロールを崩したくなーい!!主人公サイド皆殺しはもう兄貴じゃなくてラスボスの所業だろうがー!!
俺の叫びに悲痛に緑谷が顔をゆがめる。口がはくり、と開いて、閉じる。おそらく見ているのは、俺が自身の右腕を血が出るほどに抑え込む姿。そうだろう、可哀そうだろう。早く楽にして挙げた方がいいと思わないか?
「そんな、だってもう二度と会えないと思った君に会えたのに…」
「俺は、もともと死人だ。ここに、いちゃいけない」
あの完ぺきなエンドロールを台無しにしないでくれー!
「在るべき形に、もどるだけだ」
ここで渾身のスマイル…!どうですか、早く殺したいなっていう気持ちになりませんか。どうですか。つらい…いたい…。
「……」
葛藤が長くないか緑谷!!!もう限界来てますけど!ゲイボルク放ちかけてますけど!
「そこまでです!別動隊から貴方のラボはすべて抑え、研究成果も破棄したと連絡がありましたわ!」
「は、な、んだと。俺様の偉大な研究がすべて消えただと…!?
そんな馬鹿な…!」
「この場を凌いでももう無駄ですわ!はやく空風さんにかけた命令を解きなさい」
「はは、なくなった。俺様の人生が。ははは、もうおしまいだ」
その声が響いたのは突然のことだった。通信機器を片手にかけてきた、八百万がこちらを鋭い目で見ている。
えっ、なんかいい感じに解決する!?何でもいいけど早くしてくんねえかな!!!ゲイ・ボルクのゲのあたりまでは来てるからね今。やばいとこいるから。
「…いいだろう。第2の令呪をもって命ずる。先ほどの命令をなかったことにしろ、ランサー」
「ぐぅ…っ、はァ…はぁ…。仰せの通りに、マスター」
「空風くん!…よかったっ!」
とけたああああ!!マジできつかった!!兄貴ロールとか抜け落ちるくらいきつかった!!令呪ってあんなに強制力やばいのな。一分もよく耐えたよ俺。
「ようやく観念したか。さ、この男を連行しよう。空風くんの傷の手当ても急がなければ!」
「ははは、おしまい。おしまいだ。…お前のせいで、全部おしまいだランサー」
「責任転嫁も甚だしいぞ貴様!」
「委員長!いいから早く連れていって!」
「ム、ボクはもう委員長ではないのだが…了解した」
事件は解決ムード。ようやくめでたしめでたしって感じか。長い戦いだった。…で、俺はいつ消えんの?消えないの?気まずいからできれば綺麗な光の粒になっていい感じに退場したいんだが…。
「最後の令呪を持って命ずる…」
「!!ソイツの口ふさげ!」
「自害しろランサー!!」
え、そうくる?俺にとっちゃありがたいけどさ。
今回の令呪には特にあらがう理由がないので、素直に槍を召喚する。くるり、と穂先を翻し、自身の心臓へ。
自害しろランサーを生で聞ける日が来るとはね。
まあ、いい延長戦だった。今日の俺も最高に兄貴を遂行してたし大満足!それでは元気でやってくれA組諸君!
◇SIDE:相澤
人生で、これほどまでに間に合ってよかったと思ったことがあっただろうか。
「先生ェ〜〜!!!!」
「よがっだっっ!!」
「ありがとうザワ先〜〜っ!!」
ぴいぴいと元教え子たちが泣いている。情けない声を出すなと言いたいところだが、今ばかりは気持ちがわかる。
緊張からぜーはーと大きく肩で息をする俺を気遣ってか、麗日がそっと背中をさすってきた。ありがとね。
「これは、どういう状況だ」
至急応援にきてほしい。葉隠からの連絡に、即座に準備してここまで駆けつけた。大きな戦闘音がしないことを疑問に思いながら現場に到着した瞬間、目にしたのはかつて死んだはずの教え子が、自分の心臓に向かって槍を振り下ろす姿。
一瞬で全身の血液が足に下がる感覚を味わいながらも、長年ヒーローとしてやってきた勘は働いてくれた。
元凶らしき男に対して個性を発動すれば、ぴたりと空風の手は止まり、周囲に安堵の声が漏れた。
「空風…本物か?」
「…あんたも老けたなぁ、相澤センセイ!深みが増していい男になってるぜ!」
「本物だな」
取り敢えず、諸々の不満を込めて頭をはたいておく。アイテッ、と呻いた男は、正真正銘、死んだ教え子らしい。
全身どこもボロボロだ。背中に銃痕、出血多量。
「救急車は」
「もう呼んでます!」
「ヴィランは」
「そこに捕らえている一名だけです!」
「空風は何故ここに」
「ヴィランの個性です!」
「背中の傷、何分経過」
「38口径の銃で撃たれ、4分経過です!」
とりあえず、ヒーローとしてやるべきことをしておこう。優秀な教え子共は打てば響くように返事を返してくる。素早く止血しつつ、ヴィランの方を確認する。
この男の個性で、空風が蘇った、のか?詳しいことが全然分からない。だが、痛い痛いと呻きながら手当を受ける様子は、本物に見える。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。これで空風が命を落とすことはないだろう。
あまりの混乱に凍っていた感情が、ゆるゆると動き出す。
「ん?俺の顔に何かついてるか?」
マジマジと顔を見つめていると、不思議そうに首を傾げられた。その顔と、あの日。テレビの画面の向こう側で。真っ赤な血に塗れながら満足げに死んでいったあの瞬間が、重なる。
背中の傷に触れないように、とは思いつつも、衝動的に目の前の生徒を力強く抱き締めた。
「えっ、相澤先生、どうしたんだよ」
「…バカが。二度と命を粗末にするな」
「粗末にしてたか?」
「自覚ないのか、アレはもはや自殺だろうがドアホ。全国民のトラウマだ」
」
「えぇ…俺なりに誓いを果たそうとだな…」
「何が誓いだ。オールマイトに責任押し付けるような真似しやがって。お前が死んでからどれほどあの人が悲しんだと思ってる」
「え、…そんな悲しんでた?」
「そこで嬉しそうな顔をするなバカが!お前は本当に俺の授業の何を聞いていたんだ!除籍してやろうか!」
「いやいや俺もう死んだんだから除籍されてるでしょうが」
「今でも学籍は残してるに決まってるだろバカ」
「は?!なんで!?てか先生バカバカ言いすぎだろ!」
「事実だこのクソバカ」
「悪化した!」
あの日に学校にコイツが帰ってきたらしたかった説教が、ようやくできた気がした。
[新しい生活]
◆SIDE:オリ主
「えぇっ、雄英にもう一回通え!?」
「…今のところお前の戸籍は死亡のままだ。手続きは進めてもらってるが、時間がかかるらしい。公安が引き取るとかほざいてたが知ったことか。こちらで引き取る」
「元雇い主のとこでもいいけどなァ。死人は便利に使ってなんぼだぜ、先生」
「お前は、今、生きているだろうが。空風」
「マスターの個性で疑似的に召喚されただけの、幻影みたいなもんだろ」
「…いや、その点についてはこちらでも調査を進めているが、お前は恐らく例外だ。ヤツが召喚したほかの兵士は一定のダメージを負うと消滅したのに対し、お前は消えていない。耳郎からは、ヴィランが召喚の際におかしな呪文を呟いていたとも聞いている。お前自身の個性もまだ不明なことが多かったんだ、そのあたりが何か関係してるのかもしれん」
「はぁ、なるほど。つってもなぁ…」
えぇ~?ヒロアカの本編はすでに終わってる世界に俺の居場所とかある?
だってもう主人公すごい成長してたし。なんなら先生とかしてたし。
派手に退場した兄貴っぽいキャラが、今更なにをしろと…。
内心困惑していたら、相澤先生が重苦しくため息を履いた。
「お前はいろいろと考えすぎだ空風。今はとにかく体を治せ。お前とゆっくり話したいやつも、大勢いる」
タイミングよく、というか、なんというか。
相澤先生がそう言った瞬間、ガラララ!と大きな音を立てて病室の扉が開かれた。
「空風少年!」
「ぅおっ!?」
勢いよく扉を開いたのは私服姿の…誰だ?
金髪の、やせ細った男。勢いよく入ってきた割に、俺のことを見つけたとたん、固まって動かない。
「…オールマイト。中に入ったらいかがですか」
「えっ」
オールマイト…えっオールマイト…!?!?
「オールマイト!!?どうしちまったんだその体!!!?大丈夫かよ!?」
なんでそんなにやせ細ってる!?あんなにムキムキだったのに!
寝てる場合じゃねえ、とばかりに布団を跳ね除け、ベッドから飛び出す。
が、ここ2,3日寝たきりだったから足が弱ってたらしい。
オールマイトのところにたどり着く前に、足がもつれた。
「~っ!危ない!」
せっ、セーフ…。入り口で固まっていたはずのオールマイトが、流石の反射神経で駆け寄って受け止めてくれた。体は細くなっちまったけど、意外と力はしっかりしてんのな。
「悪ィ、オールマイト。ありがとな」
「……」
「ん?先生?」
「……」
「おーい」
「……」
受け止めてくれた姿勢から、そのまま静かに、力強く抱きしめられる。オールマイトは何も言わないまま、小さくその肩を震わせていた。
え、泣いてね?これ。
困り果てて相澤先生に助けを求めるが、しょうがないとばかりに首を横に振って病室を出て行ってしまった。ふつうこの状況で置いていくか?先生の薄情者め。
「なァ、オールマイト。どうしちまったんだよ」
「…っ」
「はぁ…」
仕方ないので時間に解決してもらおう、とベッドに座り込んだ。俺を抱きしめていたオールマイトは中腰になりながらも手をはなさない。腰痛めそう。
とりとめのないことを考えながら視線を空にやっていると、ぽつり。小さな声でオールマイトが呟いた。
「すまなかった、空風少年…」
「何を謝られているのかさっぱりなんだがオールマイト。俺は別にあんたに謝られるようなことはしてないぜ」
「私は、君を守れなかった。守るべき君に庇われて、この日までのうのうと生き延びてしまったっ…!」
「…そりゃないぜオールマイト。俺は、俺の信念に従って行動した。そこにあんたが謝るべき筋合いなんてねぇはずだろ」
「あの時の君はまだ16歳だった!まだ未来のある!…ただの16歳の少年だったはずなんだ!」
うわうわ、オールマイト大号泣だわ。確かに根っからのヒーローなこの人の目の前で死んだのは良くなかったかもしれない。何にでも責任感じちまうんだろうなぁ。平和の象徴ってやつは、大変な肩書だ。
俺は俺のやりたいようにして死んでいったのに、こんなにオールマイトの心を痛ませてるとは思いもしなかったなァ。どうしたもんか。
「俺は、俺の役割(理想の兄貴ロールプレイ)を果たしただけだ。年齢なんて関係ねェよ。それができる力があった、それだけの話だ」
そう、俺には優秀なクー・フーリン肉体スペックがついてたからな!主人公サイドのために活躍して華々しく散るのが既定路線だったのさ!オールマイトが罪悪感を持つ必要なんて全くない。伝われ!この想い!
◇SIDE:オールマイト
「俺は俺の役割を果たしただけだ」
君は。自分の命を懸けてAFOを倒すことが自分の役割だと思って生きてきたのか。たった、そんなことだけが。
「年齢なんて関係ねェよ。それができる力があった、それだけの話だ」
両親を亡くした時、きみはまだ10歳だったんだ。そこからどんな想いでその強さを手に入れたんだ。
…あぁ、君は少しも変わらないな。空風少年。
槍のように鋭く、真っ直ぐな信念をもっている。その熱量を、ただ復讐に突き進むだけに使ってしまった。使わせてしまったんだ、当時の我々が。
「…少し、提案があるんだが」
「ん?」
だから、この奇跡の時間を逃してはいけない。どういう経緯であれ、君は再び私たちの前に現れてくれたのだから。
今度こそ、幸せにしてみせる。
「私の息子にならないか」
まずは、第一歩を。
[以下ダイジェスト]
【息子にしたいオールマイトとの攻防】
「だーっ!だから俺はもう死人だって言ってんだろ!!あんたの息子になんかふさわしくない!」
「なぜそんなことを言う空風少年!苗字が変わるのが嫌なら、そのままでもいいから、まずは一緒に暮らそう!」
「俺は!お空に!帰りたいんです!」
「Damn it!許さないぞ少年!私と一緒に来たまえ!君は誰より幸せになるべきだ!」
【こっそり仕事をしようとするオリ主とA組の攻防】
「…!空風くんがまた部屋から脱走してる!」
「あの槍バカ野郎またかよ!」
「安静にしてろって言ってんのに!!」
「常闇くん、ホークスに連絡を!」
「もうしてる。公安には顔を見せていないそうだ」
「だーっ!今度はどこに行ったんだよあの風来坊!」
「デクくん!町でヴィランが暴れてるって!」
「…!分かった、すぐ行こう!」
「いやでも突然現れた槍使いが秒で解決していったらしいよ!」
「空風くん!!!!!!もう!!!!!」
【食事しようとしないオリ主とランチラッシュの攻防】
「食べなさい」
「…何回も言うけどさァ。俺の体はサーヴァントって言って、食事とか睡眠は必要ねェんだわ先生」
「食べられないわけじゃないんでしょう。栄養補給としての食事が必要なくても、心は必要としているはずだよ」
「いや別に…」
「食べなさい」
「ほんとに俺が食うだけ勿体ねぇからさァ…」
「食べろ」
「うわ、口に押し込まないでくれよ先生!!!」
【再会。叱咤】
「そこにいるのミルコか!?久しぶりだなァ師匠ゴバハアッ!?!?」
「このバカ弟子。なぜすぐに顔を見せに来ない」
「ずびばぜん゛…」
「お前、10年前のあの体たらくは何だ。心臓貫かれて起き上がるガッツはいいが、敵仕留めて満足してんじゃねえぞ」
「いや、無茶言うなよ」
「お前がやつを仕留めそこなっていたならあたしが殺りにいくとこだったぜ」
「はは。やっぱ気が強くていい女だなァ、あんた」
【透明化!おそろい!】
「よォ!そこに浮かぶ服は葉隠じゃねえか。久しぶり!」
「…!どこからか空風くんの声が!」
「おっと悪ィ。透明になったままだったわ」
「ええっ!空風くんも透明になれたの!?」
「前は無理だったけどな。召喚されてからはサーヴァントつって…まあ最近できるようになったんだ」
「そうなんだ!すごーい!お揃いだね!」
「はっはっは!そうだな、お揃いだな!」
「空風くんは透明になってどこに行くところだったの?」
「あっ、そうだったやべっ」
「おいゴラ槍バカ野郎ォ!!定期検査だつってんだろうが!どこ行きやがった!」
「じゃあな葉隠!」
「あぁ行っちゃった…」
ちなみにpixivの方では「一話で主人公死んでるのに続きがあるの何事かと思いました」とのコメント頂きました。