クー・フーリンのスペックで転生した僕がヒロアカ世界で理想の兄貴になる話   作:佐久間2525

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・今回は続きではなく、書きたいものを色々つめこんだ番外編です
・時系列バラバラ
・別に飛ばしても本編は読める
・作者の趣味詰め込みなので多分苦手な人は苦手


1 オリ主の過去話 
雄英に入学するまでの経緯
ちょい長い
うじうじしてるので苦手な人は飛ばすのが吉

2 オリ主が個性事故で子供になって雄英に 
1で書いたいじめられっこ時代のオリ主が、雄英でわちゃわちゃするお話
時期はUSJ襲撃後くらい
短め

3 IFオリ主が生まれたのがオールマイトよりちょっと年上の世代だったら  
まだ平和の象徴が生まれる前の日本に生まれたオリ主とオールマイトの関わり
捏造過多
短め



番外編① 空風凛オリジン など

 

 

[空風凛 オリジン]

 

◆SIDE:オリ主

 

前世で死んだときの記憶は、ほとんどない。それどころか自分がどんな人生を送っていたのかの詳細すら覚えていない。両親はこんな人だったかな、弟がいたな。そんな朧げな記憶だけが微かにあった。ただ、アニメや漫画が好きな一般的な社会人だった…ような気はする。

中途半端にそんな状態で、自我だけを持って生まれなおしたものだから、幼少期の()はそれはそれは面倒な子供だった。

 

母乳を拒否してみたり、おむつ交換をやたら嫌がったり。赤子らしい可愛げなど微塵もなく、ただ理解できない現状に戸惑うばかりの日々。この時点ではまだヒロアカの世界に転生したとも思っていないし、自分がクー・フーリンの成り代わりだということも気づいていなかった。カラフルな髪の人も多かったし、自分の髪が鮮やかなブルーでも違和感がなかったのだ。

 

「凜はどんな個性が出るのかな~楽しみだね」

「そうね、どっちに似るかしら」

 

そんな両親の会話の意味も、理解したのは随分と後のこと。

 

・・・・・・・

 

「こっち来んなよ疫病神!」

「空風に近寄ると不幸がうつる!」

 

小学生というのは素直な生き物だ。

 

「容赦ないなぁ」

 

教室にポツンと一人取り残されながら、小さくため息が漏れた。落書きまみれの机にそっと手をかけて、雑巾で擦る。鉛筆の跡が黒く伸びていった。

僕が転生したこの世界は個性という超能力じみた力が一般化した世界らしい。人口のおおよそ八割は個性を有し、ヒーローという存在が大々的に民衆の支持を得ている。

 

個性は多くの人が四歳ごろまでに発現させる、()()()。何故こんなに曖昧な言い方をするかというと、僕の個性はまだ良く分かっていないからだ。

 

幼稚園に通い始めたころから、身の回りで不思議なことが起きた。

楽しみにしていた遠足が雨で中止。散歩していたら鳥の糞が目の前に落ちた。送迎バスが他の車と事故。

 

日常のちょっとした不幸なできごと。よくあることだ。けれどそれも、回数が重なると疑念を呼ぶ。

不思議と僕の周りでよく起きたそれらは、いつしか個性由来のものではないかと言われ始めた。

「おたくの息子さんの個性が『不幸』なんじゃないですか?」「うちの子に近寄らせないでください」同級生の保護者からかけられる言葉に、母も随分悩んでいた。

 

両親は病院に連れて行ってくれたけど、不運な瞬間に個性因子が活発になってる様子が見られないから、おそらく違うでしょうって言われて終わり。人より力が強かったり、足が速かったり、ドッジボールが僕にだけ当たらなかったり。色々他人とは違うところはあったんだけど、結局何が個性なのかはその時には分からなかった。

 

「僕の個性が、本当に人を不幸にしちゃうんだったらどうしよう」

「凜ちゃん…。大丈夫。お医者さんも違うって言ってたし、それにどんな個性だったとしてもママは凜ちゃんのことが大好きよ」

「パパだって凜のこと大好きだぞー!」

 

両親はいい人だった。

 

「凜ちゃん、学校いくのツラい?」

「ううん、楽しいよ」

「そう…」

 

あやふやな前世の記憶なんていうものを持っていても、小学校でうまく過ごすことすら出来ない。何かと迷惑をかけてばかりの僕を、それでも全身全霊で愛してくれた。

 

「原因不明ですね…漏電でしょうか」

 

「家燃えちゃったの、僕のせいかな…」

「そんな筈ないわ!きっとママがうっかりコンロの火をつけっぱなしにしてたのよ」

「もう、ママったらうっかりさんだな!でも近々引っ越そうと思ってたし、いい機会だね!」

「そうね!凜ちゃん、ママとパパで話してたんだけどね、町はずれの方に引っ越しましょう?」

「凜は優しいからな、もっと自然が多くて人が少ないところの方が、のびのび過ごせると思うんだ」

 

ほんとうに、いい父と母だった。僕なんかには勿体なさすぎるくらいに。

 

 

・・・・・・・・

 

「クー・フーリンじゃん」

 

十歳の誕生日に、ようやく僕は気が付いた。鏡に映る自分の姿は、Fateに出てくるランサーの幼少期にそっくりであると。何気なしに、手をかざす。すると、手の中にまるで吸い付くように馴染んだ赤い槍が出現した。

 

「え、個性これ…?じゃあ今までのナニ…」

 

初めて持ったのにも関わらず、まるで手足のように扱える槍。確かにFateのクー・フーリンといえばこのイメージだ。軽く数度、室内のものを壊さないように振り回す。

 

「凜ちゃんごはんできたよー、今日はケーキを作っちゃいましたー!…ってどうしたのそれ!?」

「えと、なんか出せちゃった」

「すごい、個性がついに出たのね!武器を作れるなんてカッコいいわ!」

 

きゃあきゃあと母が騒ぐが、咎めるような隣人はこのあたりにはいない。家が全焼してから、町はずれの人気がない場所に引っ越したからだ。前の家に比べると、綺麗な家ではなかった。一見ボロ屋に見えるかもしれない。それでも両親が僕のためを思って見つけてくれた場所だ。いじめてくる同級生も近くにはいない。幸せな日々。

 

「凜ちゃんも もう十歳になるのね。時が流れるのって早いわ」

「そうだね、あっという間に大人になってしまいそうだ」

「ねね、凜ちゃんは将来なにになりたい?」

「うーん、将来かぁ」

「凜ならヒーローになれるんじゃないか!運動できるし、頭もいい」

 

ヒーローか。折角、ヒロアカの世界に生まれたのならなるべきだろうか。それにしては僕の体質がネックになる。自分が不運になるだけならまだいいけど、周囲も巻き込むなんてヒーローとしては失格もいいところだ。

 

そこまで考えて、ふと思い至る。もしかして今までの不運って『幸運E』の影響ではないだろうか。いやでもアニキの幸運Eってそういう意味ではなかったと思うんだけど…まあ個性因子とかと何か変な作用を起こしてそういうことになったのかもしれない。

 

「いや、僕は」

 

ヒーローになんてなれないよ。

そう言外に滲ませた言葉を感じたのだろう両親は、ただ柔らかく笑って抱きしめてくれた。

 

「なりたい自分になればいいわ」

「好きに生きなさい。パパもママも君の味方だから」

 

それが、二人の体温を感じた、最後の記憶。

 

 

・・・・・・

 

 

「おや。こんなボロ屋に人がいるとは」

 

突然のことだった。

屋根と壁とが轟音と共に吹き飛ぶ。

 

どこからともなく表れた血塗れの男は、瓦礫の上に立ちながらこちらを冷たく見下ろした。人を人と思わぬ、無機質な目だ。

 

「子どもがいるな。人質に丁度いい」

~ッ!凛、逃げてっ──

「大人は、嵩張るから邪魔だな」

 

一瞬の出来事だった。(子ども)に手を伸ばそうとする敵の手を、遮るように両親が前に出て。次の瞬間には、両親()()()()() があたり一面に散らばった。

 

「とう、さん…?かあさん…??」

 

みっともなく、声が震える。

 

「オールマイト…あの化け物め。あれだけのヴィランを差し向けて何故5秒ともたないんだ。まぁいい。人質がいればまた何秒かは稼げるだろう」

 

目の前で起きたことが信じられず、呆然と座り込む。何が起きた?

さっきまで、誕生日パーティーをしてただけじゃないか。あんなに楽しそうに笑ってたのに。

 

何もわからない。

 

コツコツと足音を立てて男が近寄ってくる。両親の体からあふれ出た血液が血だまりになっていて、ぴちゃぴちゃと水音を立てていた。

所々原型が残っていた母さんの手足を、男がつま先で邪魔そうに避けた瞬間──ようやく再起動する思考。

 

「…けろ」

「ん?何か言ったかい」

「母さんからその薄汚い足をどけろって言ってるんだクソ野郎!!!」

 

まるで無意識のうちに、手の中には赤い槍が収まっていた。衝動のままに目の前の男に斬りかかる。まだ頭の中は疑問符でいっぱいだ。この男がだれなのかも、何のために両親を殺したのかもわからない。

 

ただ確かなのは──この男は両親の仇で、倒すべき敵ということ。

 

「武器を召喚する個性か。あまり珍しくはないな」

「殺す!絶対にお前だけは!」

「ははは、いい殺意だ。将来は僕たち(ヴィラン)の仲間入りかな?」

 

なにが愉しいのか、酷薄な笑みを浮かべて、男は首をかしげる。まるで自分の体とは思えぬほどの速度で槍を繰り出しているのに、黒く鋭利な触手のような物で全てはじかれた。

 

「その歳にしては良い動きだが、所詮は子ども」

「ぐッ…!!」

「足の一本でももぎ取ってオールマイトへの手土産にするとしよう」

 

全く歯が立たない。両親の仇が目の前にいるのに。こちらがどんどん傷が増えていくのに、男には汚れの一つ増えやしない。

 

ああ、悔しい。

 

このまま何もできずに死んでいくのか。

 

目の前で振りかぶられる男の手がスローモーションのように見えて、これまでの人生が走馬灯のように脳裏をよぎる。

 

両親に迷惑をかけてばかりの十年間だった。僕が生まれて二人は幸せになれたんだろうか。前世の記憶が朧げにあるからと、甘えるのも下手だった。何も知らないまっさらな子どもの方が、随分と可愛かっただろうに。

それでも愛してくれた両親に報いたいのに。

 

敵討ちの一つも満足にできない。

 

気づけば目の前に攻撃は迫っていて、迫りくる衝撃に目をつぶった──瞬間。

 

「もう大丈夫」

 

耳に飛び込む力強い声。

 

「わたしが来た!」

 

 

傷だらけのヒーローの背中が、途方もなく大きく見えた。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

気づけば病院のベッドの上だった。

医師や看護師が慌ただしくしているのが、ガラスの向こうの出来事のようだ。何もかもが夢のような、ふわふわとした感覚。全身から伝わる鈍い痛みだけが、ここが現実だと教えてくれていた。

 

「オールマイト!無茶です!まだ動けるような体では…!」

ゴフッ…すまない、少しだけ。少しだけだから…」

 

廊下が一層騒がしくなって、周りの医師も何やら焦っている。呆然とした心地のまま、ゆるりと視線をあげると、満身創痍の男と目が合った。あの時助けてくれたヒーローだ。

 

「君が、目を覚ましたと聞いて。いてもたってもいられず」

「オールマイト!貴方はまだ手術も終わったばっかりで…」

「少し話をさせてほしいんだ。頼むよ」

 

真剣な声に、周囲の医師も仕方なさげに口をとじる。

 

「少年、体調はどうかな」

「…大丈夫です。助けてくれてありがとうございました」

 

まだフワフワと現実感のない心地のまま、頷く。自分の方がよほど重症だろうに、助けた子どもの方が心配だったらしい。取り敢えず無難に礼を言うべきだろうと思って頭を下げると、彼は悲しそうに眉根を寄せた。

 

「すまない、わたしがヤツ(AFO)をもっと早く倒せていたら、君の両親は巻き込まれなかった」

 

今回のことは、全てわたしの責任だ。本当に申し訳ない。そう言って悲痛な様子で頭を下げるオールマイトに、背筋が凍った。

 

それは違う。あなたのせいじゃない。誰のせいかって言ったら一番悪いのはあのヴィランだ。

けど、原因がだれにあるかって言ったら──僕のせいじゃないだろうか。

僕らの家は()()()()()()()()ヒーローとヴィランの戦いに巻き込まれたのか?

子供の頃から散々、周囲に迷惑をかけてきた僕の体質(幸運E)が、今回のことに関係ないとどうして言い切れる?

 

「あなたのせいじゃない、本当に…違うんです」

 

僕は、どうしてこのヒーローに頭を下げさせてしまっているんだ?何もかも、僕が悪いのに。罪悪感で上手く息が出来ない。

 

だが少年…ッごふっ!

「これ以上は限界です、オールマイト!おい、すぐに輸血の用意を!」

 

小さく呟いた僕に、オールマイトは何かを言おうとしたけれど、口から血を吐いたため医師に制止されていた。

 

きみに…たよれる、ひとは、いるかい…!?

「この子の親戚の方には連絡がついてますから!」

「わたしの、連絡先だッ、なにかあれば…ごふっ、ごほっ

 

病室に連れ戻されながらメモ用紙が渡される。オールマイトはストレッチャーに乗せられて、大勢の医師と共に廊下へ消えていった。

 

 

 

携帯の番号が書かれた紙を、静かになった病室で静かに眺める。

 

先ほど直視したばかりの後悔が、ぐるぐると頭を回っていた。僕がこんな体質じゃなかったら。両親は死ななかったんじゃないか。

いっそ死んでしまいたいほどに気分は最悪なのに、二人に庇われた身で命を無駄にできるはずもない。

 

せめてもっと早くに、この体がクー・フーリンの成り代わりだって気づいて、体を鍛えていたら──

 

そこまで考えたところで、鏡の中の自分と目が合った。

 

『なりたい自分になればいいわ』

『好きに生きなさい。パパもママも君の味方だから』

 

脳裏に、両親の声がよぎる。

 

「兄貴、みたいだったら」

 

本物のクー・フーリンのように、強く在れたのなら。こんなことにはならなかった。けれど、今更時は戻らないし失った命も取り戻せない。なら、これからを考えなければ。

二人に助けられた命で、あのヒーローの献身に応えることができたのなら。その時に僕はようやく、両親の愛に報いられるんじゃないか?それだけが、僕が生かされた意味なんじゃないだろうか。

 

()は、理想の兄貴(クー・フーリン)になる」

 

 

これが俺のオリジン。今は忘れてしまった、きっかけの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[個性で小さくなっちゃった:十年前]

 

 

◇SIDE:緑谷

 

「ええっ!?空風くんが登校中に個性事故に巻き込まれた!?」

「大丈夫なんですか!?」

「お前たち、声が大きい」

 

相澤先生の声に教室はざわめいた。

まだUSJへの襲撃があって日も浅い。空風くんは特に重症(傷より熱の方がひどかったみたいだけど)だった筈で、今日が久しぶりに会う日だった。それが個性事故だなんて…!

 

「それで、空風くんは今どこに!」

「いるだろ、ここに」

 

飯田君の質問に、相澤先生は足元を指さした。ここ、って一体?みんなが疑問に首を傾げた瞬間、相澤先生の足から青い髪がひょこりと覗いた。

 

「えっ空風くん…!?ちっちゃ、可愛い~!!」

「その小っちゃいのが空風ェ!?」

 

まだ先生の腰に届くかどうか位の小さな影。それが緊張したような面持ちで相澤先生の足にしがみついている。女子がきゃー!と黄色い声を上げて、男子が驚きの声を上げる。肝心の本人は、大きな声に驚いたのか引っ込んでしまった。

 

「こら、空風。そんなにしがみ付いてたらみんなに見えないだろ」

「でも…」

「はァ…ほら」

 

そして相澤先生の声がすごく優しい。子供相手だとそんな感じなんですね、先生。

もじもじと動かない空風くんにも怒らず、しゃがみこんで抱き上げている。片腕で抱き上げられた小さな空風くんは強張った顔で教室を見渡していた。

 

「そらかぜりん、六歳です…」

「六歳!可愛いねぇ!」

「小学一年生かな!」

 

きゃあきゃあと女子に囲まれて頬っぺたをつつかれた空風くんは、ようやく緊張が解けて来たのかくすぐったそうに笑みをこぼし始めた。

 

「意外だな、空風って子どもの頃は割と引っ込み思案だったのな」

「なぁ。普段あんなに余裕綽々なのに」

「爆豪とかも案外昔はあんな感じだったりして!」

「んなワケねぇわ!」

「かっちゃんは昔からこんな感じだよ」

「こんな感じってンだよくそナード!!」

 

わいわい、がやがや。各々好き勝手にしゃべり始めた教室が騒がしくなる。それを視線だけで黙らせた相澤先生は、抱き上げていた空風くんを急に僕に渡してきた。

 

「空風は一人暮らしだからな、家に帰すわけにもいかん。授業には参加できんだろうが、安全な場所で見学させるように」

「いや、なんで僕!?」

「お前ら仲いいだろうが」

 

まぁクラスの中で一番よくしゃべっているのは僕だろうけど…!急に荷物のように受け渡された空風くんが泣きださないか心配で顔を覗き込むと、きょとん、とした顔で見つめ返された。

 

「えーと、こんにちは」

「…主人公?」

「えっ?」

「いや、えと、お名前を教えてください」

 

なにか小さな声で呟いたのが聞き取れなくて、聞き返す。空風くんはどこか慌てたように首を横に振って、名前を聞いてきた。

 

「僕は緑谷出久。未来の君のお友達だよ」

「ぼくにおともだち…?」

「はいはーい!ウチは麗日お茶子!」

「八百万百ですわ」

「俺、上鳴電気!俺ももちろんお友達だったぜ!」

「こんなに、いっぱい…!!」

「オイラ峰田実!お前は実はオイラの舎弟だったんだぜ…へぶぅ!?

「あそこの男の子は無視していいわ、ケロ」

 

「ふふ、あはははっ」

 

思わず漏れてしまったような笑い声に、教室に優しい空気が流れた。

それにしても、たった十年間で人間あんなに性格が変わるんだね。まるで別人みたいだ。

 

 

・・・・・

 

 

実技授業中。

僕の番の時は他のクラスメイトに見てもらってた空風くんを受け取る。まだ小学一年生なのに随分と落ち着いていて、こちらの言うことも全部聞いてくれる。いい子だったんだなぁ、空風くん。同じ頃の僕はもっと活発で動き回っていた気がする。

 

「いずくくん」

「ん?なぁに、空風くん」

「先生って個性が消せるの?」

 

「よく気が付いたね!!相澤先生の個性は『抹消』って言って、見ている間は相手の個性を消せるんだ!もちろん条件はいろいろあってね、異形型にはきかないとか。でも先生はコスチュームも個性に合わせて作っているから、不利な点もカバーしてるんだ!ランキングにこそ乗りにくいけど、アングラ系ヒーロー『イレイザーヘッド』として、唯一無二の活躍を──」

 

「緑谷ちゃん」

「ん?どうしたの、蛙吹さん」

「空風ちゃん、行っちゃったけどいいのかしら、ケロ」

「えっ、ほんとだいない!?いつの間に!?」

 

しまった!いつもの僕の悪い癖が!!

慌ててキョロキョロと周囲を見渡すと、蛙吹さんは、授業を監督している相澤先生の方を指さした。いつの間にか先生の足元に空風くんが移動している。

 

「今は先生忙しいから──」

「あの、僕の個性って消せますか」

「…あぁ?」

 

どこか不安そうな顔で見上げる空風くんに、相澤先生が訝し気に眉を挙げる。授業を一時中断させつつ、しゃがみこんで視線を合わせた。

 

「どうして個性を消してほしいの?」

「ぼくの個性…みんなを『不幸』にしちゃうから。いずくくん達が怪我したら嫌だし…」

「なに?」

 

どういうことだろう。彼の個性は武器召喚のはず。あの赤い槍をどこからともなく取り出して戦う姿を僕らは何度も見ている。あまりに不安げな様子に相澤先生は努めて柔らかい声を出そうとしている様子だった。

 

「先生たちは、空風の個性が人を不幸にするものじゃないって知ってる。みんなを守れる、強い個性だよ」

「えっ、僕の個性知ってるの?」

「…空風はまだ知らないのか?」

「うん」

 

六歳ともなれば、ほとんどの子どもは個性を発現させているはずだ。それをまだ知らないというのは中々に珍しい。個性の発現が遅かったのかもしれないが、それにしては「ひとを不幸にしてしまう」という発言が引っかかる。

みんな同じ疑問を抱えているのか首をかしげていると、空風くんの口から驚くべき過去が語られた。

 

昔から自分の周囲では不幸なことがよく起きる事。

まだ個性らしい個性が発覚していなかったため「不幸」を呼ぶことが個性じゃないかと言われていること。

病院の先生には否定されたけど、学校ではいじめられていること。

相澤先生に個性を消してもらえれば、両親にこれ以上迷惑をかけずに済むんじゃないかということ。

 

まだ六歳の子が語るにしてはあまりに悲痛な声色だった。

僕たちが友達だって知ってあんなに嬉しそうにしてたのは、小学校でいじめられていたからだろうか。

申し訳なさそうに体を縮めて服の裾を握り締めて俯く様子が、昔の僕に重なって見えた。

 

「…ごめんね。先生の力で個性を消せるのは、先生が瞬きせずにその人を見てる間だけなんだ。永遠に消せるわけじゃない」

「えっ…そうなんだ…」

「でもね、空風。さっきも言ったけどお前の個性は人を守れる個性だ。決して不幸にするものじゃない」

 

相澤先生の言葉に、空風くんの瞳がゆらりと揺れる。ほんと…?とか細く発された言葉を前に、その小さな体を抱きしめずにはいられなかった。

 

「ほんとだよ!僕は君に何度も助けられたんだッ!」

 

思い出すのは入試の時、授業の時、そしてこの前のUSJ襲撃。いつだって空風くんは僕らの先を堂々と歩いていて。振り返って手を差し伸べてくれた。

 

「君はみんなを幸せにできるヒーローだッ!」

 

「あー…そりゃ、どうも?」

 

あれ。いつの間にか抱き着いているからだが随分と大きい。腕の中に納まっていたはずの小さな体が、分厚い胸板に代わっている。耳を震わす声も、少し低いテノールへ。

 

「…空風くん!?元に戻ったの!?」

「へ?いや、俺がどういう状況か知りてぇんだが…取り敢えず緑谷は離れねェ?」

「あわわ、ごめん!!!」

「いや、こっちこそ何か迷惑かけてたみたいで。悪ぃな」

 

よっ、と。軽い声と共に起き上がった空風くんは体に違和感があるのか大きく伸びをしている。その様子はいつもと変わらず、先ほどまでの記憶はないみたいだった。

 

「相澤先生、今どういう状況?」

「…ハァ、人騒がせな。戻ったならいい。授業再開するぞ。事情はあとから聞け」

「えぇ~…?」

 

相澤先生と軽い調子で会話を交わす彼の姿と、先ほどまでの自信なさげに俯く少年の姿が重ならない。同じ人物ではあるが、彼に僕の言葉は届いただろうかと気になってしまった。

 

「ねぇ空風くん」

「んぁ?なんだ緑谷」

「いま、君は幸せ?」

 

唐突な質問に、彼はきょとんとした顔をした。んー?と首をかしげたものの、表情は太陽のような笑みで形どられる。

 

「おう!やりたいことやれて、幸せだぜ!」

 

空風くんがここに至るまでの十年に思いを馳せてしまったが…今幸せなら、いっか。

 

「よかった」

「…?おう」

 

子供の頃のことを忘れるくらい、これからの君が幸せであればいいのにって。そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

[IF 夢主が生まれたのがオールマイトよりちょっと年上の世代だったら]

 

 

◇SIDE: 八木俊典

 

彼の存在を知ったのはいつの頃だっただろうか。

 

「おう、またボロボロだなァ。俊典」

「ぜぇ…ハァ…ランサー…」

 

師匠を亡くし、狂ったように修行に明け暮れていたころに、彼が唐突に表れたのが出会いだったか。あまり世間には知られていないが、凶悪ヴィランの確保に尽力しているヒーローだ。

初対面で少し話して以来、何が気に入られたのかこうして私の様子をたまに見に来る。

 

「巡回はいいんですか?」

「休憩だよ。きゅーけい。そんな四六時中ヒーローやってられっかよ」

「そんな…今も貴方の助けを必要とする人がきっといるのに…」

 

彼の戦う姿は幾度となく見た。強い人だ。槍の一本でヴィランをなぎ倒し、未だに倒れているところを見たことがない。他のヒーローでは救えなくてもこの人になら救える命があるはずなのに、本人は割とのんびりとした性格をしている。

非難するようなことを言ってしまったのに、気を悪くした様子もなくランサーは公園の柵にもたれかかった。

 

「ヒーローは俺だけじゃない。周りを信頼するのも大事だぜ?」

「…でも、今の日本ではあまりに取りこぼされる命が多すぎる。悲しみと憎しみの連鎖が止まらない」

 

師匠の最期の姿を思い出す。わたしをAFOから逃がしながら、彼女は微笑んでいた。力を譲渡していなければ、まだ戦えたかもしれないのに。

だからこそ、ヤツを倒すのはわたしの義務だ。そして、恐怖におびえるこの国の人を助けなければ。それが力を受け継いだわたしの義務であり、願いなのだから。

 

「だからお前が『平和の象徴』になるって?」

「…今はまだ未熟ですが、きっとなってみせます!」

「あぁ、いや。お前の力を疑ってるわけじゃない。お前ならなれるだろうさ、平和の象徴とやらに」

 

驚いた。話を聞いた誰もがそんなのは無理だと否定するのに、彼は否定しないのか。

目を見開いて彼を凝視していると、いつの間にかランサーもこちらを見ていた。青い髪が夕日に照らされて、鈍く光っている。

 

「だがな俊典。それで作られる平和は、お前の献身と犠牲の上に成り立つものだ」

「そんなことは…些末な問題です。それで少しでも救われる命があるのなら本望だ」

「そりゃぁ立派なことだ。綺麗ごと貫くのがヒーローのお仕事っていうのはその通り」

 

いつになく真剣な顔で、彼は頷いた。混沌とした今の日本において、最前線で戦うヒーローの言葉には不思議な重みがあった。

 

「だがな、一人の犠牲で成り立つ平和は崩れるのも一瞬だ」

「それは…確かにそうでしょう。しかし、まずは今の状況を何とかしなければ」

「…そうだな。まぁ俺が言いたいことは、お前は周りを頼る癖を若いうちから身に着けた方がいいってこった」

 

鋭い空気を霧散させるように、彼は微笑んだ。そのまま近寄って来たかと思えば、わしわしと頭を撫でられる。力強いなこの人…。

 

わっ、なんです、か、急に…!」

「来週からはアメリカに留学だって?」

「はい、どこでそれを…」

「グラントリノからきいた。…頑張れよ、俊典。体には気を付けろ」

 

最期の一押しとばかりに背中を強くたたかれる。絶対痕になる強さだ。遠慮ってものがない。うぐぅ、と唸っているとケタケタと可笑しそうに笑ったランサーが、静かに呟く。

 

「お前が戻るまでには、もうちっとマシな国にしといてやるよ」

 

彼と話したのは、それが最後だった。

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

遠い異国、アメリカの地で彼の訃報を知った。

ニュースではヴィランとの戦闘としか聞いていなかったが、彼ほどの人がそこらの敵に負けるわけがない。

 

『…AFOと戦ってアイツは死んだよ』

「なっ…!?」

『凄まじい戦いだった。ランサーの奴も瀕死になりながらもあと一歩までヤツを追い込んでたんだ』

「そんな、うそだ」

『あの時逃げ遅れた市民がいなかったら…』

 

それ以降、グラントリノがなんて言ってたかは覚えていない。呆然としながら、彼と最後にあった時の記憶を思い出していた。

 

『お前が戻るまでには、もうちっとマシな国にしといてやるよ』

 

「人を頼れと言いながら…何故あなたが先に逝くんだッ…!」

 

嗚咽と共に、恨みが零れた。平和の象徴へと至る道は見えて来たのに、背中を押してくれたヒーローを失った。

良く晴れた、夏の出来事だった。

 

 

 

 

 





以上、オリ主が人の心をなくすまでの経緯でした
もはや自殺したいレベルに絶望してるのに、両親を犠牲にして生き残ってしまった手前、命を無駄にも出来ず…もんもんと考え込んだ結果が「そうだ!理想の兄貴になって主人公陣営助けて華々しく死のう!」なんだから困りましたね。巻き込まれたオールマイト可哀そう。このあと悪評(人を不幸にする云々)をしっている親戚の間でたらい回しにされて、ご飯抜きとかちょっとした虐待を受けつつ、公安で仕事するようになって昼夜問わずAFOの研究施設をぶっ壊し…からの経緯で雄英高校入学です。

主人公の過去重くしがちなのは完全な趣味です。
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