クー・フーリンのスペックで転生した僕がヒロアカ世界で理想の兄貴になる話   作:佐久間2525

7 / 8
やたら低評価多くなってて笑うww
流石に趣味全開の小説すぎましたね〜


第六話 みんな人生でアレ一回はやりたいよね

 

 

[真夜中の邂逅]

 

◆SIDE: オリ主

 

寝る前にさ、ふと黒歴史が頭をよぎることってないだろうか。

あぁ、あんなこと言わなきゃ良かったなとか。周りからどんな風に見えてたんだろうとか。過去の自分を殺せるなら殺したい!いっそ死なせてくれ!的な。思い出したくもない過去がぐるぐると頭をめぐって眠れない夜。

なんで急にこんなこと言いだしたかって、今まさに思い出から急浮上してきた黒歴史に悶えてるからだ。

 

『…俺に関わるな。ロクなことにならねぇぞ』

『死にたいのか?弱いくせに俺に指図するな』

『友達なんざ不要だな。人間としての強度が下がる』

 

「ああああああッ!!昔の俺シネッ!!!

 

以上、イキってた頃の俺の言動である。控えめに言って死にたい。

ベッドの上、顔を押さえてごろごろと転げまわる。舞い上がった埃が目に染みた。

かつての俺は迷走していた。理想の兄貴像を自身に落とし込む作業と、反抗期が合わさり最悪の出来上がりになっていた。公安の仕事忙しすぎて気も立ってたとも言える。

 

はぁ~…。外の空気でも吸いに行くか」

 

勢いをつけてベッドから起き上がる。このままでは眠れる気がしない。

サーヴァントであるから厳密には睡眠は必要ないのだが、眠れないわけではない。日中マスターにこき使われるのだから休憩できるときにしたかったんだが。このままでは俺のメンタルがもたない。

 

静かに外へ続く扉を開くと、冷えた空気が頬を撫でた。しばらく散歩でもしていたら気も紛れるだろう。

 

 

……

 

 

無心に歩いて、歩いて。ふと我に返ったときには見渡す限り木に囲まれていた。鬱蒼とした葉っぱの隙間から、月の光がわずかに漏れている。ちょっとした山の上らしく、離れた場所には街の明かりが見えた。無意識で登山をするとは、随分と疲れているらしい。

 

そこから暫くまた歩いて、たどり着いた山の頂上。人気のないさびれた建物の上に登って街を眺める。人工的な明かりがチカチカと目を焼いた。夜風に髪がとられてバサバサと舞う。

 

「テメェは相変わらず、高い場所が好きだな」

「…!?」

 

背後から急にかけられる声。誰もいないと思っていたから、驚きに肩がはねた。思わず振り返り、暗闇から浮かび上がるシルエットに目を凝らす。

月明りを反射する白金の髪。爆破に特化した形状のヒーロースーツ。昔、俺によく突っかかっていた懐かしいクラスメイトの姿がそこにはあった。なぜこんな夜中に辺鄙なところにいるんだろうか。

 

「パトロール中に『こんな夜中に一人で山に入っていく人が』なんてほざくモブがいたから来たが、大当たりじゃねェか」

「…」

 

疑問に思っていたら本人からの説明があった。なるほど、ヒーローとしてお仕事中だったワケね。

 

「で。テメェは何でこんなとこにいやがる」

 

鋭い目つきがこちらを向いた。そう面と向かって問われると答えずらい。ただでさえあの性悪神父に従ってるのが恥でしかないのに、ちょっと(黒歴史を思い出して)死にたい気分になったから、気分転換したくて散歩しに来たとか恥ずかしくて言えるワケがない。

 

はっ…ンだ、それ。死にたいだ?」

「え」

 

嘘だろう、さっきの口に出てたのか?この姿(オルタ)になってから、ちょっとクール目なロールプレイング意識してるというのに、なんたる失態。『唐突に黒歴史を思い出して眠れなくなりました』とか今この瞬間が新たな黒歴史なんだが…。

目つきをさらに鋭くした爆豪は苛立たし気に手のひらを爆破させている。風で舞う木の葉がいくつか消し炭になった。

 

「──ハァ。まぁ、お前が、どう考えてようが関係ねェ。ぶっ飛ばして連れ帰りゃいい話だ…!」

「…なんの罪状で俺を捕まえるんだ、ヒーロー」

「知るかよ!あとから考える!」

 

言うが早いか、爆豪が急に殴りかかってきた。職権乱用が過ぎないだろうか、今なにも悪いことしてないのに。右に左に、と乱打を放ってくる爆豪から必死に距離をとる。

 

「(なに、ここで俺を捕まえてみんなの前で黒歴史晒上げようって魂胆???昔から俺のこと嫌いみたいだけどそこまでするか普通…。とにかくこのタイミングで捕まるのは嫌だ…!)」

 

こちらも槍で応戦しながら、必死に思考を巡らせる。態度が悪いので順位を落としがちだが、目の前にいる男は間違いなく戦闘力では現役ヒーローの中でもトップクラス。少し油断をすれば危うい。なにか爆豪の気をそらせる話題を探したいところだが…。

 

「…は」

「あん?」

「緑谷は来てないのか」

 

これはどうだろうか、爆豪といえば主人公のライバル。緑谷に関する話であれば少しは気をそらせる気がする。想定していたとおり、その名前を出した瞬間、攻撃がピタリととまった。爆風が鳴り響いていたあたりに静寂が落ちる。派手に舞い上がっていた砂ぼこりが爆豪を隠しているから、表情は見えないけど、動きが止まっているのは確実。

 

主人公ってやっぱりすごい、名前を出しただけでこの効果。よし、この隙にさっさと逃げよう。そう決意したところでBOOOOOOM!!と先ほどよりも激しい爆音が鳴り響いた。

 

「…ぶっ殺してから引きずって帰ってやる、槍バカ野郎が」

 

爆炎が手のひらで燻ぶっている。声色に反して、爆豪は恐ろしいほどまでに真顔だった。それが逆に殺意の高さを表しているようで背筋が冷える。何故そんなに怒っているのかわからないが、どうやら俺のやったことは裏目に出てしまったらしい。

仕方なく再び槍を構えつつ、ため息。どうしようこれ。

 

 

 

 

 

 

 

◇SIDE:爆豪

 

昔から、ムカつく野郎だった。俺の前を走る癖に、オールマイトとデクのことしか見てやがらねェ。俺のことなんて眼中にもないように振る舞いやがる。

 

成績トップで入学し、快調な雄英生活をスタートする筈だった。なのに俺より上の成績で、特待生として入学した奴がいると聞いた。名前までは噂されていなかったが、すぐにコイツだと分かった。

 

オールマイトが担当する、初めての実技の授業。

個性なんて持っていなかった筈のくそナードに勝てなかった衝撃をまだ飲み込み切れていなかったところに、声をかけてきたのがコイツ。

 

「なァ、爆豪だっけ?まだ体力あまってんなら、俺の対戦相手になってくれよ」

「…あァ?なんで俺に頼む」

 

氷を使う半分野郎も、解説やってるポニーテールの奴も。俺が一番強いと思ってきたのに、上には上がいるのだと思い知った。挙句の果てに無個性のはずのデクにも負けて。いまだ感情の整理などつくはずもなく苛立っているというのに、平然と話しかけてきた。対戦相手なんて他に山ほどいるだろうに。

 

「今このクラスで一番強いのは間違いなく俺だ」

「あァ!?」

「で、次を選ぶならお前かなと思った」

 

自信満々に自分こそが一番強いと言ってのけるのに、腹が立って。それでも、俺が強いと言われたことに嬉しさもあって。

 

「チッ、俺が一番だって見せてやるよ雑魚が!」

「おう、ありがとうな。俺は空風凛だ、これからよろしくな」

 

渋々といった形で頷いた対戦で、本気も出していないだろうコイツにプライドもべきべきにへし折られた。手も足も出ずに負けた俺を、まぁこんなものかっていう目で見る視線が寄せられて。次の瞬間には「中々強かったぜ」なんて心にもない言葉を吐くものだから、いつか俺のことを絶対に認めさせてやると誓ったんだった。

 

「爆豪って緑谷と幼馴染なんだよな」

「…ッチ!幼馴染なんかじゃねえわ」

「えー昔から一緒なんだろ~?子供の頃の緑谷ってどんな感じだった?」

「無個性の、ヒーローオタクのくそナード」

「無個性、ね。それでも諦めずに努力して雄英にまで入ってるんだもんなァ。いいねェ、最高じゃん。努力型主人公ってやつだ」

 

デクのやつが主人公?いつだって、俺が世界の中心だったのに、お前から見た世界の主人公はデクなのか?

ずっと空風のやつはアイツのことしか見てやがらねえ。今だって、俺と訓練してるのに。

 

「…いい加減、俺の上からどきやがれ槍バカ野郎!」

「やだね。敗者は大人しく座椅子になってろ」

「お前…ぜってぇコロス…!

「空風、お前よく爆豪にその感じで接せられるよな」

「えー?ちょっと良く吠える犬だと思えば何ともねェだろ?」

「誰が犬だ!!」

 

そして、たどりついた体育祭の決勝戦。ここで認めさせてやるって思ってた。完膚なきまでに叩きのめして、デクじゃなくて俺こそが最高のヒーローになるんだって、アイツの口から聞きたかった。

だが、一対一の舞台の上でさえ、この男は俺を見ていなかった。

 

「俺はあんたを守れるヒーローになる」

 

2位の舞台から見上げたその横顔は、ただひたすらにオールマイトだけを真っすぐ見つめていた。その視線が、デクを見る目と一緒だって気が付いてからはもう直視することすら腹立たしくて。なのに、あの横顔が目に焼き付いて離れなかった。

 

『いい、人生だった、なあ』

「あぁ、ああああぁ、嘘だ、うそだ空風くん、うそだッ

 

最後の記憶は満足げに死んでいった顔。あの時、隣で泣き崩れたデクの声を聴いて以降の記憶は少しぼやけている。ただ画面の向こう側で、地面を真っ赤に染めていくアイツの血と、叫び続けるオールマイトの背中ばかりが視界を埋め尽くして。自分が真っすぐ立てているのかもわからなかった。

 

俺が、林間学校で捕まらなかったら。あるいは、自分で脱出できるくらいもっと強かったら。あんなことにはならなかったんだろうか。

どうしようもないIFを散々考えた。ヒーローになる資格なんて俺にはもうないんじゃないかと叫びまわりたい衝動に、いつも身を焦がして。憔悴するオールマイトの背中に罪悪感ばかりが降り積もった。

 

──そのあたりの感情のあれこれについては、随分昔に割り切ったつもりだ。俺ももうプロヒーローだ。過去のことばかりに囚われているわけにはいかない。

こうして本人を目の前にするまでは、そう思っていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

「なァ、オイ!でかくなったのは図体だけか!?弱くなったなァ槍バカ野郎!」

「…ぬかせ」

 

意識を目の前の空風に切り替える。報告で聞いていた通り、姿は随分と様変わりしている。

 

以前よりも屈強になった肉体と、生気を宿さない虚ろで殺意に満ちた瞳。全身を彩る赤黒い魔術的な紋様の刺青、腕と下半身を覆う魔獣じみた甲冑、無数の棘を生やして変質した魔の朱槍。

以前浮かべていたような快闊な笑みはそこになく、ただ無感情な瞳がじとりとこちらを見つめていた。

戦ってみた感想と言えば、以前と変わらず強いのは強い。が、パワーが上がった分、素早さが落ちたのか。あるいは変質した肉体を自分でも持て余しているのか、動きが鈍いことがある。

前に比べれば、まだ幾分か俺にとっちゃ、やりやすい。

 

ぐッ…

「大口を叩いた割には傷だらけだな」

「うるっせぇわ槍バカ野郎!!ぶっ殺してやろうかあぁん!?」

「口が悪いヒーローだ…」

 

呆れた様子で空風がため息をつく。相変わらず俺のことなんか眼中にないらしく、ウロウロと何かを気にかけるように視線をさまよわせている。本当にムカつく野郎だ。

 

そもそもだ。さっきの話に戻るが、死にたいってなんだコイツふざけてんのか。

 

デクから「空風くんがご飯食べてくれなくて…」「なんかため息ばっかりついてるんだ」「気力がわかないみたいで」だのうじうじと連絡が来てたのは一か月以上前。かと思えば行方不明だの誘拐だの騒がれて、こうして見つけたと思ったら「死にたい」だと!?

 

今確信した。十年前のアレは遠回りな自殺だ

この()()()()()()()の計画に、たまたまあのタイミングが最適だっただけで、アイツ(AFO)を倒して死ねるならいつでも良かったんだ。そこに俺の存在なんて微塵も関係なくて、やっぱりコイツの中で俺という存在がどんなに希薄なのかを思い知らされる。

 

「死ねェッ!!」

「…!?」

 

上等だコイツ、そんなに死にてえなら死なねえ程度に俺がぶち殺してやる!んでもって俺のことを脳裏に刻め!!

 

苛立ちのままに、頬にかする槍をギリギリで避け、尻尾を思いっきり踏みつける。もう一歩踏み込もうとしていた空風は、押さえつけられて一瞬つんのめった。その隙を逃さず、頬に一発 拳を叩きこむ。

やっと一撃目だ。

 

尻尾を足で押さえられたのも一瞬の話で、殴った次の瞬間にはパワーで押し切られた。カウンターで同じように頬に一発叩きこまれる。重ってぇなクソッ!!

 

手のひらからの爆破でいったん距離を取りつつ、口の中にたまった血の塊を吐き出す。やっぱり異次元の強さだ。だが、昔ほど絶望的な差じゃない。良い感じに体も温まって、個性もフルスロットル。いい状況じゃねェか。

 

TRLLLLLLL

 

「少し待て。電話だ」

「ハァ!?戦いの最中に悠長なこと言ってんなよ!!」

 

突然鳴り響くメロディー。こちらを押しとどめて電話に出ようとしてるが、そんな隙、与えるワケねぇだろうが!

手のひらを爆破させながら蹴りを繰り出すと、ため息をつきながら携帯を操作し、ポケットにしまい込む。

 

「こちらオルタ、交戦中だ。何の用だマスター」

『何?どこにいるお前』

「…知らん。山の上だ」

「ハンズフリーで呑気に喋ってんじゃねぇぞこの野郎!!」

 

『何故そんな場所に…まぁいい。急いで戻ってこい。緊急事態だ』

「何があった」

『後で詳しく説明する。今は時間がない。令呪を使うぞ』

「二人して俺を無視してんじゃねェわ!」

 

電話の相手が例の言峰綺礼ってやつか?腹立つ声してやがる。

あと槍バカ野郎がこっちの攻撃をいなしながら電話してんのが尚のことムカつく!!片手間で充分ってか!?

 

『令呪を持って命ずる。今すぐここにこい、オルタ』

「了解」

 

令呪という言葉に引っ掛かりを覚える。確か、こいつを召喚したヴィランも使っていた「命令権」というものだ。なぜ言峰綺礼がそれを持っているだとか、二人はどういう関係であるのかだとか。一瞬のうちに疑問があふれ出た。

 

「待てっ!」

 

電話の向こう側で神父が言い終わると同時に、空風の足元が光り輝きまるで魔法のようにその姿が搔き消える。一筋の風が吹いた後には、その場には空風の影も形も残ってはいなかった。

 

「~ッあの野郎…!!」

 

苛立ちのままに拳を振りかぶる。爆音とともに木が爆発して蒸発した。

 

「今度会った時には絶対ぶっ殺してやるからなァ…!!!」

 

 

 

 

 

 

 

[緊急事態]

 

 

同時刻 会議室にて

 

◆SIDE : 緑谷

 

時計をちらりと眺める。会議室を見渡しても、パトロールを終わらせたらすぐ行くと言っていた幼馴染の姿は見えない。何かあったんだろうか。

今日は心操くんが教会に潜入して得た情報を会議で共有する日だ。

空風くん行方不明に関する捜査本部は、警察上部からの圧力で解散となった。当然抗議はしたけど、まだ聞き入れてもらっていない状態。

 

上層部からの返答はこうだ。

「空風凛という少年は十年前に死亡したはずだ」「戸籍は、そのようになっている」「生き返るはずなどない」「申請は受理されていない」と。

あきらかに言峰が何らかの関与をしているが、証拠はつかめず。後手に回っていると言わざるを得ない。一連の出来事に悔しそうに顔を歪めて項垂れたオールマイトの姿が、記憶に新しい。

 

僕らがいま集まっている名分は何かというと「上昇する軽犯罪率の原因について」捜査するためというもの。

これも恐らく言峰綺礼が裏で糸を引いていると言われている。

 

反ヒーロー活動を活発に行っていたころの言峰の信者である男が、コソコソと各地で活動している証拠が押さえられていることから、この仮説が立てられた。しかし言峰の関与がまだ確定していなかったため、心操くんが潜入調査に派遣されたという訳だ。

 

「では、報告させて頂きます。教会での講話が終了したのち──」

 

事前にまとめておいたんだろう、心操くんは淀みなく報告を始めた。願いを叶える聖杯、代償として生み出されるバケモノ、反ヒーローを訴える言峰綺礼、言峰に従っていた空風くん。

考えれば考えるほど、どうして彼がそんな非道な男に従っているのかが分からない。あのヴィランに召喚されてた時だって、令呪で命令されても僕らを殺したくないって抗っていたのに。一体どうして。

 

ざわめく会議室を眺めながら、一人物思いにふけっていると、バァン!!と盛大な音と共に扉が蹴り開けられた。何事かと目を白黒させる面々の視線の先に立っていたのは、心配していた幼馴染だ。

 

「かっちゃん!?どうしたの、ボロボロじゃないか!」

「ッチ!声がでけぇわクソデク!ボロボロじゃねぇわ、普段通りだわボケ!!」

「え、でも頬も腫れてるしあちこち切れてるし…」

 

ヒーロースーツを盛大に汚したかっちゃんが不機嫌そうに会議室に入ってくる。戦闘力においてそこらのヒーローの追随を許さない彼が、ここまでボロボロになるというのも珍しい。一体どんな大事件に巻き込まれてきたんだろうか。

 

「…さっきまで槍バカ野郎とやりあってたンだよ」

「え、空風くんと?」

「細けぇことは後だ。あの野郎、言峰からの『緊急事態』っつう知らせで消えやがった。何か起こるぞ」

「それはどういう…」

 

不穏な言葉に会議室がざわめく。何があったのかを詳しく聞こうかとしたその声は、突如鳴り響いた大きな音にかき消された。

 

ビー!!!!ビ────!!!

 

 

署内の緊急ブザー。爆音で鳴り響くそれに素早くヒーローが立ち上がり、警察も慌ただしく動き出す。何か緊急事態が起きたらしい。

 

「伝達!町中に正体不明のバケモノが出現しているとのこと!ヒーローのみなさんは緊急出動をお願いします!」

 

同時にモニターに映像が映し出された。いろいろな動物が混ざり合ったような姿の生き物が街中で暴れている。

 

「な、それってまさか…!」

「心操君が言ってた聖杯の代償とやらか」

「こんなに早く動くとはな!!」

 

突然の知らせに、冷汗が垂れる。時刻は22時、夜も更けてきたとはいえまだまだ人が多い時間帯。そんな中でバケモノが溢れようものなら大変なことになることは目に見えている。

 

「また、市民の反ヒーローデモが起きているとのことで…!」

「ハァ!?このタイミングで!?」

 

最悪の報告はまだ続いた。燻ぶっていた火種にこのタイミングで火が付いたらしい。映像の中では各地でヒーローと市民がもみ合いになる姿が映っていた。

 

「やってくれるじゃないか言峰綺礼」

「あの野郎、今度こそタルタロスぶち込んでやるからなァ…」

 

既に対策本部には多数の被害状況が舞い込んでいる。

地区のヒーローがそれぞれ対応に当たってくれてるみたいだけど、そう長くはもたないだろう。なるべく早く応援に駆け付けなくてはまずいことになる。

 

僕らは、混乱の中にありながらも対応を決めた。

キメラと仮称することにしたバケモノを退治し、聖杯を奪取、あるいは破壊するAチーム。

反ヒーローデモを起こしている市民を押さえ避難誘導しつつ、扇動しているであろう言峰を捕らえるBチーム。

 

この2つのチームに大まかに分かれ、対応していくこととなった。僕はAチーム。何故だかそっちに行った方が、空風くんに会えるような予感がした。

この場にはいないヒーローへの連絡も頼みつつ、僕らはそれぞれの持ち場へと散らばっていく。

 

「行こう」

 

誰も、死なせはしない。そして空風くん。

君のことも、助けて見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[一方その頃]

 

 

 

 

◆SIDE:オリ主

 

「なぁマスター」

「なんだねオルタ」

 

「とんでもない事が起きてないか?」

「起きているな」

 

「お前は黒幕ロールがしたいだけであって、ガチでヒーロー社会の崩壊とか願ってるわけじゃないんだよな?」

「その通り。ちょっとした愉悦で満足する、慎ましい神父だとも」

 

「…」

「…」

 

「──じゃあ何なんだよこの状況はッ!!!」

 

 

ビルの下に広がる光景を指さして俺はそう叫んだ。

 

つい先ほどまで爆豪とエンカウントし、何故か戦っていた俺は電話一本でこの場所に呼び出された。

令呪に引き寄せられ、たどりついたのは街中のビルの上。緊急事態って何なんだ、と口を開きかけ、目に入ったものに絶句。

 

「ヒーローなんていらない!」

「「「「「いらない!!」」」」」」

「ヒーローを排除せよ!!!」

「「「「「排除せよ!排除せよ!!!」」」」」

 

プラカードを掲げた民衆が道路を練り歩きながら声高に叫んでいる。参加者は数えきれないほどで、足音で地響きが鳴りそうなほどだった。そう、デモ活動である。

ビルの上から見ていても、参加者の目は一様に、見覚えのある狂気的な光を宿していた。言峰の教会に訪れる信者のような狂信的な光だ。

──つまり、元凶はコイツ(言峰)である(確信)

 

そして、少し視線をあげると、どこか遠くで煙が立ち上っているのが分かる。サーヴァントの優れた視力で見るに、あの聖杯もどきから湧き出るキメラと同じ形のものが何体も暴れまわっている。

聖杯はだれが作ったものか?コイツ(言峰)である。

 

つまり眼下の惨状は、全て、目の前で表情を崩さないこの男のせいに違いないということだ。

進行するデモ隊、麻痺する交通機関、荒らされる道沿いの店、泣き叫ぶ誰か、暴れまわるバケモノ、逃げ惑う人々。

 

控えめに言って、大惨事だ。

 

「おい、なんでこんなことした!」

「違う、本当に私じゃないんだ」

「あァ?お前以外に誰がこんな惨状引き起こせるって!?」

「実はだな…」

 

 

 

言峰が語った言い訳はこうだ。

 

28歳まで反ヒーロー派として熱心に活動していたころから、狂信的に言峰を慕う一人の信者、宣道 導真(せんどう どうま)という男がいた。

 

順風満帆な人生を送っていたが、雄英高校ヒーロー科に不合格になってから人生転落が始まった哀れな男らしい。大変有能なその男をかつての言峰は大層頼りにしていたが、十年前にぱったりとその手の活動をやめた言峰に宣道は戸惑い、喧嘩別れのように二人は袂を分かった。

 

そして時が経ち。

反ヒーロー活動をやめていた筈の言峰が細々と何かをやり始めたと、宣道は耳にする。

 

「お前を手に入れてから、私も欲が出て色々派手に動きすぎたからな」

 

最近の言峰が信者を増やし、秘密裏にヒーローを監視し、聖杯という摩訶不思議な物を作り上げているということまで掴んだ宣道は思った。

 

『ああ、あなたは変わってなどいなかった。再び我らを導いてくださるのですね、言峰様!』

 

男の個性は「伝播」。自分の感情や思想を周囲の人にも同じように抱かせる、反ヒーロー派のヴィランに一番持たせちゃダメな代物らしい。

 

 

「そうして暴走した宣道が民衆を扇動し反ヒーロー活動を煽った結果がコレで」

これ、と言いながら言峰が指さすのはビルの下のデモ活動。

 

「聖杯を盗み出して雄英高校に向かう道中で引き起こしているのが、アレ」

あれ、で指さされたのは遠くで暴れまわる魔獣たち。

 

 

「──つまり昔やんちゃしていたころのツケがきたということだ」

「99.99%身から出た錆じゃねえか!!なに他人事みてぇな顔してんだバカ!!!」

 

なにが「違う、私じゃない」だ!どう見てもお前が悪いわ!!どうする気だこの惨状!死人が出そうな勢いだぞ!

 

「おかしい。私は平和に黒幕ロールをしたいだけなのに、このままでは本当に国を滅ぼしてしまう」

「呑気に呟いてんなよ!~くそッ、こうなったら俺はキメラ退治しつつ、聖杯を回収する!お前は下の惨状なんとかしろ!」

 

苛立ち紛れに髪をかき乱す。やっぱりこの(クー・フーリン)はマスターに恵まれない運命らしい。幸運E は伊達じゃない様子。

 

「ハァ、仕方ないな。このまま放置するわけにもいくまい」

「溜息吐くな、自分の蒔いた種だろうが!」

 

こうしている間にも混乱は広がっている。この街の中で収まっている内は良いが、これが全国に広がってみろ。ヒーローの手に負えないことになる。

 

「ッチ…おい、聖杯もどきはスイッチ押したら止まるんだったよな」

「…」

 

「…オイ、マスター。なんで目逸らしてんだ???」

 

「何事も、改良が肝心だと思わんかねオルタ」

「は??お前あのゴミに何した??あの状態から更に悪化したって言わねェだろうな??」

 

すすす、と言峰の視線が宙を泳ぐ。まさか、スイッチ押したらバケモノが湧き出てくるだけの聖杯もどきを、あれ以上改悪したとでもいう気か。正気だろうか。

 

「聞いて驚くがいい、300円以内で実現可能な願いなら叶うようになったぞ。見てみろ、販売中止になったお菓子がこの通り。…代わりに出てくるバケモノの量がオート設定で止められなくなったが

「微塵も良くなってねえだろうが!ただのゴミが災厄振りまくゴミにかわっただけじゃねえか!!」

 

バカだ、真正のバカだコイツ…!一回タルタロスで矯正してきた方が世の為だろこの神父。

 

「ちなみに、聖杯はヒーローに回収されると大爆発する仕組みだから気を付けろ」

「だから!!なんでそんないらない機能ばっかりつけるんだよ!!!」

 

もうやだ。何も聞きたくない。胃に穴が開きそう。思わず腹部をそっと撫でさする。

どうして俺ばっかりがこんなにストレスを受けなきゃいけないんだろうか。俺はただ、主人公たちから離れてのんびり過ごしたかっただけなのに。

 

「はぁ…お前がいつまでも喚いているから下の惨状が凄いことになっているではないか」

「誰のせいだ!!!!」

 

こいつ…。法律と理性と良心がなかったら今この場で縊り殺してるのに。我慢だ俺。今は目の前の惨状を何とかすることが先決で、この阿保をしばくのはそれが終わってからだ。

 

「ほら、早く行くぞ」

「~ッ!わぁーったよ!!…って、おいおいどこ行くんだ?階段はこっちだぞ」

 

どうにか深呼吸で気持ちを静め、振り返った矢先。何故か言峰は反対方向へ歩いていく。手すりに手をかけて。何をするつもりだろうか。

 

「あぁ…物のついでに一度はやってみたいことがあってな。…んん、

 

  オルタ!着地任せた!

 

「この非常時に遊んでんじゃねえよバカマスターッッッ!!!!!!」

 

 

 

 





爆豪も非常に曇らせ適性高いと思いませんか?自分が誘拐されてから起こった一連の出来事でクラスメイト死んでたらショック受けてそうだな~という気づき。かっちゃんも可哀そう。被害者の会に入っていいと思う。
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