あれから半年とちょっと。川内の受験日。
「行ってくるね提督!」
「いってら」
「それだけ!?なんか言うことないの!?」
「いやどーせ受かるし。頑張って」
「緊張感の欠片もないね!もういいよ行ってくるから!」
なに怒ってんの…?って聞きたくなったが言わなかった。すると、突然立ち止まる。
「どした?」
「もし今回受かったら、話あるから」
「は?うん」
「じゃね」
それだけ言って川内は出発した。話?ようやく独立すんのか?寂しくなるね。親か俺は。さて、寝るか。今日はうちの学校も受験で休みだ。そういや川内ってどこの高校受けるんだろ。
冬。寒いのでマフラーやら手袋やらを装着してとりあえずBOOKOFFに突入。あーマジでなんの話されんだろうか…。川内があの時言ってたのが今だに頭から抜けない。もし本当に出て行かれるとかだったら…特に変化ないや。変化ないのになんとなく落ち着かね。なんだこれ、いや小学生の時から落ち着きないとか言われてたけどね。いやその落ち着きないじゃないから、落ち着かないだから。ふざけんななにに動揺してんの俺。死にてー、あ、死ぬのか?ワンチャンあるな。ねーよ。
「あら提督」
声を掛けられ振り返ると加賀が立っていた。ちなみにうちの担任です。
「加賀」
「どうしたのこんなところで」
「こっちの台詞ですよ。なんで一航戦が古本屋に…」
「一航戦だって安いものを買います」
「いや本は食べられないよって思って…」
その瞬間、俺の頭をアイアンクローする加賀センセイ。
「あなた、そんなに私と戦争したいのかしら」
「間違えました!料理の本ですね!?」
「いいのよ。私の権限で退学にしても」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
謝るとようやく離してくれる加賀。ちっ、鬼ババァめ。
「それで、随分と落ち着きのないように見えるけれど」
「食事中のお前よりマシだ」
今度は殴られた。そりゃそうだよね。
「いや、その川内が今日受験でしてね…」
「そういえば去年は普通に落ちてたわね。てことは今年は浪人ってことになるのかしら?」
「ていうかニートですね」
「ひどい言い様ね…」
頭痛を抑えるようにコメカミを抑える加賀。
「まぁ受かるとは思うんだけどね」
「ならどうして動揺しているのかしら」
「なんででしょうね…」
あー本当なんでなんだろうな…イライラすんなおい。が、加賀には分かってるようでクスッと微笑む。
「なんか分かったのか?」
「えぇ。ですが、私からは言えません。自分で見つけなさい」
「えーなにそれークソババー」
「数学成績1ね」
「そんなっ!?」
そのまま訂正もせずに加賀は行ってしまった。やっべ…胸の痛みが増えた。
後日、わざわざ外に合格を見に行く事もなく通知で発表が来た。が、川内は寝てる。どうしよ…開けたい…開封したい…解き放ちたい…。だがこういうものは自分で開けさせるべきなんじゃないだろうか…でも俺の時は親に勝手に開けられたからなぁ…(しかも不合格で爆笑された。その日は親を呪った)。
とりあえず、三分考えよう。
ぽく、ぽく、ぽく、チーン。
「開けちゃえ」
てなわけで俺は通知に手を伸ばす。さぁ、神よ!我に力を…!
「なにしてんの」
「ひゃうっ!」
後ろから声を掛けられビクッとした。
「や、これは…その…」
「なにそれ」
「え?いや生命保険の案内だ!全然合否通知なんかじゃ…」
「通知きたの!?見せて見せて!」
自爆した…なにしてんの俺…焦り過ぎでしょ。
「やったぁっ!合格だぁっ!」
「開けんの早ぇーな!ドキドキしてた俺がバカみてぇじゃねぇか!」
「へ?ドキドキしてたの?」
「一応、一緒に住んでる奴の合否だからな」
正直、受かってなかったら土下座してでもその高校にお願いしに行ってたまででもある。
「それでさ提督」
「あ?」
「言ったよね。大事な話」
「え?あー…言ってたな」
やっべ、あの時ヤケに気になってた癖にすっかりさっぱり忘れてたわ。
「で、なんの話だ?言っとくけどお小遣いはやらんぞ」
「そんなんじゃないから!えーっと、その…ね?」
「いや、ね?って言われても…」
「えーっと……」
ヤケにもじもじする川内。なんだよ早く言え。
「その………」
CMかお前は。早くしないと置いてっちゃ…
「好きだよ」
「は?」
「大好き。付き合って」
「……………」
なんつった今こいつ。え?なにが?
「えっと、ススキ?」
「引っ叩くよ」
「ススキ狩りに付き合うの?月見はまだまだだぞ?」
「引き殺すよ?」
引き殺すってなんだよ…超怖ぇよ……。
「へ、返事は?」
「へ、返事?」
「うん…」
「………いいよ」
「へ?」
「付き合っちゃおうぜ。てかもう同棲してるし」
「ほ、ホントに……?軽いノリとか嘘じゃなくて……?」
「嘘じゃねーよ。ノリは1/5くらいあるけど」
「…………」
「…好きだかわうち」
「……バカ。そこは、川内って言ってよ………」
「キャラじゃねぇよ」
俺は無理矢理、グイッと川内を引き寄せて抱き締めた。
「あの…顔見えないんだけど…」
「やだよ。今見せたら真っ赤だって言われるし…」
「なにそれ…」
そのまましばらく止まってた。それとともに俺は思った。
どうしてこうなった………。