幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー   作:三流木青二斎

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銅島センジ・後編

 

 

 

約束の時刻は冷たく、呼吸が凍り付く程に寒かった。

口元から大量の白い息を吐き出す。

銅島センジは玄関前で立ち尽くしていると、向こうから門の中へと入る者たちの姿があった。

派手な柄のワイシャツに様々な色合いをしたスーツを着込み、腰にはベルトに直に刀を挿し込んだ者。

妖刀師。

 

チンピラたちを睨みながら、その中でゆっくりと歩く一人の男。

顔を傷だらけにした、片目を眼帯で覆い隠す男の姿だった。

腰に刀を携える事無く、肩に刀を添えながら、大きな声で叫ぶ様に告げる。

 

「約束通りの時間だな、貰おうか、銅島センジ」

 

そう言われる。

だが、銅島センジは相手のペースに飲まれる事無く、周囲を見回した。

 

「ああ…その前に、アカシくんは?」

 

銅島センジは言った。

千金楽アカシの姿が無い。

その事を指摘すると、望月アクザは下っ端に視線を向ける。

 

「おい、連れて来いや」

 

顎で門の先を指す。

すると、下っ端は走り出して、外へと繰り出した。

ばたん、と車の扉を閉める音が聞こえると、両手を後ろで縛られた千金楽アカシの姿が露わとなる。

 

「ふっ…うっ…」

 

此処まで来るのに、暴力を振るわれ続けたのだろう。

全身が傷だらけで、子供相手に此処までするのか、と思える程に悲惨な姿をしていた。

地面に無造作に置かれる千金楽アカシ、その体を踏み付ける望月アクザは言った。

 

「魔剣妖刀、先に出して貰うぜ?そっちが渡しゃ、これもくれてやるよ」

 

銅島センジは怒りを抑える。

呼吸を何度も繰り返しながら、手に握り締める刀を投げ渡した。

 

「ほら、持って行くと良い」

 

空中を舞う炎命炉刃金(ひひいろはがね)

それを受け取る望月アクザは、目を大きく開いて喜びを表現した。

 

「おお、随分と不用心に渡してくれるじゃねえか、伝説の炎命炉刃金(ひひいろはがね)だぜ?」

 

軽口を叩きながら、魔剣妖刀を品定めをする様に見る。

それが偽物でないか確認しているのだろうが、その様な事をしなくても、本物であると言う()()があった。

 

「元々は裏市で出回っていたものだ、十年間、誰も使い手は居なかった、分かるか?」

 

銅島センジは白い吐息を吐きながら言った。

 

「魔剣妖刀は人を選ぶ、幾ら契儀(ちぎりぎ)を満たしていても、な」

 

契儀。

斬神を発現させた者が願う祈り。

『敵を殺す』と言う願いを捧げれば、敵を殺す事を賛同する者も刀を扱う事が出来る。

だが、奈流芳カズイが使用していた魔剣妖刀は、彼ともう一人の男以外、使う事が出来なかった。

 

「く…ふふ、あぁ、確かにそうだ、魔剣妖刀は奈流芳カズイ以外使いこなせなかった、だから各地で贋作が出回ったが…この刀こそ、魔剣妖刀だ、触れるだけで、()()が違う」

 

触れるだけで分かる。

重力の歪みに手を突っ込んでいる感触。

正しく、次元が違う刀であった。

望月アクザの感想にうんざりとする銅島センジだった。

 

「感想を聞きたいワケじゃない、好い加減、返して貰おうか」

 

望月アクザの踏み台となる千金楽アカシに視線を向ける。

そこでようやく望月アクザは思い出したのか、捩る様に千金楽アカシを踏み付けながら言う。

 

「あぁ、そうだったな、いやあ、悪くない商売だったぜ、ほら、連れて行けよ」

 

そう言うと、望月アクザが千金楽アカシから足を離す。

辛うじて、立ち上がる事の出来た千金楽アカシは、泥酔者の様に千鳥足で銅島センジの元へ赴いた。

銅島センジは、千金楽アカシの腕に巻かれた縄を、刀を使って切り取った。

手首が自由になる千金楽アカシ、片方の手は、自ら小指を喰い千切り、その後、出血死しない様に切断面を熱した鉄を押し付けて傷口を塞がれていた。

全身は殴られた痕があり、骨にひびが入っているのか、高熱を発している。

これが子供に行う事なのかと、銅島センジは痛々しい表情をした。

 

「…アカシくん、大丈夫かい?」

 

そう聞く。

心身共に摩耗しているだろう。

一刻も早く病院に連れて行きたい気持ちが浮かんでくる。

 

「ど、じま…先生、あ、かね、が…」

 

掠れた声で言う。

どれ程泣き叫んだのか。

喉が潰れる程に叫んだのだろう。

怒りが次第に、器から溢れ出してしまいそうだった。

 

「喋らなくても良い…両親の事は残念だった、私が展示会のチケットを渡さなければ…けど、今は懺悔をしている時では無いね…報いを与えなければならない」

 

そう言いながら。

銅島センジは彼を抱きながら玄関へと向かう。

 

「キミは家の中へ…」

 

そう言って、玄関前に彼を優しく置いた。

振り向き、腰に携える刀を抜刀しようとした時。

 

「ああ!!そういや…そいつは返すが、もう一人のガキは貰っておくぜ?」

 

その言葉に、銅島センジは大きく目を見開いた。

これ程、残虐な真似が出来る輩が、人質など一人で十分だとして殺す筈だろう。

 

「…アカネちゃんのことか!?生きているのかッ」

 

何故生かされているのか。

甚だ疑問しか浮かばないが、上機嫌だった望月アクザは理由を告げた。

 

「あのガキは金になる、だから貰っておくぜ?炎命炉刃金が作れるんだからなぁ!!」

 

立ち上がろうとする銅島センジ、しかし、彼の袖を引っ張る千金楽アカシ。

ぶつぶつと、千金楽アカシが呟き、そちらの方に耳を傾ける銅島センジ。

 

「…そうか、それを聞いて、安心したよ」

 

弱り切った千金楽アカシ。

彼の言葉を聞き受けて、彼の手を握った。

そして、息を吐いてゆっくりと玄関の扉を閉める。

 

「…好い加減耳障りだ、卑下た声が娘の耳に入ったらどうする?」

 

静かな怒りを抱きながら、銅島センジはゆっくりと抜刀した。

抜刀官が使用する炎命炉刃金では無い。

非番であるが為に、炎命炉刃金は屯所に預けている。

なので、斬神は銅島センジは使用する事が出来ない。

だが、それでも十分だ。

 

「今から、貴様らに許される声は、断末魔だけだ、…掛かって来いなど言わない、逃げろ、地の果てまで追い続け地獄へ案内させてやる」

 

ようやく、この行き場の無い怒りを解放する事が出来る。

怒りを、鬱憤を、闘猛火に混ぜ込み、刀身へ流し込む。

鋭い紫電が周囲に散り出した、ここに居る全員を生かして返す気など無いらしい。

〈紫電の龍〉銅島センジの本気が伺えた。

 

「おい!分かってんのか!!こっちには、人質がッ」

 

冷めた空気。

凍てつく肺。

心臓が高鳴る。

炎子炉が烈しく燃える。

銅島センジは刀を振るう。

 

雷迅流斬術戦法。

 

「〈千鳥啼(ちどりなき)〉」

 

冷めた口調。

殺意に満ちた声。

敷地に入る者全てを殺すと言う意思。

刀身から紫電が迸る。

幾多の紫電の糸を束ねた斬撃を、敢えて解き、紫電の糸として斬撃を放つ。

無数の線の細い斬撃が周囲に飛び散る。

 

雷迅流斬術戦法・千鳥啼。

無数の敵を切り刻む斬撃を飛ばす技である。

 

「ちィ!!」

 

叫ぶ望月アクザ。

鞘の状態で紫電の斬撃を受け止める。

 

「ぐォ!」

 

余りの威力に望月アクザは吹き飛ばされる。

 

「ひ、ぎゃァ!!」

「ぶびゃべらッ!!」

「ぶぼッちゅびッ」

 

軽快な断末魔が響く。

刀を与えられただけの新参達が死んで逝く。

残されるのは、真の妖刀師のみだ。

 

「クソがッ!人質が居るって言ってんだろうが!!」

 

望月アクザは破壊された刀を手放す。

そして、もう片方の手で魔剣妖刀を掴んだ。

 

「使うのか!?」

「使えるんですか!?」

 

妖刀師達は驚いた。

望月アクザが魔剣妖刀を抜刀しようとする。

 

(奈流芳カズイの契儀は知っている〈何よりも重い、責務を全うする〉ことッ!!俺にだってな、戦争を征するっつう責務があんだよッ!だったら抜けるだろうがッ!!)

 

魔剣妖刀を引き抜こうとする。

だが、幾ら気張っても、望月アクザが抜刀する事は無かった。

 

「魔剣妖刀を抜刀出来た者は居ない、そもそも…貴様に、それ程の重責があるとは思えないがな」

 

涼やかに言いながら、銅島センジは刀を構える。

再び呼吸を行うと、刀身に紫電が集結する。

 

「野郎ォ!!」

 

先に銅島センジを切り裂こうと刀を振り上げながら接近する。

炉心躰火を使役しているのだろう、動きが機敏で一直線の距離なら一秒も満たずに接近出来る。

 

が。

 

「〈(ひとかど)〉」

 

刀身から流れ出た紫電が、銅島センジに流れ出す。

一秒よりも早く、全身を駆け巡る紫電が、銅島センジの姿を模して妖刀師に向けて飛び出す。

 

雷迅流斬術戦法〈閃〉。

術理使用者の肉体を循環し、電気信号を全身に巡らせて肉体の型を作り、紫電の人影を作り飛ばす術理だ。

当然、飛ばす寸前に刀身に流れる斬撃付加した紫電を人影に流し込む事で、触れるだけで斬撃が発生する紫電の人影となる。

一瞬、銅島センジが高速移動で接近したと思った妖刀師は、刀を振るって銅島センジを斬り伏せようとした。

試刀流斬術戦法・〈流刃〉を流す妖刀師、銅島センジの〈閃〉を叩き切ると、紫電の人影は霧散した。

それと共に、銅島センジが前へと繰り出すと、刀を振るい、妖刀師の胴体を二分割にした。

 

「く、ッ!くそがッ!!」

 

余りの実力。

これが銀嶺家の当主候補であった銅島センジの力だった。

 

 

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