幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー   作:三流木青二斎

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目覚めた先は一週間後

おれのねがいを聞いた、嘗て英雄の守護者である斬神。

望月アクザと名乗った、父さんを殺した相手を潰してくれた。

…そのあとのことはよく覚えていない。

情けない事に、やつがどの様な顔をして死んだのかすら分からない。

体中が痛くて、心が痛くて、限界で、気絶してしまったのだ。

 

その眠りは一瞬だった。

目を覚ますと、見慣れない天井があった。

おれは、ここはどこだろうか、確認しようと体を起こすけど。

全身が痛くて、痛過ぎて、動くことすら出来なかった。

必死になって腕を動かすとおれの手が見えた

おれの手は、包帯が巻かれていた。

そこにあった筈の小指は無く、葉先が千切れた紅葉のような手をしていた。

傷口を見せないように、包帯を巻かれていて、手首から、上腕、上腕から、二の腕と、全身が巻かれているのを確認する。

 

「…あ、ぁぁ」

 

呼吸をするだけでも苦しい。

肺に煙が充満しているかの様に、何度も何度も咳が出てしまう。

今日が一体、何日であるのか。

おれは、一体、何時まで眠っていたのか。

それを教えてくれる人は…何処にもいなかっ、「…アカシちゃん?」―――あ、ぁぁ。

声が、聞こえてくる。

おれの名前を呼んでくれる人の声だ。

 

顔を必死になってあげる。

そこには、真っ白な、雪女の様に綺麗な女性が立っていた。

 

「アカシちゃん…起きてる?起きてるっ」

 

おれを見て、駆け寄ってくる、彼女は…銅島ハクア、だった。

勢い良く、向かってくるものだから、おれの体を抱き締めるんじゃないのかと、おれは身構える。

けれど、彼女はおれの手をぎゅっと握った。

柔らかい、ハクアの手のひら、冷たくて、気持ちが良かった。

 

「アカシちゃん、一週間もずっと眠ってたの…もう目覚めないかも知れないって言われて…でも、でも良かった…良かったよぉ…アカシちゃんっ」

 

大粒の涙を流してくれるハクア。

おれは、そんな彼女の顔を見て泣きたくなった。

いや…いいのか、こういうときくらいは、おれも、泣いても良いんだ。

 

「…あぁ、いきて、るよ…おれ、生きてる…生きてるんだ…」

 

その涙は、父さんが死んだ事、母さんが亡くなった事。

大切な両親に対する決別の涙で、おれは、彼女の横で泣き続けた。

 

たくさん、泣いて。

ハクアがおれの頭を撫でて、慰めてくれた。

そうして、疲れて、おれは、ようやく涙が枯れ果てた。

そう簡単に、心に負った傷が癒えることは無いけれど。

それでも、おれは、一歩、歩きだす事ができる。

 

「…ハクア、ここは、銅島先生の、家、だよな?」

 

おれが聞くと、ハクアはそうだと頷いた。

 

「そう、おとうさん、今日は夜勤だけど、連絡するね?」

 

と、そう言って。

ハクアは一度部屋から出ていく。

おれは一人、ぼんやりと外を見続けていた。

 

「…アカネは、どこに行ったんだ?」

 

おれは、姿の見えないアカネのことを思った。

 

暫くして銅島先生がやって来る。

服装は抜刀官の制服で、腰には刀を携えていた。

急いでやって来たが、それでも息を切らしていない所を見ると、呼吸を乱さない様にしているのだと分かる。

流石、抜刀官だ。

 

「目が覚めたんだね、アカシくん」

 

銅島先生がそう聞いて来た。

 

「銅島、せんせい」

 

俺は掠れた声で言う。

俺は望月アクザを倒した後の事を聞きたかった。

けれど、今一番聞きたかった事は、家族の事だ。

 

「…アカネは、どこにいるんですか?」

 

俺がアカネを車の中から連れ出した時。

アカネは俺を呼んでいた。

妖刀師がアカネを傷つけない様に、俺が代わりに暴力を受けたのだ。

だから、アカネ自身はあまり怪我をしていない筈。

けれど、車から出した後、何かアカネの身に何か起きたのか。

だから顔を出さないのか、そう思ったけど。

 

「…実は、アカシくん、その事についてだけど」

 

渋い顔をしながら、銅島先生は語り出す。

先ず、前提条件として、銅島先生は抜刀官だ。

ことの詳細、その事件を明確に本部に送らなければならない。

そして、銅島先生は、望月アクザとの戦いのこと。

斬神斬人(ざんじんきりゅうど)奈流芳(なるか)カズイの魔剣妖刀(まけんようとう)こと炎命炉刃金(ひひいろはがね)・〈襲玄(しゅうげん)〉を所持していた事が妖刀師に露見されたこと。

そして…アカネが緋之弥呼として、神の火を放ったこと。

 

「驚いたよ…アカネちゃんが、神の火を放出しながら、キミの元へ走り出そうとしたんだ」

 

あの時、車の爆発に驚いたアカネは俺が一緒に爆発したと勘違いしたらしい。

どうにかして、俺の元へ向かおうとした際、銅島先生が体を抱き留めて行動を抑止したけど、それがアカネにとって邪魔行為でしかなく、アカネは手を振り解こうと…神の火を放出した、との事だ。

 

「…それら全ての行動は、本部へ報告したんだ、キミが寝込んで二日後くらいの時だ、ユカさん…キミのお母さんの家系の事は知っているかい?」

 

確か…母さんは、緋之弥呼の血筋だと言う事だけは分かる。

それ以外の事は、あまり…良く分からないけど。

それが、アカネが居ない事と何の関係があると言うのだろうか?

 

「ユカさんは、緋之弥呼の血筋ではあったけど、神の火を宿す事は無かった、だから、一般人であるアキヒトくんとの婚姻が許された、ユカさんは、家から追い出された存在だからね、けれど、アカネちゃんは、隔世遺伝で緋之弥呼として神の火を…産霊火(うぶたまのひ)を発現したんだ…だから、榊枝(さかえだ)家が彼女を迎えに来たんだよ」

 

…榊枝家、と言うのは、母さんの方の家系、と言う事だろう。

母さんは、緋之弥呼として使えなかったから、家を勘当された。

だけど…報告書から、各所に伝達されて、榊枝家は、アカネの話を聞いた。

緋之弥呼として覚醒したアカネを、血筋だからと、連れ去った、と言う事か?

なんて、勝手なんだ、俺の、たった一人の家族を、連れ去ったんだッ。

 

「…怒るのも無理はない、だけど、キミが目覚めたら報せて欲しいと、榊枝家に言われている、アカネちゃんに会わせてくれるそうだ」

 

アカネと…また逢えるのか。

だったら、俺は、絶対に離さないようにしないと。

今まで、一度も顔を出さなかった他人に、俺の家族は渡さない。

 

 

 

 

 

「まぁ、辛気臭いところざますねぇ」

 

真っ白な着物に羽織りを着込んだ人たちが乗り込んで来た。

紙で出来た仮面を被っていて表情は見えないけど、その声からどの様な感情を浮かばせているのか分かる。

 

「アカネ、はッ」

 

俺がそう叫ぶと、榊枝家の神官は答える。

 

「アカネ?俗世に塗れた名で、緋之弥呼様を呼ぶのはやめるざますッ」

 

ざますってなんだよ、口調からして苛立ちを覚える。

あんたたちはふざけているだろうが、こっちは真剣なんだ。

俺にとって唯一の家族を、あんたらに渡せるか。

 

「にぃにッ!!」

 

神官を掻き分けて、アカネが身を乗り出した。

黒色に赤に近しい紅葉の髪。

その服装は小奇麗な純白の衣服に包まれている。

 

「アカネ…ッ!」

 

アカネは俺の方に近付いて、覆い被さる様に抱き締める。

俺の上に乗るアカネ、体中が軋んで苦痛に顔を歪めるが、声を漏らす事無く、アカネの抱擁を受け入れる。

 

「大丈夫だ、アカネ、兄ちゃんがついてる…」

 

欠損した四本指の手で、アカネの背中を強く抱き締める。

この時、俺の体は悲鳴を上げるが、そんな事どうでも良かった。

 

「愚民めッ!汚らわしい手で緋之弥呼さまをッ」

 

触るな、と言い掛けた時。

近くにいた銅島先生が割って入る。

 

「落ち着いて下さい神官の、代表の方は…」

 

銅島先生が周囲を見回す。

みんな、同じ様な姿をしているから、誰が代表者なのか見分けがつかない様子だ。

 

「にぃに、一緒…ずっと、あかねと一緒、だからっ」

 

「緋之弥呼様、少年が痛がってるでざますよ?ほら、お顔を御覧なさい」

 

男の声を発する神官が出て来る。

その冷静さと鋭敏さが伺える声色から、この人が代表者なのだとはっきりとわかる。

アカネは、俺の方に顔を向ける、俺は痛くないふりをするが、機敏な表情の動きで痛がっているのが分かるのだろう。

 

「宜しいざます、では千金楽家アカシ少年、本日のところは、緋之弥呼様はこの屋敷に預ける事とするでざます、それが緋之弥呼様の願いざますから」

 

そう言うと、神官が銅島先生の方に顔を傾けた。

他の神官はその場から一旦離れると、銅島先生がアカネの体を抱き上げる。

 

「アカネちゃん、今日は家に泊まって、アカシくんと一緒に居ると良い」

 

アカネは嬉しそうに、屈託の無い笑みを浮かべた。

 

「ほんと?にぃにと、ずっと一緒?」

 

銅島先生は眉を顰めた。

笑顔を浮かべているが、アカネの言葉に答える事は無かった。

 

「少し、アカシくんと、神官の方と、話があるんだ、少しだけ、お兄さんを借りるよ」

 

そう言うと、アカネを抱き上げたまま、他の神官にアカネを渡す。

アカネは、甲高い声を挙げながら俺の事を求めて必死に手を伸ばした。

そっと、銅島先生が戸を閉ざすと、その場に座った。

神官の代表者は、その場で立ち尽くした状態で、着物の袖に手を突っ込んでいる。

…何か、銅島先生の様子がおかしいと、俺は思っていた。

 

「アカシくん、これからの話をしよう」

 

と。

銅島先生は真剣な表情で言った。

これからの話、って、何を話すつもりなのだろうか。

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