幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー   作:三流木青二斎

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ハクアの重い想い

俺は千金楽家から荷物を持ってきた。

それは、俺は台明寺先生と共にする為だ。

台明寺先生は向こう十年は俺の面倒を見てくれると言ってくれた。

なので、十年はこの町には戻らないと言う事だ。

 

子供にとっての十年は長いものだ。

なので俺は家に荷物を取りに来たのだ。

 

「…帰って来るのは、十年か」

 

家の中。

家族の匂いが残る空間は、目を瞑れば喧噪を思い出す。

もう二度と戻らない日常に、胸が締め付けられるが、何時までも感傷に浸る事はしない。

必要な荷物を持って玄関から外に出る、誰も居ない筈の家の中だけど、それでも俺は言わずには居られなかった。

 

「いってきます」

 

そう告げて玄関の扉を閉める。

鍵をかけると、俺は鍵の尻に紐を括りつけて首からぶら下げた。

家の管理は銅島先生が紹介してくれた家政婦さんがしてくれる。

榊枝家から貰った生活費は、其処から渡される様になった。

二度と戻って来ないワケじゃない、今度戻って来る時は、家族を連れて帰る。

アカネを迎えに行って、そして、改めて言うのだ。

ただいま、と。

 

その様に決意をして、俺は道路を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駅前では、銅島先生と、ハクアが居た。

台明寺先生と、二名の抜刀官は慎重に包まれた刀を警戒しながら見ている。

その刀が、魔剣妖刀である〈襲玄〉だった。

 

「忘れ物は無いかい?」

 

銅島先生はそう俺に言った。

俺はバッグを背負った状態で頷いた。

 

「はい、大丈夫です」

 

そう言うと、銅島先生は俺の前へ向き、堂々と頭を下げる。

 

「アカシくん、申し訳無かった」

 

詫びを入れられて、俺は面食らう。

銅島先生が謝罪をしているのは、やはりアカネ関係だろう。

俺の説得をする代わりに、ハクアの病を治す為の薬を得る。

その交換条件で、ハクアの病は次第に良くなっている。

銅島先生は、俺の事を売ったと思い、自責の念にかられていた。

その事に対して、俺は恨んではいない。

 

「銅島先生、…俺は気にしてないです、アカネの幸せを、ハクアの未来を想うのなら、これが一番良かったんです…それに、俺が強くなる為の理由も出来ましたッ!ただ一つ、気掛かりがあるとすれば…」

 

銅島先生は顔を上げる。

俺の気掛かりと言う言葉に気に掛ったのだろう。

 

「雷迅流、結局一つも覚える事が出来なかったと言う点だけです、あれを覚えれたら、俺はもっと強くなれたんですけど…」

 

「…台明寺先生の稽古が終わったら、もう一度、私の家に来ると良い、その時は、一つの技と言わず、私が教えられるものなら、なんでも教えよう」

 

銅島先生は其処で俺が先生の事を恨んでない事を知った。

柔和な笑みには申し訳なさが残っているけど、それでも、俺達の関係にしこりは残る事は無いだろう。

 

「アカシちゃん」

 

駅前で待っていた、ハクアが話し掛けて来る。

榊枝家から貰った産霊火で作られた薬が効いているのか、俺が見かける彼女は、普通の少女と同じ位に動く事が出来ている。

手放しで喜べる事態だ、銅島先生はハクアは十歳になる前に死ぬと語っていた、この様子なら、ハクアは普通の少女として長生き出来るだろう。

もう、俺が傍に居て慰めなくても、彼女は生きていけるのだ。

そうなれば、俺なんかに依存しようとしていた傾向も改善されるだろう。

何せ、心が弱くなれば人は何にでも縋る、神など居ないと豪語していた人ですら、病に伏すと神に祈るのだから、縋るものがあると、安心感が違うのだろう。

だから、俺はもう彼女の傍に居なくても大丈夫なのだ。

これから先は、良い方向へと改善されるだろう。

 

普通の女の子として生きて、普通の関係を持ち、普通の幸せを掴める筈だ。

彼女程の艶めかしい女性ならば、男などとっかえひっかえだろうし、俺の事などすぐに忘れてしまう筈。

だがそれで良い、そちらの方が、俺も安心出来ると言うものだ。

 

「元気になって良かったな、本当に良かった」

 

ハクアの健康的な肌を見ながら言う。

出会った当初は、蒼褪めた死体の様な真っ白な肌には、血液が通っていて、赤くなっていた。

 

「今度、いつ戻ってくるの?アカシちゃん、私、元気になったから、もっと、色んな事をして遊びたいの、アカシちゃんと一緒に…」

 

その言葉に割って入るのは、台明寺先生だった。

こことぞばかり、ハクアに期待を持たせない様に、台明寺先生は自ら悪役を買ってくれた。

 

「悪いが、儂が見る以上は抜刀官として完成を目指して貰う、十年は何処にも行かせんぞ」

 

十年。

大人になれば少し長いと言う認識だろうが、子供にとっての十年は百年に勝る。

子供の頃から、一日一日が長く感じたのだ、ハクアにとっては悠久の時なのかも知れない。

 

「それが出来なければ台明寺の名折れ、儂が納得せねば、お前には腹を切って貰う」

 

台明寺先生は俺の顔を見ながらそう言った。

言い方自体はあまりにも酷い言い方だ。

だがその言葉は逆に俺の向上心を上げさせてくれる発破の様なものだった。

台明寺先生もそれを理解しての事だろう。

即ち、女に現を抜かすなと言う意味だ。

 

「…アカシちゃん、だったら」

 

胸に手を添える。

寂しい、と言う気持ちがあるのだろう。

けれど、ハクアは覚悟を決めた表情をした。

 

「次に会う時は、同じ場所」

 

ハクアはそう言って、俺の胸元に飛び込んで来た。

他の人達が見ている中でその行為は見られている分恥ずかしいが、幸いにもそれを茶化す様な大人は居なかった。

 

「私も、アカシちゃんを追うから…試刀館学院に通って…其処で、アカシちゃんと一緒になるから…だから、その時になったら…私と結婚してね?」

 

ハクアの言葉は本気だった。

俺以外の人間に目すら向ける事が無い。

 

「…ハクアまで、人生をそう簡単に決めるものじゃないよ」

 

俺は説得しようとした。

だが、ハクアは俺の話など聞いていなかった。

 

「アカシちゃんに、持って行って欲しいものがあるの」

 

真剣な表情をしながらハクアは言う。

持って行って欲しいもの、とは一体なんだろうか。

何か、お守りの様なものなのだろうか、とそう思った。

 

「それが、私にとって、アカシちゃんに対する、想いと思ってね?」

 

俺に対する想い、とは?

ハクアは、その証拠を差し出す様に、ハクアは銅島先生の方へ顔を向ける。

髪の毛を留めていた簪を引き抜く、すると背中まで伸びた髪の毛がたらりと垂れた。

その髪を掴み首元まで束ねると近くに居た銅島先生に言う。

 

「お父さん、お願い」

 

その言葉に、銅島先生は頷いた。

何をするのかと思えば、銅島先生は、腰に携えた刀を引き抜いた。

ゆっくりとハクアの方へ近づくと、緊張のせいか、数回呼吸をして、一度深呼吸をすると、刀を強く握り締める。

そして、狙い通りにハクアの髪の毛を切った。

 

「…え?!」

 

俺は驚いた、いや、周囲の大人たちも驚いただろう。

 

「なんと…大胆な…」

 

滅多に驚きの表情など見せない台明寺先生が目を丸くしている。

銅島先生ですら、自分で散髪しておいて困惑している。

 

「ほ、本当に良かったのか?ハクア」

 

ハクアは純白の髪を片手で持っていて、周囲に散らばらない様に髪の束を握っている。

その髪の毛を紐で結ぶと、一本の束として俺に渡してくる。

 

「ハクアを覚えていて…絶対に忘れないで、あなた以外の人に目すら向けない、その誓いをこの髪に願いました、離れていても、何れ、二人は結ばれる運命である事を、覚えていてね?」

 

涙目になりながら、別れを寂しがるハクア。

俺に対する愛が重すぎやしないか?と思うが。

彼女の髪の毛を捨てない様に、強く握り締める。

 

「ああ、分かった、忘れない、忘れることは無い、ハクアの覚悟は、きちんと受け止めたよ」

 

俺がそう言うと、ハクアは嬉しそうに俺の体を抱き締める。

そして、ハクアは俺の口に向けて、薄桜色の唇を押し付けた。

誓いの接吻、と言った所だろうか、そう思った時、俺の唇をこじ開ける、ハクアの舌先。

 

「ちゅ…ぇろ…れっ…ちぅっ…っ」

 

ぬるりと、生暖かい舌先がちろちろと、俺の舌先に絡み合う。

 

ハクアの体液が、俺の口の中へと流れ込んだ…かと思えば、それは濃く、錆びた味をしていた。

ハクアがゆっくりと、俺の唇を離すと、彼女の唇から、舌がだらりと垂れていた。

舌先から滴る、真っ赤な色、ハクアは何を考えていたのか、自らの舌を噛み切った。

そして、その血液を、俺に流し込んで来たのだ。

 

「約束だから、ハクアは覚えてるから、約束を違えたら、地の果てまで呪うからね?アカシちゃん…」

 

…血による繋がり。

最早、赤の他人と呼べる様な関係では無い。

そう俺は実感する。

 

それはそうと、呪うとか怖ろしい言葉を使うんだな、ハクアは。

 

…しかし。

髪が短くなったハクアは、少し大人びて見えて、何時も以上に綺麗に見えた。

将来が楽しみだな、と思う反面、将来になったら、俺達はどうなるんだろうか、と思ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二十世紀初頭。

磐戸国石動京より数県離れた地。

試刀流斬術戦法指南役・台明寺ギンジョウが所持する『衆難山(しゅうなんざん)』。

台明寺ギンジョウが目指す育成は、次世代の国を守護する抜刀官。

育成方針は個に見合う成長を施す事。

試刀館学院で多くの試刀生に平等に斬術を指南したが、その多くが抜刀官へと至る道半ば、あるいは抜刀官として活躍する半ばで命を絶やす。

故に、全部を拾う事は出来ず、ならば選りすぐりを以て、強者としての道を歩ませる事。

それこそが、台明寺ギンジョウの戦略であった。

 

 

「アカシ、怪我の様子はどうだ?」

 

衆難山寺(しゅうなんざんじ)(衆難山の天辺にある寺の様な建物、基本的に修行者は此処で寝食をするらしい)を目指す為に、階段を登る俺に台明寺先生は言った。

俺はバッグを背負いながら、身体の様子を確かめる。

未だ体が痛くて仕方が無いが、歩く、走るくらいなら動いても問題は無い。

ただ、また刀を握る事も、斬術を使用する事は難しいと思う。

 

「軽い運動なら、出来ます」

 

俺は息を切らす事無く階段を登る。

上へと上がる度に、段々と酸素が薄くなっていく感じがした。

山は高いと酸素が薄くなると聞く、修行をする場には持って来いな環境なのだろう。

 

「そうか、それは重畳」

 

ちょうじょう…何が満足なのだろうか、俺の状態はどちらかと言えば、重傷(じゅうしょう)であると思うが、命があるだけでも喜ばしいと言うのか?

そんな事を考えながら俺と台明寺先生、そして二人の抜刀官は、ようやく衆難山寺へと到着した。

ただ歩くだけで、こんなにも息が上がってしまうなんて、やはり修行に適した環境と俺は思う。

 

ここで刀を振り回すだけでも、酸素が薄いから、闘猛火が上手く扱えない。

そう考えると、これから先の修行は一筋縄ではいかないだろう。

しかし、上等だ、これ程の負荷が無ければ、俺は強くなんてなれない。

掌を広げる、そして指を見る。

小指が欠損し、四本指となった掌。

この状態でも、俺は抜刀官を目指す。

ある意味、小指の欠損は俺の誓いを強くさせていた。

 

「さて、一先ず、魔剣妖刀を保管せねばな、しばし、ここで待て、ユノを呼ぶ」

 

ユノ…それは人名だった。

そのまま、抜刀官二人と、台明寺先生がその場から離れる。

俺は荷物を持ったまま、その場で待機をしていた。

空は濁った様に霧に包まれていて、辛うじて日の光によってまだ明るい時間帯である事が分かる。

待ち侘びる間、俺は懐に入れた布袋を取り出す。

その中には、真っ白な髪の毛の束が入っていて、品のある香りを放つ、ハクアの髪の毛が入っていた。

それを手に取る。さらさらとした艶のある髪の毛は、柔らかく滑らかで、一本一本が生物であるかの様な触り心地だった。

 

「すぅ…」

 

それを鼻元に近付けると、俺は匂いを嗅ぐ。

心地良い匂いだ、青い心が弾けてしまいそうな、興奮を促す匂い。

呼吸をする度に、麗しいハクアの顔を思い浮かべてしまう。

 

「…変態だな」

 

肺の中を彼女の香りで充満させた後に俺は冷静になってそう言った。

俺はそのまま、ハクアの髪の毛を布袋に納めると、紐を引っ張ってキツく封をする。

もしも大人になってハクアと会う事になったら、一体、どの様な女性になっているのか、俺は少し楽しみだった。

 

 

台明寺先生が離れて十分ほど。

じゃりじゃりと、石庭を歩く音が聞こえてくる。

俺が顔を向けると、俺と同じくらいの背丈をした少女が居た。

絢爛な衣装に身を包む、黒髪に紫の瞳をした少女。

赤色の彼岸花を模した髪飾りを付けた少女の腕の中には、自分の背丈よりも…一般的な男性と同じ位の背丈をした刀を持っている。

 

「…こ、こんにちは」

 

俺は挨拶をすると、少女は口を紡ぎながら軽く頭を下げた。

何も喋らない彼女は人が少し苦手なのだろうか、と思いながら此方から声を掛ける事はしなかった。

しかし、彼女は何も言わず、その場から離れる事も無く、俺の近くで呆然と立ち尽くしている。

 

「…」

 

気まずい。

声を掛けないのなら、まだ空気には耐えられる。

だけど、彼女の瞳は依然俺の事を見詰めている。

何か用でもあるのだろうか、此方から話し掛けるべきなのだろうか。

 

「…えぇと、何か、用、ですか?」

 

俺がそう聞くと、彼女はぼう、っと俺の事を見るだけだった。

俺の言葉が聴こえないのだろうか、いや…それとも、無視をしているだけ?

だとすれば、何故俺の傍から離れようとしないのだろうか。

 

俺の頭の中では不思議と言う感情しか浮かばなかった。

 

彼女が傍に来て数分後、台明寺先生が堂々と歩きながらやってくる。

台明寺先生の姿を見て、俺は助け舟が来た、と思った。

 

「ユノか、此処にいたのか」

 

そう、台明寺先生は言った。

ユノ、先程、台明寺先生がユノを呼ぶと言ったのは、彼女の事であるらしい。

 

「悪いな、アカシ、ユノは幼い頃から喋る事が出来ん、それと何を考えているかも分からん、ただ、此方の言う事だけは何となく理解しておる」

 

成程、道理で、俺が話し掛けても声を出さなかったのか。

納得した所で、俺は改めてユノに話し掛ける。

 

「俺の名前は、千金楽アカシ、これからよろしく」

 

と、そう言った。

ユノが何か喋る前に、代わりに台明寺先生が答えてくれる。

 

「苗字は儂の台明寺を与えておる、台明寺ユノ、上の名前では儂と被るだろうから、ユノと呼ぶと良い」

 

台明寺先生の苗字を与えている。

その言い方には複数の意味を持っている。

俺が何か聞こうとした時、代わりに台明寺先生が答えてくれる。

 

「数年前の祅災、その生き残りでな、祅災孤児として儂が預かったのよ、実際の血の繋がりは無いが、儂の技術を授けておる」

 

祅災孤児…天涯孤独の身から、引き取られたと言う点では俺と同じだ。

親近感が湧いた俺は、彼女とは仲良くなれそうだと思った。

 

「因みに、ユノは貴様の先生となる、…ユノよ、当分は付きっ切りで頼むぞ」

 

…え?ユノが俺の先生?

俺と、同じくらいの歳の子供が?

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