幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー   作:三流木青二斎

27 / 38
童貞じゃないっ!(童貞)

ユノは上機嫌だった。

心無しか持って来てくれる料理の文明レベルが上がった気がする。

なんと、今日の夕飯は焼き鳥のタレつきだっ!!

甘いタレがべったりと、満遍なく焼いた鶏肉についていて、噛む度に旨味が溢れ出す。

原始的な生活をし続けた昔と比べたら、とにかく涙が出る程美味かった!!

 

タレとかユノが作っているのだろうか?

調味料とか何処かに隠し持っている可能性があるな。

それとも、一々料理の為に九頭龍山から降りているのだろうか。

 

まあ、其処ら辺は考えた所で仕方が無い事だ。

俺にとって、美味しいものが食べられるだけで十分に幸せな事なのだから。

 

「今日も一緒に寝るのか?」

 

ユノは最近距離が近かった。

眠る時になると長刀を抱いて眠るよりも、俺を抱き枕の様にして眠る。

と言っても、コアラの様に抱き着くのでは無く、俺の隣に横たわり、手を掴んで来るのだ。

ささやかに、邪魔にならぬ様に、祅霊が来れば、すぐさま目覚めて離れていくが、それまでは幸せそうに、俺の手を何度もにぎにぎしてくる。

 

彼女の行為に俺は、やはりユノは猫の様だと思ってしまう。

 

「…」

 

暖かいユノの体を感じながら、俺は次の事を考えていた。

斬術戦法の手札も増えて来た、これならば、そろそろ、次の領域に進んでも良いのでは無いのだろうか、と。

 

「挑んでみるか…九頭龍山の頂点に」

 

上級祅霊が出ると、俺の中で噂する、岩場の場所。

あそこには、明らかに異質な祅霊が出現していた。

俺は、その祅霊を討伐する気だった。

 

死ぬかも知れない、と言う恐怖よりも、俺の実力を示す事が出来ると言う興奮が上回る。

今日の所は、その興奮を沈めながら眠る。

 

翌日、俺は昼頃に起きた。

近くにいたユノは、長刀を抱き締めながら俺の方を見詰めている。

興奮し過ぎて、あまり寝つきが良く無かった。

俺は体を起こして、ユノの方に顔を向ける。

 

「おはよう、ユノ…そろそろ、上に行こうと思うんだ」

 

俺がそう言うと、ユノは頷いてくれた。

一年くらい前は、あまりユノは乗り気では無かった。

だが、今のユノは、俺の実力を評価しているようで、上級祅霊との戦いに関して何も言う事無くついて来てくれる。

 

そうして、俺とユノは上へと歩き出した。

道中、祅霊の姿は見かけなかった。

殆どの祅霊を狩り尽くしたかの様な気がしていた。

 

樹木が沢山生える場所を過ぎ去ると、灰色の岩場が見えだす。

此処から歩いて、一年前に見た古い橋へと到達する。

橋を渡ると、ユノも後ろからついてきてくれた。

 

「…なんだか、ワクワクするな?」

 

ユノの方に視線を向けながら言った。

ユノは何も言わないが、同調しているだろう、と俺は判断する。

そうして、橋を渡り終えて、そのまま歩き出す。

…なにか、変だな。

前来た時は、すぐに祅霊の気配を感じ取ったのだが。

今は全然、そんな事が無かった。

暫く歩いてみる、岩石が壁となっていて、地面は削る様に舗装されていた。

よく見て見れば、動きやすい空間となっていて、動きやすい環境であるのが分かった。

 

「…ん」

 

 

ふと。

俺は気配と言うものを感じた。

祅霊とは違う、ユノとも違う、別の気配。

その気配のする方へ視線を向けると。

 

「ん…あれは…」

 

人影が見えたので、俺はその影に視線を向けた。

最初は祅霊かと思ったが、違う、それは着物を着た男性だった。

痩せ細った男性だ、灰色の髪の毛が背中まで伸びた、ロン毛の男性。

肌も髪と同じ様に灰色で、飢えた木乃伊の様に痩せ細っている。

皮膚と骨だけで、辛うじて筋肉がついている、と言った状態だ、脂肪と言う余分なものは一切無い、枯れ果てた体だった。

そしてその男性は何故か刀を握り締めている。

この現代社会では、刀を携える事は珍しい事では無い。

祅霊と言う化物が溢れる現代社会、当然ながら一般人は護身用の武器を携帯する事が許可されていた。

けれど、護身用の刀ならば、何故、ベルトに刀を差す事無く、片手を塞ぐ様に持っているのかが分からない。

ゆらり、ふらりと、男は歩いていた。

足取りは、酒に酔っているのかと疑いたくなる程に千鳥足で、空いたもう片方の手を握り拳を作ると、そのまま自らの口元を近づけて咳払いを行う。

 

「げほ…げほッ」

 

明らかに苦しそうな表情で咳をしている。

俺は、その男性が病人である事を悟った。

そして病人ならば、こんな所に居ちゃまずいだろう。

理由は何であれ、俺はその人に話し掛けようとした瞬間。

俺の首根っこを掴むユノが、思い切り俺の事を引っ張った。

そして、遠方で此方へとやって来る男に向けて、長刀を抜き放つと共に斬撃を飛ばす。

 

「ッ、何してんだよユノ!!」

 

止めに入ろうとしたが遅かった。

既にユノは刀を振って斬撃を飛ばしており、狙いは病人らしき男性にだ。

 

「危ないッ!!」

 

俺は大声で叫んだ。

その声に勘付いたのか、病人は下を向いていたが、此方へと顔を向ける。

そして、斬撃が肉体に接触する寸前に、病人の方は刀に手を伸ばした、かと思えば。

 

「っ!?」

 

即座。

ユノが放った斬撃が分断された。

男性は刀を構えたまま、そしてゆっくりと柄から手を離す。

 

「…なんだ」

 

我が目を疑った。

目にも止まらぬ速さと言う言葉がある。

恐らく男性はユノの斬撃を斬った。

その抜刀速度は、人が認知出来ない刹那の瞬間。

人間が到達出来る反射速度じゃない、俺はそう思った。

 

「…あ、ユノ、ダメだ、急に攻撃したらっ!!」

 

俺は、ユノが刀を構えたので、俺はユノの体を抱くように捕らえると、刀を抜かない様にさせた。

そして、此方へとやって来る男性の目は、死んだ死体を刳り貫いて、自らの眼窩に移植したのではないか、と言う程に生気を感じられなかった。

 

「…キミたちは、何者だ?」

 

男が此方を見ていた。

俺は、何か弁明をしようと、男の方に近付いた。

 

「すいません、あの、ユノが失礼な真似を…衆難山の関係者ですか?」

 

そう言いながら俺は歩き出す。

ユノは俺の後ろにぴったりとくっついていて、警戒を怠らない。

…そもそも、関係者ならばユノが知っている、だろう。

なのに、ユノが警戒していた、と言う事は。

この人たちの事は何も知らない…部外者、なのでは無いか。

近付くのを止めた俺は、自然と刀に手を伸ばしていたのだが。

 

「坊ちゃん、止めときな」

 

俺の手首を掴む、男性の姿。

野太い声と共に、俺の背後に丸坊主の男性の姿があった。

 

「小せぇなぁ、妹と同じくらいかぁ?」

 

そんな事を呟きながら、男性が俺を拘束する。

 

「なにをッ」

 

と言いかけて、ユノの方を見る。

ユノの方も、大人の女性が体を抑えて動かない様にしていた。

 

「落ち着いて、危害は加えません…」

 

女性がそう言いながら、ユノが暴れない様に掴んでいた。

 

「どうやら、修行者らしいな」

 

灰色の髪を伸ばす男性がそう言った。

 

「縄で縛っておくと良い…あまり暴れない様に願うよ」

 

それは、俺たちに対して言った言葉だった。

あっと言う間に、俺とユノは手首を縛られてしまう。

 

「さて…宍道、魔剣妖刀は?」

 

男性は丸坊主の男にそう聞いた。

宍道と呼ばれた男は若い男性だった。

短髪の髪の毛を手で擦りながら、へへ、と笑うと共に、それを見せつけて来る。

 

「ありましたよ、魔剣妖刀、〈荒刃金屍道〉」

 

と。

そう言っていた。

魔剣妖刀?

まさか、この九頭龍山にあったのか?

 

「流石にあったな、〈馬頭前鬼〉と〈牛頭後鬼〉の二体が守っていれば、其処に隠していると言っている様なものだ」

 

…その名前から察するに、俺が戦おうとしていた祅霊の事、だろう。

上級の祅霊を、この人たちは雑談の種として話していて、あまりにも軽々しく喋るので、強くない印象を覚えつつあった。

 

「さて…此方の話はこれくらいで終えようか、ツネヒサとキイトが来た時点で、計画を進める事にする」

 

計画?それは一体、なんだろうか。

俺は、耳を傾けると、女性が俺の方に気が付いた。

 

「…聞いたらダメですよ、殺してしまうかも知れません」

 

と、恐ろしい脅しを受ける。

俺は表情を険しくした。

物騒な言葉が出る以上、この人たちは悪者として認識して良いだろう。

現に、魔剣妖刀を隠していた(らしい)のに、それを回収したのだ。

それを使い、何かしらに使役しようとしている。

 

「魔剣妖刀を、何に使うつもり…ですか?」

 

と、俺はそう聞くが、女性は儚げな表情をしながら俺を抱き上げる。

動きやすい様に、着物を洋風のドレスの様にして着込む女性は、着物に切れ込みを入れていて、布地も薄くて彼女の質感を実感しやすくなる。

すなわち…俺は彼女に抱き上げられた際に、その柔らかな胸を顔に押し付けられた。

 

「ダメですよ、物騒な話はしてあげません…それよりも楽しい話をしましょう、私は、八十一鱗(くくり)と申します、八十一鱗ヤヲ、あなたのお名前は?」

 

名前を名乗られた。

口を閉ざして、情報を出そうとしなかったが。

 

「困りましたね…私は、楽しくおしゃべりがしたいのですが、貴方をなんと呼べば良いのか分かりません、…未だ穢れを知らぬ純潔、潔白な童、と言う意味を取り、童貞さんと言いましょう」

 

儚げな笑みを浮かべて不名誉な名称で言おうとしてきた。

いや童貞ですが、前世の頃から童貞ですが、言われるとなんか嫌だっ!

 

「…アカシ、千金楽アカシッ!!童貞じゃない!!」

 

俺は素直に自分の名前を口にした。

ついムキになって言ってしまった事を少しだけ後悔した。

が、これが逆に功を奏した。

灰色の男性は大きく目を見開いていた、何がそこまで驚きを覚えているのだろうか。

じぃ、っと、俺の顔を見続ける男性は、少し柔和な声色で言い出した。

 

「ちぎら…っ? ちぎら、とは、千年の千に、金貨の金、楽しいと書いて、楽か?」

 

なんと、よく知っている。

俺は素直に驚いた、まさか、俺の苗字の漢字を一言で現わせる人物など余り居ないのだ。

驚きの表情を浮かべながら、声を少し抑えながら、男性に聞く。

 

「そう、ですけど…それが?」

 

絶句している男性。

片手で口元を抑えて、声が出ていない様子だった。

最後に、男性は確認する様に、俺以外の人間の名前を口に出す。

 

「…父親の名前は?アキヒト、と言うのか?」

 

千金楽、アキヒト。

俺の父さんの名前だ。

偉大な抜刀官である父さんと、この男性は知り合いであるらしい。

 

「…父さんの知り合い?」

 

俺は首を傾げてそう聞いた。

男性は咳き込みながら、手に付着した血を服の袖で拭う。

そして、死んだ死骸の様な目は打って変わり、俺の事を物珍しいと言った表情で見ていた。

 

「あぁ、なんて事だ、…先輩の御子息か」

 

先輩。

どうやら、父さんはこの人と知り合いである様子だったらしい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。