幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー   作:三流木青二斎

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憎悪

刀を振り上げる。

感傷に浸る事も待ったを掛ける事も無い。

逆瀬川サネミの最期は抵抗する事無く、斬首を受け入れた。

世に語る事実はそうなる筈だった。

 

だが……この幕引きに缶を投げ入れる様な行為が、逆瀬川サネミの肉体を切り裂いた。

 

「っ」

 

千金楽アカシ、では無い。

彼は敵に対し敬意と残忍さを以て首を一太刀で斬り落とそうとした。

だが、扉の先から放たれた斬撃は、逆瀬川サネミ……では無く、千金楽アカシに向けて飛んだのだ。

殺気を感じ取った逆瀬川サネミは、千金楽アカシに手を伸ばし、彼を弾いて代わりに斬撃を受けたのだ。

 

体を切り裂く一撃を受けた逆瀬川サネミ。

彼は、斬撃を受けた際に切り口から亀裂を奔らせる斬術戦法を知っていた。

 

「ッ……な、ぜだ」

 

掠れた声を漏らしながら、逆瀬川サネミは、その者の名前を告げた。

 

「きぃ、と」

 

キイト。

その言葉を最期に、無様に逆瀬川サネミは死んだ。

言葉を発する事無く、肉の塊となった逆瀬川サネミを、唖然とした表情を見詰める千金楽アカシ。

そして、寺院の内部へと踏み込む闖入者の姿へと視線を移す。

 

「チッ……死に損ないが、邪魔せず死んどけ」

 

尊敬すら抱いていた、逆瀬川サネミに対し、その様な暴言を吐くと共に、黒髪に白髪が混じる少年が入って来る。

歳は、千金楽アカシよりも上だろうが、それでも若い、十二歳。

年齢が上であり、その体格も千金楽アカシより上だ。

 

「……なん、だよ」

 

千金楽アカシは弛緩した指の力を込める。

小指を欠損した右手が感情と共に硬く柄を握り締める。

 

「あぁ……でも少しだけ、スッキリしたなぁ、なぁにが、世界を救うだ、病の人を助けるだ……口を開けば人の為人の為なんて……うざってぇたらありゃしねぇ……けど、傑作だよなぁ、最期は何も成せず、ぽっくり死んじまったんだから……っくく」

 

不揃いな歯並び。

尖り切った牙を剥き出しにして、肩に背負う刀を担ぎながら。

 

「ぎゃはッ、ひゃはははッ!あぁバカみてぇだなぁ!!逆瀬川ァ!!こぉんな夢見がちなオトナ様にゃなりたくねぇぜッ!!」

 

逆瀬川サネミを嘲笑う、その声が、どうしようも無く……千金楽アカシを逆撫でする。

彼の頭に過るのは、不快な存在を消し去ってしまいたいと言う感情、そして、自身が尊敬するものを踏み躙られた……怒りが沸き上がった。

 

「黙れぇ……てめぇは、誰だよッ!!」

 

納刀と共に闘猛火を鞘内部へと貯め込む。

すぐにでも敵を斬り殺したいと言う感情が、十分に奥義を放つ段階に至らず、早計のままに抜刀し〈襲〉を放つ。

 

放たれる超密度の超重力による斬撃。

それを目測で認識し、身体を縮める様に動く事で攻撃を回避。

壁に斬撃が衝突し、一線の穴が刻まれた。

 

「逆瀬川さんを、侮辱するな……ッ」

 

怒りの形相を浮かべながら、千金楽アカシは対峙する。

 

大きく手を広げてお道化た姿を見せる男。

 

「なに、キレてんだよ? こいつは敵だったんだろぉ?死んで万々歳じゃねぇかよ」

 

この男の言う通り。

逆瀬川サネミは敵だ。

彼が引き起こす惨状を止める為に奔走した。

けれど。

 

「……この人は、確かに俺の敵だった、この人にとって俺が敵であったように……だけど、父さんの知り合いで、台明寺先生の教え子で……最後の最期で、俺に剣を教えてくれた」

 

逆瀬川サネミが居なければ、〈襲〉の技は完成しなかった。

父親が遺した技を知る事無く、成長する所だった。

それを教えてくれたのが、逆瀬川サネミと言う男。

 

「逆瀬川さんの間に、確かな繋がりがあったんだ……ッ俺が、この人の分まで頑張ると、だから俺がッ」

 

逆瀬川サネミを背負い、強くなる。

そう覚悟して、殺す想いを抱き、刃を振るった。

なのに、あの男が、その覚悟を踏み躙ったのだ。

許せる筈が無い、許してなるものか。

 

「俺が殺す筈だったんだッ!……俺が背負う筈だったんだッ!!、お前なんかが、へらへら笑って、横取りして良い人なんかじゃないッ!!この人の晩節をお前が穢したんだ!!」

 

刀の切っ先を男に向ける。

その熱意、殺意を受け止めて、男は嬉しそうに笑みを浮かべてみせた。

何処までも神経を逆撫でする行為に、千金楽アカシは歯軋りをする。

 

「んん~、無駄な講釈ご苦労さん、けど、やぁっとオレの方を向いてくれたなぁ?千金楽アカシ」

 

名前を呼ばれる。

可笑しい事に気が付く千金楽アカシ。

自分の名前は、彼には教えていない。

そしてその口振りから、前から、その男は自分の事を知っている様子だった。

だが……面識など無い、その男の瞳に写る狂気は、怨嗟の塊……そう思ってしまう。

思考を巡らせるが、それでも正体に辿り付く事が無い。

頭を悩ませる千金楽アカシに、男は楽しそうに声を張り上げた。

 

「俺の正体知りたいか?いンや是非とも知ってくれ、俺はお前の恩讐の相手、復讐の申し子、仇成す凶器」

 

気が狂った様に叫ぶ。

意味の無い言葉を並べて焦らしているかの様に思え、不快感を覚える。

この男と寸劇をする気など毛頭ない、今すぐにでも斬り伏せてしまいたい感情を抑えながら声を漏らす。

 

「わけ分かんねぇ事を喋んじゃ……ッ」

 

即座。

男は刀を振るう。

闘猛火を付加された斬撃が、千金楽アカシに向かって飛んで来る。

下から上へ振り上げた斬撃を、千金楽アカシは刀を振るい斬撃の軌道を重力で歪ませて斬撃を弾いた。

男の表情は目を大きく見開かせて、穴が開く程に千金楽アカシを見詰める。

 

「黙って聞け、聞いて驚け、驚いたら死ね、俺の名前は淵東(えんどう)クズハ」

 

それが男の名前だった。

名前を聞いても尚、千金楽アカシには聞き覚えの無い名前だ。

しかし、次の台詞を聞いた時、千金楽アカシは悲惨な過去が降り注ぐ思いをする。

口を開き、卑下た笑みを浮かべ。

 

「―――望月(もちづき)アクザの弟分だ」

 

千金楽アカシは驚く。

その男に両親を奪われた。

その名は望月アクザ。

 

斬神〈襲玄〉によって潰された因縁の相手の名だった。

 

「……っ!!?」

 

淵東クズハ。

名前など知らない。

だが、望月アクザの妖刀師としての組織。

その残党が、千金楽アカシを狙っていると言うのならば……可笑しくはない話だ。

だが、こんなにも、若い子供が望月アクザの子分だとは到底思えなかった。

 

「聞いて驚いたなぁ?そうだよ、その顔が見たかった、俺のアニキを殺したテメェを殺す為に、なかよしこよしな慈善団体にまで入る苦行を受け入れたんだ、それくらい驚いて貰わねぇと逆に困るぜッ!」

 

叫ぶと共に、淵東クズハは地面を蹴る。

走る速度は其処まで早く無い。

〈炉心躰火〉を習得していないのだろう。

大きく刀を振り上げると共に、淵東クズハは千金楽アカシに向けて叩き付ける。

 

「くッ!!」

 

納刀した刀を抜刀。

半ば抜き身の状態で攻撃を受け止める。

 

淵東クズハは刀を持つ方とは逆の手を千金楽アカシに向ける。

人差し指と中指を向ける、指先には刺青の様なものが刻まれていた。

 

「〈(しぃ)〉〈(つぅ)〉―――〈(しゃあ)〉ッ!!」

 

言葉と共に、闘猛火を指先へと流し込む。

出力変換、特殊な技法により指先を疑似的な『焔転変火』へ変える。

特定の斬人の血液を濾して作られた墨を入れる事で使用出来る技だ。

指先に刻まれた紋様を通過する闘猛火は、指先から放たれると共に鋭い針の様に、千金楽アカシの腹部に突き刺さる。

 

「ぐッおぉおッ!!」

 

腹部から感じ入る激痛を覚えながらも、闘猛火を刀身へ込める。

そして鍔迫り合いをする際に、相手の重力の向きを逆にする斬術戦法・夜咫烏〈斥〉を使役。

背後に向けて落下する様に弾き飛ばされる淵東クズハ。

 

「く、そッ」

 

歯を食い縛りながら淵東クズハを見据える。

一度、刀を納刀する。

刀を下ろす様に構えて、集中する。

 

「く、ふ、ぅぅぅぅ……」

 

大きく酸素を吸い上げると、炎子炉が活発化していき、闘猛火が排気孔を通り刀身へと流し込まれる。

 

下から上へと放たれる斬撃・夜咫烏〈襲〉を抜き放つ。

鋭い斬光が放たれたと共に、淵東クズハは咄嗟に体を逸らして攻撃を回避したが、先の夜咫烏〈斥〉によって態勢を崩していた、回避行動が遅れて、刀を持つ方の腕が斬撃に巻き込まれる。

二の腕の半ばで綺麗に切断された淵東クズハは、大量の血液を流しながら腕を抑える。

 

「ぎ、ひッ、ぎゃッあああああああッ!!」

 

痛々しく声を荒げる。

その声すらも千金楽アカシには煩わしいものだった。

早々にトドメを刺そうとするが、再び、千金楽アカシは唖然とする。

 

「はっ……はッ、ひっ、い、痛ぇよぉッ、ぎひっひっ!いてぇ、イてぇ、痛くて、イっちまいそうだぁ……ひひゃひゃ」

 

被虐体質特有の、暴力を受けた際に笑みを綻ばせる行為。

腕を切断された筈なのに、淵東クズハは唾液を垂らしながら満面の笑みを浮かべて引き笑いをする。

 

「あぁ、チキショウ、こんな痛ぇのは、アニキが俺の局部を蹴り潰した時以来だぁ……あぁ、やべぇ……ひひっ、痛過ぎて、ケツ穴が緩んじまうぜぇ……」

 

下品な台詞を並べる。

だが千金楽アカシが唖然としたのは彼の顔でも、その言動に対してでも無い。

斬り飛ばした筈の腕部。

切断面から網に置いた餅の様に膨らみ、腕部の形状へとカタチが変形し、元の腕へと戻ったのだ。

人間の再生機能の限界を超えた異常事態に、驚きを隠せなかった。

 

「良いじゃねぇの……〈散華流廻(さんげりゅうかい)〉、俺に丁度良い魔剣妖刀だぜ」

 

掌を動かし、指の開閉を何度もしながら神経が繋がっているかどうか、感触が働いているかどうか確認した末に、淵東クズハは千金楽アカシを見る。

 

「しっかし、惨いなぁ、腕を斬り落とすなんて、そんな非道な性格で、アニキを殺したのか?千金楽アカシ」

 

魔剣妖刀と言う言葉。

その異常な程の再生能力は魔剣妖刀によるものらしい。

しかし、淵東クズハが所有する魔剣妖刀は、彼の腕諸共斬り飛ばした。

なのに何故、再生能力が発動しているのか分からなかった。

 

「……テメェのアニキは潰れて死んだ、だけどお前はその心配はしなくて良いらしいな」

 

恐らくは不死身。

だがそれがなんだと言う。

一度殺しても殺したりない。

それ程までに殺意が過るのだ。

むしろ、有難い事だろう。

 

「言うじゃねぇか……千金楽アカシぃ、まあ?尤も、お前のオヤジは、なんともまあブザマで笑える死にざまだったらしいけどなぁ?」

 

逆瀬川サネミはおろか。

千金楽アキヒトすら侮辱した。

最早、容赦はしない。

ただ静かに、千金楽アカシは殺意を鋭利に研ぎ澄ませる。

 

 

 

 

「怒ったか?そうだ、それが、俺の感情だ、ある意味、俺とお前は同じなんだよ」

 

同じ人間?

思わず笑ってしまう様な台詞だ。

頭に血を昇らせた千金楽アカシは捨て吐いた。

 

「どこがだ、俺は、お前とは違う」

 

その否定的な台詞に嬉しそうに答える淵東クズハ。

 

「なら質問だ、テメェはアニキを殺しやがったが……アニキがテメエに何をした?その怒りはアニキに苦痛を与えられたが故の怒りか?それとも、テメエのだーい好きな家族が殺されたが故の恨みかあ?」

 

……そんな事、決まっている。

分かり切った答えは問答すらする必要など無い。

だが、言わなければ鬱憤が晴れない。

だから千金楽アカシは答えるのだ。

 

「お前が、お前達がッ!!俺の父さんと母さんを殺した、アカネを危険な目に遭わせた!!大切な人たちを、お前達の勝手な行為で失い、傷つけたッ!!」

 

成程、と頷く。

淵東クズハはゆっくりと歩き出しながら、自らの切断された腕を回収した。

そして、その手に握り締めた刀を回収して、刀を軽く振るう。

 

「ほら一緒だ、俺も、アニキを殺された、あの人は俺の大切な人だった、それを殺された恨みを晴らす為に、こうして復讐してんだ」

 

違う。

断じて違うのだ。

千金楽アカシは鞘を構える。

刀の柄を握り締めて戦闘態勢へ移る。

 

「重みが違う、俺は家族を殺されたッ!大切な家族を失ったんだ!!……あんな男のせいで、生きていて欲しかったのに!!」

 

脳裏に過る家族の顔。

その言葉を聞いた淵東クズハは、口を大きく開けて笑う。

 

「ぎ、ひゃひゃ……やっぱ同じじゃねぇか、俺とアニキは血は繋がらない関係だけどよぉ……テメェだって同じだろぉが」

 

指を千金楽アカシに向けながら告げる。

 

「血の繋がらない家族、言ってみれば赤の他人……俺とアニキの関係性と同じだ、それともなにか?『俺と家族には血は繋がってないが、家族の絆で繋がってる』なんて言う気か?……あぁそうだ、俺も『アニキとは血は繋がって無いが、それでも特別な関係で繋がってた』……俺とお前の何が違う?」

 

その言葉に反論する事無く千金楽アカシは聞いていた。

ただ、相手が何を言おうが、動揺などする事は無かった。

静かに、淡々と、相手の主張を聞いている。

 

「それとも……一緒に居た年月で大別をするかあ?長年一緒に居て、情も絆も深まった仲だと……そんなの俺が知るかよ!!年月も思い出も、その重みって奴もッ!!なぜなら、てめぇがッ!俺と、アニキの長い年月なんざどうでもいいと思う様になぁッ!!」

 

そして、千金楽アカシは相手の全てを吐き出した末に言い返す。

どれ程、講釈を垂れようと、それは淵東クズハの主張でしかない。

本人の視点ではどちらが悪か、どちらか善か、視る方向によっては善悪は替わる。

ならば、もっと客観的に見れば良い、それを見た上で、千金楽アカシは言い放つ。

 

「望月アクザが……俺の家族を殺さなければこんな事にはならなかった、揚げ足を取るなよ、最初に始めた奴が悪い」

 

前提として間違っている事を指摘する。

そもそも、この諍いを起こしたのは望月アクザ。

彼が事を起こさなければこの様な事態になっていない。

似た者同士だとか、そんな話はどうでもいい。

始めた以上、終わらせる他ない。

 

「あぁ、その通り、実質、八つ当たりかもな、だけど……俺はお前を恨み続ける、その為にこの一年と半分を、クソみてぇな慈善団体に属してやったんだからよ」

 

語り合いは終わる。

千金楽アカシは刀を構える。

淵東クズハも武器を構えた。

両者の殺し合いが始まる。

 

 

崩創(ほうそう)流斬術戦法―――〈-軋爪-(きしりづめ)〉ェ!!」

 

淵東クズハが刀を振るう。

千金楽アカシは抜刀と同時に闘猛火を放出。

斬撃が空を切り裂き重力の歪みを生み出すと、淵東クズハが射出した斬撃が軌道を変えた。

 

地面を蹴る淵東クズハ。

千金楽アカシは納刀した刀に闘猛火を流し込む。

 

「夜咫烏-〈(かさね)〉ッ」

 

抜刀。

射出される斬撃を、淵東クズハは避ける事無く突進。

斬撃を受けて上半身と下半身が乖離した。

が、切断面からウジ虫の如き細胞が蠢き出すと、胴体を繋ぐ。

肉体を切り裂かれる行為は激痛だろう。

だが痛みを覚える所か興奮し、目を大きく見開きながら、再び刀を振るう。

 

「崩創流斬術戦法―――〈-軋爪-(きしりづめ)〉」

 

息を吐くと共に廃棄瓦斯を放出。

刀身に宿る闘猛火を振るい斬撃を飛ばす。

 

「何度も同じ手を……」

 

刀を振るおうとした。

だが、その斬撃は千金楽アカシの目前で急降下し、地面に斬撃の痕が残る。

 

(不発?)

 

一瞬の疑問。

地面に刻まれた斬撃。

それはまだ生きていた。

木々を軋らせる様な音を響かせながら、傷跡が広がっていく。

それは千金楽アカシに向かっていき、直感的に触れたら不味いと察する。

地面を蹴り上げて跳躍すると共に、淵東クズハが接近する。

大きく刀を振り上げて攻撃をしようとする淵東クズハ。

千金楽アカシは刀を抜刀すると共に上から下へと振り下ろす。

 

「夜咫烏〈(おとし)〉ッ!!」

 

闘猛火を莫大に消耗させ、刀へと流し込んで刀を振るう。

その際に斬撃の範囲の重力を下方へ向けさせ重圧を掛ける。

 

「がッ」

 

一瞬動きを止める淵東クズハ。

地面に着地する千金楽アカシは一歩踏み出し、刀を真上から真下に向けて振るう。

重圧を掛けられて動きが鈍い淵東クズハは、闘猛火を刀身から放出。

切っ先のみに集中させて放出させた事で重力に逆らう程の推進力を得ると、刀を上げてアカシの刀を受け止める。

 

「はぁぁぁ……すぅぅぅッ」

 

呼吸をする千金楽アカシ。

更に闘猛火を生成すると刀身へ流し込む。

紫と黒の色を帯びた刀身は、重圧を纏い淵東クズハの刀は、淵東クズハの刀を破壊し、腕を切り裂く。

 

「ぎッ、ひひッ!!」

 

切り傷を腕に作って嬉しそうにする淵東クズハ。

刀身の半分が砕けた刀を握り締めた状態で背後へと身体を動かす。

重圧の重しが発生する領域から脱すると共に、淵東クズハの傷は次第に修復していく。

 

「切り傷一つ作って満足かあ?この程度の傷なんざ〈散華流廻〉で治るぜ?」

 

得意気に語る淵東クズハだが、逆に千金楽アカシは冷静だった。

傷口が修復されていくが、淵東クズハは傷口に異変を覚えた。

次第に、腕部が重たくなっていくのが分かる。

だらりと腕を下ろしてしまう淵東クズハに、千金楽アカシは刀を納刀しながら告げる。

 

「傷口一つ治す程度で満足なんだな」

 

夜咫烏〈(かしり)〉。

傷口から千金楽アカシの闘猛火を流し込み、傷口に重さを与える斬術である。

だらりと垂れた掌が開かれる、紋様が刻まれた指先が見えた。

しかし、淵東クズハは腕の重さを承知の腕で人差し指を口に咥えると顔を上げる。

それと共に上腕部位を折れた刀を押し付ける。

闘猛火を流し込んだ刃は疑似的な〈流刃〉となり切断能力が上昇する。

その状態で腕を切り裂く事で、淵東クズハは重たくなった腕を捨てた。

人差し指を前歯で噛んでいるので、口から腕が垂れていた。

痛みを噛み締めている為に、人差し指が前歯に食い込んで、そして淵東クズハは人差し指を噛み切ると、腕が地面に落ちる。

 

「ぎひっ、ひゃひゃひゃッ」

 

楽しそうに笑いながら、人差し指を飲み込む淵東クズハ。

切断された腕は、白色の蛆虫の様な細胞がうねうねと蠢き、次第に腕を形成していく。

 

「すげぇなぁ……魔剣妖刀、身体を粉微塵にしても、治るんじゃねぇのかあ?」

 

笑いながら、淵東クズハは折れた刀を投げ捨てる。

相手は傷一つ無いが、それでも武器を失った。

状況として言えば、負傷している千金楽アカシであるが、それでも有利だと思えるだろう。

だが。

 

「武器が消えたと思ったろ?……安心しろよ、お披露目だぜ?〈散華流廻(さんげりゅうかい)〉」

 

そう言うと共に。

淵東クズハは後ろの首筋。

脊髄に当たる部分に手を伸ばす。

そして、異様に盛り上がりを見せる部分に爪を立てる。

皮膚を破り、肉を切り裂き、骨を掴むと、思い切り引っ張った。

苦痛に対し恍惚な表情を浮かべながら、淵東クズハはそれを引き抜く。

刃に切れ込みが入った、さながら刃折器の様な見た目であり、その刃の合間からは、赤黒い血管や筋肉繊維の様なものが見えた。

甲殻類の脚の様な武器を、淵東クズハは軽く振るう。

 

「これが〈散華流廻〉だ、こいつは臆病者でなぁ……複数の斬人の中で、俺が選ばれた、この魔剣妖刀はよぉ、とにかく死にたくないって渇望に溢れた代物でなぁ?実力があって、一番若い俺が、生存確率が高いと判断されて、選ばれたんだ……お陰で俺は、不死身だぜ?」

 

斬られても死なない。

即ち殺す事が不可能。

痛みを度外視すれば、無敵の魔剣妖刀であろう。

だが、そんな事、千金楽アカシにはどうでもいい。

 

「それがどうした?それを引き抜かなくちゃならない状態にまで追い込まれたって事だろうが、己惚れるなゴロツキ」

 

相手が不死身だろうが関係ない。

千金楽アカシの言葉に舌打ちをする淵東クズハ。

彼もどうやら余裕が無い様に見えた。

 

 

「行けやッ!!」

 

刀を振るう。

距離は空いている。

だが、〈散華流廻〉は鞭の様に伸びる。

蛇腹剣と呼ばれる、複数の刃が連結し、振るう事で関節部分が伸びる武器。

それが〈散華流廻〉の魔剣妖刀としての形状であるらしい。

 

(斬ってやるッ!!)

 

魔剣妖刀諸共切り裂こうと考える千金楽アカシ。

刀を抜き放つと共に魔剣妖刀に向けて闘猛火を放つ。

 

「夜咫烏ッ〈落〉ッ!!」

 

切り裂いた空間に重圧が発生する。

魔剣妖刀の関節が伸びた刃が空間に入ると、重圧によって刃が重圧によって地面に叩き付けられる。

 

「っ」

 

淵東クズハは魔剣妖刀を引っ張った。

重力が圧し掛かり、引っ張っても回収する事が出来ない。

ならばそれを利用し、魔剣妖刀の関節を縮ませる。

これにより魔剣妖刀は重圧によって抑えられた刃の方へと高速で接近する。

それは即ち、千金楽アカシの方へと急接近した事となる。

 

「〈刺〉〈突〉―――ッ」

 

人差し指と中指を伸ばして揃える。

闘猛火による針の様な射出が来ると考えた千金楽アカシは攻撃せずに相手の行動を読む。

腹部に感じる痛み、それを我慢しながら、相手が何時攻撃をするかを待つ。

それを回避したと同時に攻撃を行い負傷させるそう考え相手に分からぬ様に深く呼吸を行うのだが。

 

(―――来ないっ)

 

人差し指と中指を構えた状態で千金楽アカシの顔面に向けて突きを繰り出す。

指が眼窩を狙うので、顔を動かして相手の突きに合わせて指に頭突きを行う。

淵東クズハの中指の爪が剥げ、第二関節から指が曲がらぬ方向へ曲がる。

痛みを感じる間を相手に与える事無く、千金楽アカシは刀を引き抜く。

零距離での抜刀、夜咫烏〈襲〉を放つ。

胴体を斜めに切り裂かれた淵東クズハだが、片方の手で握り締める魔剣妖刀の関節部位に伸びる繊維が紅色に光った。

それは鳴動であり、主が負傷をしたと言う事実を悟り、関節部位から針に糸を通した様な鋭い針が繊維から出ると、淵東クズハの手首に突き刺さり、腕部の皮膚を通って負傷した部分へと向かい出す。

肉体の内側から縫い付ける様に〈散華流廻〉が淵東クズハの肉体を癒した所で、再び牙を剥き笑う淵東クズハは千金楽アカシを睨んだ。

 

(〈襲〉を使った後ッ廃棄瓦斯の排出、再呼吸、追撃ッ)

 

息を吐く最中。

淵東クズハは千金楽アカシの腹を思い切り蹴った。

衣服を血で濡らした、淵東クズハが空けた傷穴に向けて、だ。

 

ぐじゅりと血が衣服に染み込む。

眉を一つ顰めるが、奥歯を噛み締めて構え直す。

 

(斬っても無理かッ、いや……あの魔剣妖刀)

 

鞘に闘猛火を貯め込む。

呼吸を行う様を見た淵東クズハは蛇腹の魔剣妖刀を振るう。

身を屈めると共に、千金楽アカシは攻撃を回避する。

魔剣妖刀そのものを破壊する事は、試す事はしない。

もしもそれを行えば、魔剣妖刀の破壊が出来ない、ならば次の手を、と順番に対策を取られてしまう。

 

(魔剣妖刀を握り続ける限り、奴は生き続ける、だったら)

 

大きく息を吸う。

炎子炉を全力で活動させ、闘猛火を生産。

肉体へと駆け巡らせる〈炉心躰火・爆〉により瞬間移動めいた高速移動を発揮。

 

 

(来いッ!千金楽アカシィ!!)

 

大きく魔剣妖刀を振った際、全ての刃の関節部分を伸ばし切った状態で戻す迄の間に時間差が生まれる。

それは敢えて、千金楽アカシを接近させる為に行った行為だった。

 

(此処、だッ!!)

 

千金楽アカシは、淵東クズハの両腕を捉える。

刀を振り上げて、夜咫烏〈刃〉により重力の闘猛火を宿す。

重圧を発生させる刀身を、その腕を切り裂く為に振り下ろす。

 

「ぐっ!!ぎゃッ!!」

 

そして、淵東クズハの両腕を切り裂いた。

 

切断された腕は、宙を舞う。

それと同時に、淵東クズハに向けて体当たりを行う。

淵東クズハを求める魔剣妖刀の触手が、彼を捕まえない様に。

 

(これで、終わりだッ)

 

腕が繋がらなければ、回復能力は発動しない。

ならば後は止めをさすだけ。

 

(勝てる……勝つッ!!)

 

千金楽アカシは淵東クズハへ向かい、刀を振るう。

その憎たらしい笑みを浮かべる顔も、これで終わりだと。

だが……千金楽アカシは勝利を確信した淵東クズハの顔を目に映した。

 

(口、が開いて……)

 

淵東クズハ。

その喉奥から見えるのは。

彼が腕を切断する際に咥えた、指だ。

人差し指が、喉奥に張り付いている。

 

「〈(ひぃ)〉〈(ふぅ)〉―――〈(ひゃあ)〉ァ!!」

 

指と喉が癒着しているのだろう。

手足を繋げる為に、魔剣妖刀から溢れる闘猛火が肉体へと逆流。

排気孔を駆け巡り、其処から闘猛火を分泌させて肉体を再生させる。

手足を繋げた後、排気孔がきちんと手足に繋がる様に、あるいは、繋げた後に排気孔の管を無理矢理作り、繋げているのだろう。

それの応用であり、喰い千切った指先を喉奥に着け排気孔を繋げたのだ。

 

其処から闘猛火を流し込む事で、焔転変火によって闘猛火が射出され……千金楽アカシの喉を貫いた。

 

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