幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー   作:三流木青二斎

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石動京へ行こう

 

「アカシくん、強くなったね」

 

汗を拭いながら銅島先生は俺を褒めてくれる。

俺もタオルで顔を拭きながら銅島先生の顔を見た。

 

「先生に教わったおかげです、ありがとうございますっ」

 

俺が元気にそう言うと、銅島先生は嬉しそうにはにかんだ。

そうして、井戸で組んだ桶から水をタオルに浸して、再び体を拭く。

井戸の水は冷たくて、じわじわと流れる汗がぴったりと止まる。

同時に、炎子炉に繋がる排気孔も熱が段々と冷めていって気持ち良く感じていた。

 

「…そうだ、アカシくん」

 

そう言うと、銅島先生は衣服を着込み出す。

銅島先生の体は鋼の様な筋肉質で、更に加えて体中に切り傷や負傷の痕が沢山あった。

その事から、銅島先生は余程、過酷な場所で戦い続けて来たのだと言う事が良く分かった。

父さんも、銅島先生程じゃないけど…それでも、剣の腕も銅島先生の方が上を行く。

 

銅島先生の背中を目で追っていく。

そして、縁側から廊下を歩き出して姿が消えると、再び銅島先生が現れた。

その手には、一枚の紙が握り締められている。

 

「ほら、これをあげるよ」

 

と。

銅島先生はそう言って、俺にチケットを渡してくれた。

どうやら、展示会の無料チケットであるらしく、そのチケットに書かれているタイトルを確認する。

 

「…〈炎命炉刃金(ヒヒイロハガネ)の歴史展〉?」

 

俺はチケットを受け取った状態で首を傾げた。

炎命炉刃金…と言うのは聞いた事はある。

抜刀官が腰に携えている、闘猛火を流し込み、斬術戦法を使役する為に扱われる、専用武器の事だ。

緋色鋼金(ヒヒイロカネ)と呼ばれる鉱石と別の鉱石を混ぜ合わせて鍛錬する事で、炎命炉刃金が完成するのだ。

その炎命炉刃金の歴史を蒐集した展示会が、石動京で行われる、と書いてある。

 

石動京(いするぎきょう)…かぁ」

 

俺は思わず呟いた。

もしも、抜刀官になるのならば、俺はこの石動京へ向かう事となる。

石動京は、この世界で言う大和国の首都だ。

炎命炉刃金が採取出来る鉱石がある土地であり、其処を囲う様に、司法機関〈大国主〉があり、その管轄として抜刀組織〈武御雷〉、抜刀官を育成する〈火群槌試刀館学院〉がある。

 

しかし、石動京までの道のりは、田舎町じゃあかなり長い旅路となる。

この世界には未だ、飛行機と言うものが無いのだ。

なので移動方法は蒸気機関車であり、よく、蒸気機関車の汽笛の音が町に聞こえてくる。

 

「勿論、宿泊費と、交通費も貰っている、これも一緒にあげよう」

 

と、銅島先生は破格の対応をしてくれる。

それは俺にとってはとても嬉しい事なのだが。

しかし、同時に疑問と、心配する心が生まれてしまう。

 

「先生は、これを使わないの?」

 

そう聞くと、銅島先生は微笑みながら頷いた。

 

「あぁ、貰い物でね、部下がくれたんだが…娘の体調を考えると、どうしても遠出は出来ない、そもそも、私はこの地域の管轄では偉い立場だからね、もしもの事を考えてしまうと…、どうにも遠出が難しい、だとすれば、そのまま使わずに持つのも勿体無いし、金券に変えてしまうのも不義理だ、部下に返すのも悪いし、面子もある、そう考えると、代理で行って貰った方が、私も有難いんだ」

 

銅島先生の言葉は、自然と俺を納得させてしまうものだった。

しかし、子供の一存で決める事は中々に難しい事だ。

父さんや母さんに銅島先生から貰ったと言っても、高価なものは貰えないから返して来なさいと言われるだろう。

しかし、銅島先生がせっかく下さると言うのだから、有難く貰いたいのだが…俺が反応に困ってしまった時に、銅島先生は俺の顔を見て察してくれた。

 

「両親を説得させるのが難しいと言うのなら、次の休日まで待っていなさい、キミのお父さんに直接、話をつけておこう」

 

 

そう言われたので、俺はその方が良いと判断した。

早速銅島先生にチケットを返すと頭を下げる。

 

「ありがとうございます、銅島先生、おねがいしますっ」

 

銅島先生は遠慮せず、とだけ言って、そしてもう一つ、付け加えて言う。

 

「ただ、お土産は用意して欲しい、遠くに行く事の出来ないハクアの為にも、土産話をしてくれれば、私は十分に嬉しいんだが」

 

言われなくても、きちんとお世話になる方には御土産を買おうと考えている。

 

 

「ハクアに、何が欲しいか聞いておかないとな…」

 

俺は、銅島先生に断りを入れて縁側からハクアの部屋に入る。

既に俺とハクアは旧知の仲、それを越えて許嫁と言う関係に落ち着いていた。

御土産の事を考えながら、扉の前から声を掛けずに部屋に入る。

 

「ハクア…あのさ」

 

と、言い掛けた所で、俺は目を見開いた。

暖かな部屋の中、布団の上に座りながら、寝間着を脱いで上半身裸になるハクアの姿が目に写る。

あまり、長湯も出来ないハクアは、汗を掻けば濡れた布巾で体を拭う。

流石のハクアでも、生まれたままの姿を異性に見られるのは恥ずかしいらしく、あまり部屋に入れたがらなかった。

だが、余りにも俺が考え事をしていて、無遠慮に入ってしまった事で、ハクアは油断して、自らの脇を布巾で拭う姿を晒してしまった。

 

「あ、わ…悪いッ」

 

そう言って俺は扉を閉ざそうとする。

けれど、ハクアは少し顔を赤くしながら、「まって」と声を告げて扉を閉めるのを止めさせた。

 

「良いよ、アカシちゃん、入って来ても」

 

と、まさかの許可を得た事で、俺は扉を、音を立てる事無くゆっくりと閉める。

ハクアは寝間着を着込み直しながら、少し恥ずかしそうに言う。

 

「ごめんね、アカシちゃん、気持ち悪いもの、みせちゃって」

 

俺は少し気恥ずかしい気分になっていたが、ハクアの言葉に興奮は鎮まった。

 

「え?どういう意味だよ、気持ち悪くなんて…」

 

そう言い掛けたが、ハクアは首を左右に振った。

 

「ううん、自分でも分かってるの、干乾びたミイラみたいな、身体だから」

 

…確かに、ハクアの体は余分な脂肪が無く、筋肉も付いていないので、骨と皮だけかと思う程に細い。

先程見たハクアの体は未発達であり、肋骨が浮いて見えた。

だが、それを気持ち悪いとは思わなかった、本当だ、そんな姿を見た所で、彼女の事を嫌いになる事すら無かった。

 

「そんな事ない、細い事は悪いわけじゃないんだ、どんな姿でも、俺はハクアの事が好きだよ」

 

健気で必死に生きようとする彼女が、嫌な気持ちになったり、不幸な気分など味合わせたく無かった。

何よりも俺は本心でそう言ってるし、ハクアはそれを聞いて少し嬉しそうに照れた表情を見せる。

 

「でも…もしも、大人になれても、ずっとこのままだったら…」

 

体が痩せ細ったまま。

女性としての魅力である乳房も育たなければ、女としての価値は無いとでもいうのだろうか。

この世界にとって、女性とはどの様な価値観で接しているのかは分からない、尊重をしているのが、男性よりも地位が低いのか、それは俺には分からない情勢だ。

けれど、少なくとも、身体が未発達で、成長出来なかったとしても、それで彼女の魅力が下がる要因にはならない。

すらりとした体でも、骨が見える様な痩せ細った体型でも、好きな人は好きなのだ。

 

「ずっとそのままでも、俺はずっと、ハクアの事が好きだよ、もしも、ハクアの事で馬鹿にしたり、笑ったりする奴がいたら、俺がそいつをぶん殴ってやる」

 

そう言うと、ハクアは寝間着の袖で口元を隠しながら笑った。

 

「…ふふっ、嬉しいなぁ、アカシちゃん…アカシちゃんがそう言ってくれるのなら、ハクアは何も怖くないよ」

 

そう言うと、ハクアは両手を俺に向ける。

それは合図だった、俺はハクアの方に膝を突きながら歩き出すと、ハクアの腕の中に、身体を沈み込ませる。

ハクアの胸元で、俺は深く深呼吸をすると、ハクアは嬉しそうに俺を抱き締めた。

恐らくは強く、全力で抱き締めているのだろうが、彼女の腕力では、苦しみを感じる事は無かった。

 

「だいすき…だいすき…ずっといっしょだよ、アカシちゃん…おとなになったら、わたしの全部、アカシちゃんにあげるからね…」

 

其処まで言ってくれるのは男冥利に尽きるが…しかし、同時に寂しく思う。

所詮は子供の頃の約束、大人になれば、考えはまた違って来る。

きっとハクアは素敵な女性に変わるだろう、そうなれば、言い寄る男は沢山いる。

そうなれば、許嫁と言えども、俺の事なんて忘れてしまうだろう、そうなれば、こちらから許嫁の事は無かった事にしよう。

それがハクアにとって、幸せであるのならばそれで良いのだ。

今はただ、俺がハクアと一緒に居られる、この時間帯だけを幸せに考えて、今を過ごせればそれで良い。

 

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