スターミー(?)に狙われてる一般ガラル野郎日録   作:メガブリムオン

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日記以外の描写あり


3+α

 

 

□月&日

 

 

 久しぶりに二日も休みが貰えたので、あのホテルZにおじゃました。

 

 この間はツタでびっしりで完全に老朽化した廃墟だと思っていたが、一歩中に入った瞬間、その考えは見事に裏切られた。

 

 ホント室内は驚くほど綺麗だった。

 床も壁もきちんと手入れされていて、埃っぽさなんて微塵もない。古い建物特有の匂いはあるけど、不快というより、どこか落ち着く感じだ。

 

 で出迎えてくれたのは、あの時のお爺さん……いや、AZ(エーゼット)さんだった。

 相変わらず背が高くて、近くに立つと俺が見上げれられる形になるのは変わらない。

 

 まあ、あの時は互いに名を名乗ってなかったので挨拶をして、少しだけ世間話をした。街のこととか、最近の騒がしさとか、そういう当たり障りのない話だ。

 AZさんは、俺の話をうんうんと頷きながら聞いてくれて、時々短く相槌を打つ。多くは語らないけど、不思議と話しやすい。言葉が少ない分、ちゃんと聞いてくれている感じがする。タクシー運転手ってのはお客さんと話すことも多いからとても参考になった。

 

 

 ああ、後可愛らしいフラエッテがいたな。

 黒い花を持っている少し不思議なフラエッテだったが、とっても明るくて俺のアーマーガアにも物怖じせず優しく接してくれていた。

 

 いつもは俺以外には少し気性が荒いアーマーガアの方も珍しく大人しくしていて、どうやらあの子を気に入ったらしい。

 AZさんはその様子を見て、ほんの少しだけ目を細めていた。言葉はなかったけど、良い関係なんだなってのは何となく分かる。

 

 なーんか羨ましいような、でも踏み込んじゃいけない気もする、不思議な距離感って感じ……俺とアーマーガアもあそこまではまだいけてない。

 

 にしてもこうしてホテルで日記を書いているが空気も含めて、ここは思った以上に居心地がいいね。

 少なくとも、外の騒がしさを忘れるには十分だった。クチコミに星5つけとこ。

 

 

 

 

 

□月=日

 

 

 ヤヤコマの羽音とか、外の気配で目が覚める感じじゃなくて、ただ自然に目が覚めた。こんな朝はいつぶりだろう。

 

 朝食はAZさんが用意してくれた焼きたてのパンと、スープ。こういう派手さはないけど、温かくて素朴なのが俺は好きだ。カレーの次に。

 

 

 そうだ。一番重要なことを書いてないな。

 そう、あの時食事をしながら、AZさんと他愛もない話をしていた流れで、ふと思い出したので、この間見かけたヘルガー(?)の写真を見せてみた。

 

 写真を見たAZさんは、少しだけ眉を動かして、しばらく黙り込んだ。

明らかに心当たりある反応だなって思っていたら、それは"ジガルデ"というポケモンだそうで、カロス地方に伝わる伝説のポケモンの一角だそうだ。そんな凄い存在に対して気軽に写真とか撮っちゃってるけど、コレ大丈夫なんですか?

 

 

 にしても、伝説って聞くと、まだガラルにいた頃、街全体が異様な空気に包まれたあの騒ぎを思い出す。

 

 空が赤黒く染まって、ダイマックスしたポケモンが制御不能になって、大暴れしたあの災害、幼なじみが言うには"ブラックナイト"………だっけ?アレはちょっと複雑だったが、()()()と無限のエネルギーを持つ伝説のポケモンが引き起こしたもので結局色々あって伝説の英雄たちによって解決したってオチだけど、あの頃はホントマジで大変だったよなぁ……

 

 

 とにかく、AZさんが言うにはどうやらジガルデというのは、自然や世界の秩序を保つ役割を持つポケモンだそうで、そんなポケモンに見られていたってことはきっと何かあるということ…らしい。

 どういう事なのかイマイチ想像出来なかったが、つまりカレー食べたかったわけじゃなかったんだな。いやでもその割にはがっついてたけど………

 

 

 にしてもこの2日間AZさんと話してたくらいしかしてないのにとっても休めた。また来よう。

 

 

 

 

 

□月/日

 

 

 休み明けの朝、仕事前に回ってきた通達が物騒だった。

 最近、ミアレ周辺で金品やポケモンを強奪する事件が発生しているらしい。

 

 被害に遭った人の話だと、犯人は複数犯で相当なスピードで逃走したとかで、目撃情報も断片的。

 夜間や人気の少ない場所は特に注意するように、とのことだった。

 

 ポケモントレーナーとしては、かなり腹立たしい話だ。

 物を盗むのも論外だけど、ポケモンまで奪うとなると話は別だろう。

 

 あいつらは道具じゃないし、奪われる側の気持ちを思うと胸糞が悪い。

 

 とりあえず今日は、いつも以上に周囲に気を配って行動することにする。

 

 

 

 

 

△月〇日

 

 

 

 例の強奪犯のせいで、人の通りが明らかに少なくなっているし、今日は早めに仕事を終える羽目になった。

 

 ミアレに来てからマジで忙しいなぁ、とは思ってたがこういう形で街が静かになるのは全然望んでない。

 

 そもそも人が減ると楽かって言われたら、そうでもないし、何より空気が重い。昼間なのに、みんな妙に周りを気にして歩いてる感じが嫌でしょうがない。

 

 当然警察もかなり動いてるがそれとは別に、なんか何とか組みたいな“別口”の人たちも動き出してるって噂を聞いた。

 詳しくは知らないけど、関わりたくないタイプの人たちだってことだけは分かる。

 

 事件が早く解決すればいいんだけど、下手に長引くと余計に面倒なことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の仕事を終え、ゴンドラを倉庫に入れた頃には、空はすっかり茜色に染まっていた。

 客足が早々に途切れたせいで、体はそこまで疲れていないはずなのに、気分だけが妙に重い。

 

 ゴンドラの固定具を外し、アーマーガアの前に立つ。

 風に晒され続けた羽は少しざらついていて、いつもより呼吸も深くなる。

 

 

「お疲れ、アーマーガア」

『ガアァ……』

 

 首元の金属具を外し、羽の付け根を軽く叩く。

 それだけで、アーマーガアは理解したように一歩下がった。

 

 

「ゆっくり休んで」

 

 モンスターボールを掲げると、赤い光が広がり、巨体が静かに吸い込まれていく。

 

 倉庫の中は静かだった。

 ゴンドラが並ぶこの場所は、昼間なら人の声と羽音で満ちているのに、今は風が鉄骨を鳴らす音しかない。

 

 そうしてシャッターを半分ほど下ろし、帰り支度を始めると腹の奥が、今さらになって自己主張を始めていた。

 

 

「うーん、今日の夕飯は………パスタカレーだな」

 

 独り言が、やけに広く響いた。さっきまで人の気配があったはずなのに、今は自分の声だけが残る不気味な感覚。

 

 そんな時だった。

 

 

「ん?」

 

 ───コツ、コツ、と。

 靴音が複数、倉庫の奥から近づいてくる。一人じゃない。最低でも、三……いや、もっといる。

 

 

 反射的に振り向くと、薄暗い影の向こうから人影が現れた。

 

 揃いの真紅のスーツ。黒縁のグラスをかけた男女が数名、まるで示し合わせたみたいに整った足取りで歩いてくる。

 

 その中心に立っていたのは、ひときわ目立つ男だった。

 

 体格はがっしりしていて、着ているスーツは白を基調に、差し色のように赤が入っており、ハゲ……いや、スキンヘッドだ。そいつは、俺の前で足を止める。

 距離は、三歩分ほど。近すぎず、遠すぎず──逃げるにも、構えるにも微妙な間合い。

 男は一度、倉庫の中をぐるりと見回してから、俺に視線を戻す。

 

 

 

「悪ぃな……金、出してもらおうか」

 

(………例の強盗犯か。だりぃな)

 

 内心で悪態をつきつつも、表には出さない。相手の人数も分からないし、ここで揉める意味がない。ワイルドエリアとかで一人でキャンプしてると、なんかよくカツアゲされてたからな……こういうのには慣れてる。

 

 俺は小さく息を吐いて、作業着の内ポケットに手を入れた。

 

 

「ほら、これでいいだろ」

 

 そうぼやきながら、財布を取り出し、中身をざっと確認する。

 こういうのは端数はどうでもいい。目立たず、さっさと終わらせるのが最優先だ。

 

 まとめて握った紙幣を、床を滑らせるように男たちの足元へ放る。

 ひらり、と軽い音を立てて、スキンヘッドの前で止まった。

 スキンヘッドの男は、足元の札束に視線を落としたまま動かなかった。拾う気配も、合図を出す様子もない。

 

 

「……はは」

 

 短く、乾いた笑い声。

 男はようやく顔を上げ、俺を見る。その目は金じゃなく、俺の背後、さっきまでアーマーガアがいた場所を舐めるように見ていた。

 

 

 

「金は金でありがたい」

 

 男はそう前置きしてから、言葉を続けた。

 

 

「だがな。本命は──そっちだ」

 

 

 赤いスーツの一人が、俺の腰元を指差す。

 モンスターボールが収まっている位置。

 

 

「ポケモンを寄越せ」

 

 

 一拍、思考が止まる。

 次の瞬間、腹の底に溜まっていた不快感が、一気に沸点を越えた。

 

 

「噂通りってことか………やっぱムカつくわ」

 

 頭の奥で、はっきりと何かが切れる音がした。

 

 

「ポケモンは金と一緒に並べていいモンじゃねぇんだよ」

 

 声が低く、荒くなるのが自分でも分かる。

 腰に手を伸ばし、迷いなくモンスターボールを掴んだ。スキンヘッドは何も言わず、ただ薄く笑っている。その余裕が、さらに癪に障った。

 

 

「休んでるとこゴメンな……いくぞ、アーマーガア!」

 

 

 ボールを構え、解放操作をする。

 いつもの感触。いつものはずの、軽い反動。

 なのに、赤い光が出なかった。

 

 

 

「……あれ」

 

 もう一度、強めに操作する。

 だが、ボールは沈黙したまま、ただ手の中で冷たく重い。

 赤いスーツの連中の中から、低い笑い声が漏れた。

 

 

「無駄だ」

 

 スキンヘッドが、ようやく口を開く。

 その腕には、見慣れない金属製の装置が装着されていた。小さなランプが、不規則に明滅している。

 

 

 

「そのボールはもう使えねぇよ」

「……あ?」

「簡単な話だ」

 

 男は指先で装置を軽く叩く。

 

 

「ボールジャックシステム……モンスターボールの制御系にウイルスを流し込んで、所有者の権限を上書きする。要はお前のモンスターボールは全部使えねぇってことだ」

 

 赤いスーツの連中が、じわりと間合いを詰めてくる。

 

 

「選択肢は二つだ」

 

 スキンヘッドが指を鳴らした。

 次の瞬間。赤い光が、倉庫の床に次々と弾ける。

 それも一体、二体じゃない。ヘルガー、ドラピオン、ズルズキン、ゴルーグ……タイプも姿もバラバラなポケモンが、無秩序に現れる。

 

 

「渡すか、死ぬかだ」

 

 ヘルガーの喉奥で、低い唸り声が転がった。

 ドラピオンの鋏が、ぎちりと嫌な音を立てる。

  視界の端から端まで、完全に包囲された。

 

 

「……へぇ」

(…………どーしよ。ポケモンバトルならぜってぇ勝てんのに勝負すらさせてくれないんですけど)

 

 俺は、ゆっくりと息を吐いた。アレだけ燃え上がっていた怒りが一気に消え、逆に焦りが湧き上がって来る。心臓の音がやけに大きく聞こえるのを、必死で押さえつける。

 

 

「こんな好青年一人に、そこまでやるかよふつー」

 

 肩をすくめて、できるだけ軽く言う。

 震えが声に出ないよう、喉に力を入れた。

 

 

「噂の強盗団ってのは、随分と臆病なんだな」

「ははっ、俺らは強盗団じゃねぇ、新フレア団だ」

 

 胸を張ってそう名乗るスキンヘッドを前に、俺は一瞬きょとんとした。

 

 

「……フレア団?」

 

 思わず、聞き返す。

 脳内で必死に記憶を漁るが、そんな組織名に覚えがない。一年以上もミアレで住んでいたが、一回も聞いたことなかった。

 

 

(フレア……?なんだそれ)

 

 団とか聞くと、ガラルで有名なのはエール団だ。騒がしいとあるファンクラブ集団で、ジムチャレンジャーを妨害行為をしてくるあれ。

 フレア、って名前もどこかノリが似ている気がしてくる。

 

 

「な、なんかのファンクラブか?」

「……は?」

「いや、ほら。フレアって名前からしてさ。情熱的応援する団体みたいな。それともフレー、フレー的な応援の意味合いを込めてるやつ?」

「殺すぞ」

 

 即答だった。周囲のポケモンたちが、その声に反応して一斉に殺気を強める。ヘルガーの炎が、ぼっと大きく揺らぎ、ズルズキンが唸り声と共に一歩前に出た。

 

 

「勘違いするな」

 

 もう結構キレてるスキンヘッドは低い声で言い放つ。

 

 

「俺たちは遊びじゃねぇ。あのお方の意思を引き継いだ崇高な──」

(コレ、どうしようかなぁ)

 

 スキンヘッドが何かそれっぽい理念を語り始めた、その瞬間には俺の意識は完全に別の方向へ切り替わった。バレないように視線だけで、倉庫内をなぞる。

 

 左右──ポケモン。

 前──スキンヘッドと取り巻き。

 背後──ゴンドラと鉄骨。

 

 

 

(出口は前のシャッターだけ…か)

 

 倉庫の出入口は一つ。半分ほど下ろしたシャッターが、鈍い金属音を立てて微かに揺れている。逃げ道は、あそこしかない。

 

 だが、その前にいるのは複数のおっさん達、間にいるのは、戦闘向けのポケモンばかり。ヘルガーの炎、ドラピオンの鋏、ゴルーグの巨大な拳。

 

 

(ポケモンは出せない。交渉は……論外)

 

 結論。

 

 

(被弾覚悟で突っ切るしかないよなぁ……)

 

 喉の奥が、ひくりと鳴った。正直、怖い。めちゃくちゃ怖い。ポケモンと大人数人を相手に生身で突っ込むとか、正気の沙汰じゃないって自分でも思う。

 

 

「────ってことだ。お前みてぇなガキには理解出来ないだろうがな」

「ん?あーはいはい、熱心ですね」

(……それでも、やるしかないよな)

 

 奥歯を、きつく噛みしめる。

 視線をシャッターに固定し、脚に力を込めた。

 

 

 

──行く。

 

 そう決めた、その瞬間だった。

 

 頭上で、金属を殴りつけたような鈍い衝撃音が炸裂した。反射的に肩をすくめた直後、倉庫の天井から何かが外れ、影が落ちてくる。

 

 

「「「っ!?」」」

「え」

 

 次の瞬間、床が揺れ、粉塵が一気に舞い上がり大きな音と衝撃に、ポケモンたちが一斉に動きを止める。

 ヘルガーが低く吠え、ドラピオンが反射的に鋏を閉じた。ゴルーグでさえ、一歩後退る。

 

 

「ゴホ、ゴホ………おええ、な、なんなんだ……?」

 

 粉塵が、倉庫の明かりを白く滲ませる。喉に砂埃が絡み、思わず咳き込みそうになる。

 誰もが足を止め、様子をうかがうしかなかった。

 ポケモンたちでさえ動きを鈍らせ、低い唸り声だけが、煙の中に沈んでいく。

 

 

 だが白く濁った視界の奥、揺れる粉塵の向こう。不意に、異質なきらめきが混じる。

 そして煙の奥で、一定のリズムで脈打つ光がある。赤でも、青でもない。紫がかった、不自然な輝き。

 

 

 その光は、次第に輪郭を持ち始め、粉塵が渦を巻く中で、星形の影が、ゆっくりと浮かび上がってくる。

 

 五本の突起。中心に埋め込まれた、宝石のような核。

 

 

 

 

 

『ヘアッ!』

 

 

 

 甲高い鳴き声が、倉庫の空気を切り裂いた。

 粉塵の中を突き破るように、光が一気に強まる。星形の影が、くるりと回転しながら完全に姿を現した。

 

 

 

 

 

「スターミー……?」

 

 

 

 





メモ

主人公:行動が狂人、ガラルにバトルが強い幼なじみと、頭のいい幼なじみがいる。運だけは昔から良い方。

AZ:ポケモンにストーカーされていたり、ジガルデとツーショットを撮っていることを笑顔で話す主人公に驚いている。

スターミー(?):視線を飛ばさずに近づく術を会得。主人公はマジで気づいていない

元フレア団:フレーフレーみたいな応援歌みたいなのを作ってる下っ端もいたので、過激なエール団なのかもしれない。エール団に謝れ。
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