スターミー(?)に狙われてる一般ガラル野郎日録 作:メガブリムオン
いつの間にか立場が逆転してる日記
〈供述〉
はい、最初に聞こえたのは、かなり甲高い鳴き声でした。なんかこう………「ヘアッ!」みたいな…あっ、うるさかったですかゴメンなさい。
あの……その今のはさっき言ったスターミーの、鳴き声でまあ、多分あいつ、俺をストーカーしてたやつなんですけど……え?いやいや、おまわりさん冗談とかではないんですって。最近は見かけなくなったなって思ってたんですけど、結果的には助かりました。
え、続きを?あっ、はい。
ええと、その……スターミーが何をしたか、ですよね。
まず、いきなり動きました。めっちゃ速かったです。肉眼で追いつくので精一杯でしたね。
はい?スターミーはそんな風に動けません?……そう言われましてもあいつは前からずっとあんな感じで………ああ、分かってくれてよかったです。
んで最初に吹っ飛んだのは、たしかズルズキンです。気づいたら体が宙に浮いてて、そのままゴンドラの支柱に叩きつけられてました。
で、止まらないんですよ。スターミー。軌道も、順番も、めちゃくちゃでした。でも全部、急所を狙ってるみたいで。
ヘルガーは横からタックルされて、倉庫の壁を突き抜けてましたし、ドラピオンは鋏ごと弾かれて、床を転がってました。
あ、ゴルーグもです。あれ、かなり大きかったはずなんですけど……胸のあたりに突っ込まれて、普通に後ろに倒れてました。
え、主犯のスキンヘッドの男とかは…ですか?ええ、例外じゃなかったです。
ポケモンを殲滅してたスターミーが急に進路変えて、真っ直ぐ突っ込んでいって。あいつら避けようとしてましたけど、間に合ってなかったですね。
はい、人間相手にも、普通にタックルしてました。加減してたかどうかは……正直、分かりません。ただ、その……誰も立ち上がれなくなってました。
時間にすると、たぶん数秒です。
長く見積もっても、30秒くらいじゃないですかね。
あっ、その後、ですか。
その後は……スターミーが半開きにしてたシャッターをぶち抜いて綺麗なフォームでどっかに走り去りました。
はい、あとはもうおまわりさんたちの捜査した通りです。
△月□日
久しぶりに警察のお世話になった。いや、まだ犯罪行為はしてないけど。
そしてスターミー(?)にはマジで感謝している。あいつがいなかったら、多分死んでたかもしれないし命の恩ポケモンってやつだ。
にしても奇声を発しながらタックルでフレ何とか団を蹂躙していく様は痛快でたまらなかった。
んでお礼を言いたかったが、あいつはすぐに立ち去ってしまったし、今度はこっちから探しに行ってやろうかな。俺特製絶品ヴルストカレーをご馳走させてやるぜ。へっへっへっ。
んで、スターミー(?)のおかげで無事に事件解決…ってわけじゃないんだよな。
アーマーガアたちのモンスターボールは直ったけど、あいつが暴れ回ったせいで倉庫は半壊、ゴンドラも修理に出したからしばらく仕事なくなったし、何よりあのハゲに投げ渡した現金の回収を忘れてた。
どーしよ。アレ、穏便にすませたかったとはいえ一日の売上金なんだよなぁ………
多分、瓦礫の中に埋もれてる可能性高いし、おまわりさんが回収してくれることを祈るのもいいけど、しばらく仕事出来なくなったから明日はスターミー(?)を探すがてらついでに見つかるといいな……これ見つかんなかったら給料から天引みたいなことになるのか?勘弁してください。
△月△日
信じられないことにスターミー(?)は見つからなかったが、お金は見つかった。
昼過ぎに警察署から連絡が来て、倉庫跡の近くに落ちていた現金が届いている、と言われた。どうやら親切な男性が倉庫近くで拾って、わざわざ署まで持ってきてくれたらしい。
そんな善性の塊みたいな人がいるんだなと感動しつつ、直接お礼をすべくダッシュで警察署に向かった。
署に着くと、ちょうどその聞いていた特徴と一致する男性がまだ残っていた。白髪で、背が高くて、年齢はよく分からない。ただ落ち着いた雰囲気の人って感じでお礼を伝えると、「当然のことをしただけなので」と言われた。
俺もこういうクールなおじさんになりてぇ……
にしても雰囲気がAZさんに似てたな。俺はあーいうおじさんに引かれ合うのかもしれない、いや、なんか気色悪ぃ書き方だな。
んで、おじさんは
せめて何か形が残るお礼を、と思って菓子折りだとか色々考えたけど、慌てて飛び出したせいでその場では何も用意しておらず、昼に食べ損ねて、そのままバッグに入れていたタッパーのカレーがあったのを思い出したので、それを渡した。俺のカレーは温めなくても美味いからな。
Fさんは少しだけ驚いた顔をして、それから「ありがたく頂きます」と食べてくれた。この後も会話は続かずにそのまま別れたけど、カレーは美味しいって言ってくれた。まあ、当然だけどね。
△月◎日
久しぶりに仕事を再開した。ゴンドラは修理から戻ってきたけど、倉庫は未だに目処が経ってない。
なので今日はリハビリがてら昼過ぎまで市内循環の送迎で回っていたのだが、丁度半壊中の倉庫の上空を通ったあたりで、声をかけられた。
久しぶりのお客さんだとウッキウキで地上に降りてみると、同年代くらいの可愛らしい女性が手を振っていた。
でもその人だいぶヘンテコなスーツの上にコートを羽織っている傍から見たならとんでもない格好してて、ヤバい人なんじゃないかと疑いかけたが、どうやら探偵さんらしくて客としてだけじゃなくて、この間の事件について聞きたいそうだ。
今思えば、まだ警察の人も同僚くらいしか俺が被害者だって知らないはずなのになんであの人知ってたんだろな。ミアレ1の名探偵って名乗ってたのは間違ってなかったのかもしれない。
マチエール、と名乗った探偵さんはホントおまわりさんの取り調べ以上に色々聞いてきた。
特にフレア団……だったか?その辺をよく聞かれた。事情聴取の時とマチエール探偵の話からフレア団ってのが思ってた以上にやべぇ連中だってことだけは分かった。
もう5年くらい前に壊滅した組織だそうだが、そこのボスは今も行方不明で今も残党が徒党を組んで犯罪行為を繰り返している者や、ひっそりと暮らしている者もいるらしい。
よくわかんねぇーけどさ。こういう未だに過去を引きずって犯罪行為に走るヤツのせいで、今を必死に頑張ってるヤツ、償いをしてるヤツがいたら同じ括りにされて後ろ指指されるのは可哀想だよなって思う。
因みにマチエール探偵にとっては有意義な情報だったそうで、タクシー料金に加えてチップまでくれた。カロス地方の文化サイコー。
メモ
主人公:ストーカーにお礼をするためにミアレを奔走するタクシー運転手。昔、ドラゴンストーム的な親友に勧められて、配信者活動を趣味にしてたが今は色々とあって活動休止中。
スターミー(?):主人公絶対守るマン
F:全く記憶がないおじさん。カレーは美味しかった。
マチエール探偵:ミアレの誇る名探偵。内心そらとぶタクシーがアトラクションみたいで楽しいとか思ってた。