もし、この作品の雰囲気などが気に入って頂けたらとても嬉しいです。
タグにもある通り基本は原作通りに進めていきますが、一部シーンや章が崩壊します。
甲高い笛のような音を伴い、乾いた風が全身を撫でる。
その風の流れ一つ一つが、確実に体温を奪い去っていった。
(なんか今日、明らかに寒くないか...?)
昨日とは違って、今日の朝は特に肌寒かった。
砂漠の早朝である以上、至極当然ではあるが、流石にここまで冷え込むと反射的に身震いしてしまう。
風邪を引かないように厚着はしているし、僕は特別寒がりという訳でもない。
ただ単純に、それ以上の寒さが、僕の身に押し寄せていたというだけだった。
「天下の無下限呪術でも、体温の調節までは出来ないし...ヘイローが羨ましい...」
──この術式、気体とか毒物の選別も出来りゃいいんだけどな...
震えたまま、乾燥した口でそう呟いた。
やがて自身の四肢が寒さに悴み、カタカタと擬音が鳴りそうなほど震え始める。
両腕でそれぞれ反対側の上腕を掴み、校舎の中へ逃げ込むように足を早めた。
「...くそっ、せめて暖房の一つでも...」
校舎に対する愚痴のような言葉を零してしまい、
最悪だ。言うことすら、避けないといけないのに。
(...覚悟は、とうの昔に済ませたんだけどな)
事業を撤退した企業も、移住した住人も、他の学園、連邦生徒会でさえも。
それら全てに頼ることが出来ず、日を重ねるごとに孤立していった学園――
僕はそのアビドスの、現生徒会組織である
溝が見えないほどの深~い事情があり、今は副委員長を務めている。
そのまま校舎の階段を駆け上がり、
「おはよう...って、珍しいな。ホシノがこんな朝早くに来てるの」
「ん? あぁ、英一ね...早期覚醒ってやつだよ~」
おじさんも年だからねぇ...と呟き、机に身体を丸める彼女は、小鳥遊ホシノ、三年生。
僕の唯一の同級生であり、一年の頃からの仲でもある。
そして、何やかんやで信頼できる
「その言い方だと、同い年の僕まで年寄りにされてるんだけど...」
いつも通りのボケに、
いつも通りのツッコミを入れる。
「まぁまぁ、先に暖房つけておいたからさ~。ちょっとぐらい大目に見てよ」
「...そ、それはマジで助かったから、何も言えない...」
「うへ~」
そうしてホシノが口を閉じた頃、
僕が閉め忘れていた扉の近くに、人影が映った。
「あ、ホシノ先輩と英一先輩。おはようございます」
丁寧な挨拶に、きりっとした佇まい。
尖った耳に、赤いフレームの眼鏡を掛ける彼女の名は、奥空アヤネ。一年生。
僕の後輩の一人であり、戦闘時の
あまり身内での比較は好きではないが...真面目で優秀な子だ。
「アヤネちゃん、おはよ~」
「おはよう、アヤネ。今日はセリカと一緒じゃないのか?」
「セリカちゃんは飲み物を買いに自販機に寄っただけなので、すぐに来ると思いますよ」
「分かった」
黒見セリカ。一年生。
この世界ならではなのか、飾りではない本物の猫耳を持った、僕のもう一人の後輩で、対策委員会の資金関係をやりくりしている
ただ彼女は、マルチ商法などの詐欺に引っかかってしまうことが多く、その度に同級生であるアヤネを中心に、周りからよく慰められている。
「ふぁぁ...」
そんな中、ホシノが口に手を当て、大きく背筋を伸ばしながら欠伸をした。
「おじさん、まだちょっと寝足りないよぉ...もうちょ~っとだけ、二度寝してくるね~」
椅子を後ろに引き、重そうな足取りで部室の扉へ向かう。
「いつもの時間になったら戻ってきてな」
「りょ~か~い」
間延びした声と同時に扉が閉まり、
タブレットで何かの作業をしているアヤネと、二人きりになった。
ホシノが出ていってしばらくした後、アヤネが乾いた笑いを零す。
「あはは...あの感じだと、今日も間に合わなさそうですね...」
「まぁまぁ。いつも通り、声一つでセリカが起こしに行ってくれるから」
そうフォローするつもりで言ったが、アヤネの表情が突然固まった。
「ん? どうした」
「...先輩、後ろ...」
ふと、背後から肩に手を置かれる。
「あっ」
「おはよ、英一先輩」
「...えっ」
「今の話、詳しく聞かせなさい?」
噂をすれば何とやら、というやつだ。
表情は言わずもがな、明らかに獲物を獲る時の目をしている。
今から僕の身に何が起きるかなんて、想像に難くない。
「ちょ、ちょっと待って、謝るっていうか、冗談だからな!? とりあえずその肉球を一回解い──」
この後、後輩をこき使っていると痛い目に遭うということを、身をもって叩き込まれた。
*
後輩による洗礼を受けた後、僕は部室の椅子に深く腰掛けていた。
と言っても、決して殴り飛ばされた訳ではなく、セリカの拳が腹にめり込んだ形だ。
(...まだ痛むな...)
だからこそ――とでも言うべきだろうか。
彼女のパンチは見かけに反して強烈で、呪力が全く無かったら、今頃床とお友達になっていたと思う。
というより、ここが容姿も強さも最強クラスの女子高生が集う
「...流石に、容赦なさすぎじゃないか」
「自業自得です」
タブレットから視線を離さないまま、アヤネが即答する。
反論しようにも、さっきの一部始終を見られていた以上、僕の立場は限りなく低かった。
その時、背後から小さく鼻を鳴らす音がした。
「...先輩が悪いんだから」
ちらりと振り返ると、セリカが腕を組んだまま、そっぽを向いている。
猫耳も、どこか落ち着かない様子で揺れていた。
「いや、でもさ。もうちょっとこう...手心というか」
「いつも無下限使ってるから、あれくらい平気だと思っただけよ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、語尾はわずかに弱い。
その様子を見て、僕は小さく息を吐いた。
「...悪かった。からかいすぎたよ」
それだけ言って、セリカの頭に軽く手を置く。
「ちょっ...! 急に撫でないでよ...」
抗議の声は上がったものの、振り払われることはなかった。
猫耳が、ぴくりと一度だけ動く。
「次は...もうちょっと、手加減するから」
(...そっちなんだな)
そう言って、セリカはぷいっと顔を背けたまま、小さく鼻を鳴らす。
どうやら、この話はそれで終わりらしい。
やがて、部室のドアが控えめにノックされた。
「失礼します〜」
柔らかく、けれどよく通る声。
ドアが開くと同時に、部室の雰囲気が一段、明るくなる。
金色の髪を揺らしながら、にこやかに微笑む少女。
十六夜ノノミ、二年生。
対策委員会のメンバーの中でも、ひときわ穏やかで、どこか場の空気を和らげる存在だ。
「おはよう、ノノミ」
「おはようございます、ノノミ先輩」
「ノノミ先輩、おはよう」
「おはようございます、皆さん☆」
だが直後、彼女は何かに気付いたようにふと疑問符を浮かべる。
「英一先輩、ホシノ先輩はどこへ?」
「え?」
彼女の質問に一瞬戸惑うも、彼女が椅子に置いていったであろうカバンを見て納得する。
「ホシノなら隣の部屋で二度寝してるよ。でも、荷物を置いていったのは知らなかった」
僕がそう答えると、ノノミは疑問が晴れたからなのか、はたまた予想通りだったのか。
若干意地悪な笑みを浮かべ、更に質問――いや、確認を重ねた。
「ふふっ、もしかして『まだ寝足りないよぉ』とか、言ってましたか?」
まっさか、と数秒間表情を固めた後、僕は苦笑しながら答える。
「...凄いな。何で分かったんだ?」
「ホシノ先輩、いつもはこんなに早く来ませんからね~☆」
「なるほど...」
──もし起きてたら、私が膝枕してあげたのに~
そう残念そうに言いながらも、責める様子はなく、
むしろいつものこととして受け止めている。
...こんな何気ない理解と会話が、まるで対策委員会の絆そのもののようで、僕は大好きだ。
思い返せば、あの頃のホシノは、いつから今のような和やかな雰囲気になったのだろうか。
(...あの人がいたら、今のホシノはどうなっていたかな)
これは別に、悲観的な意味でも、ましてや諦めでもない。
それに、過去の面影が綺麗さっぱり消え去ったという訳でもないからだ。
そのまま過去の記憶に浸り続け、しばらく経った頃。
「ただいま」
聞き慣れた声と同時に、部室のドアに見慣れた指が掛かった。
「おかえり、シロコせん...ぱい?」
「ん?」
現実に引き戻された僕は、ドアの方へ振り返る。
それは、この部室に居ないホシノを除いた、周りの皆も同じだった。
そして、己の目に映った光景は、想定していた状況とは正に大違いだった。
最強孤高の青い春について
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