アンケートの回答数が不十分な気がしたため、もう少し書き続けてみようと思います。
「うわっ!? その、おんぶしてるの誰!?」
出頭に言葉を放ったのはセリカだった。
シロコが右肩に担いでいる、
「わぁ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
ノノミの言葉に、アヤネはタブレットから一瞬だけ目を逸らし、シロコの方を見る。
直後、その光景を目にした彼女は、勢いよく立ち上がった。
「えっ、ら、拉致ですか!?」
(...カイザーの新しい借金取りか? オートマタじゃなくて...?)
動機や内容は、正直どうでもいい。
(シロコのやつ、もうそういう事はしないと思ってたんだけどな...)
問題なのは、シロコの起こした行動そのものだ。
ノノミは冗談のつもりで言った可能性が高いが、その大人は全身が砂まみれで――
(とりあえず、あとで説きょ...)
だが僕は、シロコの表情が示している
(ドアは...シロコが開けたのか)
慎重に次元に存在する距離、隣の教室までのルートを圧縮し、
シロコの方へ向いている対策委員会の皆や、万が一であっても目の前の大人の視界に映らないよう、
*
「よいしょっと」
今やホシノ専用のサボり部屋と化している、元授業用の教室。
その部屋の中央へ、僕は
ふと周囲を見渡すと、砂漠の淡い黄色と青い空を映す窓の傍で、ホシノがうつ伏せになっている。
いや、正確には――
ヘイローが朧げに点滅を続け、やがて完全に浮かび上がる。
「むにゃ...まだ時間じゃなくな~い?」
俯いたまま不満を零す彼女に、僕は言葉を選びながら話し始めた。
「すまん。本来なら寝ててよかったんだけど、今はそれどころじゃなくてさ...」
「それは...どういうこと?」
少し誇張しすぎたかもしれないが、彼女の意識はこちらに向いた。
結果オーライ、だろう。
「昨日、徹夜で送った手紙のこと、覚えてるか?」
「...」
数秒間の沈黙。
だがそれは、一種の肯定に等しかった。
「質問は?」
「ん~...特に無いかな」
ホシノは両手の指を絡め、軽く背筋を伸ばしてから答えた。
流れるように、机の左側に掛けてあった愛銃を手に取る。
コッキングレバーを引き、薬室を確認した彼女は、満を持したかのように立ち上がった。
「シールドは部室の中にあるのと...大人とはいえ、すぐに追い出さないでな。補給に来てくれたんだったら、受け取るべきだからさ」
「分かってるって~...まったく、最近の若者は血の気が多いなぁ...のんびり行こうよ~」
「まぁ、それはそうかもな」
いつもの冗談に軽く返した、その直後。
少し離れた場所に張っていた帳――
正確には、呪力で構成された結界が、異常を検知した。
(...タイミングわっる)
帳。
呪詞と呪力を用いて展開する
僕はこれを、
キヴォトス全域を行動範囲とする不良を検知する目的で使っている。
校門の先、アビドス砂漠の各所――
さらには
...当然ながら、欠点もある。
帳の規模に応じて、呪力と集中力が
それは、文字通りの意味でだ。
僕は呪力という電源と、術式という電気工具を持っている。
だが呪力には総量があり、一秒あたりに捻出できる量にも限界がある。
ちなみに、この帳の全容を把握しているのはホシノだけだ。
五感で
術式の存在自体は、対策委員会の全員が知っており、
キヴォトスの住民であれば知覚もできる。
帳の欠点は他にも複数ある。
だが、皮肉にも世界は待ってくれない。
「...ホシノ。通学路に降ろしてる小規模の帳に、大勢の反応があった。多分、またヘルメット団だと思う。先に偵察してきていいか? 大人に僕のことを聞かれたら、適当に嘘を混ぜて説明しといてくれ」
「うへ、任せたよ」
彼女は振り返らず、グッドサイン《サムズアップ》を返す。
返事を確かに受け取った僕は、距離の圧縮を始めた。
――その時、ふと一つの疑問が頭をよぎる。
シロコが担いできた、あの大人だ。
まず前提として、肉体を持つ人間は皆ヘイローを持っている。
オートマタや獣人にはない、キヴォトス特有の特徴。
僕が今まで見てきた中で、例外は存在しなかった。
それなのに、僕にはその特徴が無い。
そして――あの大人も、同じだった。
根拠は、ほとんど無い。
ただ、僕の目にはそう
人間の女性を模したロボットかもしれない。
大人に近い容姿の生徒なだけかもしれない。
...違う。
それらは全て、希望的観測に過ぎない。
ヘイローが無い理由は、意識が無いか、死んでいるかの二択になる。
正面にいる大人に手印を隠す理由が無い。
だが、この場合――
死んでいる可能性も、意識を失っている可能性も、除外される。
それらは全て、
僕の持つ瞳が、この世界から浮いているせいだ。
「...時間が無いっていうのに、なにやってんだろ」
誰もいなくなった教室で、僕は空間そのものを掌で押し込んだ。
最強孤高の青い春について
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