RE:最強孤高の青い春   作:兵器スキー

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アンケートへの回答、ありがとうございます!
ここまで票数がいただけるとは思いませんでした!

現時点では、

「前作は削除せずに、この作品を進めて欲しい」

を元に続けていこうと思います。


霧祓

戦闘開始から、恐らく十分ほどが経過していた。

 

私は腰ほどの高さがある砂嚢に身を預けたまま、

最小限の動きで顔を出し、前回の確認との差分だけを()()

 

現時点で砂漠の風は弱く、

敵が撒いた煙幕は、相変わらず双方の視界を奪い続けている。

 

撃てば当たる距離ではある。

だが、当てるために踏み込めば、こちらが先に削られる。

 

敵は校門を中心とした周囲に陣取り、散開したまま動かない。

だが、これは敵に煙幕を張られる前にアヤネが確認した情報だ。

 

つまり、このまま時間を使いすぎた場合、煙幕の奥から敵の増援が来る可能性も十分にある。

 

こちらは体力も人員も有限。

弾薬にある程度の余裕があるとは言え、消耗戦になったら勝つことが出来なくなる。

 

(...実はドローンじゃなくて、これが狙いなのかな...?)

 

無意識のうちに、歯を噛み締めていた。

敵も相当なやり手だ、何かが裏で()()をしていると考えたほうがい良いだろうか。

()()()()()()()()も、まだまだ出力が心もとない。

 

その時、インカム越しに小さな声が混じる。

 

「...英一先輩さえいたら、もっと楽だったのに」

 

吐き捨てるような、独り言。

セリカの声だった。

 

すぐに後悔したのか、彼女はそれ以上何も言わない。

だが、その一言は、私の中に小さな引っかかりを残した。

 

英一。

先程から、何度か名前を聞いている。

 

その正体へ思考を巡らせるより先に、別の声が続いた。

 

「...確かに。煙幕を晴らすくらいは、できるはず」

 

淡々とした声。

シロコだ。

 

断定ではなかったが、一切の迷いも感じられなかった。

私は前線から視線を切らないまま、インカムに指を添える。

 

「ねえ。英一先輩っていう人は、こういう煙幕をどうにかできる人なの?」

 

声の調子は、あえて意識を回して落ち着かせた。

今は好奇心を優先する場面ではない。

 

少しの間があって、シロコが答えかける。

 

「ん。英一先輩は、ヘイローが無い。けどその代わりに、特別な力を使え――」

 

言葉が、途切れた。

同時に、空気が動いた。

 

砂を含んだ風が、頬を撫でる。

それまで停滞していた煙が、揺れ始めた。

 

一瞬。

ほんの一瞬だけ、視界の奥が透ける。

 

「――シロコ!」

 

反射的に、声が強くなる。

 

「後ろ! 遮蔽物に隠れて!」

 

理由を説明する暇はない。

本能が、今はそうすべきだと命じていた。

 

「分かった!」

 

短い返事。

シロコの足音が、すぐに近づく。

 

前線では、ホシノが盾を構え直した。

片足を半歩引き、衝撃に備える姿勢。

 

撃ち続けていた銃声が、一瞬だけ乱れる。

 

敵も、こちらも。

急な風に、判断が遅れている。

 

(あと、少しで...)

 

煙が、流されていく。

 

砂漠特有の突発的な強風が、校舎の間を抜け、

八秒ほどかけて、視界を覆っていた白煙を押し流した。

 

輪郭が戻る。

敵影が、はっきりと浮かび上がる。

 

「先生!」

 

アヤネの声が、はっきりと聞こえた。

 

「ご指示を!」

 

私は一度頷き、声を出した。

 

「ホシノ! 正面三! もう何歩か下がって受け止めて!」

 

言葉とほぼ同時に、ホシノの盾が角度を変える。

金属音が響き、敵弾が弾かれた。

 

「ノノミ! 左端の一番奥、砂嚢裏! 無理に倒さなくていい、こまめな射撃で頭を下げさせて!」

 

「はいっ!」

 

重い銃声が一度だけ響き、

敵の一人が反射的に身を伏せる。

 

「セリカ! 右、二人組! 出てきた瞬間だけでいい、一度でも撃ったらすぐに引いて!」

 

「分かってる!」

 

短く鋭い射撃。

命中はしなくても、動きが止まる。

 

視界がある。

それだけで、戦場の情報量は桁違いだった。

 

「シロコ!」

 

「ん」

 

即座に返る声。

 

「今は追わない! 敵の動きと数だけ教えて!」

 

「了解。七...いや、八。後方に下がってる」

 

下がる。

敵が、逃げに転じ始めている。

 

私は一度だけ息を吸い、判断をまとめる。

 

「ホシノ、前に出ない! 盾を軸に円を作って!」

 

「おっけ~!」

 

「ノノミ、射線を一点に集めないで! 音を散らして!」

 

「分かりました~!」

 

「セリカ、今から十秒だけ弾を使っていい! 牽制で十分!」

 

「任せて!」

 

それぞれの返事が、重なり合わずに返ってくる。

誰も迷っていない。

 

煙が消えたことで、

敵は位置を悟られ、こちらは流れを掴んだ。

 

だが、それだけでは足りない。

 

敵の視線が、揃い始めている。

何かを警戒している。

 

私は、砂嚢から半歩だけ前に出た。

 

「アヤネ!」

 

「はい!」

 

「全員の弾数を教えて!」

 

「ホシノ先輩が四割、ノノミ先輩が半分、セリカちゃんが六割です!」

 

「十分!」

 

声を張った。

 

「ここからは短期決着! 追いすぎない、囲まれない、抜け道と各個撃破を最優先!」

 

指示を明確化した直後、素早く()()()()()()()

 

敵は負傷者多数、士気は煙幕が消えたことで明らかに下がっており、援軍も見た所は来ていない。

 

こちらは全員が軽症か無傷、体力はフルじゃないけど、弾薬も十分。

 

(...勝てる!)

 

そのまま最前線にいた敵の一人が、後退しながら振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

空気が、引き絞られるような感覚。

風が、逆流した。

 

砂が舞い上がり、

敵の背後で、空間が歪む。

 

私は、その異変を理解するより先に、口を開いていた。

 

「全員伏せて!!」

 

瞬きをする度に、視界の端で──

 

何かが、消えた。

 

音もなく。

()()()だけを残して。

 

「...っ」

 

息を呑む音が頭に響く。

 

だが、足音も同時に聞こえた。

 

私は、背筋が凍てついてゆくを確かに感じながら、

その方向を見た。

 

敵の隊列が一部だけ、崩壊している。

 

違う、崩れたのではない。

 

消された。

まるで最初から、いないかのように。

 

「...英一、先輩...?」

 

誰かが、そう呟いた。

 

私は答えない。

否、正確には答えられない。

 

だがほんの一つだけ、はっきりしていることがあった。

 

この戦場には、

光の知らない速度で動く存在がいる。

 

そして、その存在は今、誰にも見られず。

 

誰にも認識されないまま──

 

 

勝利という名の天秤を、叩き潰そうとしていた。




後の話で説明しますが、この世界のシッテムの箱は少し機能が強めです。

最強孤高の青い春について

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