僕がかなり強めの説教を食らってから、何時間かが経った。
セリカは体力の限界によって保健室で休養、
アヤネに関してはセリカを救出する際に校舎の倉庫から引っ張ってきたらしい乗り物の整備、そして敵の戦力であった破壊済みの戦闘車両部品の解析に向かった。
つまり今ここにいるのは──先生、ホシノ、シロコ、ノノミ。
数分前の暗くどんよりとした雰囲気は過ぎ去ったものの、
決して彼女達の怒りと不安が消えた訳では無いことは、聞くまでもなく分かった。
「ん。結局、英一先輩への処罰はどうするの? 私はホシノ先輩に任せる」
シロコが愛銃の軽い分解と清掃を行いながら、考え込んでいる他の面々に声を掛ける。
「ん~...おじさんはとりあえず二日ぐらいの間、校舎からの外出禁止が良い塩梅だと思うな~!」
「そのアイデア、とっても良いですね~!」
「ん、妥当案だね。」
「は...?」
「...!?」
だが直後に出てきた史上最悪の案に、僕はおろか先生までもが声を震わせた。
嫌かどうかで言えば、今までも似たような状況はあったので対して嫌ではない。
だが、問題はそこではなかった。
「...ちょっと待ってほしいな、それって軟禁じゃ──」
「先生、どうかしましたか?」
「...なんでもないです」
この場において唯一の味方である先生は、ノノミの優しい笑みによって助け舟の芽を摘まれる。
(...はぁ)
簡単に纏めれば、今回の処罰は勝手に突っ走った僕の自業自得だ。
少なくとも現在では、皆が望んでいるのは歩幅を合わせることではない。
──要は、後ろから着いてきて欲しいのだろう。
...ただし、この状況において、
そう、それが問題なのだ。
「...僕ってツイてないよな」
「...英一君?」
「あ、ごめん。口に出てたな」
此方を怪訝的──いや、表面上は心配そうに見つめる先生に、僕は手を雑に振る。
先に言っておくと、先生の力があれば数多くの重要な問題が解決できる。
だけどそれは今じゃない。
腹の底が知れていない以上、まだ探り続け、貸し借りも作らないべきだろう。
(...そろそろか)
そう心の中で呟いた直後、部室の戸が開け放たれた。
「お待たせしました、皆さん。車両整備と部品の解析が終わったので、報告しようと思います」
整っていながら、どこか披露を感じさせる声。
タブレットを片手に携えながらドアの縁に立っていたのは──アヤネだった。
「...ありがとな、報告っていうのは例の部品だよな?」
「はい...その部品なのですが...」
アヤネの表情が、真面目なものへと変わる。
「キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種と判明しました」
「...」
その事実に、部室にいた誰もが発言を躊躇った。
もしセリカだったら、何かしらのリアクションをしていたかも知れないが。
「もう少し調べる必要がありますが...ひとまず、ヘルメット団は自分達じゃ入手できない物まで保有しているそうです」
「...なるほどね」
壁にもたれた先生が相槌を返していると、ノノミが突然片手を上げ、立ち上がった。
「部品の流通ルートを分析すれば、ヘルメット団の入手元を探し出せませんかね?」
「は、はい。 なぜ、ただのチンピラがここまで執拗にこの校舎を狙っているのかも、明らかになるかも知れません!」
「ん、確かに」
アヤネ、そして銃の整備を終えたシロコも肯定を返す。
「うん、わかった。今日はもう遅いし、また明日にでもじっくり調べてみよ~」
最後のホシノの号令を皮切りに、今後の方針は固まった。
その中には、当然僕も含まれていた。
「お疲れ様、英一君」
すると、突如横から声が聞こえてきた。
その正体は、先生だ。
「セリカは君が看病するの?」
「...聞くまでもないんじゃないんですか? どうせ今日はここで軟禁ですし」
「そっか。じゃあ、伝えてほしいことがあるんだけど...」
「...」
*
夜の淡い光が、窓から程よく差し込む保健室。
生徒の母数が少ないのもあって、定期的に管理しているベッド自体は少ない。
ただ、
「...」
沈黙。
「──」
凝視。
「...はは、馬鹿らしくなってきた」
自らを嘲笑するように、呟いた。
僕が無茶をしたから、結果的に倒れ、皆が心配した。
僕が不在だったから、敵が隙を突き、セリカが拐われた。
すべてが後悔だらけではない。
ただ──
...もう、
その瞬間。
「...あ、あれ──!?」
セリカは突然の出来事に飛び起き、此方をを凝視する。
「おはよう。セリカ」
「先、輩...?」
その表情は、何も言わずとも、
なぜここに居るのか、と言っているように見えた。
「いやさ...二日間ぐらいこの校舎から出るなって言われてね」
「...」
冗談のように言うが、此方を悲しそうに見つめる彼女の瞳を見て、それ以上続けようとは思えなかった。
「...改めて、ごめん。無茶をしてしまって」
この時僕は、どんな顔をしていただろうか。
きっと、果てしなく後悔に塗れた、そんな顔だろう。
「補給品にあったカロリーバーと、頭痛薬が机においてあるから。良ければ使ってくれ」
彼女を一瞥した僕は立ち上がり、
おぼつかない足取りで部屋のドアに向かう。
ドアノブに手をかけ、静かに捻る。
「英一先輩、ありがとう」
「──っ」
まるで凍りつくかのように、手が止まった。
「...先生からの伝言。"ゆっくり休んで。お大事に"だってさ」
あはは。
これからも不定期にはなってしまうと思いますが、よろしくお願いします。
最強孤高の青い春について
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