白百合の園に咲く、肉食の黒薔薇 〜転生したガチレズが原作を守ろうとして、リリアン最強のハーレムを築くまで〜   作:@レーガン

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幕間:雪解けのロザリオ(佐藤聖 視点)

雪が、降り続いていた。

私の体温を奪い、感覚を麻痺させ、思考を白く塗りつぶしていく。

12月24日。午後8時。

待ち合わせの場所に、栞は来なかった。

最初は、何か事故にでもあったのかと思った。

大人たちに連れ戻されたのかとも考えた。

けれど、違った。

あの子は「来なかった」のだ。自分の意志で。

あの子は優しすぎる。

私のために、自分の人生を投げ出して、私を守ろうとしたのだ。

駆け落ちなんていう子供じみた真似をして、私を破滅させないために、あの子は一人で去っていった。

「……馬鹿だよ……」

何が駆け落ちだ。何が「守る」だ。

結局、私はあの子に守られただけじゃないか。

何もできなかった。愛する女一人、自分の腕の中に留めておくこともできなかった。

絶望で、息ができなかった。

このまま雪に埋もれて、消えてしまいたいと思った。

その時だ。

『……聖さま』

頭上から、静かな声が降ってきた。

傘が差し出され、雪が止む。

見上げると、そこにいたのは西園寺雫だった。

どうしてここにいるのか。なぜ私だと分かったのか。

そんなことはどうでもよかった。

彼女は、何も聞かなかった。

「どうしたんですか」とも「振られたんですか」とも言わず、ただ、当然のようにそこに立っていた。

彼女が傘を捨て、私を抱きしめた時。

その高級そうなコートの温もりに触れた瞬間、私の中で張り詰めていた糸が切れた。

『……泣いていいです。誰も見ていません』

その言葉に甘えて、私は泣いた。

赤ん坊のように、惨めに、情けなく泣いた。

雫の体は温かかった。

あの子(栞)を失った空洞を埋めるには足りないけれど、凍え死にそうだった私を、現世に繋ぎ止めるには十分な熱だった。

それから、私は変わった。

いや、戻ったと言うべきか。

栞がいなくなった世界は退屈だけれど、絶望するほど暗くはない。

なぜなら、私には「共犯者」ができたからだ。

3学期の薔薇の館。

私は、手の中にある白薔薇のロザリオを見つめていた。

これを栞に渡すはずだった。

でも、あの子はもういない。

そして、目の前には西園寺雫がいる。

あの日、私の涙を受け止め、何も言わずに側にいてくれた一年生。

完璧な淑女の仮面を被りながら、その奥に私と同じような「孤独」と「強さ」を隠し持っている女。

(……こいつになら、預けてもいいか)

私は思った。

私はもう、誰も妹にするつもりはない。栞以上の存在なんて現れるはずがない。

けれど、白薔薇を継ぐ義務はある。

ならば、こいつに持たせておけばいい。

『じゃあ、これは君に預ける』

私は雫の手にロザリオを握らせた。

『君が探してきなさい。私が納得するような、天使のような「妹」を』

これは賭けだ。

もし雫が誰も連れてこなければ、私は雫を無理やりにでも妹にする。

こいつとなら、色気のないドライな姉妹関係も悪くない。

でも、もしこいつが、本当に「天使」を連れてきたら?

栞が去ったこの世界に、まだそんな希望が残っているというなら?

「期待しているよ、雫」

私はニヤリと笑った。

私の心の穴を埋めてくれた、生意気で可愛い後輩。

君がどんな物語を紡ぐのか、一番近くで見せてもらおうじゃないか。

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