白百合の園に咲く、肉食の黒薔薇 〜転生したガチレズが原作を守ろうとして、リリアン最強のハーレムを築くまで〜   作:@レーガン

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第7話:天使の先客と、勘違いされたキューピッド

春の陽気が心地よい、4月の放課後。

私、西園寺雫(高等部2年生)は、山百合会の慢性的な人手不足を解消すべく――という建前で、校内を歩いていた。

本当の目的はただ一つ。

今年、高校から入学してきたはずの私の推し・藤堂志摩子を見つけ出し、白薔薇(佐藤聖)の元へ送り込むことだ。

渡り廊下を歩いていると、桜の木の下で、一人の新入生が佇んでいるのが見えた。

透き通るような白い肌、ウェーブのかかった髪。

間違いない。藤堂志摩子だ。

(……見つけた! 実在した!)

私は興奮を抑え、「完璧な上級生」の仮面を被って声をかけた。

「ごきげんよう。……何か探し物かしら?」

志摩子はビクリと肩を震わせ、振り返った。

そして、私を見るなり、その瞳を大きく見開いた。

「あ……貴女は……」

「ん?」

どうしたのだろう。初対面のはずだが、まるで幽霊でも見たような顔だ。

いや、違う。その瞳にあるのは恐怖ではない。

熱烈な、憧憬の色だ。

「西園寺雫さま……ですよね?」

「ええ、そうよ。私の名前を知っているの?」

「忘れるはずがありません! ……あの、入試の日に……」

志摩子は頬を染め、少し興奮気味に語り出した。

「受験会場で私が迷ってしまい、心細くて泣きそうになっていた時……案内係をされていた貴女が、優しく声をかけてくださったんです」

(……あ、思い出した)

私の脳内で記憶が繋がる。

数ヶ月前の高校入試の日。私は内部生の代表として、会場案内を手伝っていた。

その時、オドオドしていた可愛い受験生を、特別に試験会場の教室までエスコートしてあげたのだ。

「頑張ってね」と飴玉を一つ渡して。

まさか、あれが志摩子だったとは。

私がサラッと行った人助け(徳積み)が、こんな形で返ってくるとは。

「あの時の貴女の凛としたお姿、そして優しさ……。ずっと忘れられませんでした。この学園に入れば、またお会いできるかと……」

志摩子はうっとりと私を見つめている。

まずい。

「聖さまへの憧れ」ではなく、「私への憧れ」が既にMAX状態だ。

だが、私は諦めない。

これを逆手に取ればいいのだ。

まずは館に連れて行き、聖さまの魅力に触れさせれば、きっと心変わりするはずだ!

「ふふ、困っている未来の後輩を助けるのは当然のことよ。……ところで志摩子さん、貴女にお願いがあるのだけれど」

「は、はい! 私にできることなら何でも!」

「実は山百合会が人手不足でね。……貴女のように誠実そうな方に、ぜひお手伝いをお願いしたいの」

私は甘い声で囁いた。

志摩子は「私が……西園寺さまのお役に……!」と震えながら、力強く頷いた。

よし、確保。

作戦開始だ。

「失礼いたします」

私は志摩子を連れて、薔薇の館の扉を開けた。

「やぁ、雫! 遅かったね!」

入るなり、ソファから佐藤聖さまが手を振った。

冬の悲恋を乗り越え、少し大人びた(そして手早くなった)白薔薇さまだ。

「ごきげんよう、聖さま。……お手伝いをしてくれる新入生を連れてきました」

「へぇ?」

私は志摩子を前に出した。

さあ聖さま、見てくださいこの天使を!

私なんかよりずっと可愛くて、守ってあげたくなるでしょう?

聖さまは志摩子を見つめ、ふっと柔らかく笑った。

「可愛いね。フランス人形みたいだ」

よし、好感触!

と思った次の瞬間、聖さまは私の隣に座り直し、私の腰に手を回した。

「でもさぁ、雫が連れてきたってことは……この子、**雫の『お気に入り』**ってことだろ?」

「はい?」

「蓉子〜! 見てよ、雫がついに自分の『妹候補』を連れてきたよ!」

聖さまが大声で叫ぶ。

奥でお茶を飲んでいた水野蓉子さま(紅薔薇)と鳥居江利子さま(黄薔薇)が、「あらあら」と興味津々な顔で近づいてきた。

「違うんです! 私は聖さまのために……!」

「照れなくていいわよ、雫。貴女もようやく、祥子以外の後輩に目を向ける気になったのね」

蓉子さまが優しく微笑む。

江利子さまも「雫ちゃん好みの、清楚な美人さんじゃない」と茶化す。

違う。誤解だ。

私は必死に弁解しようとしたが、当の志摩子が、キラキラした目で私を見ていた。

「……西園寺さまの、妹候補……」

その言葉を噛み締めるように呟き、志摩子は嬉しそうに微笑んだ。

「精一杯、頑張ります。……西園寺さまに、認めていただけるように」

完全に「雫の妹になるための修行」だと思っている!

そして聖さまは、「ま、雫が選んだ子なら悪い子じゃないだろ。仲良くしようね、藤堂さん(雫のオマケとして)」というスタンスだ。

(……どうしてこうなった)

私は頭を抱えた。

私の計画とは裏腹に、薔薇の館には「雫派閥」が形成されようとしていた。

それから数日。

志摩子は放課後になると館に通い、甲斐甲斐しく働いた。

お茶の準備、資料の整理。その所作は完璧で、先輩方からの評判も上々だ。

だが、彼女の視線は常に私を追っている。

聖さまが私の腰に手を回したり、髪を触ったりするたびに、志摩子は「あらあら、お仲がよろしいのですね」と頬を染めて見守っている。

違うの志摩子ちゃん。これはセクハラなの。助けて。

そんなある日の朝。

私は別の運命を動かすべく、マリア像の見える木陰に潜んでいた。

今回は祥子はいない。あくまで「偶然の目撃者」として見守るためだ。

朝日が差し込むマリア像の前。

校門を抜けてきた、おさげ髪の平凡な少女――福沢祐巳が立ち止まる。

そして、そこに通りかかった小笠原祥子。

「……タイが、曲がっていてよ」

祥子の凛とした声。

驚いて振り返る祐巳。

祥子は自然な動作で祐巳のタイに手を伸ばし、結び直す。

逆光の中、二人のシルエットが重なる。

(……美しい)

これぞ『マリア様がみてる』。

神秘的で、静謐な運命の瞬間。

祐巳ちゃんの顔が真っ赤になっているのが遠目にも分かる。

これで紅薔薇ルートのフラグは立った。

あとは、彼女たちが薔薇の館に来るのを待つだけだ。

(第8話へ続く)

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