白百合の園に咲く、肉食の黒薔薇 〜転生したガチレズが原作を守ろうとして、リリアン最強のハーレムを築くまで〜   作:@レーガン

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幕間:気高き薔薇の溜息(小笠原祥子 視点)

私、小笠原祥子には、誰にも言えない悩みがある。

それは、私の幼なじみであり、唯一無二の親友――**雫(しずく)**のことだ。

放課後の教室。

夕日が差し込む窓際で、雫は静かに文庫本を読んでいた。

170cmを超える長身に、制服の生地が悲鳴を上げそうなほど豊かなプロポーション。

長い足を組み、背筋を伸ばし、ページをめくる指先ひとつまで計算され尽くしたかのような優雅な所作。

彫刻のように整った横顔は、ため息が出るほど美しい。

「……はぁ」

私は無意識に溜息をついた。

入学してまだ数日だというのに、彼女の机の中には、上級生や他校の男子からの手紙が山のように入っている。

「歩く芸術品」「氷の黒百合」。

生徒たちは彼女をそう呼び、遠巻きに崇めているけれど……。

(貴女たちは知らないのよ。この女の『本性』を)

私が心の中で毒づいていると、雫がふと顔を上げ、私と目が合った。

すると、先ほどまでのクールな表情が嘘のように崩れ、とろけるような甘い笑顔を向けてくる。

「なあに、祥子? 私に見惚れていたの?」

「……ッ! 自惚れないでちょうだい。貴女の髪にホコリがついていたから見ていただけよ」

嘘だ。ホコリなんてついていない。

けれど、雫は「あら、ありがとう」と言って立ち上がり、私の元へ歩み寄ってくる。

そして、当然のように私の髪に触れ、耳元に顔を寄せた。

「祥子の髪は、今日も綺麗ね。……最高級のシルクみたい」

近い。近すぎる。

彼女は昔からそうだ。パーソナルスペースという概念が欠落しているのかと思うほど、私や令にだけ過剰なスキンシップをしてくる。

普通なら不快に感じる距離だ。私は男嫌いだし、他人に触られるのは好きではない。

けれど、雫だけは違う。

彼女の指先は、いつも温かくて、安心する。

彼女から香る匂いは、不思議と私を落ち着かせるのだ。

「……ふん。お世辞はいいわ」

「本心よ。……ああ、この怒った顔も可愛い」

雫が私の頬をツンと突く。

私はカッと熱くなる顔を背けた。

調子が狂う。このペースに巻き込まれると、私はいつも「わがままな子供」に戻ってしまう。

今日の昼休み、あの佐藤聖さまに絡まれた時もそうだった。

白薔薇のつぼみである彼女の、鋭いナイフのような瞳。

退屈そうに世界を見下ろすあの方に「妹にならないか」と誘われた時、私は正直、心臓が止まるかと思った。

今の聖さまは、美しいけれど、危険だ。

あの方の隣に行けば、きっと傷つくことになる。

そう直感したからこそ、私は怯えた。

雫が、あの方の手を取ってしまうのではないかと。

雫は完璧だ。私なんかよりずっと大人で、強くて、賢い。

私のような、ただ家柄が良いだけのヒステリックな小娘よりも、聖さまのような孤独な影を持つ方の方が、彼女の興味を惹くのではないか――。

そんな不安がよぎった瞬間。

雫は、あの聖さまを袖にしたのだ。

『私は、誰かの魔除けになるつもりはありません』

あの時の雫の背中は、恐ろしいほど凛々しく、そして頼もしかった。

彼女は私の手を引き、守るように連れ出してくれた。

いつものように。幼い頃、ジュースで汚れた私を救ってくれたあの日のように。

「……ねえ、雫」

「ん?」

私は意を決して尋ねた。

「どうして、断ったの? 白薔薇さまの妹になれば、貴女の立場はもっと盤石になったはずよ」

「興味がないもの」

雫は即答した。

そして、私の手を取り、その甲に恭しく口づけを落とした。

まるで、忠実な騎士(ナイト)のように。

「私が守りたいのは、聖さまじゃない。……貴女と令、二人の笑顔だけよ」

ドキン、と心臓が跳ねる。

キザだ。あまりにもキザで、少女小説の王子様だって言わないような台詞だ。

普通なら寒気がするところなのに、雫が言うと、どうしてこんなに説得力があるのだろう。

彼女の瞳は、熱っぽく潤んでいて、私を丸ごと飲み込むような執着を感じさせる。

友情? いや、もっと重くて、深い何か。

時々、彼女に見つめられると、自分が肉食獣の前の小動物になったような錯覚に陥る。

食べられてしまうのではないか、と。

(……でも、それでもいいわ)

私は諦めにも似た気持ちで、彼女の頭に手を置いた。

「……バカ雫。貴女はずっと、私の『壁』でいなさい」

「仰せのままに、私のプリンセス」

雫が嬉しそうに目を細める。

ああ、もう。本当に調子が狂う。

西園寺雫。

私の自慢の親友で、最強の盾で、そして……一番油断ならない「天敵」。

貴女がいれば、私の高校生活はきっと退屈しない(平穏でもない)でしょうね。

私は小さく溜息をつき、その手を握り返した。

(続く)

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