白百合の園に咲く、肉食の黒薔薇 〜転生したガチレズが原作を守ろうとして、リリアン最強のハーレムを築くまで〜   作:@レーガン

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祥子と蓉子、江利子と令の出会いとか忘れてたのでサクッと入れました。


第3.5話:選ばれし蕾たち 〜私が二人を手放した理由〜

季節は、1年生の5月。

入学式の喧騒が落ち着き、薔薇の館では次期「つぼみ」の選定が水面下で始まっていた。

私、西園寺雫の周りには、相変わらず小笠原祥子と支倉令がいる。

私たちは「黄金のトライアングル」として、他者を寄せ付けない鉄壁の布陣を敷いていた。

だが、私は焦っていた。

このままではいけない。

原作通りならば、祥子は**水野蓉子(紅薔薇)と、令は鳥居江利子(黄薔薇)**と姉妹にならなければならない。

私が完璧に二人を守りすぎているせいで、上級生たちが入り込む隙がないのだ。

(……そろそろ、親離れ(子離れ)の時ね)

私は心を鬼にして、二人を運命の相手へと送り出す決意をした。

【Case 1:黄薔薇の誘惑】

ある日の放課後。

私は令を連れて、中庭のベンチにいた。

すると、どこからともなく一人の上級生が現れた。

特徴的なヘアバンド、底知れない笑みを浮かべた瞳。

鳥居江利子さま。

現・黄薔薇のつぼみであり、リリアンきっての「曲者」である。

「やあ、一年生。……君が支倉令ちゃんね?」

「えっ、あ、はい!」

令が私の背後に隠れる。

令は、江利子さまのような「何をしてくるか分からないタイプ」が苦手だ。

普段なら私が前に出て追い払うところだが、今日は違う。

「……西園寺さんだっけ? 君、ちょっと席を外してくれるかな? 私はその可愛い子と話がしたいんだ」

江利子さまが私を見て、ニヤリと笑う。

その目は「君も面白そうだけど、今はこっち(令)が食べ頃だ」と語っている。

私は立ち上がり、優雅に一礼した。

「どうぞ。……令、私は教室に忘れ物をしたから、先に戻るわね」

「えっ!? 雫、待ってくれ! 置いていかないでくれ!」

令が私の袖を掴む。その目は涙目だ。

可愛い。このヘタレ犬め。

だが、ここで甘やかしてはいけない。江利子さまこそが、このヘタレな大型犬を飼い慣らせる唯一の飼い主(パートナー)なのだから。

「令。……大丈夫よ。その方は、貴女の新しい世界を広げてくださるわ」

私は令の手を振りほどき、江利子さまに目配せをした。

『煮るなり焼くなり、好きにしてください』

江利子さまは満足げに頷いた。

「ひいぃぃっ! 雫ぅぅぅー!」

令の悲鳴を背に、私は校舎へと消えた。

翌日、令はげっそりしていたが、その首にはしっかりと黄色のロザリオが掛かっていた。

「……江利子お姉さま、怖いけど……なんか、私のこと全部お見通しなんだ」と頬を染める令を見て、私は安堵を感じた。

【Case 2:紅薔薇の品格】

難関は、祥子だ。

彼女はプライドが高く、男性嫌悪もあり、他人を容易に信用しない。

私が長年かけて築いた信頼関係は強固すぎて、他の人間が入る余地がない。

放課後の教室。

祥子の元に、凛とした声が掛かった。

「ごきげんよう、小笠原さん」

現れたのは、水野蓉子さま。

才色兼備、冷静沈着。現・紅薔薇のつぼみ。

祥子が唯一、対等に渡り合える(そして言い負かされる)相手だ。

「……ごきげんよう、水野さま。何の御用でしょうか」

祥子は警戒心丸出しで、本を閉じた。

その隣で、私は静かにお茶を飲んでいる。

「単刀直入に言うわ。私の妹になりなさい」

「お断りします」

祥子は即答した。

そして、私の方を見て助けを求めた。

「雫、追い払って」という視線だ。

蓉子さまも私を見た。

その目は、私たち二人の関係性を見抜いていた。

「……西園寺さん。貴女が彼女の『壁』になっているのね」

「そう見えるなら、光栄です」

私は微笑んだ。

蓉子さまは真っ直ぐに私を見据え、静かに言った。

「貴女は優秀よ。祥子を守る盾としては完璧だわ。……でも、貴女は祥子を『導く』ことはしない。貴女は優しすぎて、祥子を甘やかしてしまうから」

(……ッ!)

図星だった。

私は祥子が好きすぎて、彼女の望むまま、居心地の良い環境を与えてしまっていた。

それでは、祥子は成長しない。

紅薔薇というリーダーになる器を育てるには、私のような「甘い騎士」ではなく、「厳格な姉」が必要なのだ。

「……仰る通りですわ」

私は立ち上がった。

祥子が驚いた顔をする。

「雫?」

「祥子。私は貴女の親友だけど、貴女の人生の責任は取れないわ」

私はあえて冷たく突き放した。

「貴女には、貴女を叱ってくれる人が必要よ。……その方は、きっと誰よりもうまく、貴女という薔薇を咲かせてくれるはず」

私は蓉子さまに一礼した。

「……親友を、よろしくお願いします」

「ええ。任されたわ」

蓉子さまが力強く頷く。

私は教室を出た。

背後で、祥子が「待って雫! どういうことよ!」と叫ぶ声が聞こえたが、すぐに蓉子さまの「お座りなさい、祥子」という一喝にかき消された。

数日後。

祥子は文句を言いながらも、紅のロザリオをつけて登校してきた。

その顔は、少しだけ大人びて見えた。

こうして、私は二人の「保護者」の座を降板した。

祥子は蓉子さまの元へ。令は江利子さまの元へ。

それぞれの「姉妹(スール)」としての物語が始まったのだ。

放課後。

私は一人、図書室の窓辺にいた。

隣にはもう、誰もいない。

窓の外を見下ろすと、中庭の芝生に寝転がっている佐藤聖(白薔薇のつぼみ)の姿が見えた。

彼女は誰ともつるまず、気怠げに空を見上げている。

その瞳は、まだ誰のことも映していない。あるいは、これから出会う久保栞のことを夢見ているのかもしれない。

(……まだ、その時じゃない)

今の聖さまに近づいても、拒絶されるだけだ。

彼女が傷つき、凍え、誰かの温もりを求める「冬」が来るまでは、私はただの傍観者でいなければならない。

「……ふぅ」

私は文庫本を閉じた。

少し寂しいけれど、これでいい。

私が独りになることで、世界(シナリオ)は正しく回り始めたのだから。

私は静かに席を立ち、誰の迎えもない夕暮れの廊下を、一人で歩き出した。

私の物語が動き出すのは、もう少し先の話だ。

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