白百合の園に咲く、肉食の黒薔薇 〜転生したガチレズが原作を守ろうとして、リリアン最強のハーレムを築くまで〜 作:@レーガン
私、久保栞は、神様にお仕えする道を夢見ていました。
けれど、このリリアン女学園で、私は神様よりも眩しい「太陽」に出会ってしまいました。
佐藤聖さま。
あの方は、自由で、奔放で、そして誰よりも寂しがり屋な方。
あの方と過ごす時間は、私の人生で最も鮮やかで、罪深い時間でした。
大人たちは言います。「それは一時の迷いだ」と。
けれど違います。私は魂の底からあの方を愛していました。
だからこそ……私は気付いてしまったのです。
私がそばにいることで、聖さまが「翼」をもがれようとしていることに。
私を守るために、あの方が大人たちと戦い、傷つき、その輝きをすり減らしていく姿を見るのは、私自身の身が裂かれるよりも辛いことでした。
『駆け落ちしよう』
あの方がそう言った時、嬉しさよりも先に、絶望が胸を覆いました。
この狭い鳥籠から二人で飛び立てば、きっとあの方は一生、私という鎖に繋がれたままになる。
「リリアンの佐藤聖」としての未来を捨てさせてしまう。
(……いけない。それだけは、いけない)
私は決心しました。
あの方を解放するには、私が消えるしかないのだと。
冬休み前の図書室。
本を整理していた私の背中に、声がかかりました。
『久保さん』
西園寺雫さんでした。
1年生の中でひときわ目立つ、美しく聡明な方。
聖さまが「あいつだけは、私と同じ匂いがする」と面白がっていた方。
『……もう、決めたの?』
彼女の瞳を見た瞬間、私は悟りました。
ああ、この方は知っているのだと。
私が聖さまのために身を引こうとしていることも、その痛みの全てを。
彼女は何も言わず、ただ静かに私の決断を受け入れてくれました。
『……そう。貴女が決めたことなら、私が口を挟むことではないわね』
その潔さが、私の背中を押してくれました。
この方がいるなら、大丈夫かもしれない。
私が去った後、傷ついた聖さまを支えてくれるのは、きっとこの方だ。
『聖さまのこと、よろしくお願いしますね』
私は祈るような気持ちで頭を下げました。
西園寺さんは、悲しげに、でも力強く頷いてくれました。
クリスマスイブ。
雪が降りしきる中、私は駅とは逆方向へ向かう車の中にいました。
窓の外を流れる景色が、涙で滲みます。
さようなら、聖さま。
私の愛した太陽。
どうか、私を忘れて、自由に空を飛んでください。
貴女がいつか、本当の幸せを見つけられるように……私は遠い空の下で、一生祈り続けます。
神様。
どうか、あの方の隣に、私よりも強くて優しい「天使」を遣わしてください。
もしそれが叶うなら、あの方……西園寺雫さんが、その守り人になってくれますように。