恋愛モンスターとカエル型宇宙人   作:ゴランド

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うちの兄の推しであるナディー先生はやはり可愛いですね。言っている言葉はちょっと分からないけども…!



第十四話 スマイルください

 

【ペコポン滞在日誌▷日目】

先輩達がペコポン侵略資金集めを手伝って欲しいと泣きつかれた。めっっちゃ駄々こねられたので仕方なく行く事にした。

先輩…良い歳してるのに……いやフードファイトでの作戦失敗したからもあるんだろうけども。

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 ここは奥東京市の裏通り商店街。寂れた雰囲気を醸し出すこの地域に新しいハンバーガーショップが開店した情報が超情報収集能力を持つ恋太郎の耳に入ったので原賀胡桃とのデート場所として定めたのである。

 

「そんなこんなでまさか夏美ちゃんと冬樹君に会えるとは思わなかったよ」

「はい、僕達も興味があって来たんですよ」

「なにこの…凄い説明口調は…」

「いつもの奴だから気にするな…って言う方が無理あるか…」

 

 そんな彼等が出会ったのは日向冬樹と夏美の二人だ。この商店街は実家の近く位置していた為、出会う確率は高かったのだろう。そんな四人が合流し目当てのハンバーガー店へ向かう…そんな彼等が目にしたのは見知った顔ぶれだった。

 

「こんにちは、いらっしゃいませー」

「モアちゃん!?」

「どうしてこんな所に!?」

「ビッグケロロにケロロポテトフライお待たしました!」

「あ!ボケガエル!?」

「ゲロ!?何故こんな所に四人が…ッ!?」

 

 その後、四人はケロロに連れられてバックヤードに移動する。ペコポン人スーツを脱いだケロロを四人は何が目的か問いただす…が、付き合いの長い夏美が『世界中に展開するハンバーガーショップを足場に地球侵略』と言う推測を口にする。すると図星を突かれたようにケロロは動揺した。

 

「凄い…!なんて推理力なんだ!」

「まぁコイツとは結構長い事やってますから…で?実際の所は何を企んでいる訳なの?」

「ご、誤解であります!ただ我々はペコポンの皆様にハンバーガーの良さを知って貰いたいが為にこうやって身を削って働いているのであります!」

 

 嘘である。実際の所はフードファイトフェスティバルで優勝賞金の入手を逃した為、ハンバーガー店による全国展開作戦で侵略予算稼ぎを行っているのである。そんな彼の言い訳を鵜呑みにする者はこの場にいない。

 

「よし分かった。信じる」

「え、胡桃さん!?」

「いや食べ物を扱う仕事なんだぞ?そんな奴が悪い事企んでる訳ないだろ」

「どんな信頼の仕方ですかそれ!?」

 

 否、ここに1人いた。原賀胡桃はハンバーガー店から漂う匂いに思考能力が低下してしまっていたのだ。そんな彼女の勢いに押されてか渋々夏美達はケロロ達がちゃんと仕事をしているのか客として様子を見るのだった。

 

「いらっしゃいませ……って、恋太郎達がどうしてここに!?」

「あ、ジロロ!ここで働いていたのか?」

「ジロロ。無理してボケガエルの手伝いをしなくて良いのよ?」

「いやいや、ここにいる半分の理由はペコポン人スーツの動作をちゃんと確かめる為にこうやって働いてる訳だから気を遣わなくていいさ夏美」

「半分…もう半分はなんなの?」

「1時間以上駄々捏ねられたので…」

「「「後輩相手に……!?」」」

「どうでも良いから早く注文取れよ…ッ!こっちはもう限界なんだよ…ッ!!!」

 

 店員として働くジロロ。そんなフロア兼カウンターでの作業を行っている彼がテキパキと注文を取り、席への案内も行うだろう。

 

「それにしても意外だね、ジロロってモアちゃんの事苦手なのに一緒の所で働くなんて」

「俺もそう思うよ、キッチンを担当するかなと思ったんだけど…」

 

 そんな彼等の呟きに反応したケロロが呟く。

 

「冬樹殿達は知らないのであります。奴の料理の腕がどんなものかを…!」

「え?でも俺の家で料理を作る時は特に問題無かったと思うけど…」

「違うんだなぁこれが。奴の恐ろしい事は創作料理関連であります」

 

 ケロロは想起する。ケロン星の軍学校にて開かれたサバイバル料理訓練でジロロがとんでもないゲテモノを次々と量産した事を。

 

「まさかジロロが拷問用に飼育されていた宇宙ヒルとニョロロ(幼体)を生きたままフライにするとは…おや?ドロロからの連絡であります。じゃ、冬樹殿に恋太郎殿。ゆっくりして欲しいであります」

「ちょっと待って軍曹、ジロロがどうしたの!?」

「せめて詳しい説明をしてから!宇宙ヒルって!?ニョロロってなんなんだぁーーーッ!?」

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「で、どうなのよドロロ?」

「無論、言われた通り街中にケロロバーガーの宣伝用チラシを貼って来たでござる」

「おお、良いじゃん!良いじゃん!この調子でお客をドンドン呼び込むであります!ゲーロゲロゲロ!」

 

 優れた機動力であっという間にチラシ貼りの仕事を終えたドロロ。ケロロは更に客足を伸ばす為に追加のチラシ貼りを頼もうとする…その直前、店の扉が開く。やって来たのはジロロだった。

 

「先輩、不味いですよ!予想以上の客足で俺達だけじゃ回せません!」

「え、マジ?」

「なんと…!では隊長殿、ここは拙者もクルーとして働くでござる」

「ぐぬぬ、仕方あるまい。けど、このままじゃ厄介な客も出そうでありますな…」

 

 そんな彼等が店内へ戻ると、彼等はモアが対応する客を見て目を見開く。

 

「ここに100万あるわ。とびきりのスマイルください」

「はい、てゆーか一攫千金」

「あ゛〜〜〜〜゛っぱ、これこれぇ!五臓六腑に染み渡るわぁ〜!」

「「「厄介な客(羽々里殿)!?」」」

 

 そう、そこに居たのは内外共にピンクの頭をした羽々里である。そんなケロロ達に気付いた彼女は次のような言葉を紡ぐ。

 

「違うのよ、これには深い訳があるのよ」

「お待ちください、全てはこのメイドの責任です。私の首一つでどうか許して下さいませんでしょうか」

「何かやましい事でもあるでござるか?」

「銘戸までいるのか。とりあえず100万円出すのやめてくれないか?他の客に変な影響与えたらどうするんだよ…」

「そうであります、我々はそんな大金を積まれても揺るがないハンバーガーショップ魂を有しているのでありますよ」

「ケロロ君…ッ!」

 

 地球侵略を諦めて真っ当な心で業務をこなしている。そんな隊長の姿にドロロは関心の声を漏らすだろう。

 

「けど、まぁね?お客様のニーズに応えるのも我々の仕事な訳で!モア殿〜、100万円分のスマイルあげちゃって〜!」

「はい!てゆーか朝三暮四?」

「ケロロ君…ッ!?」

 

 目先の利益に飛びつくケロロ軍曹。お金の前では彼は無力なカエル宇宙人なのである。

 

「どうジロちゃん、これがお金の力よ…!」

「それじゃそのお金の力で後ろ二人に先までの事を穏便に説明してやって下さい」

「アンタ、何やってんのよ…」

「お母様…」

「羽香里!?違うのよ!これには深い訳が…ッ!」

 

 その直後「問答無用!」と言う掛け声と共に羽香里と唐音によるダブルラリアットが母親を襲う。金の力にも限度はあったようである。

 

「対象の無力化にはこれが最も効率的」

『やはりこの手に限る』

「大体この手しか知らねーのだ」

「皆!?どうしてここに!?」

 

 いつもの面子(恋太郎ファミリー)がケロロバーガーに集う光景を前にジロロは何故か安心感を覚える。これが慣れと言うものなのだろうか?話は戻るが彼女達がここに来たのはドロロが貼って来たチラシを見たからだと言う。だがジロロは隣街からわざわざ来る程の魅力がこの店にあるのか疑問を募らせる。

 

「わざわざここのハンバーガーを食べに来たのか?そんなに美味しそうに見えたのか?」

「と言うよりはメニューが破格の値段ばかりですからね。バーガー単品でも200円以下で食べられますから」

「ああ、まるで2000年代初期平成の値段相当だったから胡桃と一緒に食べに来たんだ」

「この令和の時代に100円代は安すぎる」

「我々の時代設定は平成だから仕方ないであります」

「皆は何を言っているんだ???」

 

 そんなこんなでオーソドックスなハンバーガーに加えて多種多様なバーガーを揃えているこの店が魅力的に映ったのだろう。外を覗くと行列ができ始めている。

 

「先輩、この数を捌くのはかなり厳しくなりそうです」

「ゲロ…これは想定外であります。なんとかヘルプを誰かに頼めればなぁ…」

「全く、数を想定して人員確保するのは商いの基本だろうが」

「それじゃあ僕等が手伝うよ」

 

 そう呟くケロロ達の元に冬樹、夏美に加えて恋太郎ファミリーまでもエプロンを着用して姿を現していた。

 

「軍曹、どうこれ?」

「まぁモアちゃんの為だからね」

「そう言って案外乗り気ですよね夏美ちゃん…と唐音さん」

「べっ、別にアンタ達の為にやる訳じゃないんだからね!」

「くぅ!エプロン姿も似合うなんて素晴らしい彼女達なんだ!」

「おお…!素晴らしい援軍ありがたいであります!」

 

 助っ人の登場に涙するケロロ。ギロロも愛しの夏美がエプロン姿に身を包んでいる事から顔を赤くしている。

 

「楠莉達も協力するのだー!」

『俺達がいりゃ100人力だぜ』

「駄目よ、静ちゃんと楠莉ちゃんみたいな小さな子達に激務をやらせるのは反対だわ」

 

 そんな二人の参戦に意を唱える夏美。自分より小さい子達を働かせるのは良くないと感じたのだろう。そんな彼女にジロロが声を上げる。

 

「夏美。忘れてるかもだけど、その二人お前より歳上だぞ」

「17なのだ〜!」

『ワシはまだピチピチの15歳じゃい』

「…そう言えばそうでした」

「ええ、驚きですよね。夏美さんのボディスタイルを見ると唐音さんが歳下に見えます」

「私が中学生以下の体格って言いたいのか!!!」

 

 叫ぶ唐音を他所に「分かったのだ」と呟きながら楠莉は常備していた打ち消しの薬を飲む。すると先程までの小さい身体が嘘のように成人女性並みのプロポーションへと変化を遂げた。

 

「これなら文句はないのだよ?」

「待って、いや待ってッ!?」

「今何が起きたの!?」

「凄いや薬膳さん!不老不死だけじゃなく伝承神話に出てくるシェイプシフターや妖狐のような変化を使えるなんて!もしかして祖先に妖怪が居て、先祖返りの影響が出ていたり!?」

「楠莉は100%人間なのだよ」

 

 楠莉の人間離れした…と言うか人間とは思えない体質に呆れる夏美。濃いキャラが更なる属性を隠して持っていた事実に天を仰いでいると、上空から響く声を耳にした。

 

「夏美さーーーん!」

「え、何この声…って上から!?」

 

 恋太郎ファミリーが驚く中、その人物は上空から軽い身のこなしで着地する。

 

「東谷小雪、見参!夏美さんのピンチと聞いて駆けつけて来ました!」

「小雪殿!来てくれたでござるか!」

「小雪ちゃん!?」

「えっ、忍者!?」

「こちらに負けず劣らずのキャラが出て来た!?」

 

 唖然とする一同。彼女の名前は東谷小雪、ドロロと共に寝食を共にする現代を生きる忍だ。自身の正体を隠しながら(言うほど隠せてない)今を生きるラストニンジャが彼女である。

そんな小雪はジロロの前に立ち、握手を交わすだろう。

 

「ドロロの新しいお友達だよね!今後ともドロロと仲良くしてね」

「あっ、はい。成る程、君がドロロ先輩の言ってたペコポンのアサシンか……その実力は宇宙艦隊を単独で沈める程のものだ聞いている」

「な訳ねーだろ」

 

 そんな即戦力になり得る人材確保にケロロやドロロ達は歓迎ムードを醸し出す。しかし、それに待ったをかける人物が居た。なんとそれは実力的にケロロバーガーの経営マネージャーを務める事となった羽々里である。

 

「ちょっと待って頂戴。可愛い子が来るのは歓迎するけど、ファーストフード店は戦場……能力や素質を見極める必要があるわ。それに相応しくない場合は残酷だけど去ってもらう事になるわ」

「おお…!羽々里のかーちゃんがラスボスみてーになってるのだ」

「これがラスボスだった頃の顔」

「なんと言う気迫でありますか…!思わずその場の空気に流れていた我々の気を引き締めるとは!」

「す、凄いぞケロロ…!この女が居れば俺達の商いによる作戦は完了したも当然だッ!」

 

 この場にいる地球人の中では年長者である羽々里。その手腕で幾多もの会社を運営している彼女にとって初対面の人物追加は見過ごせないのだろう。そんな彼女に「見なよ、俺の羽々里様を…」と銘戸は誇らしげにしていた。

ふと、面接的なやり取りが始まろうとする直前。小雪は羽々里に近寄りスンスンと匂いを嗅ぎ始めた。

 

「あ、えっと…小雪……ちゃん?」

「えへへ、良い香りだったのでつい。とても安心できる、可愛らしい素敵な香りです!」

「今日から小雪ちゃんはうちの子よ!!!」

「いや、よその子!」

「無許可で娘を増やさないでくださいお母様ァ!」

 

 こうして一気に人員確保をしたケロロ達は多くの客を対応する為に行動を開始するのだった。

 

「それじゃ皆、俺と…ハァ、ハァ…ッ…ッ!ウ゛ァバニィ…ッ…オオッン!モアの接客業見て学んで欲しい」

「大分溜め込みましたね」

「アイツ、まだモアの事を怖がってるのよ」

「てゆーか、戦々恐々?」

 

 恋太郎ファミリーの彼女達はジロロから業務内容を教わりながら働く突貫工事を行う事となったが、ふと唐音が口を開く。

 

「てか、なんで羽香里だけ研修パスなのよ!?」

「だって羽香里以外ロクに接客業できなさそうだし…あ、ちなみに胡桃は小雪と一緒に外で列整理させている。店内での作業は絶対無理だから」

 

 羽香里はピンク色を隠す程の社交性を持つ故に研修無しでも大丈夫と判断。恋太郎もまた同様の理由で既に働き始めている。

胡桃に関しては絶対にハンバーガーに気を取られてしまうので小雪と共に外での作業となる。可哀想だが仕方ない、まるで全てに裏切られたような表情をしていたが強く生きて欲しい。

 話を戻そう、ジロロはカウンターでの接客内容を教えるべく実際にやり取りを見せる事となった。最初に来た客は亜麻色のショートヘアをしたボーイッシュな女子高生だ。

 

「最前線バーガーを一つお願いします!」

「最前線バーガー一つですね?ご一緒にポテトはいかがですか?あと大丈夫ですか?ちょっと焦げてますし鉄屑(銃弾)入ってたりしますよ?」

「望む所ですッ!♡♡♡」

「望む所なのッ!?」

 

 その後、席で「キッツ♡」と言う声を背景に次の接客を行う。続いては西部をイメージした衣装を纏う外人らしき女性だ。

 

「ヘーイ、サプライズスイーツバーガーをワン個カモーン!」

「は?」

「オゥ、ソーリー。イェスタデイまでアメーリカにゴーしてたので、うっかりミスしてしまいました。いきなり団子バーガーを一個ウィッシュしまーす」

「は???」

 

 これぞ自由(フリーダム)を体現したバーガーデース!と言う声を背景にジロロは唐音に問う。

 

「まぁこんな感じだけど…参考になったか???」

「参考にならないのだよ」

「この場合は客が悪いと思うわ」

 

 何故か今後もまた会いそうな予感を覚えながらも彼は凪乃に話しかける。

 

「まぁとにかく。まずは凪乃、これから俺と一緒にカウンターで注文を聞く練習をしてもらうぞ」

「ジロロ一人で対応した方が効率的」

「練習するって言ってんだろ(ガチトーン)」

 

 続いて来たのは透き通るような金髪を靡かせる女性だ。その姿はまさに"美しい"の体現者であろう。

 

「こちらベジタブルバーガーを1つお願いしますわ」

「野菜をぶち込みまくってるので味は大分酷いですよ?」

「構いませんわ。寧ろ美容の為です、一気にビタミンを摂取できる料理を美しく食べてこそ人の美しさを問われるものですわ」

「ええ…凄い忍耐力。一種の美しさを感じる…」

「ふふーんですわ!」

 

 その言葉を待っていましたと言わんばかりにドヤ顔を決める彼女。また濃い奴が来たなぁ…と辟易しながらもジロロは隣の凪乃に声を掛ける。

 

「それじゃ凪乃、サポートするから俺が前の客にやってたような対応してみてくれ」

「そっちがそのまま対応するのが効率的」

「馬鹿な事言ってねぇで働け(マジレス)」

 

 エプロンを身に付けた凪乃を引っ張り出すと、バーガーを注文していた女性が凪乃に対して驚愕の表情を向けた。

 

「あ、貴女は栄逢凪乃!?」

「なんだ?凪乃の知り合いか?」

「彼女は……」

「ええい、御託は結構!まさか此方で働いているとは!ベジタブルバーガーの効能や栄養を求めて業務側から美しさ求めるとは流石と褒めてあげましょう!」

「全て貴女の勘違い。あと、一緒に全てのサイドメニューを注文すれば効率的」

「効率的すぎて力押しになってるぞ!?」

 

 過度なカロリー摂取は美容に良くないと単品でのバーガーの注文を行おうとする…が、彼女は隣から聞こえて来た注文に耳を疑う事になる。

 

「笑顔1つください」

「は、はい。笑顔ですね…」

「こっちも笑顔くださーい!」

「笑顔入りました!」

「なッッッ!?笑顔ですって!?しかも500円もしますわーッ!?」

 

 金髪の美しい女性はメニュー表を見る。そこには確かに『とびっきりの笑顔1分 500円』と記載されてあった。それは凡そ彼女が行っている新聞配達バイトの時給半分の値段に等しい。

500円さえあれば手頃で低価格の化粧品を購入できる。むしろスマイルに費やすより鏡の前で笑う己を目にした方が自己肯定感をアップするのにも役立つ。

こんなのにお金を使う客など居るだろうか?いや隣に列が出来るほど人気なのだが、それでも彼女は受け入れる事はできなかった。

 

「……?」

「ッ!」

 

 それでも、かつて自身が憧れた美しさを持つ彼女の笑顔を見れるとするならば?天然の女神像に匹敵する彼女からスマイルを贈ってもらえるなら?

そんな想いを胸にした瞬間、彼女は財布に手を伸ばし500円硬貨を手にする。

 

「そっ、それでは栄逢凪乃!貴女の笑顔を「それにしても笑顔にお金払うって正気の沙汰とは思えないな」

「同感。わざわざ金銭で笑顔を得る行為は無意義」

「そそそそうですわね!!!笑顔なんて頼まず私はバーガー単品130円だけ払いますわオホホホホホホーー!!!」

「お客様!?店内での駆け出しはおやめ下さいお客様ーーー!?」

 

 顔を真っ赤にして高笑い&ダッシュする金髪の美しい女性。そんな彼女を見送る次の客が呟いた。

 

「まだ分かってないわねあの子。500円スマイルを払う事により無表情で繰り出される塩対応だからこそ得られる価値があると言うのに。バーガーショップスマイル検定15段の私からすればヒヨッ子同然ね」

「誰!?誰なの!?」

 

 噂を聞きつけ入店した通りすがりのバーガーショップスマイル検定15段の人物。尚、この話限定の使い捨てモブキャラであるので再登場の予定は無い。

そんな驚愕するジロロの元にケロロ達がやって来る。

 

「ちょっとジロロー!揚げ足取りするんじゃなくて売り上げに貢献してくんない!?」

「購入意欲を削ぐような真似はやめた方がいいぞ?」

「あ、ごめんなさい…」

「とにかく喧しいのでジロロ先輩は外でクルッチ達と一緒に列の整理をやってて欲しいですぅ」

「…ッス」

((((((可哀想に……))))))

 

 外に追いやられるジロロ。小雪が慰める為に大山椒魚(オオサンショウウオ)の丸焼きと言うゲテモノを手渡した。

 

「いや天然記念物!?勝手にいいのかコレ!?」

「胡桃さんも一つどうですか?」

「いや、そんなの食べると思っているのかよクソッ、美味しい!」

「えへへ。喜んでもらえたようで何より!」

「なんだ?外に出てもツッコミを入れる事に変わり無いのか俺は???」

 

 こうしてジロロによる研修を無事?に終え、恋太郎ファミリーの彼女達が続々と笑顔を見せていく。

 

「笑顔ください!」

「はい、笑顔ですね!どうぞ!」

「ピンク髪の子、笑顔が素敵だああああッ!最高だあああああああッ!」

「笑顔一つ!」

「別に、アンタの為に笑顔を贈るんじゃないんだからね…っ!」

「うっひょおおおおおおお!ツンデレな態度から出されるぎこちない笑顔可愛いいいいいいい!」

「こっちも笑顔!」

『任されよ。笑顔は1番得意です』

「ぴゃあああああああ!小動物のような可愛さが身体に効くぅぅううううううううううううう!」

「私に笑顔1つお願いします!…あ、塩対応でのマジレスも美味しいのでそっちも!」

「笑顔を注文する目的が不明…けど善処する」

「うおおおおおおおおおおお!ぎこちないけど一生懸命指で口角を上げようとする仕草が途轍もなく可愛らしいいいいいいいいい!」

「とびきりの笑顔ください!」

「分かったのだよ!」

「大人っぽい姿から繰り出される人懐っこい可愛らしい仕草が良い!めちゃくちゃ可愛いいいいいいい!皆最高だああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

 その直後、後方で大声を上げていた恋太郎の元にケロロ達がやって来る。

 

「あのさ、恋太郎殿。凄い五月蝿いであります」

「彼女達が頑張ってるの分かるけど、邪魔になってるですぅ」

「あっ…ごめんなさい」

「店内は静かにせんか!お前も表に出ていろ!」

「申し訳ないでござるが恋太郎殿。ジロロ殿と一緒に作業を頼むでござる」

(((((可哀想に…)))))

 

 そのまま外へ追い出される事となった恋太郎。彼はその場から崩れ落ち悔し涙を流すだろう。

 

「俺は…ッ!なんて無力なんだッッッ!!!」

「いや馬鹿なだけだろ」

 

 ジロロはオオサンショウウオを頬張りながら冷たく呟いた。

 

 

 

 

 その後、しばらくして恋太郎とジロロは宇宙通販で取り寄せたバーガーの食材やその他物品を小型UFOに載せてケロロバーガーへ向かっていた。

 

「しかし最初はケロロ先輩の独断でこれの500倍近くの食材を購入しようとしていたのは殺意が湧いたなぁ」

「ジロロの先輩、あまりにも思い切りが良すぎないか?」

 

 臨時マネージャーである羽々里がストップを掛けてなければ多額の借金をしていたと簡単に予想できる。有能とアホの振れ幅が大き過ぎるカエル宇宙人の顔を思い浮かべながら彼等はバーガーショップへ向かう……が、その光景に二人は驚く事となる。

 

「こっ…これはッ!?」

 

 そこにはバーガーではなく笑顔を求めて500円玉を握りしめる百を軽々と越す客の姿があった!一体どうなっているのか、バックヤードへ向かうと慌てた様子のケロロ達がそこにいた。

 

「先輩、これは一体!?」

「実は来ている客達がバーガーじゃなく笑顔を求めてるのであります!」

「ここハンバーガーショップなのに!?」

「あまりの人数故に小雪殿、胡桃殿、銘戸殿にも出てもらってるでござる」

「そうなのか……あれ?羽々里殿は出ないのか?」

 

 そう告げるジロロに「えっ!?」と驚きの声を上げる羽々里。どうやら彼女自身がカウンターで対応すると言う選択肢が頭になかったらしい。

 

「でっ、でも私なんかじゃなくて歳の若い子達の方がお客さんも喜んでくれるし…」

「なら羽々里殿だって十分若いじゃないか」

「その通りであります!ほら此処に、笑顔のオプションとして取り寄せておいた色々な衣装があるであります!」

「おお!こんなに数多くの衣装が!?羽々里さんならどれにも合いますよ!!!」

 

 未亡人(恋愛中)に迫るケロン人と彼氏。そんな彼等の説得に対し羽々里は顔を真っ赤に染めるだろう。

 

「分かり…ました……き、着ます…ッ!」

「ひゃっふぅ!そうこなくっちゃ!んじゃ此処に更衣室があるので早速着替えてきて欲しいであります!」

「う゛っ゛よりにもよってゴスロリメイド…!?ええい、こうなったらヤケよ!!!」

 

 カーテンを閉める音を響かせ、一同は羽々里が姿を見せるのを待つ事となる。しかし出てくれば最後、そう言う店の衣装を来た未亡人と言うアウトな絵面が待っている事を全員は知らない。そんな中、店内から冬樹が顔を出して来る。

 

「大変だよ軍曹!胡桃さんがお店のハンバーガーの匂いで今にも暴れ出しそうなんだ!」

「ゲロォ!?マジで!?羽々里殿早く早く早く早く早く早くぅ〜〜〜ッ!!!」

「分かってる!分かってるから急に更衣室のカーテン開けようとしないで!?あとは腰のチャックを閉めれば問題n……えっ???」

 

 それは恋太郎ファミリー全員の成果だった。先日のフードファイトフェスティバルにより大量のケーキやラーメンと言った糖分、炭水化物、脂肪の塊を摂取していた。たった1日、されど1日。それは着実に身体に影響が現れていた。

その前兆として衣装のファスナーが閉まらない…そんな形で羽々里に襲いかかったのだ。

 

「う……そ…!?」

 

 女性としての尊厳が破壊されてたショックと長時間によるマネージャー業務の疲労によりドグシャァッとその場で倒れ伏す事となった羽々里。

 

「「羽々里さん/様!!!!」」

「銘戸!?接客はどうしたんだ!?」

「そんな人様達より羽々里様です!」

「いや銘戸殿!?お客様は神様でありますから!?」

「…? 羽々里様の方が偉いと思いますが」

「嘘…この人ガチで言ってらっしゃる……」

 

 凄まじい忠誠心を示すメイドに恐ろしさを感じるケロロ。そんな最中、倒れた羽々里がうなされている様子で何を呟く。

 

「う……ウエスト…が……」

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 彼女達はハッとする。そう言えば最近お腹周りに違和感があった…それは彼女達が無意識的に行ってた現実逃避により気付く事がなかっただろう…だが羽々里の零した一言によりそれは連鎖的な起爆を果たしたのだ。

接客による疲労と精神的なショックにより一同は倒れ伏す事となった。

 

「皆ァァアアアア!?」

「ゲロォーーッ!?皆どうしたんでありますか!?何故急にぶっ倒れる事に!?」

「ケロロ様…勤務体制についてお話がございます」

「事と場合によっては海の底に暮らす事になる。ケロロちゃんと正直に話して欲しい」

「誤解!誤解であります!!!吾輩、そんな無茶振りさせてないでありますよ〜〜〜ッ!」

 

 今回ケロロは無茶な事をさせていない。寧ろ人数が多かったのでローテーションで休みを取ってたくらいの労働環境だった。ただ精神的なショックが強過ぎた事によるものだったので彼は悪くないのである。

 

「ああ、もう無理。笑顔やり過ぎて顔が疲れちゃったわ…」

「夏美殿!?」

「おじさま…モアは、もう……」

「モア殿!?」

「大変だよ!胡桃さんがあまりに空腹過ぎてお客さんに齧りついちゃってる!」

「胡桃殿!?」

「でも齧られているお客さん、寧ろご褒美ですって呟いてるね…?なんでだろう」

「胡桃殿!!??」

 

 次々と限界を迎える少女達。変態達を相手にするのは疲れたのだろう、夏美と冬樹、小雪の3人は帰宅。胡桃はバックヤードで在庫の山となっているハンバーガーを処理する役割に回っている。

 

「くっ、皆不味いぞ…!お客さん達が不満を漏らしている」

「どうするんだケロロ!何か策は無いのか!?」

 

 暴動が起こる寸前の有様を見て焦る恋太郎とギロロ。そんな彼等に安心したまえ!と叫ぶケロロ。

 

「笑顔が提供できない?否、笑顔とは皆が持っている魔法の力!つまりは……!」

 

──俺が…俺達が…!女の子だ!!!

 

 女装したケロン人+恋太郎によるチーム。皆は今は亡き彼女達(※生きています)に代わり務めを果たすのだ。

 

「行くぞっ!チームケロロ小隊&恋太郎featジロロ!出動だ!」

「「「「「おうッ!!!」」」」」

 

 その後、ケロロバーガーは破産した。ケロロ達と女装した恋太郎の登場により場の空気は冷めたのである。ギリギリ恋太郎は行けるか…?と審議されたが公共の場で女装相手にキャッキャするのはどうなのか?も理性が働き、お客(男達)の尊厳は守られたのだった。

ちなみにケロロバーガーの余りに余った食材達は全て原賀胡桃の胃の中へ処理され、ケロロ小隊は少しの借金をするだけで済んだ。

 

 余談だが、このケロロバーガー破産により最も悲しんだのは花園羽々里であったと言う。

 

「うわあああああああああああああん!!!可愛い服を着た女店員達がお金を払って色々とサービスしてくれるハンバーガーショップを全国展開するチャンスだったのにいいいいいいいいいい!!!」

「羽々里さん…ッ!俺が不甲斐ないばかりに…ッ!」

「いや潰れて良かっただろそんなの!」

『悪は潰えた』

「ハンバーガーショップの体裁を保っていない」

「もはやそう言う店だろ」

「危なかった…全国に変態が支配したハンバーガーショップが進出される所でした……!」

 

 そんな悲しむ大人を前に安堵する生徒達なのであった。





●キャラクター紹介

『東谷 小雪』
ケロロ軍曹に登場する忍者娘であり日向夏美のクラスメイト。ドロロと共に忍者の修練を積んでおり、周りとズレた常識をしている。ちなみに人懐っこい犬のような行動が羽々里にクリーンヒットした為、勝手に娘にされそうになった。この作品ではもう少し警戒心を持って欲しい所である。

『バーガーショップスマイル検定15段の人物』
謎のバーガーショップで注文できるスマイルに人生を賭けている女性。100カノにはふしだら委員長コンテストに出場していたモブが居たので、そのノリで登場させたポッと出のオリキャラである。




実は今後彼女達になるキャラ達が登場していました。何処に居たか皆さんは分かりますか?ちなみにまだ恋太郎と見つめ合ってビビーンしてないのでご安心を。

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