恋愛モンスターとカエル型宇宙人   作:ゴランド

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年末突入して2025年はもうすぐで終わり。皆さん良い年越しをお過ごしください!



第二話 彼女達と未確認生物カエル型宇宙人

 

 

【ペコポン滞在日誌◎日】

 

 自分がペコポンに墜落してから数ヶ月が経った。遭遇した友好ペコポン人の少年である愛城恋太郎。彼の棲家に居候という形で自分は住まわせて貰っている。

当初は人形と言う体で彼の家に上がり込んだのだが、数日しない内に自分が宇宙人という事がバレてしまう……が、何故か普通に受け入れらている事態に今も困惑を隠せない。何故???そんな都合よく???

恋太郎とその両親の順応性に戸惑いを覚えながらも自分は救援を待ちながら文化的な生活を送る事となったのだ。

 

 

 

そんな日誌にこれまで過ごした日々を記しながら、自分は恋太郎に語りかける。

 

「そう言えば恋太郎。何か悩みでもあるのか?」

「どうしたんだ藪から棒に」

「いや、なんか最近筋トレし始めたり、地図を読み込んでたり、数時間ずっと自転車で街の散策してたりと色々やってて…学校で何かあったのか?」

「ははは、いやいや。別にそう言う訳じゃ……でも、そうだな。合ってるかもしれないな」

 

 彼はそんな事を言いながら頬を赤らめる。ここ最近の彼は妙に元気だなと思う。彼が中学校を卒業するまでは「彼女欲しいいいいいいいいい!」と騒ぎ立てるのが当たり前だったと言うのに今や大人しい…いや、大人しいと言う割にはかなり活動的にはなっているのだが。

そんな恋太郎の反応を見て俺はある推測を立てる。

 

「まさか…発情期か!」

「その呼び方やめてくれないか?」

「繁殖期に突入したペコポン人は体温が上昇し発赤すると言う…そうか恋太郎もそんな時期か」

「数ヶ月の付き合いなのに父親目線になられても…」

 

 違うのか…?本部から送られてきたペコポン人の恋愛についての報告書を纏めるのに使えそうだったんだけどなぁ。幸いにもペコポンでトラブルがあった事を察知してくれたのか報告の期限締切を延ばしてくれた。締切延ばすよりも救援に来てくれないのかなぁ!もっとこう…あるだろ!対応間違ってるだろ!

閑話休題。とりあえず恋太郎にこれまで高校に進学してからの出来事を聞いた。

 

「なに!?恋太郎お前…既に(つがい)ができたのか!?」

「番って言うか…まぁ彼女だね」

 

 照れくさそうに言う彼に自分は思わず呆気に取られる。あの恋太郎が…!ペコポン人の中でも優秀な能力を持ち老若男女問わず分け隔てなく優しく接している優良株。なのにも関わらず何故か生理的に受け付けないと言う理由でフラれているあの恋太郎に彼女が…ッ!

 

「レポートの参考にする為にどんな彼女が教えてもらっても良いか?」

「ああ、実は俺自身ジロロにも彼女の良さを知って欲しかったんだよ!俺の彼女は可愛くて美して、笑顔が素敵でいっぱいに溢れている所がとても良いんだ…!」

 

 恋太郎が彼女である人物を語っていく。幸せそうかつ絶賛する言葉がスラスラ出てくる事に若干引く。…まぁいいやとにかくレポート用にメモを取らねば。

 

「それにしても大絶賛の嵐だな…そこまで魅力的なのか?」

「勿論だけど。唐音に羽香里に静ちゃん、凪乃は素敵な彼女だよ」

「………?????」

 

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……ハッ!今若干思考停止していた。何やら変なノイズが耳に入ってきたらしい。ペコポンの環境はケロン星とは全然違うからこう言った不調が出てくるのだろうか、気を付けないと。

 

「それにしても唐音・羽香里・静・凪乃という言う名前か。確か他の国では長いフルネームを持つペコポン人がいた筈…この国で長い名前持ちの彼女とは中々面白いな」

「いや各々別人だよ」

「…ここは日本で合ってるか?」

「合ってる」

「…この国に一夫多妻制度はなかったよな?」

「合ってる」

「…数秒前にペコポンの結婚制度が改正されたりは?」

「そんな頭おかしいイベントは早々に起こり得ないよ」

「そんな頭おかしいイベントが今まさに始まってるんだけど???え、なに?お前彼女四人居るのか!?高校デビューで!!??」

「俺は最初からそう言ってるんだけども」

 

おっ、おおおおおおおち、おちちちおちおちつつつちちつ落ち着け冷静になれクールダウンしろ俺。

 

「…ヨシ分かった恋太郎任せてくれ」

「急に何の話を?」

「こう見えて俺はペコポンのサブカル文化には詳しくてな…恋太郎は俺の恩人だ。刺されそうな予感がしたら別惑星への逃走の手配をしよう」

「急に何の話をしているんだお前ッ!?置いていける訳ないだろ!俺の彼女達を!!!

「!?」

 

 最終的に刺されるであろう彼の身を案じて脱出の案を出したが、彼の一声にそれは却下されてしまう。なぜだ…!?普通こう言う時は己が身を案じているのが当たり前なのでは!?

 

「確かに世論から見れば俺は最低のクズ行為をしているダメ人間かもしれない……けど、だから俺が逃げて良い理由にならないし逃げる選択肢なんて最初からないんだ!俺は彼女達一人一人に向き合って皆で幸せにする…いや幸せになるんだ!」

「な、なんて澄んでいる目を…!」

「ジロロ、もしも俺が彼女達を幸せにできなかったら宇宙人流の拷問でなるべく長く惨たらしく生き地獄を味合わせてから処して欲しい

「しかも相当な覚悟しておられる…!?」

 

 どうやら彼の決意は相当なものらしい。頓挫したペコポン脱出計画案を心の中にしまっていると、今度は恋太郎の方から話を切り出した。

 

「折り合って相談なんだけど…俺、彼女達にジロロの事を話したいんだ!」

「何を言ってるんだお前ェ!!!」

 

 宇宙人の存在をバラすなんてアホかコイツ!ペコポンじゃ宇宙人の存在は一部を除いて秘密なんだから駄目に決まってるだろ!?

 

「そこを何とか!彼女達に誠実である為に俺は秘密にし続けたくないんだ!」

「だからと言ってなぁ…恋太郎の彼女達が宇宙人であるならまだしもそんな許可を出せる訳────いや、気が変わった。いいぞ紹介してくれ」

「え、急にどうしたんだ…!?」

「今隠していてもいつかバレる。それなら今のうちに紹介しても大丈夫だろうと思ったんだよ」

 

 ありがとう!と感謝の意を示す恋太郎。しかしそんな恋太郎に少し申し訳ない気持ちを自分は抱いていた。

 

(何で恋太郎が複数人の彼女達が短期間で作れたのか…もしもそこに宇宙人の思惑があったとしたならば…!)

 

 恋太郎の提案を呑んだ理由は至極単純、その彼女達が怪し過ぎるからだ。これまで数ヶ月の間、彼を観察して来たが高校入学に入るまで恋太郎は幾多も女性にフラれると言う経験をして来た。その筋の情報(情報源は恋太郎両親)からでは幼少期から何度も失恋しておりその数は驚異の100回を達成していたとの事。

そんなアタール星人並の恋愛運の無さから一気に数人もの恋人ができるなんておかしい。彼女達が何かしら恋太郎を狙う敵性宇宙人と言う可能性を考えて自分は彼女達と接触を果たす事に決めたのだ。

 

常識的に考えて彼女が4人も居るわけ無いだろ

 

(恩人である恋太郎は俺が守る…!)

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 ここはお花の蜜大学附属高等学校の屋上。そこに恋太郎&彼女達がランチタイムを楽しんでいた。各々が弁当を食べ終えた頃合いを見計らって恋太郎はある話題を切り出す。

 

「と、言うわけで皆に本日の放課後。紹介したい人が居るんだ」

「紹介したい人…ですか?」

 

 そう一言告げると桃色の髪が特徴的な女子高校生である花園羽香里が言葉を反芻する。そのバストは豊満であった。

 

「で、今度はどんな彼女なの?分かってるわよ。この流れから大体新しい子を連れてくるって言うのは」

 

 次に言葉を紡ぐのは院田唐音と言う少女。彼女もまた恋太郎の彼女の1人である。そのバストは平坦であっt(ここから先の文章は血に染まっている)

 

「いやいや紹介したいのは彼女じゃなくて、うちの居候なんだ。あと一応は男だよ……多分」

「恋太郎君の家に住んでいる…って事ですか!」

「と、言っても数ヶ月の間柄だけど…とにかく皆にこれ以上秘密にしておく訳にもいかないと思って紹介したいんだ」

 

 羽香里がよからぬ妄想で脳内がピンクに染まっている間、隣で弁当を咀嚼せずに飲み込んでいる栄逢凪乃が一言告げた。

 

「でもここで紹介するのは非効率。もっと早くから紹介しても良かった筈」

『して、その人物は一体どちら様かな?』

 

 スマートフォンの読み上げアプリで会話する好本静の言葉に恋太郎が意を決したように次のような言葉を口にした。

 

「実はその……彼は宇宙人なんだ」

「よし恋太郎。アンタ休みなさい」

「宇宙人なんて非現実的。存在しない」

『お前は目が見えぬのか…』

「い、いや確かに嘘に聞こえるけど本当の事なんだよ!」

 

 例え彼氏の事が大大大大大好きな彼女達であっても家に宇宙人が居候している…なんて事は信じる事ができなかった。むしろ恋太郎が疲れているのではないかと心配する始末である。

 

「大丈夫です恋太郎君♡♡♡♡♡放課後は私が付きっきりで看病してあげますから♡♡♡♡♡」

「やましい気持ち100%で言うな!そのハートマーク量を抑えなさいよ!」

 

 羽香里はチャンスタイム到来と言わんばかりに邪念の塊となって恋太郎に迫るが恋太郎の彼女達の中でツッコミ役を担う唐音が抑える。「どうすれば信じてもらえるんだ…!」と恋太郎が悩んでいる中、たまらず唐音が声を上げた。

 

「……分かったわ。それじゃ会わせてちょうだい」

「唐音!?」

「べっ、別に!アンタの為に真偽を確かめようって訳じゃないんだからねっ!」

 

ツンデレ特有の言葉遣いで恋太郎にそう告げる彼女。しかし唐音はツンデレ属性と手が出てしまうパワータイプ属性を兼ね備えたヒロイン。それを知る羽香里は思わず呟く。

 

「唐音さん、まさか…!」

「出会い頭に首の骨にダメージを与えれば効率的」

『もう勘弁ならねぇ、奴等の全身の骨を折ってから殺してやる』

「唐音…もしも罪を犯した時は俺も一緒に償うから…ッ!」

 

「私が罪を犯す前提で話を進めるな!」

 

 人並外れたパワー系ツンデレヒロインと言う全員からの共通認識に思わず叫ぶが唐音は不安の気持ちでいっぱいだった。自称宇宙人の同居人、それが何であれ彼氏である恋太郎に悪影響を与えている可能性を考慮してしまう。そんな不安要素を見極めるべく彼女は拳を握る。

 

常識的に考えて宇宙人が居るわけ無いでしょ

 

(恋人である恋太郎は私が守る…!)

 

 そして運命の時、即ち放課後の時間がやって来る…!

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「と、言うわけで。こちら彼女である皆と居候の宇宙人です……」

 

「「本当に実在したんかい!」」

 

 対面する宇宙人と彼女達。片やカエル型の宇宙人と片や多数の少女達が互いに唖然とする中、唐音が誰よりも先に我に返る。

 

「う、嘘よ!宇宙人なんて信じられる訳ないじゃないの!どうせ人形の中にロボット仕込んでるとかそう言うのでしょ!」

 

 唐音がジロロの頭を鷲掴みにすると、身体の隅から隅まで探り始める。

 

「どこかにチャックがあるって私知ってるんだからねっ!…って、あれ?どこにも無い…口の中は!?うわっ、歯が綺麗に並んでる気持ち悪ッ!?」

「綺麗な歯なのに気持ち悪いとはこれ如何に」

 

 口元を引っ張られながら冷静に呟くジロロ。慌ただしく身体中を弄る唐音に対して「早く済ませてくれないかなぁ」と思っていると後ろから凪乃が助け舟を出す。

 

「落ち着いて院田唐音。そうやって無闇に触っても非効率的、ここは解剖で身体構造を見れば効率的」

「俺バラされる!?」

 

 助け舟は助け舟でも出したのは三途の川への直行便だったらしい。そんな女性達に恐れを抱き始めたジロロに静が話しかける。

 

『貴殿が"星"より来られた"方なのですね』

「?…あ、まぁ…そうなるかな…って、そのデバイス…もしかして恋太郎が俺とアプリを入れていたヤツか?」

 

 ふとジロロは静が持つスマートフォンの存在に気付く。アレは恋太郎と共同作業により作ったアプリである。根幹となるソフト部分の作製はジロロが務め、手作業で入力する箇所は恋太郎が担当していたのだ。更にアップデートを行なった事により電子書籍だけでなくネットの世界に漂う用語を自動的に候補へ出す便利機能が備わっている。

 

『ありがてぇ…ありがてぇ…!お礼にこの鉛玉をお返ししなきゃなぁ!』

「なぁ恋太郎、これ褒められてるのか?」

「めちゃくちゃ褒めてるよ。良かったなジロロ!」

「良いのかコレ?」

 

 独特な言い回しに困惑している最中、ジロロは己の頭が撫でられる感覚に襲われる。彼の頭に手を伸ばしている者の正体は羽香里であった。

 

「この…なんでしょう、ひんやりしていてモチモチとしてスベスベしていながら弾力のある…かつ、芯は固い感じの…とても癖になる感触です」ナデナデ

「宇宙人の存在なんて非科学的。投薬実験により特異的な進化を遂げた蛙が最も信じられる」ナデナデ

『BI○HAZARDォ…じゃねぇか!』ナデナデ

 

 3人がジロロの独特な感触を味わっていると、それを見ていた唐音が声を上げた。

 

「あ、あんた達!なにその存在を受け入れてるのよ!?そんな怪しいヤツ私は宇宙人なんて信じないわよ!」

「でも唐音さん、逆に宇宙人以外のなんなんですかこれ?」

『妖精さんかな?』

「隔離施設から脱出した蛙型生命体」

「ケロン人です……」

「ま、まぁ唐音落ち着いて。確かに見た目はファンシーだけど立派な宇宙人みたいで……あれ?そう言えばジロロ、お前どうやってここまで来たんだ!?」

 

 恋太郎は思わず声を上げた。確かに放課後彼女達と会わせる約束はしていたが、気付いた頃にはジロロは既に屋上で待機していた。どうやってこの学校に?まさか人形のフリをして無理矢理入ってきたのか?そんな疑問に答えを出すかのようにジロロは言葉を紡ぐ。

 

「実はやっとアンチバリアの修理が完了したんだ。これを使って来た…ほら、こんな風に」

 

 額のマークを触ると、突如に彼の姿が消える。

 

「え、ジロロ!?」

「消えた!?」

「ど、どうなってるんです!?」

「…こんなの非科学的……!」

『全員気を付けろッ!敵のスタンド攻撃を受けているッ!』

 

「いやいやただ透明になっているだけだから」

「うわっ!?いつのまに!?」

 

 皆が慌てふためく中、ジロロは唐音の足元でアンチバリアを解除する。唐音はその場から猫のように飛び退きながら驚く事となる。

しかしそれでも唐音は信じきれてないようだ。無理もない、彼女は地球人の中でも一般市民の立ち位置にいる。目の前で特異な現象が起きたとしてもすぐに飲み込める筈がないだろう。

 

故になんとか本物の宇宙人と信じてもらう為、恋太郎はジロロに宇宙人らしさのある特技を見せて貰う事となった。

 

特徴その①ケロン人伸縮性

 

「それじゃ…手脚が伸びやすい?」

「関節を外せば人体を伸ばす事は可能」

「関節外してる時点で人をやめてる!」

 

特徴その②ケロン人共鳴

 

「共鳴とか?…ジロジロジロジロジロジロジロジロ」

「うわっ、それどうやってやってるの!?」

『シズシズシズシズシズシズシズシズシズ』

「静さんが対抗を!?」

「共鳴してる静ちゃん可愛い!」キュン!

「あれは共鳴ではなくただの録音再生ソフト(私が好本静に向けるこの感情は一体…)」キュン

 

特徴その③3回バク転、その後に宙返り捻り着地

 

「はーーーーっ!うおりゃッ!」

『「「「お〜〜〜〜っ!」」」』

「いや凄いけど‼︎それ宇宙人関係なくない!?」

 

 その後も色々な事をやっていくがネタが尽きていく。終盤に近づくにつれて一発芸になって来た為、地球人宇宙人共に疲労が蓄積していく事となった。

 

「はぁ…はぁ…つ、次は目でピーナッツを噛む特技を…!」

「い、いや…!もういいから…!」

「二人ともドンドン疲れている。これ以上はもう…」

 

 やめにしよう、そう恋太郎が言おうとした瞬間。偶然にも強力な突風が屋上に襲いかかる。強力な風に思わず怯む者、体勢を保とうとする者、対象の風上に立ち合法的なパンチラで誘惑しようとする者、綿毛のような軽さ故に屋上から飛ばされる者……

 

「って、静ちゃーーーーん!?」

「なんでペコポン人が空を!?飛行能力なんて無いはずだぞ!?」

「好本静は平均女子高校生よりも体重が軽い…」

「つまり綿毛のように軽い静ちゃんはモモンガみたいに風に乗って飛ばされたんだ!」

「どんな生態なんだあの子は!?」

「そんな事言ってる場合じゃ無いわよ!?このままだと…!」

 

 風が止む頃には静は上空から地面に叩きつけられる結果となるだろう。そうなってしまえば彼女は生命の終わりを迎えてしまうだろう。

 

『オラまだ死にたくねぇ』

「静ちゃん!」

 

 スマホからの音声を皮切りに風が止まり、重力に引っ張られる形で地面へと落ちていく。その瞬間、恋太郎が屋上のフェンスに脚を掛けると静に向かって飛び出す。

 

「愛城恋太郎何を!?」

「恋太郎君!」

「ちょっと何を飛び出して!?」

 

 恋太郎は背後から聞こえる彼女達の制止の声を振り切ってまで静に手を伸ばす。

 

『兄貴ィ!』

(このまま俺がクッションになれば静ちゃんは助かる!)

 

 そう考える恋太郎は空中で彼女を抱きしめる。しかしこのままいけば静こそ助かるが、クッションの役割を担う彼はただでは済まない。軽ければ重症、最悪の場合は死に至るだろう。覚悟を決めて目を瞑り、彼女への無事を祈る恋太郎。

 

そんな彼だったが、ふと違和感を覚える。いつまで経っても衝撃や痛みが襲って来ない。加えて先程までの落下している感覚も消え失せている。

 

「彼女一人一人と向き合って幸せにするんじゃなくて、なるんだろ?朝、自分で言ってた事を忘れちゃったのか?」

「ジ、ジロロ!?」

『アレを見ろ!UFOだ!』

 

 二人は気付く。ジロロがフライングボードを使い、2人を乗せて助けたのだ。つい先日修理を終えたばかりのケロン軍製の小型円盤を巧みに操作すると、屋上で待機している羽香里達の元へ恋太郎と静を連れて行く。

 

「ここで大丈夫か?」

「ありがとうジロロ、さぁ静ちゃん」

『まさしく空の方舟』

「それにしてもジロロこんなのを持っていたなんて…」

「これぞケロン星の技術が詰まった小型ユーフォーのフライングボード。その気になればこの大陸(日本列島)の端から端まで行く事も造作ない!」

 

 誇らしげに言うジロロ。フェンス内に降りた恋太郎と静を見届けた後に羽香里は呟く。

 

「最初からこれを呼び出していたら唐音さん信じていたのでは…?」

「…」

 

 確かに。ジロロは心の中でそう思った、流石にフライングボードの機構や中身のエンジン等は見せる事は難しいがケロン軍の叡智の結晶を見せれば唐音は信じてくれたのではないか?何気ない羽香里の言葉がジロロに突き刺さった。

そんな時である。ピピピとフライングボードから音が鳴った事に気づいたジロロはハンドルレバーの握り手部分を開き、ボードの状態を確かめる。

 

「あ、しまった。バッテリー充電忘れてた」

『「「「「え」」」」』

 

 プスン、と気の抜けた音と共に重力へ引かれて落ちるジロロ。恋太郎と静を屋上のフェンス内に降ろしたのは良いものの、自分はまだフェンスの外でボードに乗ったままだったのを失念していた。それ故に彼は先ほどまでの二人のように地面に向かって行く事となってしまった。

 

「うおああああああああ………ん?」

 

……が、しかし。その寸前でジロロとフライングボードは共に宙吊り体勢でその場にて静止する事となった。何が起きたか分からない彼は周囲を見渡す。

 

「た、助かった……のか?一体何が……あれ?」

 

 顎を引いて空の方を見る、そこには自身の足とフライングボードを掴む唐音の姿があった。

 

「君は唐音!?自分を疑ってた筈なのに何故…」

「べっ、別に!アンタの為じゃ……!」

 

 直後、彼女は宇宙人を掴む手に力を込めながら言葉を紡ぐ。

 

「ないんだからねッ!」

 

 ぶおん!とフルパワーでケロン人を引っ張り上げる唐音。一体と一台は上空へ放り投げられ、しばらくしてから屋上フェンス内へと落ちる事となった。

 

「ぶっ!だいぶ雑…唐音、どうして自分を?」

「はぁ…はぁ…何が?」

「ケロン人はペコポン人よりも体重が軽い。例え自分が落下しても骨折程度で済んだ……それでも何故、自分を助けようとしてくれたんだ?」

 

 特に彼女はジロロに強く訝しんだ感情を向けていた。それ故に助けられた本人は理解が及ばず唐音に問い掛ける事となった。

 

「べ、別に!恋太郎と静を助けてくれた恩返しって訳じゃないんだからねっ!」

「!?」

 

 敵対的かつ好意的な発言が混ざり矛盾が発生する言動。いわゆるペコポンのサブカル文化で有名な『ツンデレ』を前にジロロは困惑の意を強くする。なんだ…何故この人物は自分にツンデレ的発言をしているんだ???

そう思っていると、恋太郎が視線を合わせ告げる。

 

「唐音はジロロの事を信じてくれたんだよ」

「自分を…」

「静ちゃんと俺を助けてくれた。口先だけじゃなく行動で示してくれた事で唐音は心を開いてくれたんだよ」

「………」

 

 恋太郎と共に唐音へ視線を向けるジロロ。彼女は「別に私は…」と言い掛けた直後、彼は口を開く。

 

「唐音並び恋太郎の彼女の皆さん。自分は貴女達に謝らないといけない…申し訳ありませんでした」

 

 ジロロは頭を下げその場の皆に謝罪を行う。彼は元々この屋上に来たのは恋太郎の彼女達の正体が敵性宇宙人だと疑っていた為であると打ち明けた。それにも関わらず皆は自分の存在を信じた上に自身の危機に真っ先に助けてくれた。

これまで様々な惑星を渡り歩き、監視員として一定の距離を保って来たが、もしも逆の立場であったら咄嗟にこんな事はできないとジロロは考える。

 

「唐音、貴女の行動に感謝と敬意を」

「…い、いや。私だって悪かったわよ。だからそんな畏まるような言い方はやめてちょうだい」

「そっか…」

 

 フ、と笑うジロロ。この惑星ペコポンに降り立って彼女達の強さには驚かされた。体の強さはもちろんの事、異星人を相手に咄嗟に動く精神的な強さに戦士の如き輝きをジロロは見出した。

 

「これが先輩達の言ってたペコポンの女戦士(ソルジャー)…」

「おいちょっと待て、なんだソルジャーって」

 

 唐音はジロロに呟きに思わずツッコミを入れる。無論、貶す意味合いではなく賞賛の意味で使っている。

 

「確かに唐音さんはソルジャーに相応しい膂力を有してますが…!」

「院田唐音は生粋の戦士」

『元グリーンベレーの奴に勝てるもんか』

「私の事をどう思ってるのよアンタ達!」

 

 同調するように言う羽香里達。そこに恋太郎も加わり言い放つ。

 

「もちろん可愛い彼女だよ!唐音は確かに戦士みたいに強いけどそれも魅力の一つなんだ!」

「きゅ、急に何を言い出すのよ!?」

「今だって実は皆の為にクッキーを焼いて来てこっそり持って来てるような優しさを持ってる素敵な彼女なんだ!」

「えっ?」

 

 ジロロが唐音の方に視線を向ける。よく見ると唐音が恋太郎から見えない角度に袋詰めされていたクッキーを持っている事に気付く。

 

「本当に持っている…!?どうやって分かったんだ!?匂いか!?」

「違うよジロロ、これは愛の力なんだ!」

「どうしてここで愛!?」

 

 愛の力と言い放つ恋太郎に驚くジロロ。そんな彼を尻目に顔を真っ赤に染め上げた唐音が袋からクッキーを1枚取り出す。

 

「べっ、別に!恋太郎の為に作って来たんじゃないんだからねッ!」

 

 グシャァッ!とクッキーが恋太郎の左目に突き刺さる。

 

「嘘だろ恋太郎!?」

「うん、美味しい!」ムシャムシャ

「嘘だろ恋太郎!?(畏怖)」

 

 突き刺さったクッキーを目で食べ始める光景に恐怖を抱くジロロ。ペコポン人ってそんな摩訶不思議生態していたか…?

 

「これが…愛の力か……!」

「多分それ違うと思うわよ」

 

 ケロン人の呟きにツンデレ少女はツッコミを入れる。この瞬間からジロロは恋太郎の正体こそ宇宙人なのでは?と言う疑念が湧き始めたのはまた別のお話。

 

……そして翌日。ジロロは恋太郎達の恋愛様子を観察する為、放課後のタイミングで学校へ向かう。するとそこには…

 

「と、言う次第でございまして。薬膳楠莉(やくぜんくすり)さんを新しい彼女として迎え入れさせていただいてもよろしいでしょうか!」

「やぁやぁ、よろしく!薬膳楠莉なのだ!ところで宇宙人が居るって本当なのだ?」

 

「増えてる!!!」

 

 5人目の彼女を迎え入れている恋太郎ファミリーの姿があった。

 

 






●恋太郎ファミリー彼女紹介
『花園羽香里』
恋太郎ファミリーのドスケベ担当。その優れた知性とピンク色の脳内で恋太郎へのアプローチを何度も行う彼女。ジロロの事を宇宙人と受け入れているものの、手触りが面白いヌイグルミとして認識している節がある。

『院田唐音』
恋太郎ファミリーのツンデレ担当。地球人の中でも秀でた身体能力を有しており、ケロロ軍曹の潜伏先である日向家最終防衛ラインに匹敵する強さをしている。当初はジロロを疑っていたものの、恋太郎と静を助けてくれた事により心を開く。それはそれとして女ソルジャー呼びはやめて欲しい。

『好本静』
恋太郎ファミリーの可愛い担当。地球人の中でも非力に近い存在、周囲から小さくて可愛い生き物と認識されている。今作ではスマホによる会話アプリは恋太郎とジロロの共同開発と言う事もあり、原作100カノ以上にボキャブラリーに富んだ会話を行う。内心、ジロロとの出会いにワクワクしていたのは秘密である。

『栄逢凪乃』
恋太郎ファミリーの知的クール美人担当。恋太郎ファミリーの中でも高水準の知力を誇る。ジロロの事は今でも宇宙人ではなく何処かの研究施設から脱走して来た生物と認識している。色々な宇宙人っぽい事を見せても「非現実的」と片付けてしまう強メンタルにジロロは半ば諦めている。

『薬膳楠莉』
恋太郎ファミリーの便利枠担当。全身薬漬け人間(事実)であり、薬をこよなく愛する色々とやばい彼女。見た目は子供だが本来は高校三年生に見合ったダイナマイトボディな眼鏡白衣美人。ジロロから血を採取できないか画策している。


皆様、来年もまたよろしくお願いします!
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