恋愛モンスターとカエル型宇宙人   作:ゴランド

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投稿遅れて申し訳ありませんでした。シリアス目になると執筆速度が著しく低下してしまうのが自分の悪い癖…!



第五話 花園家潜入

 

【ペコポン滞在日誌Δ日目】

ペコポンに滞在して数ヶ月。観察対象の1人である花園羽香里にトラブルが発生。愛城恋太郎達とその番達が花園羽香里の住居へ赴く事となった。

尚、文明・文化監視員の職務に則り自分は彼女への干渉を控えるものとする。

 

………だが、本当にこれで良いのだろうか。

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「どういう事なの…!?羽香里の奴、一体どこに…!?」

「もしかしてしっこなのだ?」

「スタッフに話を聞くと帰ったららしい」

『お花を摘みに"帰宅"したのか?』

 

 フラワーパークの撮影所にて恋太郎ファミリーの面々は姿をくらました羽香里を探していた。最後の別れて欲しいと言う言葉に気になる全員は彼女がいるであろう家へ向かおうとする…が、そんな彼らのまえにジロロが姿を現した。

 

「彼女のことを考えるなら…そっとしてあげた方が良い」

「な、何を言ってるのよジロロ!」

「待って院田唐音。…あの口ぶりから推測すると花園羽香里に何があったか知っている可能性が高い」

 

 ジロロは凪乃の言葉を肯定するかのように頷く。

 

「羽香里の母親が皆の事を知ったんだ」

「母親って…!?」

「探偵…いや、ペコポンで興信所と呼ばれている調査機関を雇い、俺達の事を探っていたんだ」

 

 数日前より恋太郎達について調べている者達の存在にジロロは気付いていたがこちらに何もしてこない為、放っておいた…がまさか調査機関とは思わなかっただろう。そんな過保護とも言うべき行動により五人の女性と同時交際している事を母親に知られてしまった為に行動を制限されてしまったのだ…とジロロは打ち明ける。

 

「だからと言ってジッとしてる訳には……あ、そうだ!羽香里から送られて来たグラビア写真の裏に住所が…!」

「あいつどんな物送ってたのよ!!!」

『熟した桃…!』

「……母親がコレを見て彼氏に脅されてると勘違いしてる可能性があるな」

「くっ、強く言い出せなくなって来た…よし。コレで羽香里の家の場所は分かった。行ってくる!」

 

 そう言って駆け出す恋太郎。彼女達も続いて追いかけようとする…が、ジロロが静止する。

 

「ちょっと止めないでよジロロ!」

「駄目だ。今行っても門前払いを受ける…恋太郎1人なら話す機会を設けられるがそれだけだ。皆が行けば羽香里にも被害が及ぶかもしれない」

「被害って、羽香里のかーちゃんってどんなやばい奴なのだ!?」

『Ms.アンチェイン…』

 

 被害が及んでしまうと言う言葉に引っかかる凪乃。ふと彼女は己の知識からある推測を引き出す。

 

「影響力…資産…まさか『花園グループ』?」

「花園グループって色んな店に手を出してる凄い所なのだ!?」

『愛読書の所も花園グループ』

「まさか羽香里って…!」

「そのご令嬢だ。後は俺の言いたい事も分かるだろう?」

 

 ジロロの言い分を彼女らは理解するだろう。羽香里の母親が本気を出せば自分達と恋太郎が永遠に離れ離れにさせる事も可能かもしれない…否、無理にでも可能にさせようとする。

それを聞いて唐音はジロロに向かって声を上げる。

 

「アンタ…それを知ってて羽香里を行かせたの!?」

「そうだ」

「それなら…それなら尚更なんで!羽香里の事を知ってるでしょ!?あいつがどれくらい恋太郎の事が好きで好きで堪らないのかを!」

「…そうだな、それに頭が良いし他人にも思いやりのある優しい娘だ。何より惚れた相手にはどこまでも尽くす気概を持っている」

 

 だからこそ、とジロロは付け加え告げた。

 

「この決断を下すのに心を酷く痛めたに違いない。凡ゆる葛藤や悔しさ、悲しみも振り切って恋太郎と別れを切り出したんだと思う」

「…だからって放っておける訳にはいかないわよ」

「そうだよな唐音、それでいいんだ……けど、そんな重要な決断をした少女に部外者(宇宙人)である俺に何ができる?」

 

 ガマ星雲出身の彼は言う。部外者であるからこそ、監視員だからこそ。地球人達の意思決定へ介入し、彼等の決断を踏み躙る行為をしてはいけないのだと。

 

「悩みに悩んだ選択を俺の介入で鈍らせちゃいけない。観測者が地球の事情に首を突っ込んで迷惑かける訳にはいかないんだよ」

「……」

「長々とすまない。要は羽香里の気持ちを考えた上で行動して欲しい…って君達に伝えたいんだ」

「ジロロは羽香里を助けたくないのだ?」

「…俺には何もできないよ」

 

 いや、できるにはできる。アンチバリアやケロン軍の兵器を使えば羽香里を連れ出すのは容易だろう…だがその選択は正しいとは言えない。

もし下手に騒ぎを大きくすれば恋太郎や唐音達へ影響が及ぶ可能性がある。

だからこそ彼は何もできないと告げたのだ。

 

「〜〜〜〜ッ、ジロロの馬鹿!羽香里を見捨てるなんて見損なったのだ!」

「……好きなように言えば良いさ」

「うわーーーん!ジロロの阿保!鬼!悪魔!サイゲの緑色!鬼舞辻無惨!頭禪院家!」

そこまで言う???

 

 そんなジロロの前に好本静が立つ。すると彼女は次のような言葉を言い放った。

 

『そこまで性根が腐ってたとはな、消え失せろ!二度とその面見せるなァ!』

そこまで言う???(2回目)

 

 次に凪乃。言い過ぎた事による良心の呵責により涙目となっている静をヨシヨシしながらジロロをジッ見つめる…何も言わずただ見つめるだけだった。凪乃が見て来る…暇な宇宙カレー屋の店主のように見て来る…!

 

「………いや何か言えよ!?」

 

 そんな言葉を送るが結局、彼女は終始無言で去って行く。何だったんだアレはと困惑していると唐音が一言告げる。

 

「…待ってるから。きっと来てくれるって信じてるから…」

 

 それだけ言うと彼女もまた場を後にする。少女達に言われた言葉を反芻しながらジロロは溜め息を吐く。

 

「どうしろって言うんだ……」

 

 職務と子供達の私情の二つを天秤に掛けた彼はポツリと呟いた。この仕事でこう言った選択を取るのは珍しくない。だが、未だに慣れる事は無かった。

 

──ジロロさん、この事はどうか皆さんには言わないでください

 

 羽香里と話した内容を思い出す。羽香里は自分が何故お別れを言わなければならなかったかの理由を秘密にして欲しいとジロロにだけ打ち明けていた。しかしジロロは年齢的に成人しているケロン人。そんな少女を放っておく訳にはいかない…その為に自分の職務に抵触しない範囲で恋太郎達に伝える事にしたのだ。

結局どこまで行っても自分は軍人だ…力を貸す事が出来ない事にジロロは心の中で謝罪するのであった。

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 その日の夜、恋太郎ファミリーは花園家の豪邸前に集っていた。理由は単純明快、羽香里の救出だ。その後は逃避行…己が人生をドブに捨てるのも同義の行為だが、恋太郎にとってそれは些細な事。

花園羽香里を悲しませたまま放っておくのは死んでも出来ない、それは恋太郎だけでなく彼女達も同じ心境だった。

 

「……ねぇ、恋太郎」

「分かってるよ唐音、ジロロの事だろ?」

 

 ジロロに協力を持ちかけたが彼は羽香里救出には賛同してなかった。それもそうだ、ジロロとしては今後学校生活や家族に会えなくなる事を想像していた…故に協力する姿勢は見せなかったのだろう。…だからこそだ。

 

「ジロロの力を借りず、俺達だけで羽香里を助ける…!」

 

 恋太郎がそう呟きながら歩を進める…その直後、背後から声が掛かる。

 

「なら、もう少し入念な準備をしてからすると良い」

「…え!?」

 

 皆が振り返った先、そこには多数の荷物を抱えたジロロの姿があった。

 

「ジロロ!」

『本命の登場』

「来てくれる確率100%」

「来てくれるって信じてたのだ!」

「別に!あんたが来てくれるだなんて信じてなかったんだからねッ!」

 

 恋太郎はジロロの小さな両手を掴み、喜びの意思を見せるだろう。

 

「ありがとうジロロ…!本当は俺達に協力しちゃダメなのにそれを破ってまで来るなんて…本当に良かったのか?」

良い訳ないが?

「えっ」

 

 ゴゴゴ…と静かな怒りが籠った声色で彼は呟くだろう。

 

「さっきネズミー星人から楠莉達を手伝わないと高額請求するって電凸されたんだが!?」

「楠莉先輩…!?」

 

 楠莉は目を逸らした。

 

「唐音ファンクラブ(仮)と名乗る奴等に抗議されたんだが!?」

「唐音…!?」

 

 唐音は目を逸らした。

 

「好本静を見守り隊を自称する不審者達に脅迫されたんだが!?」

「静ちゃ…いや凪乃…!?」

 

 静が凪乃の方を見る。凪乃は目を逸らした。

 

「あとヴァイパーから兄弟に手を貸すくらいいいだろって言われながら襲われたんだが!?」

「いや…それはちょっと知らない」

 

 恋太郎は冷や汗を掻いた。そんな彼等を前にジロロはその場で項垂れ、声を荒げる。

 

お前らさぁ!!!気持ちは分かったけど!!!せめて直談判してこいよ!!!宇宙人を仲介役にするなよぉ!!!

(((((本当に申し訳ない…)))))

 

 念には念を入れて知り合いの宇宙人達からジロロに協力するよう言ってくれないか?と告げたのだが、思った以上の効力を発揮したのかケロン人の彼はとても疲労してるように見える。

 

「もうさぁ…次は直接言ってくれよ。普通に協力するから」

「ああ……え、協力?」

 

 恋太郎達は呆気に取られた。羽香里救出に賛同してなかった彼がどうしてそのような事を考えるに至ったのか伺う。するとジロロは次のように言い放つ。

 

「いやだって…俺、一言も協力しないとは言ってないし」

「あれ、そうだっけ!?」

「確かに羽香里はそっとしておいた方が良いとは思っているし、俺が彼女にしてあげられる事は何もない…けど、恋太郎達自身の力で羽香里を何とかするなら話は別だ」

『つまりどう言う事だってばよ』

「羽香里に関しては恋太郎達がやる事。それ以外は手伝う」

 

 思った以上に協力してくれる事に驚きながら面々はいよいよ覚悟を決める。勝負は今夜の内、それまでに羽香里を救うべく行動を始めたのだった。

 

「ちなみにジロロがめちゃ協力してくれるならどんな感じになるのだ?」

「花園羽香里の母親に記憶処理を行えば効率的」

「一番ダメな典型例をやらせようとするな!それ絶対駄目だからな!」

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 恋太郎ファミリー+αの面々は花園家の敷地に潜入し、羽香里がいるであろう部屋を確認する。すると恋太郎は背負ったバックからボールと頑丈そうな縄を取り出した。

 

「電話は通じない…ゴムボールを窓に当てて気付かせてロープで降りて来てもらう」

「でもジロロのフライングボードで直接行った方が楽だと思うのだ」

「すまない。ブーケトスでの時に無茶な動きをさせた影響で修理中で当分は使えないんだ」

「そう言うことっ!」

 

 ゴムボールを屋敷上側にある窓に向かって投げる…が、惜しくも外してしまう。もう一度ボールを投げる為に恋太郎ファミリーは落ちたゴム球を探す…と、彼等の視界に小動物が入り込む。

 

「金持ちの家の猫…!?」

「おお!パージャン(ペルシャ猫)じゃないか!ペコポンのイラン国原産の猫がこんな諸国で見られるとは…!ほら、こっちおいで一枚撮るから…!」

「いやジロロ!写真撮ってる場合じゃないでしょ!」

 

 貴重な動物を見かけてテンションが上がったのか、ボールで遊ぶ猫に接近するケロン人。しかし小動物の持つ爪がジロロの顔面を一閃、哀れ宇宙人はその場で蹲る事となった。

 

「ジロロがやられた!?」

「何やってんのよ!ええい、それ返しなさい!」

「ジロロの仇!待てなのだーっ!」

「蹴り飛ばして弱らせるのが最高率」

「やめろ凪乃、動物愛護団体に有害指定される!?」

「………! 皆、隠れろ!誰か来るぞ!」

 

 猫を追いかける彼女達だったが、ふとジロロがこちらに近づく警備員の存在を察知。一同は近くの茂みへ身を潜める事となった。

 

「なんだ(お前)か、ほれ遊んでやるからボール貸してみろ〜。ほら逃げないで貸してみろって、ほら…逃げ…逃げんなつってんだろこの馬鹿猫!(迫真)」

 

 無事にやり過ごした恋太郎達。しかしボールは猫に持ち去られてしまった為、屋敷の中かは羽香里を迎えに行くしかない。

…しかしどうやって屋敷の中に入れば良いのか頭を悩ませていると凪乃が何か思いついたようだ。恋太郎達は凪乃の先導の元、屋敷の玄関へ向かう。

 

「やっぱりあった、猫用出入り口(ペットドア)

 

 屋敷の玄関、そこには小さい出入り口が設けられていた。

 

「猫が外に居るのを見るに鍵は掛ってない、ここから侵入可能」チラッ

『しかしこの大きさでは小人族でもない限り』チラッ

「楠莉、あんた体が小さくなる薬もってないの?…必要ないかもだけど」チラッ

「楠莉だって流石にドラ◯もんじゃないのだ。それよりも小さい奴が入れば良いと思うのだ」チラッ

「今までのも十分ドラ◯もんレベルでしたけどね…と、言うわけで」チラッ

 

 全員がそう言いながらジロロに視線を向けるだろう。身体の大きさ的にペットドアを通過できそうだ。

 

「……い、いや〜、流石に小さ過ぎると思うけどな?このサイズで俺が入るのは難しいだろうから別の方法をだだだだだだだだだだっ!?話してる最中に押し込むんじゃあああああああッ!?痛い痛い痛い痛い!?」

 

 恋太郎ファミリーは一刻も早く羽香里を迎えに行く為に急がなければならない。その為、ジロロの意思は二の次と言わんばかりに彼をペットドアに押し込むだろう。

 

「ジロロ、ここは我慢していてくれ!」

「皆、もっと力を入れるのよ!」

「ねじ込むのだ…ッ!」

「蹴りつければその衝撃で入れる確率が向上する」

『一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか』

 

 しばらくしてジロロはスポン!と音を立てながら屋敷内へと入るだろう。やや恨み籠った視線を恋太郎ファミリーに向けながら内側に掛かった鍵を開ける……その直後、背後の気配を察知するだろう。

 

「ジロロ、後ろに何かが!」

「熊なのだ!?」

「あれは…まさか!」

 

 そこに居たのは大きな身体を持つ四足歩行の生物。この屋敷の守護を務めるモノ。

 

「金持ちの家の犬…!?」

「いや、あれは…!ペコポンのロシア国原産の狩猟犬(サイトハウンド)…ボルゾイ!?」

「詳しいなジロロ!?」

「呑気に解説してる場合!?」

「早く逃げるのだ!」

 

 皆が彼を心配する…が、ジロロは逃げる意思を見せない。寧ろ立ち向かう姿勢を見せている。

 

「最近良いところ無しなんでな…ここは任せてくれ」

『アイツ1人でやろうってのか!』

「やめるんだジロロ!1話で柴犬にボロ負けした上に猫相手にノックダウンさせられたお前じゃとてもじゃないが敵わない!」

「歴戦の兵士っぽい発言を端々に見せながらそんな醜態を見せてたの!?」

「これまでの戦績が殆ど敗北で占めている。ここは逃げた方が効率的」

「もう少し手心を加えてくれないか…?(震え声)」

 

 言いたい放題言ってくる皆に対してジロロはハンドカノンを構え交戦の意思を示すだろう。あの可愛らしい姿とは裏腹に彼は様々な星を渡り歩き、幾多の強敵達と激闘を繰り広げてきたソルジャー。地球の狩猟犬に負ける道理は無いだろう。

そして何よりも、少年少女達の道を切り拓くのが大人の役割。羽香里を助け出したいと言う恋太郎達の想いを無駄にさせない為にも彼は戦おうとする。

 

「ボルゾイ、覚悟ォーーーーッ!」

「ジロロ!相手はペットだけど羽香里の家族でもあるから、手荒な真似はちょっとやめて欲しい!」

 

 その言葉を聞いて、駆け出したジロロは犬の前で急ブレーキを掛ける事となった。

 

「あのさ、それ先に言ってくれないかなぁあ゛あ゛ああああ゛ああああああ゛あッ!?

「ジロローーーッ!?」

「喰われたのだーッ!?」

 

 頭から思い切り噛み付かれたジロロ。ぶおん!ぶおん!と首を振るう狩猟犬に対し成す術ない宇宙人と言う光景に一同は驚愕するだろう。しかし凪乃が様子を見てとある事に気付く。

 

「…違う、アレは食べているのではなく遊んでいる」

「遊んでいる!?」

「そうか!ジロロは見た目はぬいぐるみに見える…だから犬は遊び道具と思い込んではしゃいでいるんだ!」

『ふぅ、驚かせやがって』

「あー、びっくりしたのだ」

「……いや、遊んでいるって言うか嬲ってるようにしか見えないんだけど」

 

 よく見るとジロロの身体がボロボロになっている。よく考えれば当たり前の事だろう、相手は大型の狩猟犬だ。そんなのが思い切り戯れてくればダメージを負うのもおかしくない。そんな瀕死のケロン人は「俺の事は構わず…」と死を覚悟している始末だ。

 

「不味いジロロは限界だ!」

「今助けるから待ってて!」

「待って!今ここで乱入すれば襲われる可能性が…!」

 

 皆が扉を開けて屋敷へ入ろうとするのを凪乃によって止められる…が、その中で好本静が躓いてしまう。そのままコロコロとボルゾイの前まで転がって行くだろう。

 

「静ちゃん!?」

『オイラを食べても美味しくないでヤンスよ〜!』

 

 静の命乞いは犬の耳に届いてないのか、ゆっくり近づいてくるボルゾイ。絶体絶命かに思われたが、大型犬はペロペロと静の顔を舐め回すした。侵入者である筈の彼女に敵意を抱いてない事に疑問を抱く一堂だが凪乃は推測を口にした。

 

「やっぱり…あの犬、好本静を襲う様子じゃなかった」

「どう言う事だ…!?」

 

 凪乃は語る。犬には野生動物特有の弱い生き物を守る本能があるとされる。それは己が赤ん坊等に向けられるものだが、好本静にも該当された。そう即ち……!

 

「好本静と言う生き物の類い稀なるあまりの弱さが縄張りを守る本能に打ち勝った…!」

「流石俺たちの静ちゃん…!自然の摂理すらも覆す究極のか弱さだったんだね…!」

「やるじゃない静…これが被食者の戦い方なのね」

「楠莉達の静は自然界最弱のミジンコウサギなのだーッ!」

 

「………なぁ、それ褒めてるのか?皆からああ言われてるけどどう思う?」

『俺の屍を越えていけ』

「あ、駄目だ。生贄としての覚悟完了してやがる」

 

 そんな中、凪乃がジロロに向かって声を掛ける。

 

「好本静に注意が向いてる今が好機(チャンス)。犬の目を潰せば効率的」

「ねぇ、ジロロにも言ったけど。あれ羽香里のペット(家族)だよ?」

「人の心とかないんか……ん?」

 

 ジロロは自分の元に液体の入った試験管が転がってきた事に気付く。それを渡してきたであろう楠莉が口を開く。

 

「その中身はどんな生き物も一瞬で眠らせる睡眠薬なのだ!それを使うのだ!」

「よし……静、これを使え!」

 

 そのまま犬に顔を舐められている彼女に薬を投げ渡す。静はその意図を察したのか見事に睡眠薬を手にする……そしてそのまま飲んでしまった。

 

「飲んじゃった!?」

「ちょっとジロロ!犬に飲ませるって言わないから!」

「しまった、説明を省いてこうなるのは…!」

「ぐぐぐ…こうなればジロロにこっそり飲ませるつもりだった『首がX軸回転し続けてゲーミング色に光る薬』を与えて撃退するのだ!」

「動物愛護団体が銃火器持ち出すレベル!?」

 

 慌てふためく全員だが、ふとボルゾイは静の口元から垂れる薬品を舐める。その直後パタリと寝てしまった。

 

「二階からぼたもち!」

「どう言う言葉だそれ…!?まぁいいや楠莉、打ち消しの薬を」

「分かったのだ!あとジロロはこの薬を飲むのだ。ボロボロの身体を回復させる効果があるのだ」

「お、ありがとう。気が利くな」

 

 ゴクリ、と手渡された薬を一気に飲み干す。味は良いとは言えないが喉ごしは悪くない。

 

「ふぅ…感謝する楠莉……って、どうしたそんな唖然とした表情をして」

「あ、いや…その……え?なんで何も聞かず飲んで…えっ?」

「楠莉先輩どうかしたんですか?」

「この表情から……説明不足から生じた焦燥感と罪悪感によるものに見える」

 

 その場の全員が楠莉に視線を向ける。「いやだって…効果を聞かず即飲みすると思わなかったのだ」と呟き困惑している彼女に唐音は訊ねる。

 

「……ねぇ、アンタ。この薬ってどんな効果があるの?」

「あ、いや…その……全ての疲れ、傷や病気回復する代わりに……一度身体がぐっちゃぐちゃになるのだ」

「えっ」

 

 直後、ジロロの身体が大変な事になった。

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 数分が経過し、場面は廊下へ変わる。そこには恋太郎一同と頭からつま先までの全身を特殊スーツで身を包んだジロロが話し合いをしていた。

 

「では改めて説明を行う。事前に得た情報から大廊下を抜けて三階の位置の部屋に羽香里がいる」

 

 ジロロの手元に立体映像ホログラムが投影される。そこには花園家の内部構造が詳細に映し出されているだろう。

 

「だがこの廊下に関してあまりにも装飾が少な過ぎる事、警備員達の会話からセンサー類のトラップが設置されていると予測される。そこで楠莉が提供してくれた『赤外線が見える薬』を使い、トラップを回避。そのまま少数で羽香里の元へ行く事にする」

『楽しい遠足の始まりだ』

 

 救助する組と外で脱出の準備をする組の二つに分ける事をその場の全員に伝えると、ホログラムを消し皆に向けて口を開く。

 

「さて……皆、聞いてるか?」

いや聞けるか!!!

 

 唐音が思わずそう叫ぶ。

 

「あんなヤバい事になったのにアンタなんで冷静になってるのよ!!!」

「まぁ、体はすごい事になったが…特に痛みはなかったし」

「あの変形をして痛覚機能してないのは逆に心配になるレベル!」

 

 一体何が起きたのか?楠莉がノリで提供した薬を即座に飲んだ直後、身体がべちゃべちゃのスライムめいたサムシングへ変貌し、皆は正気度をゴリゴリ減らす事となったのである。

 

「リアル寄生獣…」

「宇宙の神秘…」

「楠莉はもうちょっとジロロに優しくするのだ…」

 

 それにより眠っていた静を除き、皆はガタガタと震える事となってしまったのである。そんな中、ふと恋太郎が質問をする。

 

「ところでジロロ、その全身を覆ってるスーツは何なんだ?」

「見たところスニーキング用に用意された特殊スーツ」

 

 先程までの全裸仕様とは異なり、彼は全身をスマートかつラインの入ったスーツを着用している。パッと見た限りではケロン人特有の可愛らしさが全く見られないが、光学迷彩や環境適応機能に加えて動きに支障が出ないよう特殊繊維で造られた高性能な物となっている。

何故それを着ているのか?その答えはここから先は激しい戦いが予想されるからである。更に付け加えて言うと……。

 

「いや…まだ身体がぐちゃぐちゃで戻ってないから零れないように着ているんだよ」

「ごめんジロロ、今回の話ではその格好のままで居てくれないか?」

 

 スーツの下は未だ大変な事になっている。この状態で羽香里の前には出られないだろうと恋太郎は判断した。

その後、廊下に大量の赤外線センサーが張り巡らされいたのでジロロがハッキングを仕掛けて解除する事に成功する。そのまま恋太郎、唐音に加えてジロロが救助隊として先行。先程の作戦通り、静達は屋外で待機する事となった。

 

尚、赤外線が見える薬を使用した恋太郎はしばらくの間は赤外線意外は何も見えないデメリットが発生しているのでしばらく唐音の誘導が必要があったと言う…。

 

「…二人とも止まれ」

 

 突如として走っていた言う二人を止めるジロロ。ステルス迷彩機能を使用しつつ、廊下の曲がり角から顔を出して覗く。そこには2名のメイドが居た。

 

「(あんな所にメイドが二人…厄介ね)」

「(俺には何も見えないけど、どうやって突破するか…)」

 

 羽香里の居る部屋まではあと少し。どのようにして突破するか考えていると、()()()()()()()()()()()()

 

「ネズミ様が二匹……いえ、三匹ですか」

「……は?」

 

 唐音が振り向く。そこには先程まで曲がり角の先で佇んでいたメイドの一人が居たのである。

 

「嘘ッ!?さっきまであっちに…!?」

「お覚悟を」

 

 電気がバチバチと流れる特殊警棒を手に近づくメイド。そんな彼女の前にステルス迷彩を解除したジロロが飛び出る。

 

「二人共、目を閉じろ!」

 

 メイドの眼前に細長い棒を向けるとピカッと眩い光が彼女を照らすだろう。

 

「何なのさっきのは…!」

「目を閉じてても眩しい感じが…まさかジロロ『ピカッと光る棒』で記憶を!?」

「ああ、ここ数時間の記憶処理をさせて貰った。この距離で食らえばひとたまりも……なにっ!?」

 

 直後、ジロロに向かって特殊電磁警棒(スタンバトン)が振り下ろされる。それに対して間一髪のところでハンドカノンを取り出し、不意の攻撃を防ぐ事に成功した。

 

「馬鹿な、記憶を消した筈…ぐっ!?」

 

 困惑している隙を見逃さず、メイドはジロロにキックを打ち込み大きく吹き飛ばすだろう。

 

「ジロロ!?」

「…妙ですね、人の気配に近しいですが何か違う。しかも体格が人形に近すぎるような…」

「ぐ、どうなっている?あの距離なら確実に光る棒で記憶を消した筈…!」

 

 眼前で佇むメイドを観察する。先程までの動きを見るにかなりの手練だ。パワーは唐音までとは行かないが、その戦闘センスは彼女を大きく上回る。

糸目キャラは大抵強いと言うがまさかここまでとは…そう考えていたジロロはハッとする。まさかと思いながら彼は口を開くだろう。

 

「お前は目が見えぬのか…?」

「されど心の目は開いております」

いや物理的に目を閉じていたのかよ!?

 

 そう、糸目に見えていたこのメイド。実はそう言うキャラデザではなく物理的に目が見えてないのである。そんな彼女にジロロは告げる。

 

「何でここの家主は盲目メイドを雇っているんだよ!採用基準どうなってるんだ!」

「羽々里様への侮辱は許しません。それにこの目は表情筋が固まった結果、目蓋が張り付いたように開かないだけですので」

「そんな事ある…?」

「あと採用理由は『可愛いから』との事です」

「あれぇーッ!?家主のイメージと全然異なる採用理由出されたんだけど!?」

 

 言う筈がないだろう!花園家の当主が!と思っているとジロロの背後から何者かが近づく。

 

「うおーッ!お姉様と楽しく会話するな侵入者ァーッ!」

「しまった、メイドはもう一人居た!」

 

 危うしジロロ。後方から刺股を手に突っ込んでくるメイドの存在に気付いてなかった。状況を確認する為に振り向く…その直後、背後のメイドが驚愕と恐怖を兼ねた表情に染まる。

 

ギャーッ!?遊星からの物体Xゥーーッ!?

 

 ジロロはメイド以外に気付いてなかった事があった。先程、目が見えない方のメイドにキックされた瞬間にマスクが外れていた事。そして隠されていたグロテスクな状態になってる顔が露わになっている事を彼は気付いてなかったのだ。そんなグチャグチャ状態のケロン人フェイスを見たメイドは手にしていた刺股を落とす。

そしてここから合流した唐音とジロロは奇跡を見る事となる。

 

「う゛ッ!?」

 

 走っていた状況と手から得物を離した事により刺股が地面に引っかかり、メイドの鳩尾に柄がズドンッ!と打ち込まれる。そこから棒高跳びの如く弧を描きながらメイドは背中を打ち付ける事となった。

 

「ぐえーッ!?」

 

 哀れそのまま悲鳴を上げながらドジっ娘メイド*1は気絶する。

 

「何今の凄い自滅!?」

「え、なに!?何が起きたんだ唐音!?俺何も見えないんだけど!?」

「いや驚いた…まさかあんなに美しいフォルムで気絶する事なんてあるのか…」

「何か起きたのーッ!?」

 

 赤外線が見える薬の副作用により奇跡的な光景が見れない恋太郎が嘆く。そんな彼を他所に自滅したメイドBをメイドA(閉眼)が廊下の隅へ移動。改めてジロロ達の前に立ちはだかる。

 

「侵入者様、私は羽々里様のご命令によりここから先は誰も通さないようにと言われております」

((何もなかったように言い始めた…!?))

 

 そんな彼女を前にジロロ(ようやく身体が元に戻った)が対峙するだろう。

 

「二人共、ここは俺に任せて先に行け」

「え!?ジロロ!」

「何を言って…」

「奴は俺がステルス迷彩で姿を消しているにも関わらず気配だけで存在を感知した。恐らく屋敷の中で一番の戦闘能力を保有している」

 

 ここでの目的は彼女を倒す事ではなく、羽香里を連れ出す事だ。なら恋太郎達がここで足止めを食らっている場合ではない。故にジロロが彼女を相手にする必要があるのだ。

その意図を汲んだのか二人は羽香里の居る部屋の方向へと走っていく。

 

「……成る程、では貴方様を倒して残りの侵入者様を捕まえる必要がありますね」

「意外だな。二人を通して良かったのか?」

「それは難しい話となります。彼等を追いかけた瞬間、貴方は背後から銃を撃ってくるでしょう?」

 

 ジロロは侮れない…と認識を改める。恐るべき空間認識能力と気配察知。宇宙人を相手にどのような得物を使うかも看破してくる。これ程までの強敵と対峙する事は滅多に無い。もしも手加減すればこちらが確実に負ける。そう判断したジロロはハンドカノンの出力を上げる。

それに対して花園家のメイドである銘戸芽衣は特注の戦闘用武器を手に応戦の意思を見せるだろう。

 

「特務兵ジロロ、突貫する!」

「銘戸芽衣参ります」

 

 ここ花園邸にて、地球人とケロン人の決戦の火蓋が切って落とされる…!

 

 

*1
女井戸妹。後に恋太郎の彼女の一人となる人物。己を銘戸芽衣の妹と信じて止まないメイド。やや面食いだが、意外にも常識人寄り





●キャラクター紹介
『銘戸芽衣』
メイドの目を閉じてる方。花園羽々里に凄まじい程の忠誠心を見せるメイドであり後に恋太郎の彼女の一人となる。目を閉じているがこれが顔面筋がガチガチに固まってる影響であり、心が揺さぶられる瞬間は目が開く仕様になっている。尚、この作品内では修行の為に『西澤グループ』の精鋭部隊である桃華親衛隊に所属し、ポール森山から直々に指導を受けていた過去があるが…それはまた別のお話。

『金持ちの家の猫』
花園家のペット。ジロロの事を玩具だと思っている。

『金持ちの家の犬』
花園家のペットその2。ジロロの事を玩具だと思っている。

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