恋愛モンスターとカエル型宇宙人   作:ゴランド

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最近は暖かくなり、花粉も飛び鼻水がめちゃくちゃ出てしまう…そんな状態ですが投稿させていただきます。



第六話 花園家大決戦

 

 月光に照らされる花園邸。そこでは現実離れした出来事が広がっていた。屋敷内に広がる闇の中で一条の閃光が幾多も放たれる。それに対し1人の従者が駆けるだろう。

 

「ハッ!」

「………!」

 

 ジロロの持つ二丁ハンドカノンから放たれるエネルギー弾だが尽く彼女の得物(特殊警棒)により叩き落とされる。地球人が弾丸を対処する事に驚くが、それ以上に彼女の空間認識能力に呆気に取られる。

閉眼してる影響で何も見えない、しかし彼女はエネルギー弾の光と音の反響により距離を正確に把握している。宇宙人でもそのような芸当をできる者は早々居ない。

 

「ならば」

 

 片方のハンドカノンの属性を切り替えて水弾を霧状に噴射。更にもう片方で氷弾を放つ事によりメイドの眼前に氷壁を作り上げた。芽衣は一瞬驚くような仕草を見せるが、スカート下よりもう一本の特殊警棒を取り出す氷壁を叩き砕く。即座に壁の向こうに居た侵入者へ注意を向ける…が、気配を掴めない。

 

(気配を辿れない?侵入者様は何処へ…?)

 

 瞬間、自身の背後から熱を感じた。回避は困難と判断し咄嗟に両手に持つ武器を盾にする事でエネルギー弾を防ぐ事に成功する。

 

「…ッ、一体何が」

「悪いが種明かしはできないな。自分で考えてもらおう」

 

 何故ジロロの攻撃が当たったのか?それは氷壁を作り上げた瞬間。あれば彼女の空間認識を拒むと同時に場の温度を低くする事を目的としていた。ジロロが今着ているスニーキングスーツは周囲の環境に適応する機能を持ち、外気温に合わせて溶け込むように表面温度を同じように調整する。また、ジロロ自身が呼吸を止める事により己の存在を薄くしていた事もあり不意打ちによる攻撃が命中するに至ったのだ。

 

(アサシンの基礎戦法…ゼロロ先輩から教わってて良かった。だがこれは二度は通じないだろうな)

 

 手練のメイドを相手にしている事で理解できる。あの反応速度は通常の地球人では成し得ない技術。恐らくこの惑星に於けるソルジャー的立ち位置なのだと察する。

またそれは芽衣も同じ事を思っていた。目の前の小さな生命はただの侵入者に在らず、自身と同じ…否、それ以上の修羅場を潜り抜けて来た戦士なのだと。

 

「やるな…貴様ただのメイドでは無いな…」

「そちらも、ただのお人形様では無い様子」

 

 一進一退の攻防。どちらかが戦況を優位に進めれば片方が追い抜く、気を抜けば一瞬で勝負が決まる場にて二人は冷汗を垂らす。それでも尚、二人は負けられない訳がある。

 

「友の為…!負ける事はできない」

「ならばこちらは羽々里様の為、貴方様を通しません」

 

 奇しくも互いは信じる者の為に戦う理由を語る。そんな偶然の一致に思わず笑みが溢れるだろう。

 

「お互い似たようで交わる事の無い譲り合いですね」

「ああ、何なら恋太郎とそちらの雇い主が仲良くなってくれたら嬉しいんだが……無理だろうな」

「でしょう……では、続きと参ります」

「だな…いざ!」

 

 双方は飛び出す。己が信じる者達の為に得物交えるのだ。そんな二人を他所に一方その頃……。

 

 

恋太郎ちゃん私と付き合ってちょうだい!!!♡♡♡♡♡

「え ええっと…あの…その…」

「頭どうかしてんのか!!??」

 

 花園家当主は恋に盲目になっていた。

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「それにしても遅いのだ…恋太郎達は大丈夫なのだ?」

『見て来いカルロ』

「ここで待つのが効率的」

 

 一方、外で待機している凪乃達。彼女達はいつでも羽香里を救出できるように待っていたが想定している以上に時間経過していた為に焦りが生じている。様子を見に行くべきか、ここで待ち続けるか…悩んでいる三人だったが、ガシャァン!と窓が割れる音が響く。そちらに目を向けると吹き飛ばされるジロロの姿があった。

 

「くっ、何て強さだ…!」

「ジロロ何故ここに」

「吹き飛ばされてきたのだ!?」

「三人とも…⁉︎ここは危険だ離れろ!」

 

 ジロロがそう言うが、相手は既に標的としてこちらを捉えている。メイドが降り立ち次のように言い放つ。

 

「おや、お仲間様がもう三人とは」

「リアルなメイドなのだ!?」

『げぇ呂布だ!』

 

 彼女は2本の警棒を連結させると、数mも離れたジロロに向かって長柄武器による突きを放つ。

 

「う、おっ!?」

「すげー!武器が伸びたのだ!?」

『う、嘘やろ…こんな事が…こんな事が許されてええんか…!?』

「アレは特殊材質により造られた武器。武器の各所に連結部が備わっている為に武器の直径が伸びていた」

 

 凪乃の解説通り、芽衣の武器は西澤グループにより開発された特殊素材を使って制作された銘戸芽衣専用の武器。特殊警棒、長柄武器、ヌンチャク、カリスティックと凡ゆる状況に応じて武器を変化させる事ができる優れモノだ。

先程見せたこの伸びる突きに関しては変形機構を利用した技であり、芽衣が持つ戦闘スキルだからこそできる技術なのだ。それ即ち芽衣が地球人の中でも達人の域に足を踏み入れている証拠となる。

 

「なんて奴だ…あの複雑機構を使いこなしているとは…!」

「まだ行きますよ」

 

 即座に接近するメイドに対してジロロはエネルギー弾をとにかく放つ。だが彼女が持つ武器の中心から鎖が出現。モーニングスターのように振るう事で弾丸を落としていくだろう、そのままジロロに向かって武器を振り払う。

 

「うっ、これは三節棍……いや、これは多節棍か!」

 

 ムチのようにしなる武器を見てジロロは脳内に様々な回避パターンを計算し、その中から最も最適なものを選ぶ。少しでも判断を間違えれば強力な技を出してくる。それに加えて相手は武器が無くとも強い、その証拠にジロロが懐に潜り込み銃口を向ける…次の瞬間。

 

「銘神拳!」

 

 武器を手放し、しゃがみダッシュからのアッパーが繰り出される。何故かは分からないがこの技のループに陥る危険性を直感で理解し、ジロロは飛び退く。

遠近隙が無く、武器無しでもカウンター技を撃ち込まれる…まさかここまで強敵が来るとは思わず、撤退を考える程にジロロは追い込まれていた。

どうすべきか?そう考えていると傍の茂みに隠れていた三人から激励に近い言葉を投げかけられる。

 

「その程度の実力で勝つのは不可能」

「もっとやる気だせなのだ!」

『それがお前の本気かオォン?』

「は?」

 

 ジロロは思わずピキッと来た。彼が嫌う事、それは現場の忙しさを知らない上層部の無茶振りである。こっちはこれで精一杯なんだよ…!こっちは頑張ってるのに援護もせずに野次を飛ばすだけかよ…!

恋太郎の彼女達にとってはジロロの応援のつもりなのだろう、ここで負けてしまっては元も子もない。羽香里を助ける為に気張って欲しい…そんな意味を込めてジロロを励ましたのだろう。

 

だが、それが恋太郎の居候の逆鱗に触れたッ!

 

「……そうか、なら…後悔するなよ?」

「させませんッ!」

 

 芽衣は直感で駆け出した。奴に何もさせてはいけない…そう判断した彼女は最適解を出していた。が、それを実行に移すまでの時間が足りなかった。芽衣が武器を振るう…その瞬間、花園邸の庭に鋼鉄の塊が出現した。

 

 

……一方その頃、恋太郎達はと言うと。

 

「俺は羽香里の事が世界で一番大大大大大好きッッッ!!!♡♡♡」

『ホント!ホント!ぜ〜んぶホント!』

「ぐぎゃああああああああああああああ!」

 

 謎の勝負を繰り広げていた。正確には花園羽々里が用意した嘘発見機により恋太郎が五股のクソ野郎と証明させる…その算段だったのだが、羽々里は恋太郎を見誤っていた。五股していたのは事実だが、それ以上に彼は誠実さの塊。他の彼女達も等しく羽香里の事がめちゃくちゃ大好き!と言い放ち、これには機械も花丸を差し出していた。

 

「くっ…こんなの信じられないわ…なら質問を変えるわ。宇宙人は実在する!」

「え?あ、はい。居ますよ」

『ホント!ホント!』

「ほら見なさい!所詮は機械よ、信用なんてできるものですか!」

「ふざけんなテメー!傷つけられた私の自尊心とここまでの流れを返せ!」

 

 唐音は泣いた。この嘘発見機の信憑性を知らしめる為に自分のバストサイズと恋太郎をどれだけ好きか公開処刑させられる事になっていたのだから。

そんな皆の元に一人のメイドが大急ぎで入ってくる。

 

「大変です奥様ッ!羽香里お嬢様がお部屋の窓から飛び降りようと…!」

「「「!?」」」

 

 その場の全員がショックを受けて思考停止する…が、その中で一番早く復活を果たした唐音が羽々里に裸絞めを掛ける。

 

「全員動くんじゃないわよ!この細い首ぶち折るわよ!」

「唐音…ッ!み、皆さん いッ1ミリも動かないでくださいッ!彼女の力なら人間の首なんてポッキー同然です!マジでやりかねませんよッ!」

「なんであんたが一番ビビってんのよッ!」

 

 唐音の脅しにより部屋にいる全員の注意が逸れる。唐音は恋太郎に早く行けと目配せすると、意図を汲み取ったのか彼は羽香里の元へ駆け出したのである。

そして丁度入れ違いになるように新たなメイドが部屋に飛び込んで来る。

 

「大変です奥様ッ!…いや、大変なのは奥様の方!?

 

 花園家の主人が侵入者により首をへし折られそうになっている事態に驚くメイド。だが、平静を取り戻し彼女は報告を行う。

 

「実はその…屋敷の庭で芽衣様が謎のロボットと激闘を繰り広げています!」

「「何がどう言う事!?」」

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

 時間は少し戻り、芽衣の眼前に鋼鉄の塊が現れる。ジロロがそれに乗り込むとカタカタと起動コードを入力し始める。

 

「これは重機…!?」

「否、ケロン・アーマーZi-66…貴女は強い。これまで戦ってきた者の中で上位に入るに違いない…故に敬意を持ってコレを使わせてもらう。卑怯とは言うまいな?」

 

 銘戸芽衣よりも一回り大きなマシン。ジロロが乗り込むソレは故郷ケロン星で開発された『ケロン軍対人型敵性種族用戦略機動兵器』であり、ジロロ専用に改良を加えられた特別機体でもあるのだ。

それを見た静達は思う。

 

(((思ってた以上に本気な兵器を持ち出して来た…!?)))

 

 想定していた以上にジロロがやる気を出した事に戦慄するだろう、そんな彼女達を他所にジロロは呟く。

 

「宇宙船の墜落によりポテンシャルは本来の43%しか引き出せない…が、それでもやりようはある!」

 

 ブースターの火を吹かせ芽衣に接近。機体は左腕を振りかぶるだろう。

 

「マトモに受けられるか!『ボルト・ステーク』!」

「これは!?」

 

 左腕に備え付けられた三つの打突用鋼管杭に電撃を纏わせ、パンチを繰り出す。モーションはただの正拳突きだが。鋼鉄の塊から発せられる質量・速度・電撃などが合わさる事で凄まじい破壊力を生み出す。それを察知した芽衣はその場から飛び退く事で回避する。

 

「掠っただけで武器が…」

 

 武器に備わっていた電磁機能が故障した。それに気を取られた芽衣はハッと上空を見る。そこにはこちらに向けて多数の銃口を向けたマシンの姿があった。

 

「凝固空気榴弾 Fire!」

 

 圧縮固定された空気の弾が幾つも放たれ、着弾地点が爆ぜる。しかしただの爆発ではなく、ケロン軍の圧縮技術により周囲にある大気をテニスボール程の大きさまでに縮小。着弾した瞬間に空気を一気に解き放ち衝撃波を生み出す。殺傷能力こそ無いが、撃ち続ける事により相手の無力化も可能だろう。

数多の惑星を渡り歩くジロロ用に弾薬等の補給を最低限で済むように設計された機体。故に戦場に大気がある限り無限の衝撃波爆弾を作り出す事ができるのだ。

 

「くっ、ダメージは少ない…ですが移動が大幅に制限されてしまう…ッ!」

「そこッ!」

 

 空気弾の影響により移動範囲が制限された芽衣に向けて再びステークを放つ。その直前にメイドの武器が多節棍に変形し、噴水のオブジェに向けて伸ばす事で離脱を行った。鉄杭から逃れる芽衣に向けて空気弾を再び放とうとする…が100%のポテンシャルを引き出せない機体から警告音が響く。

 

「クッ、圧縮機構に不具合!やはり応急の修理では限界があるか…なら!」

 

 空気弾が使い物にならないと判断し、接近戦闘用の大型ナイフを取り出すと芽衣目掛けて振り下ろす。それに対して眼前のメイドは真っ向から受け止めた。

 

「正面から防ぐか…!」

「(地面を起点に心張り棒の要領で止めましたが…!武器がダメになりますね。予想以上の出力…!)」

 

 互いに距離を置き、息を整える。両者譲らない戦い、しかしそれでも負けられない理由が双方にはある…そんな二人だからこそなのだろう、戦いを通じて奇妙な縁を感じていた。

 

「(ギロロ先輩の事を言えないが…少し楽しくなって来たな…!)」

「(いけません私とした事が…侵入者様との闘いが心躍るように思えて来ました)」

 

 今回、お互いは全力での戦闘ができていない。片や花園邸に被害を出さないように、片や羽香里の家族相手にやりすぎないように。精神的余裕がある為か、戦いを通して二人はそれを感覚的に確信していた。これは命のやり取りでは無く、己か相手のどちらが音を上げるまでの戦いだ。

 

「「うおおおおーーーッ!!!」」

 

 互いに交わる事は無い、だがそれで良い。ただ彼等はこのひと時を楽しむのだった。

一方、そんな光景を前にしていた羽香里は唖然しながら思う。

 

(…庭で一体何が…!?)

 

 ラブコメ作品だった筈なのにSFバトル物の作品に来ちゃった?そう錯覚してしまう程に目を疑うような光景が広がっていたのだった。

自分の所為で恋人が不幸な目に遭って欲しくない。その一心で窓から飛び降りる素振りを見せていた…だと言うのに何故眼前で少年誌並みの激闘が繰り広げられているのだろう?そう疑問に思っていると部屋に恋太郎が飛び込んで来た。

 

「迎えに来たよ羽香里…って、外で凄い事起きてる!?」

「恋太郎君…!?来ないでください!」

 

 羽香里は言う。自分の所為で最愛の人に迷惑をかけられない、大好きな人の人生を不幸にするなんて事は耐えられないのだ……そんな彼女が愛する恋太郎だからこそ言い放つ。

 

「そう思うなら…そんな事しないでくれよ…ッ!羽香里が居ない以上に不幸な人生なんて俺には想像もつかないよ」

 

 恋太郎にとって逃げ続ける人生は不幸か?否、それは違う。傍に羽香里が居てくれる…それだけで幸せなのだ。不幸なんて事はあり得ないのだ。故に、恋太郎は彼女に手を差し伸べて告げる。

 

「貴方の事を愛しています。これからもずっとずっと…一生俺と一緒にいてください」

「──はい…私もあなたの事を愛してます…!ずっとずっと、一緒にいさせてください…!」

 

 そうだ、どうして気付かなかったのだろう。自分の愛する人は平然とこんな事を言うのだ…愛する人と隣に居るだけで幸せなのだと、一度も迷惑に思った事なんてない私の理想の王子様なのだと。

恋太郎から差し伸べられた手に彼女は己が手をそっと重ねながら、溢れる涙を懸命に拭うのだった…。

 

だがそんなやり取りを他所にメイドと宇宙人の戦いは最高潮に達していた。

 

「うわああーーーーーーッ!!!」

 

 ジロロが操作する機体がバーニアを噴かし、掛け声と共に上空へ飛ぶ。ぐるりと一回転すると右脚を突き出すような体勢を取り、メイドに向かって急加速を行う。これぞ音声認識により発動するケロン・アーマーの隠し奥義(フェイバリット)。その名も…!

 

「究極ぅ…!イナズマァ…ッ!キィーーーック!!!」

 

 機体がエネルギーの奔流に包まれながら地上の芽衣に向けて渾身の蹴りを放つ。それに対し彼女は身体を捻り、拳に全ての闘志を集中させる。

 

「ポール様、今こそこの技を使わせていただきます」

 

 拳に集うはこれまで鍛錬して来た日々と羽々里への忠誠心、それらをすべて燃料にして焚べるかの如く。手のエネルギーは燃焼するように赤く耀く…これぞ彼女が有する必殺技(スーパーアーツ)!その名も…!

 

「メイド秘奥義『紅蓮昇竜烈破』

 

 加速する鋼鉄と炎の拳が宙で激突する。双方の激突は凄まじい衝撃波を放つだろう……そしてその影響を、部屋の窓際に居る恋太郎達が受けない筈もなく。

 

──ズルッ

 

「「あっ」」

 

 恋太郎と羽香里は窓から噴水へと落ちる羽目となった。

 

 

 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「……俺の負け…か」

 

 目を向けると、そこには片脚パーツを破損し膝を付くケロンアーマーの姿があった。芽衣の放つ必殺技により外部装甲と共に内部フレームまでもが融解する結果となった。一応は戦闘は可能だが、先までの状態と比較してエネルギーの減少や機械の故障により2割の力も発揮できない状態だ。

これでは目の前のメイド相手に立ち向かうのは無謀、そう判断した彼は負けを認めたのだ。そんなジロロに対し芽衣は言葉を紡ぐ。

 

「確かにその通り…ですが、勝負という点に於いてはです」

 

 土煙の中から出て来たのは片腕を庇いながらこちらに目を向ける彼女だった。

 

「私の片腕は感覚が無く、今や立っているので精一杯…恐らく腕の骨が折れている事でしょう。仮にここが戦場であるならば私は終わっております。肉を切らせて骨を断つ…実に見事でした侵入者様」

 

 自分にできることをやった、それにより相手の無力化こそできたもののそれは相手が駆るマシンの破壊のみだ。勿論悔しさもある、己が仕える主人の命令を背く結果となってしまった…にも関わらず彼女はそれ以上の清々しさを感じていた。

これまでの人生、花園羽々里に会うまではロクなものではなかった。借金塗れの両親から受ける当たり前のような暴力…そんな地獄から救い出してくれた主人に報いる為にこうして自分はここにいる。

 

そんな自分に初めて戦いを通じて"友"と呼べる者が現れた…それが嬉しくて堪らないのかもしれない。自分の不甲斐なさに嘲笑していると、ジロロが芽衣の元に寄り、何かを腕に塗り付け始める。

 

「……何を?」

「宇宙商人から仕入れた特製ハーブだ。これを腕に付けておけば翌日の朝には治っている」

「何故貴方は…」

 

 芽衣の疑問に彼は答える。

 

「さぁな、分からない。ただこの戦いで俺は疲れとかしがらみとかそう言うのを全部忘れて楽しむ事ができた……なんて言うんだろうな。俺はアンタに礼を言いたかった。これはそのサービスみたいなものだよ」

 

 芽衣は直感する。彼もまた、自分と同じような感覚に陥ってるのだと…敵同士の間に芽生えた奇妙な友情に戸惑いを覚えながら芽衣は呟く。

 

「銘戸芽衣です、貴方様のお名前は?」

「ジロロ。芽衣か…貴方の主人はさぞ立派な人なんだろうな」

「勿論でございます……次は負けません」

「それはこちらの台詞だ」

 

 互いは手を差し出し、握手を交わす。この出会いは必然だったのかもしれない…今後二度と会う事も無いかもしれない。そんな切なさを奥に押し込みながら彼等は相手の名前の過ごした時間を魂に刻み込むのだった。

 

「……あの、すみません。ちょっと良い雰囲気出してるところ申し訳ありませんが…」

 

 ふと、二人に向けて呼びかける声が響いた。ジロロ達が目を向けた先には噴水の傍でびしょびしょとなった恋太郎と羽香里の姿があった。即座に二人は周りを確認する。ボロボロの庭、噴水でずぶ濡れの恋太郎と羽香里達。そして羽香里の部屋からこちらを覗き込む当主。

そしてようやく二人は自分達の戦いにより二人が上の階層から噴水に落ちて来たのだと理解した。

 

「「申し訳ありませんでした」」

 

 直後、二人は見事な土下座を皆の前で披露する事となった。

 

 

 

 

「そう…本当に宇宙人が……噂程度のものだと思ってたけど実物を見るのは初めてね」

「お母様、宇宙人の事を知っていたのですか…!?」

「この立場になると色々と知る事が多くなるのよ。私の知り合いには豪邸に宇宙人の居候がいると聞いてたけど…まさか本当だったとはね」

 

 その後、改めて行われた羽々里との顔合わせ。ジロロと言う宇宙人を前に羽々里は恋太郎達が想像してたよりも動揺する事は無かった。むしろ地球経済の半分を支配する西澤グループ総帥を筆頭に様々な権力者達が地球外からの来訪者達と度々顔を合わせていることに恋太郎達が驚く事となった。

 

「あれ、でも羽々里さん嘘発見機の流れで信じてないような素振りを…」

「だって普通は宇宙人信じるような人は居ないでしょ?」

「じゃあ傷つけられた私の自尊心と流れが本当に無駄だったじゃねーか!」

 

 しかし今はそんな話は重要ではない。恋太郎が噴水に落ちる直前、彼は身を挺して羽香里を守る為に身体を張った。それを見て彼こそ己が宝である娘を託すに値する恋人なのだと、羽々里は理解したのだ。

 

「羽香里の事、どうかよろしくお願いします」

 

 これまでの無礼を詫び、一人の母親として彼女は恋太郎に対し土下座を行う。自分と同じような青春を無駄にするような人生を送らせないよう娘の為に己を犠牲にする…そんな姿に彼女は希望を見出したのだ。それに対し恋太郎は次のように告げた。

 

「はい、幸せにします。羽香里の事も、貴女の事も」

 

 傍に寄り添い、恋太郎は言葉を紡ぐ。

 

「俺は羽香里だけじゃなく羽々里さんにも幸せになって欲しいんです!貴女にも一緒に歩んで欲しいんです、かつて羽々里さんが思い描いた幸せな人生の続きを!」

 

 欺瞞や偽善では無い、心の底から願う言葉に羽々里は心を揺さぶられる。己の人生を子に費やし幸せの日々を送るのではなく、己と子も幸せに満ち溢れるような道を歩んでいく…その道標を恋太郎は示したのだ。

それを見たジロロと羽香里は笑みを浮かべた。

 

「誠実…だな」

「はい。それが恋太郎君ですから」

 

 そんな恋太郎だからこそ力を貸してあげたかった…そう思い、ジロロはこれから幸せになってくれる事を祈り花園家当主に目を向けるのだった……。

 

…だが、ジロロは「ん?」と疑問を抱く事となる。何故か羽々里の恋太郎へ向ける目が艶っぽいと言うか、発情している時の羽香里とそっくりなのだ。羽香里もいつもと異なる母親の様子に気付いたのか、ジロロと顔を見合わせる。

 

「…なぁ、お前の母親の様子なんだが……」

「い、いやいや。何言ってるんですかジロロさん…!母親ですよ…⁉︎歳の差あるんですよ…⁉︎そんなお母様が実の娘の前でそんな…!」

 

 ガタガタと冷汗を掻きながら羽香里は否定の言葉を口にする。自分の母親は花園家グループの当主であり、様々な方面へのビジネスにて成功を収めているカリスマ的存在だ。彼女の影響力はあの西澤グループに次ぐモノと評価を受けるぐらいに凄まじいもの。

そんな29歳になる女性が娘の恋人に劣情を向けるなんて有り得ない!唐音さんのバストサイズを賭けても良いですよ!と言うレベルだ。

 

「う、嘘…っ そんな…っ それって…っ あの時の…私からの告白の…答え…っ?」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

 だがこれが現実である。

 

「恋太郎!?おい、恋太郎おい!!??正気か恋太郎!?」

「おおおおおお母様ッッ!?恋太郎君に告白なんていつの間に…!?」

 

 ジロロ並びに恋太郎ファミリーは戦慄する。恋太郎の魅惑の誠実さもそうだが、娘の彼氏に恋を実らせる倫理観に震えが止まらない。

 

「友達の母親…」

「実の母親…」

「大人の女…」

『混沌…』

「親子丼…」

(ま、不味い…ッ!よく分からないがこれは不味い…ッ!ペコポンの恋愛事情に関してはこう…ノータッチにするとして空気がヤバい!)

 

 このままでは花園羽々里の株が急転直下大暴落したまま。大人の威厳を引き出し流石は大人の女性だ!と言う形にしないと空気が冷え込んだまま…そう思考したジロロは彼女の前に立ち、頭を下げる。

 

「花園殿。此度の出来事は自分の不得と成す事…どうか謝らせていただきたい。申し訳ありませんでした!」

(ジロロが見事な土下座をしたのだ!)

(しかもシリアスな空気を纏った誠意を込めた謝罪…!いくら花園家当主と言えど真面目に対応しなければ無作法)

(混沌としたこの場が一気に引き締まったわ!)

(流石はジロロさん、決める時は決める!)

(いくらお母様と言えどもこの対応には真面目に対処する他無い!)

 

 そんなジロロの一言に羽々里の瞳にギラリと強い光が灯る。彼女がケロン人の元に近づき、手を伸ばす。そして……

 

「許すわーッ!♡」

「…は!!??」

 

 ぎゅっと抱きしめられた。それもただハグされただけではない、数秒も満たない内に頭を高速で撫でられ、顔をスリスリさせられると言う早業を披露したのである。

 

「こんなゲロロ艦長風のデフォルメ頭身な可愛い子なんて許すしかないでしょう?大丈夫?暗いところ怖くなかった?ちゅっちゅする?」

「現在進行形で怖いんだけど!!!」

 

 理解不能な状況に陥るジロロ。そんな彼を見て娘はハッとする。

 

「そうでした、お母様は大の可愛いモノ好きでした…!ジロロさんの愛くるしい姿を見て理性が外れてるんです!涎を溢してしまうくらいに!」

「あー可愛い可愛いマスコッ子。カエルの子は何処に帰るのかしら?大丈夫、私のお家に一緒に帰るのよ、んー堪らない可愛いちゅっちゆしよ、んちゅーちゅっちゅっ、ちゅるる れろれろれろれろ」

「涎どころか知性も一緒に滝のように流れて落ちていってるんだけど!!!」

「お母様……!?」

 

 あまりのIQ低下に引き気味の娘。ジロロの策により彼女の大人としての姿勢が引き出されるどころか奥に押し込まれ幼児退行並の奇行が露わとなる。そんな母親は我に返ると弁明を述べ始めた。

 

「ハッ!?違うのよ羽香里…!小さい頃にぬいぐるみにベロチューしていた思い出が蘇って来て……!」

「生来のディープキス魔!?」

「久々に可愛いぬいぐるみサイズの子が来てェ…!感極まってェ…!ちゅっちゅしたくなってぇ……!」

「ぐ、ぅ………い、一度なら…!」

「ありがとう私の愛娘!!!!」

「母親の醜態を前に思わず折れた!?」

 

 唐音が叫ぶ。そこは頑として譲ってはならない場面じゃなかったのか?そう思う彼女だったがこれは羽香里なりの迷惑をかけてしまった母親へのお詫びでもあるのだ。せめてこれまで我慢して来たものをここで吐き出してマトモになってくれる事を祈り、ジロロを生贄に捧げたのである。

 

「待て待て待て羽々里殿!えーと、アレだ!恋太郎の前だぞ!他の男に目移りするのは彼にとって酷だと思うんだが!そうだろう恋太郎!」

「うっ、うう…-!良かった羽々里さん…!今までの苦労が報われるように幸せで…ッ!」

「あれーっ!?嬉し泣きしてる!」

 

 彼女の幸せを願う恋太郎としてはありのままを曝け出してくれる羽々里の姿を嬉しく見ている。ジロロにキスする云々は双方が邪な気持ちが一切無い影響なのか、恋太郎にとってセーフ扱いになるらしい。

 

「いやぁーー!唇はやめてください唇はやめてください!せめてそれ以外で!!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!??」

 

 こうして花園家での出来事は幕を閉じる。この後、恋太郎ファミリー一同は花園家にて泊まる事となるのだが…これはまた別のお話。

 

 

 

【おまけ】

『忠誠心故に…』

 

「申し訳ありませんでした皆様」

 

ペコリと頭を下げて謝罪を行う花園家のメイドである銘戸芽衣。そんな彼女に気にしないでちょうだいと花園羽々里が励ます。

 

「勿体なきお言葉です……が、それはそれとして償いとして腹を切らせていただきます

「皆止めてちょうだい!この子、本気でやるつもりよ!!!」

「ではジロロ様、なるべく私が長く苦しむよう処してくださらないでしょうか」

「なんか見た事あるやり取り!?」

 

この後、全員で取り押さえてなんとか落ち着かせる事に成功した。

 





●キャラクター紹介
『花園羽々里』
6人目の彼女にして恋太郎ファミリーのドスケベ担当にして、全ての始まり。羽香里の実母にしてラスボス的雰囲気を醸し出していた…だが奴は弾けたを地で行くお方。その財力でアニメEDを買い取り、特殊EDを作り出す。可愛い子に対してあびゃひゃしたり、2期EDにて溶けると行った奇行を見せる。この人物の登場により100カノはラブコメ界のボーボボへ至る事になったと言っても過言ではない…。

ちなみにジロロは羽々里のディープキス未遂により宇宙パラサイトにより口の中に触手を突っ込まれ卵を産み付けられたトラウマが蘇る事となった。
その時は無理矢理吐き出す事でチェストバスターを回避した。

『銘戸芽衣』
花園家のメイドにして将来的に恋太郎と8人目の彼女となる人物。その過去は莫大な借金、両親からのDV、捨てられると言うラブコメにしてはハード過ぎるものだった。紆余曲折あり現在は花園羽々里に忠誠を誓いメイドとしての毎日を送っている。そんな過去だった為か、ジロロとの戦いを通じて戦友的な絆を結ぶに至った。
ちなみに鍛錬の末に数ミリの鉄板程度ならパンチで貫ける身体能力を持つ。


●兵器解説
『ケロン・アーマーZi-66』
正式名称はケロン軍対人型敵性種族用戦略機動兵器。超劇場版ケロロ軍曹4の同時上映作品である【ケロ0 出発だよ!全員集合‼︎】よりガルルが搭乗していた物、又はバンダイより発売されていたフィギュアであるKERORO FIXシリーズのケロン・アーマー。
元々ケロロ小隊に地球侵略用として配備される物だったが諸事情により御蔵入り。そんな兵器を使わないとは勿体無いと言う事でジロロ用に改造を施し、与えられる事となる。

ジロロ専用機として元のケロン・アーマーと比較し2倍以上のサイズに変化。クスィーガンダムやゲシュペンスト(スパロボ)のようなゴツい手脚、肩パーツが追加され、各所に姿勢制御及び推進力増強の為のスラスターが配置されている。
性能は補給無しで長期間の稼働を視野に入れている為、コストパフォーマンスを優先的伸ばしている。それにより銃火器類に実弾武器は搭載していない。
現在判明している武装は『ボルト・ステーク』『近接用大型ナイフ』『凝固空気榴弾』と隠しコマンド技。他はその内出るかも…?


●技解説
『銘神拳』
ガード不可の確定浮かせ技。この技の応用技である銘神ステップと最速銘神拳はまだ修行中。西澤グループ総帥の奥方が将来を楽しみにしていると言わせる程にポテンシャルを秘めているとされている。
元ネタは鉄拳シリーズに登場する風神拳。

『紅蓮昇竜烈破』
ポール森山の技であるポール烈破を自分なりにアレンジした技。ちなみにどうして炎を纏えたかと言うと……まぁ、芽衣さんなら羽々里から炎を出しなさいと言われたらできるだろうなぁ…と(震え声) ケロロ軍曹世界って時折、怒りだけで人体発火できますのでね?(無理矢理)
元ネタはストリートファイターより灼熱昇竜拳。

『究極!イナズマキック』
ケロン・アーマーZi-66が誇る隠し必殺技。音声コマンドにより超強力なキックを放つ事が可能。相手に凄まじいダメージを与える反面、使ったら必ず整備しなければならない…その為、自分で整備をしなければならないジロロとしてはあまり使いたくない技である。
元ネタはこの攻撃は叫ぶのがお約束でお馴染みスパロボシリーズより究極!ゲシュペンストキック。



なんだか色々と羽々里さんで遊びすぎた気もします。ですが、ま…まぁアンタ程のヤバい人がそう言うなら…と済ませられるポテンシャルを秘めているのは流石はお母様と言う他ありません。
マジでラブコメ界に出てきて良い人だったのかこの人…!?
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