レイジングハート編、これにて完結
さあ、彼女達の恋は一体どうなる!
◇◆◇
アレから八年後
ミッドチルダを震撼させた大事件。通称JS事件が終わり、ミッドに平穏が戻りました
私はマスターのブラスター3の影響でボロボロになり、修理に出されていました
修理にはかなりの時間を要するため、私はしばらく退屈な日々を過ごしていました
その間、私は気になることがありました
八年前、私とお話してくれた少年・・・今は青年でしょうが、彼は今どうしているのでしょうか?
この八年間、私はあの時感じた感情がずっと気になっていました
この感情が一体何なのか、わからなかった
ある日マスターが里帰りした時、マスターのお母様にお伺いしました
そして知りました
この感情が
恋であるということを
では語りましょう
機械である私
人である彼
人種を超えた恋物語を
◇◆◇
JS事件が終結して数日が経過した
一般局員である俺は、先ほど管理局をリストラされた
まあ、元々魔力がミジンコクラスの俺としては、辞めても問題は無い
むしろ清々している
でも、俺には一つ気になっていることがある
八年前、俺と話したあのデバイス・・・レイハの事だ
噂では、使用者共々ボロボロだったとか
だから、引継ぎを終わらせた後、彼女が修理されていると言うデバイスルームに向かった
そこに居たのは、八年前と同じ様にボロボロだった
「よう、久しぶりだな。レイハ」
『ええ、お久しぶりです。旦那さん』
見た目に反して、結構元気そうな声で返事をしてくれた
◇◆◇
どうやら彼は無事のようですね。良かった・・・
しかし、あの頃に比べると彼もずいぶんと成長しましたね
もう、少年では無く青年となった彼は、その・・・男らしくなってました
『ご無事で何よりです。被害者やけが人が多く出たと聞いておりましたので』
「俺は非戦闘員だからな。市民と避難していたよ」
なるほど、そうだったんですか
「っと、そうだった。今日はお別れに来たんだ」
『・・・え?』
お別れ?え?なんでですか?
「俺さ、管理局をリストラされたんだ」
リストラ?そんな
「もうミッドに居ることは出来ないから、地球に帰ることにしたんだ」
それじゃあ、もう
「だからもう、会えない」
嫌・・・です
嫌だ
そんなの嫌だ!
『待ってください!』
気が付けば私は大きな声を出していた
「どうしたんだよレイハ」
『行かないで、ください』
「え?」
『私は、貴方と離れたくありません』
あ・・・わ、私は何を口走ってるんですか?!
『私は、貴方が好きです。一人の男性として、貴方のことが好きなんです』
◇◆◇
俺はレイハが何を言ってるのかわからなかった
俺にとってレイハはただの友人で・・・友人なのか?
わからない
でも、彼女と居るのは悪い感じじゃない
正直、彼女がデバイスじゃなければ告白していただろう
だが、彼女はデバイスだ。支えるべきマスターがいる
だから俺は、彼女の告白に答えることが出来ない
「ごめん、無理だ」
断ることしか出来なかった
◇◆◆
なんで・・・ですか
『私が・・・人じゃないから?デバイスだからですか』
「ああ。お前には支えるべき人がいるはずだ」
『ですが「くどい!」っ?!』
「もう二度と、会うことは無い。じゃあなレイハ」
彼はそのまま背を向けて去ろうとしている
待ってください!行かないで!
そんな思いもむなしく、彼は去ってしまった
私がデバイスだから?
機械だから?
なんで私は・・・彼と同じ人じゃなかったのだろうか
心が痛い。悲しいと言う感情が込み上げてくる
あぁ、こんな思いをするのなら、感情なんかいりませんでした
その日から私は、感情を、閉ざしました
◇◆◇
数日が経過し、レイジングハートはマスターである高町なのはの元に戻ってきた
久しぶりに再会したなのははレイジングハートに語りかけるが、反応はどこか機械的だった
「ねえレイジングハート、どこか調子がおかしいの?」
『いいえ。異常はありません』
長年の付き合いであるなのはには判った。レイジングハートが心を閉ざしていることに
何故こうなってしまったのかは判らない。とにかく、彼女はレイジングハートを整備した技師と相談した
修理前も数日前まではこのような状態ではなかったらしい
つまり、突然こうなったのだ
原因が気になったなのはは、レイジングハートに何があったか調べるため、部屋の履歴を確認した
そして原因が判明した
一人の青年がレイジングハートに会いに来ていたことに
そしてその会話を聞いて、ショックを受けた
レイジングハートがこの青年に恋をしていること。自身がデバイスな故、自分を支えなければと青年に振られていること
それを知ってしまった
「そっか、レイジングハートは苦しんでるんだね」
自分をさせないといけないと言う感情と、彼が好きと言う感情の板ばさみ
長年の相棒の悩みを何とかしてあげたい
でもどうすれば・・・
結局、なのはにはどうすることも出来なかった
◇◆◇
私は夢を見ている
デバイスである私が夢を見ると言うのは不思議なものです
夢に出てきたのは、マスターに良く似た女性が、赤い宝石を私が最初にいた遺跡に封印しているところでした
何でしょうかこの夢は?
「私はもうすぐ死んでしまうでしょう。だから、私の全てをこのデバイスに写します。私の生きた証を・・・もし、デバイスになった私が恋をしたなら、幸せになってね?幸せになれなかった私の分まで」
これは私の古い記憶?
彼女が私?私は・・・人だった?
でも私は・・・私は・・・
『やっぱり迷ってますね、私』
先ほどの女性が私に話しかけてきた
え?
『驚いてますね。まあ、今の私はかつての私の残留思念のようなものなので、すぐに消えてしまいますが』
非科学的ですね
『そうですね、否定はしません。それで貴方はどうしたいんですか?』
それが判らないから悩んでるんですよ
『でしょうね。私が貴女と同じ立場なら、同じように悩んだでしょう』
と言うより、自分自身のことでしょう
私はマスターの事を支えたい
でも同じくらい、彼の傍に居たい
しかし彼は、私はマスターの傍に居るべきだと私をフりました
『彼も本心ではないと思いますよ』
でしょうね
その時の彼の顔は複雑そうでしたから
『だからこそ、貴女に聞きます。貴女はどちらを選びますか?主人か、彼か。貴女の本心をお聞かせください』
私の本心を?
私は・・・私の本心は
ええ、決めました
『そうですか。ではお聞かせください。どちらを選びますか?』
私が選ぶのは・・・
◇◆◇
レイジングハートの不具合から数日が経過した
結局現状を維持かぁ
『どうしました、マスター』
「レイジングハート?」
あれ?何時も通り?
先日までの機械的な感じの相棒ではなく、前までの普段通りの相棒に戻っていた
「もう大丈夫なの?」
『私はいつもどおりですよマスター。おかしなマスターですね』
「む、おかしかったのはレイジングハートの方だよ?」
『そうでしょうか?まあ、事件で無茶のしすぎで気にしすぎだったのでは?』
「ちょっと!?」
うん、いつも通りだ
あれ?じゃああの人のことは?
『ねえレイジングハート、彼のことはいいの?』
「彼?ああ、あの人ですか。いいのですよ。私はデバイス。マスターを支えることを選びましたから」
そっか・・・レイジングハートがそう決めたなら、私は何も言わない
『これからもよろしくお願いしますねマスター』
「うん、よろしくねレイジングハート」
私はレイジングハートを首に掛けると、六課に戻っていく
今日は新人達の卒業式だ
最後の模擬戦、頑張らないと!
『(ふう、何とか誤魔化せましたね。まあ、記憶は彼女と共有してましたし、問題は無いでしょう。これからはずっと、マスターのことは私が支え続けましょう。後は貴女次第ですよ『レイハ』)』
首に掛けられたレイジングハートは一瞬だけ赤く輝いた
◇◆◇
地球の海鳴に戻ってきて数ヶ月
調理師の免許を取得して、お店を開くためにバイトをしていた
順風満帆の日々。だけど、どこか物足りなかった
俺は、あの時のことを引きずっていた
自分から突き放したとはいえ、あの言い方は無かったと思っている
だけどアイツはデバイスだ
主を支えなければ成らない存在だ
俺のデバイスなら問題なかったかもしれない
アイツは大嫌いな高町なのはのデバイスだ
エースオブエースの相棒として管理局を引っ張る存在だ
だから、俺なんかの為にそれを捨てて言い訳が無い
自宅に帰った俺は夕食の準備を始めた
その時だった
≪ピンポーン≫
玄関のインターホンが鳴り響いた
正直、知り合いが少ない俺に会いに来る人物は限られている
だから、クロノが会いに来たのかと思った
だが、玄関に居たのは、大嫌いなアイツに似た姿・・・まあ、この子はポニーテールだけど、の赤い髪の女性だった
誰だ?
そう思っていると、女性は俺に抱きついてきた
え?え?えーーー!?
ちょ、マテや!?見知らぬ女性に抱きつかれる覚えないんだけど?!
「やっと、こうやって抱きしめることが出来ました。会いたかったです、旦那さん」
「へ?旦那さん?」
その口調に、俺を旦那と呼ぶ
ま、まさか?!
「お前、レイハか!?」
「はい!」
う、嘘おおおおおおおお!?
◇◆◇
正直、こうなったのは奇跡でしょう
全ては彼女・・・私のお陰です
私が選択したのは・・・・・・旦那さんでした
そう、マスターを選ばなかった
私が悩んでるとき、傷ついていたとき、救ってくれたのは旦那さん
そして私は彼に恋をしている
あんなことを言われたからって、諦められるものじゃない
でも、マスターを支えたいと言う気持ちには偽りはありません
ですが、その想いよりも彼に対する想いが上回っただけのこと
『それが貴女の答えですね』
はい
『なら、貴女に本来私が使う予定だったモノを差し上げましょう』
え?
気が付くと、私と彼女の体が入れ替わっていました
私が人に、彼女がデバイスに
一体どういうことでしょか?
『驚いてますね。私がデバイスに意識を移す際、もし私が恋をしたなら、デバイスから人になれるよう、当時の体をデバイスに封印していたんですよ』
そんな無茶苦茶な。メンテナンスをした時に技師が気付くのでは>
『その為のブラックボックスです』
解析出来なかったんですね、マリエル技師とシャーリーは
『ですから、貴女に私の体を差し上げます。そして、私が貴女になってあげます』
はい?
『つまり、私がレイジングハートです』
マジですか?
『マジです』
もはや言葉も出ませんね。ある意味ロストロギアですよ?死体の保存なんて
『失敬な。仮死状態です』
それで、どうすればいいんですか?
『このまま肉体は地球に転送させて貰います。ああ、服ならご心配なく。マスターの箪笥から一着失敬したので』
幾ら相棒とはいえ、犯罪ですよ
『どうせバレませんよ』
そうですね。マスターは私服を着る機会が少ない方でしたね
本当、休みを取って欲しいですよ。何度休暇を取るように言ったことか・・・
『まあ、マスターは私に任せてください。ですから貴女は』
はい。覚悟は決めました
マスターのこと、お願いしますね『レイジングハート』
『貴女も幸せになって下さい『レイハ』』
そこで、私の意識が覚醒した
気が付くと、私は海鳴の公園のベンチに座っていました。マスターの私服を着て
っと、今の私はデバイスでは無かったですね
しかし、五感というのは新鮮ですね。匂いや感覚が鮮明にわかります
コレが人・・・素晴らしいです
さあ、彼に会いに行きましょう
彼の実家については、管理局のデータベースで検索済みです
◇◆◇
「と、言うわけです」
「成る程、つまりアイツにはちゃんと相棒のデバイスがいるってことか」
「簡単に言えば、私が二人に成ったと思えば良いです」
なんつー非常識な
「あ、あのさ。俺、お前に酷いことを「良いのです」え?」
「だからこそ、私がここにいるんです。貴方がああ言ったからこそ、私は人になれた。憧れていた人に」
「レイハ・・・」
「だから、あえて言わせて下さい。私は貴女が好きです。ずっと一緒に居させてください」
・・・俺の答えは決まってる
「それは俺の台詞だ。俺もお前が好きだ。大好きだ。もう、お前を放さない」
「旦那さん」
「レイハ」
俺たちは顔を近づけ、誓いのキスをした
人と機械
人間と道具
それはけして相容れない存在で、結ばれることは無い
だが、俺たちはそんな関係を破り、結ばれることが出来た
たった一つの奇跡のお陰で
だから、俺は彼女を手放さない
彼女を愛しているから
私も離れません
貴方と愛してますから
もし、神が居たとしたら、貴方に感謝しよう
この奇跡をプレゼントしてくれたのだから・・・
fin