「クビ・・・ですか」
「そうだ。お前のような役立たずは必要ない」
管理局に勤めて10数年。長い間事務仕事をこなしてきた俺は、突然お払い箱にされた
いや、予想していたんだ。こうなることは
俺のように魔法の才能が無く、上に立つ人間では無く、何の才能も無い人間はアッサリと捨てられる
そんなことはこの数年でよく分かっている
さらに、俺は元々嫌われ者だった
魔法の才能が無いから親に見捨てられ、仲間からは軽蔑と冷たい視線
俺を俺と見て接してくれのは、生涯たった二人だけだ
一人は「クロノ・ハラオウン」。訓練校時代からの大親友だ
正直、アイツがいなかったら・・・俺はとっくに壊れていただろう
そしてもう一人いる
いや、正確にはいたんだが・・・思い出せないんだ
名前も顔も、性格も
でも、たった一つ覚えているのが
―――きっと!きっとまた会えます!いえ、会いに行きます!絶対に!約束です!
―――ああ、待ってやる。何年でも!何十年でもな!だから・・・戻って来いよ!■■■!
約束・・・もう、それしか覚えてない
だけど、俺は・・・今でもその約束を守ってる
この先何十年経とうが、老人になろうと、死んでも・・・待ってやる
だがら・・・早く帰って来いよ
◇◆◇
「―――っと、今日の授業はココまでだな。今日のHRは無しだ。号令!」
「起立!気を付け!礼!」
『ありがとうございましたーー!』
「おう。気をつけて帰れよ~」
アレから5年
ミッドを追われる様に俺は故郷である海鳴に戻ってきた
戸籍はクロノに頼んで何とかしてもらい、とりあえず生きる目標を探すことにした
で、まずは大学に行こうと思って受験。海鳴大学に合格した俺はサークルや授業を受けつつ夢を探していた
俺がやりたいこと
俺がしたいこと
全然見えて来なかった
そんなある日、偶々昔通っていた小学校の恩師に出会ったんだ
「久しぶりだねぇ。大きくなって・・・元気だったかい?」
「ええ、先生もお変わりなく」
既に老人に代わっていた元担任
この人は奇跡的に6年間ずっと俺の担任だったのだ
うん、普通クラス替えとかあるのに、何故かずっとこの人だったよ
「ご両親との仲はどうだい?あの頃はそれでずいぶんと悩んでたみたいだけどねぇ?」
「両親には・・・縁を切られましたよ。まあ、今となっては清々してます」
「そうか・・・まあ、ワシが口を出すのは野暮かの」
ありがたい。俺としても、両親の話は二度としたくなかったからな
「ところで今は大学に通ってるのかい?」
「はい。でもお恥ずかしいことに、進路が見えてこないんです」
ずっと管理局の事務員だった俺は「夢」がわからなかった
今も・・・ずっと
「ふむ・・・なあ、黙ってワシと一緒に来てくれんかの?」
「え?」
「なーに。ちょっとしたおせっかいじゃ」
俺が先生に連れてこられたのは、先生のお宅だった
その中では、年齢がばらばらの子供達が集まってお互いに勉強を教えあったりしていた
「コレは?」
「ワシが個人的に経営してる塾じゃよ。まあ、塾といっても趣味でやってるから授業料は取ってないわい」
趣味?
「ワシはの、人に物事を教えることを生きがいとしている。それは勉強だけでない。人生の経験を語ったり、世界のことを教えたり様々じゃ」
「教える・・・ですか」
「そうじゃ。ワシが知る全てを後世に伝えたり、子供達が誤った道に進まないように導き正してあげたり、お前さんの様に相談に乗って、心の病を聞いたりの」
だから、昔・・・あんなにも俺に・・・
「で、どうじゃ?ここの子供達は?」
「ええ・・・凄いですね。年上の子は率先して年下の子に丁寧に教えようとしたり、年下の子も素直になって聞いてますね」
「まあ、最初は蟠りがあったがのぉ。後、ここにいる子供達は全員、学校で問題を起こしたり、家庭のトラブルで不登校になったりした心に病を抱えた子達なんじゃよ」
「・・・え?」
俺は信じられなかった
じゃあ、何でこんなにも皆楽しそうなんだ?
心の病は簡単には・・・
「勿論、この子達がココまでになるのには時間が掛かったぞ?ワシが子供達に必死に語りかけ、周りと一緒に話して原因を探り、少しずつこの子達を導いてきたのじゃよ」
人を導く・・・か。俺は先生の顔を見ると、とてもまぶしく輝いて見えた
俺は・・・・・・俺も、こんな顔できるのかな?
「先生」
「なんじゃ?」
「俺にも・・・できますか?人を導く・・・教師を」
「さあのぉ。それはお前さん次第じゃ。努力と人を理解しようとする心が有れば・・・の」
コレが俺の夢になるかは分からない
だけど・・・俺は先生みたいな教師になってみたいって、この時初めて思った
そして今、俺は母校で教師をしている
「先生ーー!また明日ねーーー!」
「明日もイッパイいろんなこと教えてね先生!」
「おう!任せろ!」
コレがきっと俺が望んでいたことなのかもしれない
なあ、名前も思い出せない君
俺は今、夢に向かって歩みだしてるよ
何時か君に会えたとき、胸を張って会える為に
だから、いつまでも君を待ってるよ
いつまでも・・・ずっと・・・
子供達も下校し、職員室で明日の授業の資料を纏め、職員会議を終わらせた俺は自宅に帰る準備を始めた
既に辺りも暗い。もう7時を周っていた
先輩の教師達は既に帰ってるため、飲み会はないな
なら、さっさと帰って疲れを取ろう
そう思っていたときだった
「先生。お客様がいらしてますよ?」
「え?こんな時間にですか?」
用務のおばちゃんが俺に客が来たことを知らせてくれた
もう夜だぞ?それに、恥ずかしい話、俺に知り合いは少ないから心当たりが無いんだが・・・
「ええ、女性の方見たいです。名前は・・・ユーリさんとか」
ユーリ?・・・昔、聞いたことがあるような?
だめだ、思い出せない
「ありがとうございます。今行きます」
そして玄関にたどり着くと、ロングの金髪の女性がじっと私を見つめて立っていた
「・・・やっと会えましたね。私、約束守りましたよ?」
もしかして・・・・この人が、俺と約束をした女性なのだろうか?
顔も名前も思い出せなかった女性と意外な形で再会した俺
俺と彼女の恋物語は15年の時を得て、ようやく再稼動をしたのだった
つづく