ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有の悪くないダンジョン配信~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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035.ビビッドピンクの目立つやつ

 

 塔のエントランスを目前にしたタイミング。

 

「あの……」

「なんだ?」

 

 左手に掴んでいた少年が、セイジに声を掛ける。

 

「ちゃんとギルドまでついていくんで、離して貰えませんか?」

「あ、うん。俺もちゃんと着いていきますから」

 

 続けて右手に掴んだ少年も神妙そうな声を出すので、セイジは思わずシヅルと顔を見合わせた。

 

:ううむ当初よりだいぶ大人しくなってはいるが

:何となく雰囲気は反省した感がある

:本当に反省してるのかなこの子たち

 

「……まぁ超人化が解けたあともこのまま歩くのは大変だからな。ちゃんとついてくる気があるなら助かるが――フウリュウ、どう思う?」

「え? おれ?」

 

 セイジに問われて、フウリュウは少し考えてからアイアンクローされたままの二人に訊ねる。

 

「お前ら、なんで急に態度変えたの?」

「フウくんってばストレートに行くねー」

「だって遠回しに聞いたって面倒なだけだろ。特にこういうタイプの人たち」

「ふむ。フウリュウ少年の言葉は一理ある」

「まぁ確かにダルい返答が多いタイプだものな」

 

 ちなみに、例の四人組はまだ着いてきているので、彼らには聞こえる大きめの声でセイジたちはそれぞれの言葉を口にしている。

 

「それで、どうなんだ?」

 

 改めてセイジに問われて、左手に掴まれている少年は答えた。

 

「その、花畑の隠し通路を通る時のやりとり聞いてて、マジで自分ら考えナシだったんだなって……」

「あと、そっちのフウリュウってヤツ? おっさんやねーちゃんたちの言葉を俺は全然分からなかったのに、そいつは理解したように動いてて、しかもおっさんたちから文句や注意もなくて、ちゃんと出来てるんだなって」

「わかる。フウリュウと比べられたら、そりゃあ自分らはダメだなってなった」

 

:そうかニキやネキたちと比べてもピンと来なくても歳の近いフウくんと比べるとピンとくるのか

:フウリュウくんの活躍が分かりやすく「自分ら学生っスから」みたいな言い訳を潰してくれたんだな

:まだまだ動きは硬いけどちゃんと探索者してるフウくん見たらそりゃあ自分らがどんだけダメだったか分かってくるよね

:ましてや寄生四人組と違ってニキに掴まれた状態とはいえ一等席でやりとり聞いてたワケだしな

 

 反省して、神妙な感じになっている二人。

 それを見てフウリュウはどこか許しそうな顔をしていたところで、キョウコが口を開いた。

 

「でもキミたちってさぁ、フウくんみたいな人と遭遇して注意されても、優等生ヅラしててうぜぇ! みたいな感じで話聞いて来なかったタイプだよね?」

「キョウコの言う通りだな。実際、ワタシたちの言うコトは聞かなかったではないか」

 

 キョウコとシヅルの指摘に二人は、黙り込んでしまった。

 報酬は山分けと口にした時のような――表面的な、もっというなら自分たちに都合の良いルールだけ押さえた見当違いのことを言っていた――彼らの態度と比べれば、ずいぶんと大人しい。

 

 あと、あえてキョウコが無理する原因になっただろ……というツッコミは避けた。

 そこはまぁ結果論だから――と、二人が考えてのことである。

 

 さておき、少年二人の様子に対して、セイジは少し考えてから、小さくうめく。

 

「疲れた。ダルい」

 

 同時に、両手を離した。

 突然の出来事に少年たちは反応できず、尻餅をつく。

 

:ニキいきなりすぎるw

:二人ともケツ強打しながら目を白黒させてるじゃん笑

:あれはオレでも反応できないかもしれない

:予備動作もないに反応できるようなもんじゃなさすぎて草

 

「お前たちは運悪くオレの配信のカメラに映り込んだ。これを見ていたリスナー全員が、常にお前たちを監視するぞ。今後は態度、ちゃんとしろよ」

「は、はい!」

「うん!」

 

 それでお開きとばかりにセイジが小さく手を叩く。

 

「さて、ここでダラダラしててもダルいだけだ。ケガ人もいるから、とっととギルドに戻るぞ」

 

:これで手打ちってコトか

:あとは少年たち次第

:まぁギルドで説教はされるだろうけどな

 

「――そうだ」

 

 そのやりとりのあとで、セイジはドローンの方へと向き直った。

 

「もう問題は起きそうにないので、ここで一度配信を止めるコトにする。

 急な依頼配信ながら見に来てくれたコト、感謝する」

 

:いえいえ

:ニキもおつかれ

:もっと見たかったけど依頼配信ならしゃーなし

 

「今回のは突発だったが、週末の通常配信はする予定だ。

 ただ今日の後始末や、別の問題が浮上したりすると配信できない可能性はあるので、そこは了承して欲しい」

 

:もち

:依頼討伐だもんなぁ

:すんなり済むのを祈ります

:ニキのこと気になりだしたので通常配信も見に行きます

:普段の配信も気になってきたから週末の配信余裕があったら行きまーす

 

「今回の配信から興味を持ってくれたのならば、それも感謝だ。

 ただあまり過度な期待をされるような配信ではないから、そこだけは注意して欲しい」

 

:それは確かにw

:新規勢はアーカイブ見て自分に合うかどうか確認した方がいいぞ笑

:ニキの配信はある意味でクセがあるからな

 

「では失礼する。改めて、依頼配信に来てくれたコト、シヅルを通じて相談に乗ってこれたコト、感謝する」

 

:乙

:おつかれさまでした

:危ないやつ倒してくれてありがとー

 

 

 ===この配信は終了しました===

 

 

 配信がちゃんと終了したのを確認すると、セイジはドローンを止めて小脇に抱える。

 

「すまない。待たせた」

「ちゃーんとご挨拶してるんだ?」

「一応な。普段ダンジョン配信している以上は大事だろ?」

 

 からかうようなキョウコの言葉に、セイジはうなずく。

 

「そうだ。ワルド殿は車の運転はできるかな?」

「ん? 免許は持ってるが……どうかしたのか?」

「いや我々が乗ってきた車があるんだ。可能なら、ダンジョン側のコインパーキングからギルドの駐車場に移動させたい」

「ああ……」

 

 言われて、セイジはうなずいた。

 

 キョウコはスキルの反動で目が見えなくなっている。

 シヅルもシヅルで、ケガこそポーションで回復したが、出血が多かった為に貧血気味だ。

 

 確かにこれでは運転も難しいだろう。

 さらに言えば、この状態では二人もしばらく車の回収は難しいだろう。

 

「もっと言うなら、停めてあるコインパーキングは……ダンジョンの近くで人が多いのもあって、値段が青天井(あおてんじょう)なんだ。時間当たりは他のパーキングよりだいぶ安いのが、ちょっとした罠だな。見事に引っかかった」

 

 値段に上限のないコインパーキングに数日――ヘタしたら一週間近く車を止めておく場合の金額を考えると恐ろしい。二人の気持ちはよく分かった。

 

「何人乗りだ?」

「六人は乗れるよ~、ライトバンだし」

「オレが運転していいなら、ギルドまで運転しよう」

「助かる」

 

 ――そういうワケで、セイジの運転で車を動かすことになった。

 

 

 

 

 駐車場にて――

 

「ビビットピンクって言うんだっけこれ」

「ショッキングピンクじゃなかったか?」

「キョウコ姉、この色でいいの?」

 

 少年たちの感想は散々だった。

 

「えー、かわいいじゃんこのピンク」

「運転していると悪目立ちして少しバツが悪くなる時はあるが?」

「とりあえず、問題なく動くなら色は問題ない。問題ないんだが……」

 

 そのビビットピンクのライトバンの側面には何やら会社ロゴのようなものがある。

 

「『お手伝い屋ヨハンナ』? 社用車か、これ?」

「そだよ。うちの会社の社用車」

「知らない会社とはいえ会社の看板背負った車を運転とか最高にダルい……」

 

 思わずうめくセイジの横で、少年たちは首を傾げている。

 

「これ、どんな会社?」

「文字通りの何でも屋だよ。引っ越しの手伝いとか掃除とか、家庭教師とか。キョウコに出来るコトは文字通りに何でもやってる」

「キョウコ姉は、この会社のなんなの?」

「え? あーし? あーしってば社長さんなんだぜ?」

 

 フフンと、シヅルに支えて貰いながらドヤる女社長。

 

「そして社員はキョウコだけだがな。ワタシも時々手伝っているが、あとは日雇いタイマーバイトが時々くる程度だ。だがご近所さんからの評判は悪くない。キョウコのノリと性格もあるんだろうがな」

 

 ご近所から信頼のある会社の社用車ということらしい。

 その事実に、セイジは頭を抱える。

 

「……本気で、運転するのかこれ……」

「あれー? ダウさんもこの色ダメなタイプ?」

「いや色はどうでもいい。信頼ある会社の社用車なんて責任ある車を運転したくないだけだ」

 

 本心からそううめきながらも、鍵を借りて車に乗り込む。

 

「いつも以上に安全運転するしかないか。まぁ事故は起こさないように気をつけるさ」

 

 そうして、セイジの運転するビビットピンクな社用車は、まったく危うさを感じさせない運転によって、無事にギルドの駐車場へと到着するのだった。

 

 なお、セイジは車から降りるときに、乗り慣れない車の運転はやっぱダルい――と小さく漏らしていた。

 

 

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