ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有の悪くないダンジョン配信~ 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
「あ、良く見ると一つ一つラップで包んである」
「それはまぁ、そのまま持ち運ぶワケにもいかないしな」
:それはそう
:丁寧に包んでるなw
「ダウニキ、頂きます!」
「おれも!」
「ぼくも!」
「ああ」
「高校生組の食いつきがいいな」
「そりゃあお米は必要っしょ!」
:旨い肉があるなら米が欲しくなるのが日本人よ
「あのー……ダウナーさん」
「どうしたタルキ?」
「これ、ラップ外すと飾り付けの海苔が……」
「あ」
:ラップに張り付いて剥がれてるwww
:この手のあるあるだ笑
:無貌のシマエナガ・・・
:顔どころか羽も足もとれて俵になってて草
「……まぁ、喰えば同じだ」
「言っているコトはその通りだけど、微妙に不本意っぽい」
キョウコはケラケラ笑いながらシマエナガおにぎりを一つ手にとり、ラップを半分だけ剥がしてかぶりつく。
「んー! やっぱお米っしょ!」
:わかる
:なんかあちこちいって結局そこに落ち着く
:海外行くとめっちゃ恋しくなるんだよな
「やっぱ焼肉は米と合わせたいよな!」
「さっきのバーベキューもお米に合うよ!」
:味付けの濃い肉と米が合わないワケないんだよなぁ
盛り上がっている彼らの様子を見ながら、セイジはSAIから紙の深皿を取り出すと、自分とフウリュウの前に置いた。
「え? なにこれ」
「そこにこうやっておにぎりをいれて、出来るだけ平らにして、中央をくぼませろ」
「ん?」
首を傾げながらもフウリュウはセイジに言われた通りのことをする。
:ぎゃー!
:かわいいエナガちゃんがー!
:シマエナガが潰された!
:このヒトデナシ!
:常にノリ良いよなここのリスナーw
「続けて、甘口か辛口、好きなほうの焼肉のタレを一回し」
「一回し……」
:なにしてんだ?
:これは、まさか、
「続けてこれだ」
セイジはSAIから、生卵を二つ取り出すと、フウリュウと自分のお米の窪み部分へと、片手で割って黄身を落とした。
「卵だ!」
:まてまてまてまて
:やっぱりかー!
:それは反則だ
「さらに、シマエナガを作った時に出た海苔の切れ端が大量にあるので、これを散らす」
「おお!」
:こうきたかぁ
:それは強すぎるだろ
:あかん(アカン)
「コチュジャンを好みで少し落とし、思うままにかき混ぜろ」
「よしきた!」
「かき混ぜ終わったら、好きな肉と一緒に喰らうがいい」
「おっけー!」
「好みで、各種ナムルなんかも一緒に食べてもいい」
「やってみる!」
:次から次へと!
:用意周到すぎるだろ!!
「あ、ダウさん。あーしも欲しい!」
「なら、卵と海苔をここに置いておこう。そろそろタンも焼けるしな」
そう言って、セイジは卵の入ったカゴと殻入れ、それから海苔の切れ端が入ったジッパー付きの袋をテーブルに置くと、焼き場へと戻っていく。
セイジは焼き場に戻るとすぐにマンゴーカットのタンステーキを三つ皿に上げる。それをそれぞれ半分にカット。
さらに切り分けたモノを皿へと分けて、ゲストテーブルへと持っていった。
「一人、半マンゴーずつだ」
:このステーキもやばいんだよなぁ
:前回も見たいけど破壊力がダンチ
:あちあちと呟きながら切る動き!!
:包丁を持つ手!お肉を抑える手!
:半マンゴーという単位を誰もツッコミ入れないのか?w
「待ってましたー!」
「今日はいつになく食べるなキョウコ」
「めったに食べれないお肉を、美味しく料理してもらってるんだよ? 食べるでしょ!?」
:それな
:あー……食べたい……
「あと、ハラミと赤身も持ってきてるが、焼くか?」
「是非!」
「食べたい!」
「お願いします!」
「焼いて欲しい!」
「キョウコが完全に高校組のメンバーになってる」
:しーちゃんはマイペースだな
:一口一口噛みしめるようにめっちゃ美味しそうに食べてるけどね
「しーちゃん、食べないの?」
「食べるぞ?」
「TKGはしない?」
「ふむ。普段、焼肉屋へ行ってもふつうのライスにしていたが、やってみるか」
そうして、シヅルが
「歯ごたえしっかりだけど、歯切れ良くて、噛むほどに肉汁が!」
「薄焼きとは違う感じだな!」
「これも美味しい!」
:羨ましすぎる
:ガーロ肉のフルコースみたいになってきたな
:純粋に味わってみたいなガーロ
:食べた人をあんな顔にする肉、料理してみてぇ・・・
焼き上がったハラミや赤味も、これまでと同じよう皿に乗せるとゲスト用のテーブルに置く。
テンションを上げるゲストたちを横目に、セイジは焼き場の脇の自分用によけておいたモノに箸を伸ばした。
逆の手には、いつの間にか用意していたらしいTKGがある。
「……この、赤味……!」
:どうしたニキ!?
:ダウナーニキはだいたいココで言葉を止めるんだよなぁ……!
噛みしめると旨味たっぷりの肉汁がジュースのように溢れてくる。
それでいて脂は少ないので、想像以上にアッサリした風味だ。
だが、この上なく牛肉の味がする。
むしろサシのほとんど入っていない赤身だからこそ、脂の甘みがない部分だからこそ、ダイレクトに感じる肉の旨味そのもの。
噛めば噛むほど肉の旨味が、肉汁が、これでもかと噴き出してくる。それこそ肉汁と、赤身の旨味に溺れてしまいそうなほどに。
それを堪能しながら、TKGを大口で頬張る。
「うん。これはいい……」
しっかりと咀嚼し、米と卵、そして肉のコラボレーションを堪能して飲み込む。
:悪くない・・・じゃないぞ!
:赤身それほどの、、、!
:今の喉仏の動き!
:美味しさに喜んだ時のイケボ!
日本人としての本能のままにかき込んだそれを味わっていると、フウリュウがセイジを呼んだ。
「ダウニキ~! 聞きたいんだけど、いい?」
「どうしたフウリュウ?」
ふぅ――と、息を吐いてからそちらへと向き直る。
「卵かけご飯に使ってる卵って何の卵?」
:確かに気になるな
:黄身が結構薄い黄色で淡泊そうな感じだけど
「スーパーで安売りしてたごくごくふつうの
「え? そうなの?」
:マジか
:あれもダン材かと思ってた
「ふむ。ワルド殿のコトだからてっきりダンジョン食材かと思ったのだが」
「スーパーのモノを使うにしても、もっとお高いのじゃないんだね」
:二人の言う通りだよなぁ
:それはちょっと気になる
「あー……まぁシヅルとキョウコからそう思われているのも分からなくはないんだが……」
困ったように首を撫でながら、どう説明したものかと少し思考を巡らせる。
「ダンジョン食材……例えばピヨヨ鳥の卵とか。
スーパーで買える高めの卵……例えば、特濃卵なんて謳ってる色が濃いやつとか。
どちらも味も旨味もコク深くて美味しいし、卵かけご飯として食べるのも悪くないシロモノなのは確かだ」
:味の濃い卵でやるTKGはふつうの卵でやるTKGとはまた違った味わいなんだよな
:卵の味の違いとか気にしたことなかったわ・・・
「もちろんそれらの卵で作った卵かけご飯も、焼肉のお供としても悪くない。だけど、ガーロだったり、ガーロでなくても良い肉で、肉の旨味自体が濃い場合となると、少し話が変わってくる」
「ふむ?」
シヅルが首を分かりやすく首を傾げるが、話を聞いているキョウコや高校生たちも同じようだ。
コメント欄をチラりとみれば、こちらも似たような反応を感じる。
「素材そのものの味が濃い肉と、素材そのものの味が濃い卵のぶつかりあい。
これはこれで、かなり旨い。とにもかくにもガツンとくるインパクトある旨味を楽しめるんだが……お互いの主張が強すぎるから、食べてて疲れる。飽きやすいともいう」
:あー……
:TKGと焼肉の組み合わせでそこまで考えたことなかったな
:言われてみればそうか
「肉と卵。どちらも主役でどちらも楽しむ場であるならそれでもいい。あるいは濃い味をそうそうに飽きてくれると安上がりになる食べ放題の場とか。
だが、今日の場合は肉が主役だろう? それも旨味の強い肉が主役だ」
:ガーロの肉を食べる回だからこその淡泊な鶏卵ってことか
:肉と共に楽しむ卵じゃなくて肉を楽しませる為の卵選びってワケだ
「そうすると主張の強い、濃い味の卵は、タレとしてはともかく卵かけご飯としてはよろしくない。
むしろ淡泊であっさりとした味わいながらちゃんと卵のコクがある、一般的な鶏卵でやる卵かけご飯の方が、強い旨味のお肉のお供としては良いんじゃないかと思って、こっちにした」
:高級料理店の料理とかだと一口目のインパクト重視になるからこういう時は濃い卵使う場合が多いよね
:料理人ニキの補足含めてどっちもすごい
「肉だけでなくおにぎりもいっぱいあるからな。可能な限りいっぱい食べてもらうなら、強く飽きやすい強い味よりも、いくらでも食べれてしまえそうな味わいを演出した方が、良いだろうとも思った」
:そうか量を食べやすくする意図込みか
:ダウナーニキは町中華のお店出身らしいから納得だわ
:今日はワルニキが一杯喋ってくれてよきよき
:お高いお店とはそもそもコンセプトが違うのか
:リスナーたちからさらっと出てくる理解と補足が恐ろしい
それを踏まえた上で――セイジ的にはまだまだお腹の容量には空きがあるのだが、他の人の状況は確認しておくべきだろう。
「……と、いうワケでまだ食えるなら、新しいジャンルの料理も追加するが?」
「一応聞くけど、何を用意してあるの?」
みんなのお腹の具合次第では次のネタを出すつもりのセイジ。
とはいえ、ここまでみんなかなりの量を食べているのだ。
:さらなる何かがあるのか
:とはいえこういう確認の仕方する辺りみんなの胃袋気に掛けてる感じか
:しーちゃんはTKG食べきった辺りから完全に手が止まってるしなw
ダメなら別の日に食べるだけなので、確認しておきたい。
「まだ焼いて無くて串に刺してるだけだが――シュラスコ?」
「うん。ここで打ち止めしてくれると嬉しいかな!」
:シュラスコ?
:ここへ来てシュラスコまで用意してあるのかよwww
:雑に説明するならブラジル式のバーベキュー
:串に刺さった塊肉をテーブルで切り分けてサーブするスタイルのブラジル式焼肉
「……どうしても焼くならパイナップルだけを希望する……」
「そういえば、パイナップルは用意してなかったな……」
:もうしーちゃん限界っぽいじゃんw
:パイナップル??
:まだシュラスコ焼いてないのにパイナップル所望されてて草
:シュラスコは肉の間に焼きパイナップルを食べるのが定番なんよ
「高校生組はどうだ?」
問われて、三人は顔を見合わせてから苦笑する。
「オレはそろそろいいかなー……これ以上食べると、満腹すぎて帰り道シンドそうだし」
「そうか、ここダンジョンだった……」
「うん。この辺で止めておいた方がいいかも」
:満腹すぎると帰りダルいからね
:動けなくなるほど食っちゃうと帰り道のバトルがキツイか
:しーちゃん大丈夫そ?
「なら、〆に薄切りタンを焼いてしまいにするか」
「それなら食べまーっす!」
「キョウコ!?」
「え? 〆の薄切りタンくらいならまだイケるっしょ?」
「そ、そうか……」
:キョトン顔いただきました
:しづるさん無理しないで
ちなみに、持ち帰りようのタッパもいっぱい用意しておいたので、余った料理やおにぎりは、それぞれ欲しい分だけ持ち帰ることになったのだった。