ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有の悪くないダンジョン配信~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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062.行き当たりばったりの1D6×2

 

 八月になった。

 

 交渉が無事に終わったのでサイキに報告すると、文字通り跳び上がりながら喜んでいた。

 その際に反省していたのかちゃんと謝罪してきたのでヨシとする。

 

 そして、月末にアルカナムとして演奏するというので、一度四人で集まり軽く音合わせしようと言うので、コウタの知り合いが経営しているライブハウスに集まった。

 

 その時に音合わせをして分かったことなのだが――

 元々音楽を続けているサイキ以外も、三人とも時々は手慰みに楽器を触っていたのもあって、意外と腕が落ちていなかったようだ。

 それどころか、学生の頃よりも上手くなっていると、サイキが言っていた。

 

「これなら密に練習しなくてもいいかなみんな腕を落とさないようにしておいて欲しくて今週中には新譜を作って渡すから来週改めて音合わせしよう。あ、セイジは喉のメンテ忘れないで」

「……やっぱりオレも歌うのか?」

「それはもちろん」

 

 そんなワケで、セイジだけはギターだけでなく歌の練習も必要となってしまった。

 めちゃくちゃダルいと思っているセイジなのだが、だからといって手を抜けない男である。

 

 とりあえず久々にカラオケに言って、適当に何曲か歌った。

 自分で確認する限りは、問題なさそうだ。まぁ問題があれば次にサイキに会った時にツッコミが入るだろう。その時に細かく調整すればいい。

 

 そんなこんなで慌ただしく過ごしているうちに明日は土曜日だ。

 

「……配信のネタ……何も考えてなかったな……」

 

 完全に失念していた。

 今からだとしっかりと準備するのが難しい。

 

 それを踏まえて何か考えるにも、とっかかりがない。

 どうしたものか――と考えながら、GreaTube(グレイチューブ)を開き、ランダムに表示されるオススメのサムネイルを適当に流していると、ふとムルのチャンネルが目に入った。

 

「……よし。聞こう」

 

 思いつかないなら、先達(せんだつ)に聞くのがいい。

 善は急げと、セイジはミマへとメッセージを投げる。

 

 

[セイジ]

 突然すまない

 聞きたいコトがあるんだが

 

[セイジ]

 次の配信のネタが決まらないまま配信日が目前になった時、どうしている?

 

 

 すぐに返事はこないだろうと思っていたのだが、偶然スマホでも見ていたのだろう。ミマから即座に返事が届いた。

 なおセイジには分かるはずもないのだが、ミマはかなりニッコニコでスマホを操作している。

 

 

[ミマ]

 滅多にないですけど

 そういう時は勢いや雑談で誤魔化すとかやりますよ

 ただダウナーさんはそういうの得意ではないですよね

 

[セイジ]

 そうだな

 探索や料理のネタがあればいいんだが

 

[ミマ]

 ダウナーさんの家にサイコロってあります?

 

[セイジ]

 あったとは思うが

 まぁなくても駅前にでも行けばワンコインストアとかで買えるな

 

[ミマ]

 なら1~6にそれぞれ行き先を書いた紙を用意してくだささい

 さらにもう一枚、1~6に料理のお題を書いた紙も用意です

 ネタがないならネタがないコトをネタにしてネタ決めそのものをネタにします!

 

[セイジ]

 だが明日にネタを決めて来週に探索だと少し冗長にならないか?

 

[ミマ]

 たしかにダウナーさんのスタイルだとそうですね

 なら今日中に場所決めを撮影するというのも手ですよ

 

[セイジ]

 配信ではなく撮影なのか?

 

[ミマ]

 はい

 一つの案ではあるので採用するかはダウナーさん次第ですが

 やり方としては・・・

 

 

 ミマからの提案にうなずきながら、セイジはその為に必要な準備を考え始めていた。

 

 

  ・

  ・

  ・

 

 

 

 時間になった。

 待機画面が表示され、画面には『To Listeners. Getting Ready Now. Please wait.』という文章が躍りだすと同時に、BGMが流れ出す。

 

 ダウナーでジャジーで、それでいてテンポ良く、クールで、でも気怠げで艶(いろ)っぽい……。

 そんな様々な要素を、すぐに壊れてしまう危うさで積み重ねられているような、あるいは壊れることなく完璧に組み上げられているような、そんな曲だ。

 

:きちゃ!

:待機

:今日は何がでてくるのか

 

 いつものように待機画面中にもかかわらずコメントは盛り上がっており、やがてシルエットがアニメーションして、画面に手を叩き付ける。

 そして、普段であればチャンネルタイトルが貼り付けられるシーンで、別の言葉が貼り付けられた。

 

『Neta ga nai - ネタがない -』

 

:ちょwwww

:不意打ちすぎるだろ笑笑

:わざわざ差し替え版アニメを用意してて草

:これだけで十分ネタだろw

 

『どうも』

 

:室内だ

:コラボでもないのに室内だと・・・!?

 

 簡易的なパーテーションに囲まれたちゃぶ台の前にダウナーさんは座っている。

 

『プライベートが慌ただしくて今日の為のネタ作りを忘れていた』

 

:素直で草

:正直だなw

 

『そこでこれだ』

 

:なんか出てきた笑

:手書き感がいいなw

:二枚の紙を置いたときの指!!!!

 

『そして、今さっきワンコインショップで買ってきたこれ』

 

:サイコロでてきた!

:まぁ紙の内容の時点で分かってたw

:今さっき買ってきたとか本当に行き当たりばったりなんだw

 

 1 森

 2 草原

 3 水辺

 4 洞窟

 5 遺跡

 6 墓所

 

『近隣のアクセスしやすいダンジョンはこんな感じだ。ちゃんとしたダンジョン名になってないのは、いつもの通り最後に言う為だな』

 

:墓所期待したい笑

:6が博多だったら完璧だったw

:夜行バスは無いのか

 

『なお、夜行バスで博多に行く気はない。あしからず――というやつだ』

 

:デスよね!ww

:元ネタがわからん

:んー??

:あれ?もしかしてこれ録画か?

:え?録画?

 

『二枚目はこれだな』

 

 1 肉料理

 2 魚料理

 3 野菜料理

 4 甘味

 5 汁物

 6 酒の肴

 

:6だけおかしくない??

:完全に6は趣味だろw

:やばい墓所はどれと組み合わせても面白そう

:森で魚料理とか来たらどうするつもりだよw

 

『出た組み合わせを元に素材を探し、見つけた素材を元手にアドリブで料理をしたいと思う』

 

:アドリブww

:これはニキの運とセンスが試されるやつ

:成功しても失敗してもどっちも美味しいじゃん

 

『ちなみに探索配信中に料理が完成しなかった場合、後日リベンジ配信を予定しているのでそちらもよろしく』

 

:ダイスロール前に敗北宣言やめてもろてw

:保険かけてて草

:保険のかけ方がこういうネタ配信馴れしてなくて初々しい笑

:ワルニキって配信する度に可愛さがアップしてる気がする

:ひたすらトークしてる感じだから正面から喉仏堪能できて最高

 

『では、サイコロ一投目。場所決めロール。いく』

 

:よっしゃ!

:6こい!

:遺跡も悪くなさげ

 

『2、草原だな』

 

:2かぁ……

:面白みのないとこ来たな

:サイコロ転がす時の指!!

:いやまてまだ料理がある

:魚や甘味あたりが来ると面白そうだぞ

 

『次のダイスロール、いくぞ』

 

:わくわく

:期待の眼差し

:大変そうなのこい!

 

『2、魚料理だ』

 

:また2だw

:草原で魚料理!!!

:魚かぁ楽しみだ

:草原で魚料理???

:え?まってそもそも素材あるの??

:でも羽ばたき鰹みたいなのがいるかもしれない

 

『草原ダンジョンで、魚……だと……』

 

:ふつうに戸惑ってて草

:いやでも分かるw

:どうすんのニキ?

:メカクレから僅かに覗く戸惑い目!!

 

『いやここで振り直したら面白くないだろうし、さすがに寒いか。やってみよう』

 

:おお!

:さすがニキだぜ

 

『だが、草原で、魚か……』

 

:あ、ダイスには従うとはいえ戸惑いは消えてないやつだww

:マジの困りボイスありがとうございます!!

:お前が始めた物語だぞ!

:ダウナーニキはマジでどうする気だ?

 

『まぁ出てしまったならば仕方ない。ダンジョンに向かおう』

 

:偉いw

:素直でよろしい笑

 

『そして気づいている人もいると思うが、これは事前に撮影しておいた動画だ。それを生配信の枠で再生している。

 この動画の投稿時間の一時間後に、改めて正式の配信を開始する』

 

:やっぱりかーw

:え?そうだったの!?

:普段からコメントの反応はすくないから全然気づかなかった笑

:パーテーションの隙間から見えた窓の外の様子が変だったしな

:よく気づくなそういうの

 

『では探索場所を決める為のダイスロール動画はこれで終了とする。本番でまた会おう』

 

:やばい楽しみすぎる

:よい指先を堪能できました

:一時間後、いやもう四十分後か

:良い声を堪能できて良かったわ

:草原で魚料理とかどうするんだろうなw

:良いメカクレを堪能できた

:喉仏が良きだった・・・

:さて今のうちにドリンクとか用意しとくか

:コンビニで魚惣菜買ってくるのも有りだよな

:コンビニって魚惣菜売ってる?

:今なんかのアニメコラボで煮魚とかあるじゃん?

:いやあの煮魚はちょっと・・・

:映画みたあとだと食べづらいよね……

:草原に出てくる魚モンスターって心当たりある?

:どうだろう

:それこそ羽ばたき鰹くらいだよなぁ

:草原じゃなければ突撃マグロとかもいるけど

:湿地帯なら泥土の絡まり魚とか

:ロクでもねぇ魚ばっかりかダンジョンは!

:だってダンジョンだし

 

 

 ===この配信は終了しました=== 

 

 

 コメント欄が盛り上がっているなか、配信終了後の余剰時間も終わりを迎える。

 それをダンジョンのエントランスで確認していたセイジは、小さく息を吐いた。

 

「このダンジョン、羽ばたき鰹のようなモンスターはいなさそうなんだよな……」

 

 ミマから提供されたネタでやってみたものの、とんでもない結果を引き当ててしまった。

 

「……ダンジョン情報wikiにも、探索者酒場『スレッド』にもそれらしい情報はなし、と」

 

 情報収集系のサイトを覗いて見ても、良い情報はなさそうだ。

 魚系モンスターが出現しないダンジョンで、魚料理などどうすれば良いのだろうか。

 

 ネットに公開されているダンジョンの地図を見ながら、配信開始の時間までセイジはひたすら頭を捻り続けるのだった。

 

 

 





 リアルにダイスロールした系男子こと作者です。
 マジでどうしようかと頭を抱える結果に頭を抱えてます(アホ

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