時は少し遡り。
「それじゃ、あんまり時間もないみてェだから話の本筋に進もうぜ。
オレ様がなぜ、こんな小娘の姿をしているのか。オレ様たちの存在がどう作用しているのか」
一瞬。
あの瞬一瞬。俺を見つめるルシファーは、
「もう薄々気がついてるだろ。オレ様は、ルシファーであり、同時にルシエラ・クロッヒェン・サバトロモチカでもある」
「【カタログ】と、【エンジン】…。」
「そうだ。お前や、新人類と呼ばれる存在はこちらの世界由来の【カタログ】を必要としている。単純に肉体強度が世界線を超えるのに足りてないからな。
それに対してルシエラや、あの朱禰とかいう霊害。
それ等は世界線を超えるに能う、肉体も精神も持ち合わせていた。
だから世界のシステムはエラーを起こした」
また1枚。紙芝居が進む。
今度はデフォルメされたルシエラと、その心臓部に魂が描かれた1枚だ。
「自力で世界線を乗り越えこの世界にやってきた奴らに、世界のシステムは辻褄を合わせようと、思念体でしか無かったオレ様たちのような存在が無理くり合成されたんだ。
するとどうだ。本来なら、ひとつの【カタログ】にふたつの【エンジン】は搭載できねえところに当人の魂と、辻褄合わせの魂。
…ふたつもぶち込まれた【カタログ】はどこか壊れてしまうんだ。だから大半の霊害は意思や知性を失った、、、んだと思う。そもそも世界の融合が不完全な初期段階だから、弱い【エンジン】を搭載しているやつしか世界線を乗り越えれないんだろうな」
「そんなこと言ったって、ルシエラや朱禰、、、あとはあのヒメサマだとかもこの世界に来てるじゃねえか。それに意思疎通だってできる。朱禰は以前のままに感じたぞ」
その質問を待っていたとばかりに真白な歯と舌をだし、小馬鹿にした態度をとるルシファー。
いい加減こいつのうるさい顔にはうんざりだ。。。
「いいね、鋭くなってきたじゃないか。これの答えも簡単。以前に誰かと強い縁を結んだんだろう。これは予測でしかないがね。ルシエラや朱禰は言わずもがな。ヒメサマとやらも転生した新人類の中に縁者がいたんだろう。
そしてなぜ意思疎通が可能なのか。
オレ様じゃ、ルシエラの魂には打ち勝てなかったのさ!朱禰とか言うやつもそのケースだろ。ヒメサマは…ありゃ二重人格見たいになってたからな。おそらく互いに潰しあって、最終的に魂が融合でもしたんだろ。バッカでェ」
カカン、カン、カカン。
高級そうな皮のブーツを床に打ち付け、軽快なリズムを奏でて踊り出すルシファー。タップダンスだろうか、愉快そうにこちらを見下ろしながらステップを踏んでいる。
そしてその足音に合わせるように、ゆっくりと紙芝居が捲られていく。
今度の1枚には、頭から足にかけて中心線を引かれたルシエラの姿が大きく描かれている。
左はルシファー、右にはサタンと書かれている。
ダンスをひとしき踊り、乱れた佇まいを整えたルシファーは、鼻歌混じりに解説を再開した。
「さて、そんなこんなでこの世界にやってきたルシエラ君には、とある魂が宿りました。
その名はサタン。彼女の悪魔的所業と見た目が適合したんだろうね」
「待て待て待て!お前自分のことはルシファーだ、って言ったじゃないか!!」
「そうだね。オレ様は間違いなくルシファー様だぜ。同時にサタンでもあったんだ。ただまあ、彼女に宿った瞬間、
ドコカ・ノ・ダレカ=サンの与えた祝福のせいでね」
俺に向かってレースの黒い手袋で覆われた人差し指を向けながら、そう宣うルシファー。
俺が与えた、ルシエラへの祝福、、、か。
「…
「ゥク、ク、クハ、、アハハハハハッ、、ハハハハハハハハh!
た、ただの名前て、、ッ!その名前を与えたせいで、彼女、自然光の元でしか歩けなくなったじゃないか、ックク。こりゃ傑作だね、、ックフ。彼女の性質を歪めておいてそれとか、、、フ、ヒ、非道い男だね」
まあいいや、と先程まで笑っていたルシファーが、スン、と真顔にもどる。
そういう所もまるでルシエラのようで…。
「まあ要するに、だ。オレ様は世界のルールとルシエラの名前に縛られて、こんな
全く口調も引っ張られるわ、言動も、記憶も引き摺られるわで最悪だぜ」
「…結局、お前は何がしたかったんだよ」
「んー?別にィ。こんなクソ女が意識するくらいだ。オレ様もチョッカイをかけたくなっただけさ。蓋を開けてみれば、まぁー俗世にまみれたろくでもない奴に、って感じかな。
…それでも。強いて言うならオレ様の魂が、君のそんな姿を見て不快におもったから。だからちょっとテコ入れして、蹴り飛ばしに来たわけだ」
ふぅー、だなんてわざとらしくため息を上に吐き、両手を広げて舞台の上に倒れるルシファー。
慌てて駆け寄ってみるも、既に目を閉じて油の切れたブリキ人形のように固くなっていた。
何度か揺すってみても返答はない。ただただ不快そうに鼻を鳴らされるだけだった。
それからしばらく。
やることもないので、ルシファーに言われたことを思い出し、自分に問いかける。
「(どこまでも無神経に、そして自己中心的に、誰かを救っていたぞ、、、か。そうだよ。かつての俺はなんでもできたし、何にでもなれた。でも、、、この世界じゃあ何も持ってない。。。)」
でも、、、。
『「良かった。間に、合った。怪我は、ない?」』
それでも、、、。
『「オッサンは返して貰わねえとなァ。一応それが俺ら新人類の役割なんだわ」』
若い子供が頑張ってるんだ。
俺がそれだけで腐るのは、違う、、よな。
「覚悟は決まったかい?オレ様は次のお客様の相手をしなきゃらいみたいだし。君はもうお払い箱だよ。ほら、さっさと出てけよ」
「んだよ。結局よく分からんやつだなお前。
…でも、ありがとなルシファー。お前のお陰でまた頑張れるわ」
あゆむべき道はもう見えた。
昔の俺にはもう戻れないかもしれないけれど。
これだってもうひとつの物語だ。俺が足を止める理由にはならないだろ?
「じゃ、またな!行ってくる」
光こぼれる扉に向かって歩みをすすめだした。
「…またな、ねぇ。ヘンなやつ」
ドスンッ
「今度はどんな手を使ったか知らないけれど、覚悟はいいわね。もう、加減は無いぞ」
「次から次へと、、、全く今日はとんだ
■■■■■■
「……おい、元ご主人サマ。喧嘩の時間だ」
「クク、やっぱり君だったんだね!
瞳孔が開ききった状態で、まるで雨上がりの濁流のように言葉を流し込んでくるルシエラ。
嫌に晴れ晴れとした顔でこちらを見つめるくせに、イマイチ会話が噛み合わない。
やめろと言った抱擁も、いっそう力が篭り出して節々が痛み出した。
「(コイツ、相変わらず人の話を聞かないな…)」
『「ポーンッッッ!お前、なんであんな状況なのに何も言わないんだ!!!」』
「・・・嫌、それは俺も言えたことじゃないな。なあ、ルシエr」
「いやぁ、朱禰君の一撃には驚かされたね!まさかあんな世界を作れるだなんて、ゆめにもおもわなかったよ。ただまあ僕とは相性が悪かったね。闇の世界だとしても、ボクは「光に向かってあゆむもの」。あんな世界ひとっ飛びさ。
それにしても、全く君と言うやつはほんとによくできた召使いだ!死後ボクの助けとなり、道となり。そして今、またこうして戻ってくるだなんて。可っ愛いヤツめぇ〜」
「ほぉぉぉぉぉぉお…」
一拍。
深く息をはきだす。
今のルシエラは、魔法の研究が完成して興奮しっぱなしのハイテンションモードと全く一緒だ。
こうなったコイツは人の話を聞かない。というか基本コイツは対人関係全てが下手だ。加えてこいつは新しい知見が深まったせいで、変なスイッチも入ってるな。
随分昔。もう記憶の片隅に追いやっていた記憶が蘇る。
そういう時の対処法をはるか昔に生み出しているのだから。。
「ルシエラ」
ただ、コイツの名前を呼ぶ。
呼んで、置く。
それだけで。
「…いやだ」
「ルシエラ」
「ききたくない」
「…ルシエラ。」
「っっっっ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!この心地いい関係が好きだ!君がいて、僕がいる。それだけでいいじゃないか!!」
3度目の呼びかけ。
コイツは賢いからな。人の話は聞かないけれど、想像は付いちまうんだ。でも、今回は暴走気味だからか、ちょっとズレている。
「ルシエラ、お前と俺は会話が足りなかったんだ。ずっと言葉足らずで、でもそれで分かり合えてると思ってた。でも、そうじゃなかった」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい、うるさいいぃぃぃぃぃいい」
ルシエラは俺を前方に突き飛ばし、耳を塞いでその場に蹲る。朱禰との戦いの影響でもう足を動かせないのだろう。
随分とこの体で立ち上がるのは久しぶりな気がする。
思ったより視線が高い。ただ、少しの間動いていなかっただろうわりに、筋力は衰えて無さそうだ。
「(これは朱禰の…?いや、今はあとだ。
今度こそ、しっかりと話し合いを、互いの意見をぶつけ合う喧嘩をするんだ!)」
なんとなく、本当に朧気ながらも覚えている。
朱禰が甲斐甲斐しく、俺の腕をもち、背に手を当てて毎日連れ歩いてくれたことを。
ーあの時とは反対だな。
炉心に熱がこもる。
あくまで冷静に、排熱を意識してもう一度深く息を吐き、ルシエラ
「準備は済んだか、ルシエラ。後で言い残したことがあるなんて受け付けてやらないからな」
「…そんなに喧嘩が好きなら乗ってあげるよ!ただし、ボクに負けたら二度と逆らうんじゃないぞこのじゃじゃ馬が。いいさ、教育の時間だ」
両者の距離は2m弱。
動く元気もないルシエラと、牛歩よりもなお遅く、それでも近づける俺。
唯がむしゃらに、心の声に従って歩け!
1歩。
歩みをすすめ、硝子がパキり、と音を立てる。
それが開始の合図となった。
「ボクは君のことを大事にしていたのに、勝手にどこかに行くだなんて。そんなこと許していない!!」
【|啓示を与える者(メッセンジャー)】
「(体が!このままじゃ後ろの壁に押し付けられるッッ!!)」
二重に聞こえる声で、何かをルシエラがつぶやくと全てのものが背後の壁に
急にどこからか飛んできた鉢植えを躱すために身をかがめ、腹ばいになって床に縋り付く。
まるで重力が90度回転したかのように、机や椅子などの家具が壁に落ちていった。
「俺たちはいつか死ぬ。それが人間だからな。…ただ俺はあの時、死んじゃいけなかった。今になって本当にそう思わされるよ。俺はお前に大事なことを伝えきれてなかったんだからな」
辛い。
今すぐに顔を下げて床を見つめてしまいたい。
でも、今目を逸らすのは違うだろ。
少しでも、ルシエラとの距離を縮めるためにナメクジのように進行していく。
「君がっ!ボクにあんな風に接するから!!ボクは味を知ってしまった。変えられてしまった!
…ズルいじゃないか。部屋に入ってきた君はボクとは目も合わせずに、あの女にばっかり甘い感情を注いで。挙句あの女に守られて!其処はボクの居る場所だったはずなのに!!!!!」
ぐ、、、ぅぅうう。
ルシエラのことがものすごく気持ち悪く感じる。見ているだけで悪態をついてしまいそうだ。
コイツとすごした、あの日々を思い出しては胸元を掻きむしりたくなる。こんな精神操作をして何がしたいんだコイツは。
「うるせぇ。勝手に、、、俺とお前の関係を決めつけてんじゃねえ!そんな関係は、ぁ、、願い下げだバカヤロウ!
お前こそ、俺のことをいつまで、、、お前の召使いだと思ってんだ!!俺は、もうとっくにそんな仕事辞めてんだわぁぁ」
着実に、そして人生で最も苦しい道のりを進んだ気がする。
はぁ、、、息を整えたいって心臓が悲鳴をあげている。喉の奥が暑いのか冷たいのか、よく分からない。
「(拒絶されている、、、のか。いいぞ、全部突き破って、いちばん近い距離で思いの丈ぶつけてやるからな)そこで待ってろよルシエラァ、、、。もう目を逸らしてなんかやらないから、、、なぁ、、、!!!」
いつもより、思考に霞がかかっているような気がする。
「もういいだろう、頑張ったよ」と言い訳が次々溢れ出てくる。が、その感情全てを前に進む力に変える。
もう停滞するのは懲り懲りだ。
今、手がルシエラに、、、!
「もうやめてくれ、、、。なんでなんだよ。もう諦めてくれよ。今君は苦しくて、逃げ出したくて仕方ないはずだろう。あの日々だって君はなんとも思ってなかったんだ!ボクのことなんてどうでもよかったんだろう!!」
ガキンッ
全ての魔法が解かれ、俺にかかっていたあらゆる負荷が取り払われる。
代わりに、蹲って耳を覆うルシエラの周りには薄く透明で、しかし消して溶けることのないだろう氷が張られていた。
ここに来て、自分の殻に籠りやがったな。。。
「いいか、俺は、、、んぐぅ、お前の全てを受け入れてやれるほど、できた人間じゃない。ただな、よく、ぅ、、、覚えとけ。。。それでも俺はお前のことが大事だから、、、!」
正直、今の精神状態で心の底からルシエラが大切だと思うことはできていない。吐きそうになるのを全ての飲み込み、代わりにコイツへの感情を吐き出す。
それでも、過去の俺はコイツのことが大事だったんだ。傷ついて、挫折して、それでも幸せに生きて欲しかったんだ。
あの日々に対する、思い入れは消して嘘なんかじゃない。
「ほら、言いたいことは、、、もう終わりか。。。こっからは、俺の番で、いいんだな」
ルシエラは答えない。薄氷が絶対の防御となって彼女閉じ込めてしまったんだ。だからといって、きっとコレに触ったらまともではいられないだろう。万事休す。詰み、、、か。
もう動けない。そんな力はない。立ち上がることもできず、床に轢かれた蛙のように伸びることしかできない。
だから俺は腕をのばし、迷いなく氷に触れた。
「どちらかが片方に献身的な態度を取るんじゃないくて。またもう一方も尊大な態度で自己の為だけに振る舞うんじゃない。そんな関係じゃあすれ違いが起きるだけだったんだ」
氷に触れた指先から真白になっていくのが見て取れる。
凍っていく皮膚は寒さよりも暑さと痒みに襲われて、すぐにでも手を離したくなる。
まだ、離せない。
「もう、俺とお前は従者と主人じゃない。あの日々は何者にも変え難く、美しい日々だったとしても。もう戻っては来ないんだ。お前が望もうと。俺が答えようと。消してあの世界に帰れることはないんだ」
僅かに、氷が震えた気がした。もう暑さも何も感じない指先だが、今のは確信を持って断言できる。
「俺は朱禰が好きだ。だが、だからといってお前のことを嫌いになった訳じゃないんだ。
誰かが好きだから、誰かを嫌いになるだなんて。そんな悲しいことを言うのはやめようぜ」
冷気がついに胸を覆い尽くして、喉元まで氷の鎌をもたげてきた。
まだ、まだ伝えきれてない。まだコイツには示せていない。
「だから、、さ。今度は、、、前と違った形で、俺と関係を結ぼう。上とか、下とか、主従だとか契約だとか、そんな物を必要としない。俺とお前の対等な関係だ。
利害の一致じゃない。俺が、、ぁ、、、おまえと、、、いっしょにいたいから」
心臓の音がやけに大きく聞こえる。
もう喉も凍ったのか?今、俺は声を出せているのか?信じるしかない。言葉にする位はうまくできているんだと。
「だから、、、もういちど!喧嘩して、わらいあって、しょうもないことですれ違って、それでもあいてを大事におもい合うような、、、そんなかんけいに」
(お前が満足できなかったら何回でも、、、)
もう、首を前に向ける力すら残ってない。
さいごのことばまで、おれはいいきれたのだろうか?
まだ、しんじゃだめだ。。。おれ、は、、いきない、、、と。
■■■■■■
「よくやったじゃねえかクソガキぃ!ギリギリ、本当に間一髪だがなァ!」
ルシエラを覆っていた氷が溶けだし、意気揚々とルシエラの皮を被った
と、同時に朱禰もむくりと体を起こす。
「ああ、こんなになって。。。全くお前は無茶をしすぎるのよ。おい、早く四郎を治せ。私はいつでもお前の首を刎ねてもいいんだぞ」
「はいはい、ご勘弁くださいませ!ってかァ!?
…ああ、はい。ごめんなさい。それを突きつけるのやめてください。今だとほんとに消えちゃうんで。
それよかほんとに良かったの?君の旦那様殺しかけちゃったけど、ウチの魔王サマ」
朱禰が勢いよく凍りついた四郎に飛びつき、そしてルシファーを睨みつける。
それに対してルシファーは自分の両腕を顔の前に出しておどける。
「くどい。
私は四郎が望むことを実行するだけ。そのためならなんだって水に流せる。
…それに、さすがの私も子供相手に女を見せるほど落ちていない」
「ひゅぅう、正妻の余裕、っやつね。
それでは、それでは。取り出したるは禁断の果実、黄金の林檎。原初の人はこれを食べて羞恥心を覚えたとか言うけどそれは1側面でしかないんだぜ。
その本質は肉体という
ルシファーが誰に向かった説明なのか、バスケットボールのように金色のリンゴを回しながら、キメ顔を明後日の方向に向ける。
その間にも四郎の指先は粉雪のようにサラサラと溶けて無くなってしまう。
「嗚呼もう、早くしろと言ってるだろう!ああ、四郎四郎しろうシロウ。私はお前がどんな姿になっても一緒にいてやるからな。私だけは絶対にお前の味方だからな。だからどうか、生きてちょうだい。。。四郎四郎しろうシロウ四郎シロウしろ」
「あーらら、壊れちゃった。
んま、オレ様には関係ないけど、サ!ほーらお食べ、今すぐお食べ。泣いてる僕を見れてオレ様
林檎をぐしゃり、と握りつぶしたルシファーは驚くべき怪力で、果肉をちぎれたちり紙のようにしてしまった。
そのまま果汁を四郎の口元へ持っていき、無理矢理飲ませる。
「、、、ぅ、、、ごほ。ぅ、、ぇええ」
「ああぁぁああ、飲むのよ四郎。ほら、ね?飲みなさい??少しでいいからお願いだからぁぁぁあ」
こぼれた液体を掬い上げ、何とか飲まそうとするも尚も四郎は飲み込むことができない。
ギリギリギリと、歯を噛み締め、美しい顏を歪ませながらも朱禰は口元へ運び続ける。
「あ、ちょっぉうと失礼!」
それを横から攫いと、、、ることはできなかったらルシファーが、唇を近ずけ、四郎と口付けを交わす。
「、、、んぅ、、ぐ」
「おぉぉまえぇぇぇええ!?!??一体何を!?、いや今はそんなこといいわ!もっとその水菓子をよこしなさい!私が飲ませるわ」
「焦りすぎだろ、オモロ。
あ、2個目以降は体が弾けとんじゃうからダメだよん!そんじゃオレ様ここまでだから、あとはシクヨロ〜」
最後まで場を引っ掻き回したルシファーは、朱禰から逃れるように気絶する。
余裕そうに振舞っていたルシファーは、内心とても焦っていた。
朱禰が恐ろしいこともそうだが、何より心の底でルシエラが自己を消し飛ばそうとしていたからだ。
死なないことは分かっていても、精神体のルシファーには想像を絶する痛みなのは間違いがないのだから。
肉体が崩壊しかけている四郎と、初めての自罰という感情に振り回されるルシエラ。
固唾を飲み込み、四郎の口元を眺める朱禰。
初のキスは思ったよりも冷たく、それでいて甘いものでクセになりそうだと笑うルシファー。
午前四時。
清掃と託けて、勝手に部屋に侵入してくるストーカー予備軍がやってくるまであと…
ルシファー「やめろって!な?お前が自分を傷つけても、アイツは喜ばねえって!」
ルシエラ「誰だい君?僕の見た目で喋るなよ。あと四郎のことを知ったふうな口聞くな。僕のだぞ」
ルシファー「うっわ、素のクセにめんどくせぇ!コイツめんどくささに拍車がかかってるゥ!」
ルシエラ「さ、もう満足かい?今から僕は彼に謝罪するために1度消し飛ばなくちゃダメなんだけど」
ルシファー「…あ!オレ様四郎チャンとキスしちゃったもんねぇ〜。オレ様のが四郎チャンに詳しいぜ(タブン)」
ルシエラ「ハ?殺すぞ」