すけこま!   作:糖分至上主義

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誤字報告ありがとうございます
寝る前に書いていることが多いので、今後も誤字が多々あると思いますが、よろしくお願いします(なるべく気をつけます)


まじわる世界、這いよる過去

どうも皆さん初めまして。

俺の脳内現実逃避世界へ。

色々と質問があるだろうから丁寧に答えていこうと思う。

 

まずひとつ、俺の名前は助駒(スケコマ) 四郎(シロウ) 。今年で22歳になるフリーターだ。

ふたつ。何度目かの地球と呼ばれる惑星の、日本という場所に転生してきた。転生自体、何度目になるかはもう覚えてないけどな。ただまあ1番原初の俺は、この世界で生きていたんだと思う。すっごい親近感あるし。

転生前の記憶とかもだいたい残ってる。随所随所はもう思い出せないけれど、そういう関係になった相手とのエピソードくらいは記憶にある。俺はおかしくなんかなってない・・・はずだ。

 

みっつ。どうしてこんなふうに現実逃避をしているか。それは目の前のニュースが衝撃的すぎたから。あとおれの脳内を覗いているやつに向けた発信だ。待て。そう引かないでくれ。みんなも割とゴッコ遊び感覚でやってみたりするだろ?何となく超能力者がいて〜、そいつが勝手に脳内を覗いてて〜、みたいな。

 

・・・とりあえずニュースをみよう。もう何度目か分からないけれど、どのチャンネルでも同じ内容が放送されているくらいにはすげえ革命起きたから。

 

 

『世界各国で相次ぐ不審な目撃談や、超常の力に目覚めた新人類の出現。見たこともないような城をその場にいた全員が見たと証言した集団幻覚事件。それら全てに対する答えをお教え致します。

とはいえ今から話す内容はあまりにも突飛で、頭がおかしくなったと思われても仕方の無いことです。ですので我々から言えるのはただ1つ。今からお話する事は()()()()()()()ということです』

 

 

テレビの画面には「緊急生放送」と赤く誇張された言葉と共に、日本のカキ何とか総理大臣が壇上に上がって答弁をしている。

次に謎の中継が繋がった映像がスクリーンに移され、再生され出す。

 

『私は物理学者の■■■■・■■■■■というものだ。

今回私は世紀の証明を果たした。

聞いて驚きたまえ。この世界と隣接する世界の実在証明だ』

 

やけに興奮したように英語で話す学者さんをおいて、日本語に翻訳された冷静なガイド音声が流れる。正直半分も理解できない。

要するに「次元超えて異なる世界と繋がれる方法見つけたぞ。ついでにチョロっと俺が観測したから、次期に向こうからもアクションがあるよー」と言ったものだ。

これにはもうネットが大荒れ、マスメディアもこぞって取り扱う。連日連夜バラエティーショーでもこれしか扱わないってくらいにお祭り騒ぎだ。

自称霊能力者はこぞってSNSで発信するし、オカルト方面に一気に勢いづいた。宗教関係者は黙示録を不安視し始めるし、アメリカが一歩進んで実験してると公表もしちゃった。

世間はもうひっちゃかめっちゃかの大混乱。まあ俺は変わらず清掃業を続けるんだけどね。

 

 

おれ、小市民だし。

今までの人生では色んな女の子につばつけといたけど、今生はなんかそんな気分でもないし。何より別の世界で色々と触れてきた俺としては全然驚くものじゃないんだよね〜。

 

 

 

 

「だからさっさと帰ってくんないかなぁ!謝るからさあッ!?」

 

ものすごい勢いで後ろから追いかけてくる黒い猿みたいなやつにダメ元で叫んでみる。

怖い怖い怖い怖いいい!

うそ、さっきまでのぜーーんぶ嘘。ああいうグロい見た目のやつ、ずっと怖いんだよぉ・・・話通じないしさあ・・・。

 

 

あの伝説の発表から世界各所で「異常」が発生しだし、こういった異なる世界の住民がやってくるようになった。もちろんそれは日本も例外ではなく、霊現象災害、通称「霊害(れいがい)」と呼称されるものがだんだんと発生しだした。ただ世間には意外と言うか、彼らが強かだったというか、案外受け入れる態度になっていた。

というよりも一種の自然災害とみなすご老人方が多かったのが一役買ったのだといわれている。

なぜならそれらは不思議とその土地固有に伝わる存在の見た目だったりするものがおおく、中には人間と仲良く過ごすものまで現れだしたからだ。農村部ではそれらを「神」とあがめていることもあるのだとか。

ちなみに皇居にも、さる高貴な方がご降臨なされたとかで、オカルト界隈が一時期色めき立っていた。世俗を嫌う人だったらしく一瞬で沈下されたけど。さらに付け加えると多くの歴史研究者とかが泡ふいて倒れる事態がおこった。まあ、急に「昔は異民族を鬼だと呼んでいた!」みたいな説が「いや、鬼はべつにいるんだが」とか言われたら噴飯ものだろう。

 

 

ところ戻ってそんな化け物におわれ続けている俺。

クソ。完全に騙された。神主お手製だとかいうお守りを近所の神社で買ったのだが全く役に立たない。

 

「ああ、もうクソォ、誰かぁあああ!助けてくれええええ!!!!」

 

必死に市街地を逃げる俺。曲がり角を見つける度に曲がってみて少しでも視線を切ろうとするが、全く意味をなしていないのか化け物は延々と追いかけてくる。

こうなったらやけくそだと、大声で叫んでみる。

しかし当たり前のように誰も来ない。市街地だというのに全く人の気配がしないので、この空間自体が明らかにおかしいのだから当然といえば当然かもしれないが。

 

「ぎギョウォ」

「ハハ、まじか」

 

代わりと言わんばかりに、前方の曲がり角からもう1匹ヒレのある黒い化け物が出てきた。

それどころか周囲にどんどんよくない雰囲気が増えだした気がする。

 

「(俺の大声で集まって来たってのか!?おいおいおいおい、最悪手だったってか!) 」

 

かつて見たことのある()()よりよっぽど純粋な化け物共はこちらを取り囲むように四方八方からやってきている。

 

「(ん?俺ってこいつらみたいなの、見た事なんてあったっけ…) 」

 

一瞬の余計な思考のせいでグぎりと左足を捻る。

 

「っつう」

 

ついついバレリーナのように爪先で歩いてしまい、走っていた速度が一気に落ちる。

そんなことをすれば当たり前のように化け物に追いつかれるわけで。

 

「おいおい、久々だわこんな人生の終わり。てかフレンズやってる?」

 

周囲に迫った化け物の鉤爪を避ける手立てのない俺は、一縷の望みにかけて友好的にふるまう。

 

 

ドンッ

 

 

「良かった。間に、合った。怪我は、ない?」

「今度は美少女ってか?はは、もう運がいいんだか、悪いんだか」

 

道路の真ん中に座り込んで目の前を見上げる。

月を吸い込んだかのように輝く髪がさらさらと風にたなびく、人形のように真っ白い肌の少女が化け物のいた場所に立っていた。

 

「怪我、ない?」

「あ、ああ。おかげさまで、なんとも…」

「そう。よかった」

 

少し前かがみに身を乗り出してこちらに尋ねてくる彼女。

無言の間。

こちらを凝視してくる金髪少女と、その意を上手く汲み取れない俺。その時間が耐えられなかったのか金髪少女が耳にかかった髪の毛をいじりだす。

 

「あ、あの!」

「ぅえ!あはい」

「フレンズは、やってません、けど。メールなら、いい、です。」

「へ?」

「だ、だか!ら…メール、交換しま、しょう」

 

顔を真っ赤に染め上げた彼女からの申し出に半ば押し切られるように押し付けられるアドレス。

羞恥心からか、なにか急いでいる事情があるのか、こちらが押し付けられたアドレスに困惑している最中、名前すら聞いていないのに彼女はそそくさと立ち去ってしまった。

 

「あれが新人類…すげーな。あんな化け物も一撃とか」

 

 

脳内を覗ける超能力者だとかを以前説明したかもしれないが、あれは冗談でもなんでもない。

彼女のように何かしらの()に目覚めた人達を世間は『新人類』と持て囃している。

他国のことは知らないが、日本に限れば新人類を育成する機関が既にできているらしい。あるいは以前からあったのかもしれないが。

 

「まあ、俺には縁もゆかりも無い…いやもしかして、コレが縁になる、のか?」

 

金髪少女から渡された走り書きされた、しかし丸みを帯びた小さな英数字の文字列をしげしげと並べる。

…破り捨てた方がいいかもな。こういうその場の勢いで結んだ関係っていいことになった試しがない。過去の経験上。俺は弱い人間だから、別れは苦手なんだ。こういう奇縁みたいなやつほど、後々深く響くから勘弁して欲しい。

誰に向けたものでも無い言い訳とともにズボンの内ポケットにねじ込む。

 

「明日も早い事だし、さっさと帰って寝たいな」なんて考えながら市街地を抜けるために歩き出す。

やたら滅多に走ったからな。現在地が本当にわからん。誰か通行人でもいればいいんだけど、空が茜色だと誰もいやしない。ちょうど夕飯時だしな。

 

「…いや、空がずっと茜色なのはおかしくね?」

 

そもそもこんなふうに世界に干渉するのは相当の格式高い存在がいないとできないはずだ。なのにも関わらず、見かけたのはあの知能もなさそうな黒い猿とその子分だけ。

子分に関してはでかい猿を倒した時に消えたみたいだけど、それにしたってあの猿がこの空間の主だとは思えない。

 

ヒタ ヒタ シャラン シャラン ヒタ ヒタ

 

多くの足音と鈴の音がどこからか聞こえる。

どこからか音が発生しているのかは分からない。しかし確実に近づいてきている。

次第に篠笛の音も鳴り出し、小堤の辺りを切り裂くような低音、琵琶の旋律、いっし乱れぬ足音、着物が空気を切る音とだんだんと音が増えだす。

 

「おいおいおいおい、マジかよ。コンクリートが…」

 

視線の先、道の橋から段々とコンクリートが叢に覆われだし、牛歩の歩みで草木がコンクリートの世界を侵食しだす。

塀が木に、付近の溝には清流が勢いよく流れ出し、()()()()()()()()()クチナシの香りがたちこめる。

 

「はぁ、はぁ、はあ、はあ」

「hうnぐsyuいniけguるむua」

「aしyhえjaいkうん」

「あiruだzいbnっluいns」

 

息が自然と荒くなる。

どこに潜んでいたのか、真っ黒な猿たちが道の中央を開けるようにして低頭平身している。

一体今から何がやってくるというのだろうか。

まるでどこかの高貴な貴人がやってくるみたいではないか。

 

 

シャラン シャラン

 

 

鈴の音が 近づいてくる

 

 

ただ、何故か分からないが俺は今、この場から動けないでいた。見届けなければならないと、ナニカに囁かれた気さえした。

 

シャラン シャラン ドドン ドン

 

「おいおいおいおい、んだよこれ。きっもちわりぃなア」

 

バッと、後ろを振り返ると薄桃色の髪色にタンクトップ、桜のスカジャンを羽織った不良っぽい子がバットを振り回して、顔を下げている猿を殴り殺していた。

 

「ぉ、おい。なにやってんだ」

「あ?オッサン誰だよ。お前みたいな一般人がこんなとこで何してんだ?」

「いいから早く逃げろ!明らかにコレはヤバイだろ!!」

「何言ってんだ、オマエみたいな旧世代といっしょにすんなよ。オレァ選ばれた新人類様だぜ。お前こそ退けや」

 

 

シャラン シャンシャン シャラン ドドン ドドン ホオォー

 

「コイツァいいや。雑魚ばっかでイマイチ退屈してたんだ。こいつ倒して俺も一気にレベルアップだ」

「(こいつ、ゲーム感覚でやってんのか!?)おい、頼むからやめてくれ。な?」

「ッチ。てめぇみたいなのが1番ムカつくぜ。力もねえ癖に年齢だとかいう何もしなくても積み重ねられる、それだけで自分を上だと思っているカスが。さっさと失せろ。じゃねえと殺すぞ」

「…俺は逃げられない。悪いが」

 

シャン シャン ドドン ドン

 

言葉を紡ぐ前に、気が付けば鈴や太鼓の音が目の前まで迫っていた。

すぐにでも地面に頭を擦り付けたくなるような圧力を全身に受ける。不良少年も同じ感覚をおったのか、真っ青な顔をしている。

 

「…」

 

もう一度振り返る。

そこには神輿とそれを担いだ、烏帽子をかぶり、シワひとつない着物を着て面をつけた黒い猿たちの団体がこちらを見ていた。

俺と不良少年は気付かぬうちにその通路を塞ぐように道の中央にたっていたのだった。

 

「ぅ…グ…オオオオオオ!!!俺をバカにしてんのかクソ化け物共がアアアアア!!!!!」

 

不良少年が力強く吠え、バットをもち駆け出す。

 

「ッッば!」

 

俺が止めるまもなく、先頭の猿に殴りかかった少年は。

しかし。

 

「それくらいにしてくれる?其れをころされてしまえば、私もお前達の相手をしなければならないの。私は急いでいる身。今ならその狼藉も見逃してやるから」

 

「だから」

 

「道を開けて?」

 

 

それだけで駆け出した不良少年はバットを取り落とし、ものすごい勢いで頭を下げる。

神輿の前にかかっていた簾のようなものが煽られて、中にいた誰かの口元が見える。

うっすらと笑ったそれは、不良少年の態度に納得したのか特には何もせず、横を通り過ぎた。

 

俺も避けようとするが、ものすごい痛みが頭の中で鳴り響く。

 

「ほら、お前も早くどきなさい」

 

どこか懐かしい黒い塊、クチナシの香り、懐かしいと思える口元の微笑。

 

「な、なあ。あんた今から山の上に行ったりしないか?」

「?そうだけど…おかしなことを言うのねお前は。何故それを知っているのかしら?」

「ああ、いや。うん。なんでもないです。失礼しました」

 

うん。そっか。思い出した。あの口調、あの雰囲気、あの黒いオーラみたいな()

 

・・・・・・朱嬭じゃねえか!!!!!

あーそっか。今から山頂のあの屋敷に向かうのか。

なんでここに居るんだとか、元気にしてるかとか、いっぱい聞きたいことはあるが。

 

ぜっっっっっっっっっったい、新しい奴と一緒にいるじゃん!!!!!!!!

山の上に急いでて?ちょっと機嫌良さそうで??それでなんか神輿で担がれてる????

 

嫁入りかよ!!

 

そそくさと、気絶した不良少年とともに端に避ける。

 

「結構。それじゃあもう出くわさないことを願うわ」

 

シャラン シャララン シャラン ドドン ドン ドドン

 

お囃子を立てながら一行が去っていく。

まじか。俺結構いい感じだったんだよ?朱嬭とひとつ屋根の下で数年暮らしたし、距離感だって恋人もかくやってほどだったのに…

 

なんか今日はつかれた。

今度こそ家に帰ってゆっくり寝たい。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「コマ。ごめんなさい、少し遅れたわ。ここに来る途中に人の子が二人もいたのよ」

 

山の頂上。不自然に流れ落ちる小川をはさみ、橋の手前で神輿と黒い猿たちが膝まづいている。彼らの先には赤い木造の橋がかかっており、立派な屋敷がたっていた。

屋敷の中、障子を開け放して新鮮な風が舞い込む座敷の一室には、綺麗な黒髪と真っ白な白無垢を着た女性が成人くらいの大きさの骨を愛おしそうに抱きしめていた。

 

「ねえコマ?今年もオマエは帰ってこないのね。ええ、ええ。大丈夫、わかっているわ。オマエはいつだって私と共にあるのだから。オマエが私の手の中に帰ってくるその時までの辛抱よ」

 

唄うように言葉をつむぎながら、肋骨に顔を埋める女性。

 

「もう一度、もう一度だけ名前を呼んで。やわらかい声で『俺の朱嬭(あかね)』、と」

 

妖艶な景色が、クチナシの色香に包まれて漂っていた。

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