すけこま!   作:糖分至上主義

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1人目、草臥れ和風娘:(俺の)朱嬭

獣道をわけいって進む小さな姿が、空高く登った太陽に照らされていた。黒髪が熱を吸うのか、暑さから逃れるために後頭部を抑えながら歩き続ける。

少年、助氏コマは道無き道を、しかし迷うことなく目的地へと歩みを進める。

 

「・・・はあ、はあ、、はあ、、、」

 

10に満たないであろう背丈の子供が、腰ほどもある草丈を押しのけ一心不乱に進んでいく様は見ているだけで心配になる。しかし当の本人はまるで気にしたことがないように足元も見えない茂りを歩く。

 

「俺あ、女の子にぃ、ちや、ほや、されるために、生きてんだ。登山が、なんぼのもん、っじゃい!」境界線のようにたっている苔むした道祖神の祠に挨拶をしてなおを進み続ける。

やがて少しづつ草丈が下がり視界が広がる。それに合わせて水の流れる音が聞こえ出す。

 

「あぁぁぁあかぁぁああねぇぇぇえ!」

 

大声で叫ぶも反応がない。

おかしいなと首を傾げ、それからなにか思い当たることがあったのか、ひとつ頷いてコマはもう一度胸に空気を吸い込む。

 

「おれのおお、ああぁぁぁ、かぁああああ、ねぇええええええええ!!!」

「それはやめろと何度言えばわかるのかしら」

「あ、やっぱりいた。なんだよ返事してくれよお」

「だ、か、ら、ここに来るなと何度わたしに言わせれば気が済むの!?そもそも村でもそう言い聞かされているはずでしょうが!!!」

 

コマより一回り大きな女性が急に現れる。

綺麗に腰ほどまで伸ばされた黒髪、真っ赤な瞳、人形のように白い肌、そしていつ見ても変わらない深紅の着物に金色の帯。

 

「オマエ、今日は本当にダメよ。早く帰れ」

「分かった!じゃあ1回屋敷行こう」

「・・・ハア」

 

諦めたように項垂れ、アカネが歩き出す。

それに呼応するかのように横に並び歩き出すコマ。

 

「・・・オマエは本当に不躾ね」

「なんだあ?なんかあったのか。あ!蛇でもいたか!?」

「なぜ私ではなく蛇に警戒する。仮に居ても私によりつくわけもないわ」

 

コマの住む山麓の村では、裏山に当たるここに入山するのを特例の時期を除き禁忌とされている。合わせて山にいる生物と目を合わせることも非常に良くないことだとされている・・・

のだが。

 

「村のやつらは何をあんなに怯えてんだろな。こっちに来れば野いちごだって、ザクロだって、自然薯だってあるんだぜ?あんな空腹で苦しそうにする必要ねえだろーにな」

「そもそもオマエのような野生児は今の時代にはいないのよ。50年前ですらこの山には誰も来ず皆倒れ伏したと言うのに」

「そりゃ俺は母ちゃん父ちゃんいねえからな。まあ仕方ねえってやつだ」

 

コマはこの山に入らざるを得なかった。

というのも常に山に惹かれる子供に「邪気が取り付いた」と怯えた両親は何処かへときえてしまったからだ。

それも時期にして5歳の頃に。

コマはそれから山の麓にあるあばら家とこの山を行き来していた。

 

「それで。何時までいるつもりか知らないけれど、今日はこの太陽が小川につかる前には帰れ。それ以降は本当にオマエなんて知らないわ」

「はあー・・・それじゃああと3時間もいられないだろうが」

「最後の忠告よ。これはオマエのためでしかない。帰れ」

「・・・わかったよ。明日は?」

「明日もその次もまたその次もダメよ。決してここに来ては行けない。そうね・・・雪が溶けたら来てもいいわ」

 

いつの間にかむせ返るような青々しい香りから、落ち着いたクチナシの香りに変わっている。

それに合わせて景色もガラリと変わる。

此方と屋敷を区切るように流れる小川、そこにかかる木造の橋。

橋の奥には軒の深い、縁側が綺麗な和風建築が建っている。

 

「・・・朱嬭(あかね)はさ、こんなでかい屋敷にひとりで寂しくないのかよ」

「もう慣れたわ。それにね。もう少ししたら私も隠れることにしたの。ほかの同族と同じように」

「そっか。・・・じゃあそれまでに楽しいこといーっぱい、教えてやるよ。案外外も悪くねえんだぞ、てな」

 

それからコマと朱嬭は日が橋をこえ、西から色の抜けた月が上がり出すまでぽつりぽつりと話をした。

何気ない日々のことから、何故かコマの中にある異なる時代の記憶、その中にある故郷の話まで。

 

 

『この屋敷って季節関係なく涼しいよな。やっぱ山頂付近だからか?』

『オマエは愚かね。でもそれでいいのよ。オマエはそれで』

『ひっでぇー』

 

 

『俺の知ってる話だと、こういう山には天狗がいるらしいぜ』

『天狗、ね。アレらを最後に見たのも、もう随分と昔かしら。今頃何処へとなり隠れてしまったわ』

『ぅえ!?見たことあんのかよ。顔は赤かったのか。鼻は?山芋大好きだったか!?!?』

『全くうるさいやつね。・・・もう忘れたわよ』

 

 

『いい加減俺の名前読んでくれてもいいんだぜ。コマでもスケでも、呼びやすいやつで』

『オマエ』

『ああ、うん。もうちょっと好感度稼ぐわ』

『ふふ、ええ。そうね。ふふふふ』

 

 

話続けていたのはコマで。

朱嬭はそれに相槌を打つのがほとんどだったが、しかしそこには穏やかな空気が流れていたのだった。

 

「やっぱ朱嬭は外に出た方がいいわ。絶対人生損してる。今度会う時はこっから連れ出してやるからな」

「オマエは本当に馬鹿ね。ええ、ええ。期待せずに待っているわ」

 

 

季節は巡る。

食べ物がなく、いざ困ったとコマは頭を抱え、しかし友との約束は破れないので、夏の終わりの川へと赴く。

 

「冬まではこれでなんとかなるかな」

 

季節は巡る。巡る。

秋口の凍えるような寒さを我慢して川に入り、越冬するための食事を集める。

付近におりてきた鹿を命懸けで仕留め、燻製を初めての手作業で作る。

 

「これで合ってるのか?焚き火の煙でいぶしてるけど・・・というか火打石と打金で火をつけるの、なんやかんやで慣れちまったなあ」

 

巡る。めぐる。メグル。

いつしか野山の枯れ草も朽ち果て、木の葉もまいおちてしまった秋のくれ。山頂では既に雪が降っているのか、白い霞に覆われている。

 

「朱嬭、元気かな。俺がいないくて泣いてたりしたらめちゃくちゃ可愛いんだけど・・・まあそんなことはないか。はぁああああ。仲良くなれたんだか、なれてないんだか。よくわかんねえよなあ。」

 

巡りめぐる季節のさなか。

少年の元に転機が訪れる。

 

「おい、コマ。お前、まだあの山に通ってるのか」

 

やってきたのはこの村の村長子供である1人の青年だった。

 

「え、はい。でも、あの山にいるのは!」

「ああ、なんもええでな。おい、おまえら。やまさ連れてけ」

 

村長の掛け声と共に複数人の大人がコマの家へと入ってくる。

 

「は?お前らなんなんだよ!」

 

「おい、逃がすな!」

「多少手荒に扱ってもいいて」

「だども村長よぉ。だぁれがこいつ、山ば連れてくさ」

「なあに。山ん中には入っても問題はない。マズイのは地蔵様こえてからじゃ」

 

「(こいつら一体なんの話してんだ!?ていうか息できねえっ!)」

 

大人達によってコマの手足が地面に押さえつけられ、ついでとばに頭も地面に擦り付けられる。

子供の体躯で大人に敵う訳もなく、コマは村長息子たちの会話を聞かされ続ける。

 

「コマ、コマ、病憑きのコマ。おめえが産まれてから俺の村はおかしくなる一方だ。テメエの親は役目さはたさずどっが消えちめえやがって。オメエはオメエで何かに取り憑かれてやがる。放っておけば死ぬかと思いきや何年も生き延びやがってからに」

「んだ。んだ」

「だけんども俺らがオメエ殺したなんて難癖つけられちゃそれも困んだわ。」

「だから今からおめえには山さ行ってもらお思うての」

 

「(なに、言ってんだ。。。病憑き??親の役目?それに今から山に行くだあ?)」

 

寒椿さえ地に落ちる寒さの今、山に行って一体何をするというのだろうか、コマは要領の掴めない会話に困惑する。

その表情を見て大人たちはバカにしたように笑うと、いつの間に準備したのか、手足を縄で縛り、簀子でコマを丸めて担ぎあげた。

 

 

 

 

 

「くそ、あいつらマジでイカれてやがる。普通子供を山に放り出して呑気に帰るかよ」

 

山をのぼり出した頃は昼前だったのにあたりはすっかりと日が落ち出した山中にて。

コマは今だ固く縛られた手足の縄を解けずにいた。

 

「クソ、だんだん足の感覚がなくなってきた。せめて地蔵の近くだったら死ぬ気で朱嬭のところに行けるのに」

 

道中地蔵の奥に投げ捨ててやるだの、雪山でクマに襲われるのをじっくりみようだの、果てには目の前で肉を焼いて食ってやろうだのと、さんざんなことをコマに言っていた大人たちは、しかし山を登るにつれ、村の掟を破ったのがバレるのはまずいと思ったのか中途半端な位置までコマを運んだ後、降り積もる深雪に放り投げて帰ってしまった。

 

コマは下山をするにも登山をするにもまずは手足を縛る縄を解こうと、必死に簀子の竹同士にできた隙間をつかって、摩擦熱で縄を焼き切るために上下に身体を震わせていた。

 

「っしゃぁ!案外やればできるもんだな。ほっそい紐ぐるぐる巻きにしただけで安心しやがって」

(とはいえ寒さが本格的にまずい。今から下山はマジで死ぬ。

・・・くっそ!!だったら最後に朱嬭の顔くらい拝んでやるぜ。あんにゃろお俺を半年以上待たせやがって!)

 

コマは半ばやけくそ気味に覚悟を決めると、登山することに決めた。

あの並々ならぬ雰囲気を漂わせる少女なら、あるいはこの状況の自分を見ているかもしれないと思ったからだ。

 

(目指すは地蔵。本来ならあそこに俺を放置するはずだったんだろう。ならあそこから先にこそ、()()()があるはずだ)

 

コマは縛られた腕のことは諦め、自由に動く足を必死に動かすことにした。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

10年に1度、私にやってくる厄落としの時期。

普段守っている麓の村から引き受ける厄を一身に浴び続けた私は、いつしか祟り神として神格を得ていた。はるか昔、空腹で倒れた私に食事をくれたあの子のため、気まぐれで裏山に住み着いただけなのに、気が付けば大いなる祟り神としてまつりあげられ、山に縛りつけられてしまった。

 

 

『お前、一体どんな要件で私に狼藉を働いておる?喰い殺すぞ人間』

『荒御魂、朱嬭毘売よ。これは貴方のためでもあるのです。どうぞ、そこで静かに、何者にも脅かされずお過ごしください』

『勝手な物言いを!

・・・ッチ。貴様あの小娘の子孫か』

『我らが先祖のために、律儀にあの村をお守りいただきありがとうございます。

ですが。我々只人にとって、貴方様の献身は身に余るのです。どうか、どうか、お願い申し上げますから。そこで静かにお眠り下さい』

 

 

麓の者共の対応はある意味正しい。

私はその場にいるだけで厄を集め、村人はそれを崇めるだけでありとあらゆる天災を横流しできるのだから。

それに祟り神としての性質なのか、ありとあらゆる生物から嫌われる身となってしまった。

私の身の回りに残ったのは、絶えず流れる小川と消して枯れないクチナシの花だけ。それ以外は私を恐れ、意味もなく怯えてしまう。

あの怪しい身なりをした妖術師もそれがわかっていたのだろう。必要以上に山を降りられないように地蔵まで丁寧に招いて結界まで用意していたのだから。

 

 

『う、うわああああああ!!!!に、にぃい、にに、に、ちゃ、っっ』

『ご、ごめっ、ごめn、あさぃ。あ、あやまりますから、おと、おとお、だけっわぁ、、』

『何を言っておる。子供は早く山から降りよ。もうじき日が暮れるぞ』

『あああ、あぁああ!ごめ、ごめん、っあいぃぃいい!!!』

 

 

その日は珍しく山の中に小さな生気があったから、興味本位で見に行ってみた。

そこにはあまり深くない位置で、山葡萄を蔓からねじ切っていた2人の稚児がいた。おそらく村の掟を破って黙ってはいって来ただけだったのだろう。夜に口笛を吹いては行けない、という程度の低い迷信を破ったくらいの認識で。

 

しかし私を見た結果、片方は木に身体を預けるようにしてその場で気絶し、おとうと、おとうとと泣いている稚児は発狂しながら藪の中に消えた。

 

以降、十年に一度の厄落としが終わる時期を除き、一人の人間も立ち入ることがなくなった。

 

 

あの不遜な幼子を除いて

 

 

『うわ!ほんとにいた』

『・・・・・・』

『ああ、まってまって。さっきのは驚いただけだから!決してわるくいったつもりはないんだ!』

『・・・お前、、私が怖くないのか?』

『(え、『怖くないのか』?それは人並外れた美しさから、とかって話?こんな山奥で一人ってそういう・・・)怖いです!』

『おい待てなんだ、今の間は。絶対に思い違いをしているだろう』

 

 

よくよく聞きだしてみるとやはり変な思い違いをしていたアレは、ハナから私を怖がることはなかった。

それからいっそ面白いほどに毎日私のもとにやってきては「茶を出せ」だの「なにかしよう」だのと一方的に話しかけてくる始末。

最初こそ煩わしかったたものの、一年、また一年と綺麗に折り重なった反物のように、たしかに質量を持った感情を与えられた。

 

正直言ってしまえば、全力で地蔵を破壊し、いくらか弱ったからだを引き摺って何処へとなり行くことだってできたのだ。

ただこの数年は、そんなことを忘れてしまえるくらい、たしかに幸せだったのだ。

 

 

『今度会う時はこっから連れ出してやるからな』

 

嗚呼、そうだ、あんなことを言われたのなら、待ちたくなってしまうじゃないか。

そして本当に我が身を連れ出してくれるのなら・・・!

 

(美しい谷、山紫水明たる山々、凍てつく夜、動物たちの謝肉祭。かつて私が見た、いっとう美しい景色を、オマエにも見せてやりたいと思ってしまった)

 

だから。

 

 

「なぜだ。なぜ山に踏み入った!!お前にだけはこんな姿ッッ!!見られたく、なかった・・・」

 

 

「なんだ、朱嬭じゃん。久しぶり!」

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

なんか、目の前に、でっかい、泥被った狼がいる。

一瞬で上がったテンションを抑えるため、一旦考察に入ることにしたコマ。

 

(狼ったって、ドロドロした黒いナニカを身にまとった四足歩行の生き物だけどな。でもな〜、雰囲気が朱嬭とそっくりなんだよな〜。それになんか震えだしたし)

 

明らかにドロドロとしたヘドロみたいなものが激しく波打ち出していた。

コマが近づく。近づかれた分だけ朱嬭が後ずさる。

距離にして1mにも満たないこの空間が、朱嬭に取っての最後の防護壁となっていた。

 

「いい?それ以上私に近づいたらオマエは死ぬわ。今すぐ山を降りなさい」

「いや、色々とあって山に入らざるをえなかったんだよ。まあさ、ここで合ったのも何かの縁だし、屋敷、行こうぜ」

 

ゆっくりと音を立てず、怯えさせないように腕を前にさしだしながら近づくコマ。朱嬭は今すぐ逃げたいはずなのに、その地に縛られたかのようにうごけなくなっていた。

空間の防御はもう意味をなしていない。

 

「っ早く帰れと言っているのよ!!それに私は約束を破るやつは嫌いだわ」

「だったら尚更、俺は朱嬭と一緒にいるよ。じゃないとお前をここから連れ出してやれないからな」

 

また1歩、両者の距離が近づく。もうコマの手が厄災の具現化した泥に触れていた。早く下がらなければ厄に犯され、腕が使い物にならないと知っている朱嬭は、それでも触れて欲しいと心の奥底で願ってしまった。

 

 

「朱嬭。俺の、朱嬭。俺はお前なんざ怖くねえよ。だからお前も俺を怖がるな」

 

 

泥の奥にある朱嬭の()にそっと触れる。

瞬間、コマの肘まで這い蹲っていた厄災も、朱嬭を取り囲んでいた汚泥も、全てが弾け飛ぶ。

 

「オマエ、本当にバカね・・・」

「へ、それでいいって言ったのは朱嬭だろ?だったら嬉しいってもんだ」

「っっっっ!!!!!・・・あまり巫山戯たことばかり言っていると祟るわ」

「うわぉ。そのフィジカル(推定全長10m・高さ4m)でまさかの特殊アタッカー」

 

 

 

いつも通りの歩きなれた道。

真白な銀世界でもコマは見間違うことなく、確実に山を登っていく。朱嬭とコマは当たり前のように横に並んで雪を踏みしめる。

しかし、それもしばらくすると、コマが片足立ちになったりするのでズレる。

 

「オマエ、さっきから何をしている。というより何故そのような馬鹿げた格好をしている?」

「いやそれがいろいろあってさ。簡単に言うとめんどーな奴らの嫌がらせだな」

 

ゆっくりと後方を歩いてくるコマを待ちながら、不思議そうに問いかける朱嬭。

詳しい理由がよく分からないコマはとりあえずの説明をするだけにとどめる。

 

「そう・・・」

 

またしばらくの沈黙があり。

片足を太ももにつけて温める、ということを繰り返していたコマだがいよいよ限界が近づいてきた。

 

「(ヤッバイなぁ・・・本格的に足の感覚がもうない。もうすぐそこに屋敷があるんだけど)」

「なんだ、えらく辛そうだが・・・。いやまて、オマエ()()()()その格好なの!?」

「・・・ん?ぇああべつにきにすんなよ。ちょっとばかし、くたびれただけ、さぁ」

 

ああほんと、冬の山ってのは厳しいな。と呟き、雪に倒れ込みそうになるコマ、を朱嬭が急いで咥えあげ屋敷に連れ帰る。

 

「(大バカ者め!そうならそうと・・・ああ!もう!!私も私でなぜ気が付かなかった!!!!死なせはしないぞ。私の)」

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

「あかねえええぇ・・・。」

 

どうも。絶賛思い出して過去を咽び泣いているところだ。

懐かしい記憶に胸の奥が締め付けられる。俺自身まだ子供だったというのもあるが、それ以上に世界が俺たちに厳しかったような気がする。俺はあの世界を20を迎えれずに去った。

 

朱嬭が俺を屋敷まで連れて行ってくれたあと。

それはもう甘美な日々を送ったものだ。

アイツはめちゃくちゃツンケンしていたが、頼みこんでみれば大抵のお願い事は聞いてくれたし、最後まで一緒にいてくれた。

膝枕からの縁側で昼寝とかいう最高のシチュエーションも堪能できた。

逆に俺がしてやったこともあったな。花かんむりを贈りあったり、なれない俳句とかも詠まされた。

それ以外にも結婚はしなかったけど、彼女流だというめ、めい、、名コンビ?とか言うのをした。大きな木の周りをグルっっっと二人別々に回って、出会った地点で抱きしめ合うってやつ。

なんだか互いにとって居心地のいい距離感で過ごせたから、いつでも穏やかだった思い出がある。

 

ああ、それから目覚めて間もない時に、村長たち総出で謝りに来たな。地蔵の手前までだけど。

俺も見に行こうとしたら、朱嬭に屋敷で待ってるよう言われて直接は見れなかったけど。どうやら朱嬭に対して、「お勤めの時期に入山を許した」ことの謝罪に来たらしい。

俺に対する謝罪がないってめちゃくちゃ怒ったくれたらしく、なんだか嬉しくなった。

 

 

ただなぁ・・・病で倒れてからがまたなぁ・・・。

ずっと付きっきりで世話させてしまった。それに加えてよく彼女に「私のせいだ」と言わせてしまった。

本来なら触れ合うのはまずいからとか、「厄がどうのこうの」言ってたが関係ないだろ。ひとえに俺が死んだのは流行り病に勝てなかっただけだしな・・・。

ああ、俺の朱嬭はいまも元気に生きてるのか。

普通に男とかできてるんだな。泣いちゃうぜ。ああ、次にあったら花束を贈ろう。初めて会ったあの日みたいに。。。

 

 

 

とはいえ別れのセリフが「お前は外の世界を知るべきだ。俺も知るべきだった。ただそれに勝る幸せをお前がくれた。またな」とか言ってだきしめたのは、さすがに格好つけすぎたかもしれない。

 

 

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