すけこま!   作:糖分至上主義

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出して欲しいタイプのヒロインとかが存在すれば、ご要望お待ちしております。
理想のヒロインでもいいのでお教え下さい。


最近の子は進んでる

【お兄さん。今日は購買でメロンパンラスクっていう食べ物が売られてたので、買って食べてみました。美味しかったです(*´ч`*) 】

 

【美味しそうすぎる!こんど近くのパン屋に寄ったときにでも探してみるよ】

 

【はい。あとそろそろ学校は夏休みに入りそうです。そうなったら会えますか?おすすめのカフェがあるんです】

 

【おいおい、俺みたいやつと貴重な夏季休業を過ごしてもいいのか?w クラスの友達といってきなさい。あ、でも写真とか見せてくれると嬉しいぞ】

 

化け物(おそらく朱嬭の厄災がこぼれたもの)相手に、苦し紛れの連絡先を尋ねるというイカれた作戦を測った俺は、何の因果かはちゃめちゃに勘違いした金髪少女、朝霧カナメさんとこうしてメールのやり取りをする仲になった。

最初は遠慮がちだった彼女も、ひと月経つとメールの頻度が増え、ふた月経つと遠慮が減り、み月経った今では、ほぼ毎日学校の出来事とかがこうして送られてくるようになった。

俺としてはあんな可愛い子と連絡をとりあえて嬉しいやら、もっと友達とのやり取りを教えて欲しい気持ちやらで複雑な心持ちだ。

 

 

あの後、倒れた不良くんを付近の病院に運んだ俺は、朱嬭に香る別の男の気配に耐えられず酒を浴びるほど飲んで寝た。

 

『我ながら、流石に女々しいよなぁ。そもそも一体いつの話だってんだ。あんな前のこと、彼女が覚えてるかすらも怪しいんだぞ』

 

酒と一緒に胸の痛みを飲み込んで、それからというものを仕事に打ち込んでいた。おかげさまというか、貯金は少し余裕ができたが、それすらも俺にとってはダメージになりえた。

だからまあ、複雑な気持ちとか言ったが、朝霧さんからこうして送られてくるメールが静かな楽しみになっているのも事実だ。

 

さて、と。休憩も終了。

最近は霊害の被害跡に関する被害報告が増えてきたから、気合い入れて早めに終わらせないとな。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

時刻は少し早めのお昼どき。

朝霧カナメは携帯を胸の上に抱いて、ベッドで横になっていた。

 

(お兄さん。四郎お兄さん。四郎さん。四郎くん。

どれもいい響きだな。そろそろ夏休みだし、1回くらい一緒に遊びに行きたい)

 

目を閉じて携帯を握りしめそのまま眠ってしまうのかとおもったが、しかし次の瞬間には携帯を掲げメールの画面を確認する、というのをかれこれ3回。

異空間と呼ばれる場所で出会った、どこか頼りなさそうな年上の異性にカナメは夢中だった。

初めは化け物に追いかけられながらも連絡先を聞いてくる変な人だったけれど、なんとなく放っておけない気がしてメアド交換を申し出た。

直ぐに終わる関係とも思っていたが、いざ始まるとこれが思いのほか楽しく、消してユーモラスな返信が来るわけではないけれど、どこかクスリと笑わせてくれる四郎の返答が妙な癖になっていた。

 

 

朝霧カナメは正直()()()いた。

人形のような容姿もそうだし、世間一般的に見て上流階級であるということも後押ししていた。

何より当人が口下手で言葉がたどたどしいことから、相手に誤解を与えやすい性格をしていたのだ。

ただカナメ自体は至って普通の女の子で、多感な年頃でもあった。

少し特殊な学校に通っているとはいえそこは変わらず、自室の本棚には年上との恋愛モノが多く収められていた。

 

だから。年下として扱いながらも、それは決して雑に扱った結果ではなく、むしろ丁寧に梱包された思いやりを届けてくれる四郎に気をやるのも、ある程度決められた路線だったのかもしれない。

 

「私、友達いないから誘ったのに。この悲しみは、本格的にどこか、連れて行って貰わなきゃ」

 

誰にでもなく呟いたカナメはカバンに服や水、携帯食料を詰め込むとベッドから起き上がる。

窓の外ではうっすらと紫がかった空が此方を覆わんと手を伸ばしてきていた。

こんな時間に高校生が外に繰り出す理由を考えると、自ずと不健全なものとなるが現在の場合は少し異なる。

数ヶ月前からこの時間は人間の時間ではなく、化け物共の時間へと変わってしまった。こんな時間に対策もなしに外に出るなど、自殺行為でしかない。

しかしカナメにとってはそれほど気負うほどのものではない。【霊害】に対処するのが『新人類』と呼ばれる彼女の役割なのだから。

 

 

「仕事が終わったら、ビデオ通話で相手、してもらいます」

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

『私立ミハエル学園高等学校』

数ヶ月前、政府から入学のスカウトに関する手紙が届くという、新人類専用の教育機関が突如設立されることとなった。

謎に包まれた教育体制による新人類の育成、付け加えて学校の所在地は不明。そんな怪しさ満点の機関にも関わらず、今日本では最も人気のある場所として有名であった。

 

突如として変化しだした世界に対応できるような人材を育てるため、という教育理念のもと、現在500名程の学生が通っている。

そんな学校の、『理事長室』と札が掲げられた一室にて、1人の女性が机の上で肘を着いて()()()()()()()()()

 

メノウのようなマーブルカラーを落とし込んだ白と茶色の髪色、輝く星のような目、精巧な彫刻のように形作られた顔のパーツは見るものの視線を全て吸い込んでしまう。

蛇の皮のように黒くてらてらと輝くフロックコートは、上品な雰囲気を漂わせ、深緑のネッククロスに、これまた深緑のシャツと合わさって貴族のような高貴さを漂わせていた。

しかし最も目を引くのは、彼女の頭上に浮かぶ輪のようになった光塵だろう。

 

彼女の名はルシエラ。

この世界に最初期にやってきていた異界の住民である。元々は色々な国と友好的に話をしようと顔を出したものの()()()蛇蝎のごとく嫌われ追い立てられたため、何処にも行けなくなり、船の帆に巻きついて海を渡ることにした。

そうした紆余曲折を経て、唯一話が通じた日本政府と契約を結び、ルシエラは異界の住民に対抗する人材を育て上げるため最高指導者として身を落ち着けたのであった。

 

「うん、うん。今日も恐ろしいくらいの平和だ。全く退屈すぎて暴れたくなる」

 

誰に聞かせるでもなく、只々零れた呟きはものが少ない部屋によく響く。

指先でいじっていた歪に湾曲した空間を、人差し指で弾き元の空間に戻しながら、席を立つ。

 

「ルシエラ様、ご冗談は程々にお願いいたします。我々としてはつい肩肘に力が入ってしまいますので」

「ああ、契約がある間は気にしなくていいよ。それに見つけ終わったらボクは多分自分の世界に帰るし」

「「(伴侶さがし、ね。異世界の奴の価値観なんて全くわからんな)ははは。此方としてはご夫婦で我が日本国に永住いただけることを願っております」

「永住は分からないけど、捕まえた後に考えてあげようじゃないか。ああ、それと今からボク日課のオシゴトに行ってくるから楽にしていたまえよ。この学園からは出たりしないさ」

 

音もなく入室してきた男に気軽に手をふり、理事長室を後にするルシエラ。

カツ、カツ、とヒールの立てる音が部屋を遠ざかったのを確認して、部屋に残された男、鳩羽誠一はネクタイを緩める。

 

「全くお上は何考えてるんだか。あんな明らかにヤバいやつを招き入れやがって。友好的なのは今だけかもしんねえんだぞ」

 

報告書に書くことをメモにまとめつつ、気付かぬうちに溜まった唾を飲み込む。

数ヶ月前、国会議事堂で霊現象対策における会議を行っているさなかに、突如としてあらわれた謎の女。

ルシエラとだけ名乗ると、よく分からない契約の提示を掲げ、それにこの国の総理大臣が一言二言言葉を交わして印鑑を押してしまった。

まるで事前に決まっていたかのような質疑と答弁。そして与野党の過半数以上がその場で賛成の意を示し、彼女の保護が決まってしまった。

 

「(普通ならあんなことありえない。そう()()()()()んだ。明らかに上の方は以前から世界がこうなるってわかってやがった。じゃなきゃこの国の政治家たちがあんな迅速に行動するわけがない。いや、この国以外もだ。あんなあやふやな情報だけで動いたとは到底思えない)」

 

鳩羽は内ポケットに入れてあるロケットペンダントを取り出して開く。

中には真っ白な服を着た髪の毛のない男の子と、それを抱き上げる髪の短い若い女性の写真が入っていた。

 

「ユウ、サユリ。俺は今日も頑張ってるぞ」

 

唇を写真の上に落として大事に大事に握りしめる。

鳩羽誠一、国と家族の未来を憂う益荒男であった。

 

 

 

 

「酷いなあ。ボクはただ伴侶を探し求めているだけなのに。得体の知れない化け物だなんて泣いちゃうぜ」

 

そんな彼の姿を監視しながら、扉も窓もない完全な密閉空間にてルシエラはふわふわとただよっていた。

見える限りの壁には色とりどりの封筒が貼り付けられており、先の見えないほど奥に広がっているその空間で、まだ何も飾られていない部分に文字を書き出す。

 

「ふふ。今日のオシゴトもこれでおしまい。初めはバカバカしいと思っていたが、割と続けれるじゃないか。これを読んだ君は笑うんだろうか?それとも…ああ、早く帰っておいでボクの可愛い駒鳥(マイ・ポーン)

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

「ぅえっっくしゃん」

 

 

北区にある改築ビルの清掃も無事一段落つき、防塵マスクとゴーグル、それから安全帽を外して大きく息をすると、空気中に漂っていた埃を吸い込んだのかくしゃみをしてしまう。

 

「【助駒 四郎・18:44終了】と。異常なし、けが人なし、あとはあ。。あ、そうそう。【落し物発見】、と」

 

ビル近くにあるプレハブのなかに入り、簡単な勤務報告書に丸をつけていく。

途中、備考の記入欄を見て、仕事中に見つけた四角い黒い箱のことを思い出す。大きさ的に指輪か、あるいは小物か何かが入る程度のサイズのそれ。

「中に何が入ってるか知らんが勝手に見るのはダメだろ」ということで持ってきたが…まあわかりやすいように机の上に置いておくか。

そう考え、メモ書きできそうな紙を探し出すと、ガチャリ、とドアノブの回る音が聞こえてきた。

 

「おーう、こますけ。確認、いっじょうなあーし!メシ行こうぜメシ」

「グラさん。円滑なコミュニケーションだかなんだか知らないですけど、それ今だと多分一発アウトですよ」

「いや俺は別にいいんすけどね。あとこますけじゃなくって助駒ですって」

 

江口翔太郎(えぐち しょうたろう)下倉佐中(しもくら さなか)さん。職場の同僚と社長だ。とは言っても俺たちの清掃会社はグラサン(下倉さん)とほか5人程度の小さな会社で上司と部下ってよりかは同輩と先輩みたいな距離感なのだが。

 

「グラさん、締まってる、締まってる」

「ハッハッハ。アウトになれば会社は潰れ、お前たちは路頭に迷う!スマン謝るから労基だけは勘弁してくれ!!」

「ハァ…謝るなら俺じゃなくて四郎の方っすよ。それよかメシ行くんなら中華がいいっす。な、四郎」

「中華だぁ?バカ言うなお前。仕事終わりはラーメンだろ。なあ!こますけ」

「いやあ、俺はぁ、、カレー!カレー行きましょ!!」

 

悪いな翔太郎。今は中華の気分じゃないんだ。

グラさんはいっつもラーメンしか言わない、うえに行くのは決まって1箇所だけ。下関(しものせき)(正式名称:下関軒めちゃくちゃ美味い家系ラーメン)は美味いんだけど、毎回はさすがに飽きる。

それに今日は朝霧さんに教えてもらったカレー屋が気になっているんだ。

 

それからやいのやいのと騒ぎながら。

すっかり日が落ち切るまで、カレー屋から水餃子を食べに移動し、シメのラーメンまで付き合わされることになった。

 

「うぐ、じゃあまた3日後な翔太郎。お疲れ様ですグラさん」

「俺は明日も出勤だ馬鹿野郎共。次あったら覚悟しろこますけ、ぐっちー」

「おつかれ様した。じゃあまた」

 

ふー、食った食った。明日が休みじゃなかったらと思うとゾッとするな。

グラさんに関しては、合唱!

すっかり月が頭上に輝く時間帯になったな。一応確認のために携帯を開くと、そこには何通かメールの通知が入っていた

 

【今日の巡回も、終わりました】

【今度美味しいパン屋さんに一緒に行きましょう!】

 

【お兄さん、お電話、いいですか?】

 

すっかり終電を逃して、ただ歩いて帰るのも寂しいかと思い、「今からでよかったら話し相手になってくれ」と返信をする。

 

学生だし寝てるかもな。と思いながら歩くこと数分。

白い仮囲いで囲まれている工事現場の前を通りかかる。

 

「あ、箱持ってきちまった。指輪だったらまずいよなぁ」

 

あのビルはここから1時間くらい歩くなぁ…。

よし、ひとっ走り返しに行くか!

 

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