姉さまが処刑された時、合計七人の戦犯が処刑されました。第一次指定戦犯と呼ばれた、エルフィンドにおける最大の戦犯。もちろん筆頭として名前が挙げられるのがドウラグエル・ダリンウェン、姉さまです。ベレリアントではその名を口に出すのも憚られているようですね。ええ、ええ、分かりますよ。誰も姉さまに責任を押し付け生き永らえた事など、思い出したくもないでしょうから。
姉さまの埋葬を故郷の氏族達は拒否しました。分からないでもありません、何せ姉さまは大戦犯、その一族とみなされるだけで氏族ごと迫害される恐れもありましたから。それに姉さまに恨みを持つものは多い――それこそ数えきれない程おりますから、遺骸に危害を加えようとする輩がいるかもしれません。そんな連中の相手までしていられない、というのが氏族の総意でしょう。ええ、ですから故郷に遺骸を戻すのも、護符を還すのも諦めました。
今、私は姉さまの護符を守りながらこの
私の裁判では弁護士の方に迷惑をかけてしまいました。彼女は必死に「あくまで私生活の面倒を見る執事であり、他種族の虐殺に手を貸したわけではない」と証明しようとして下さったのですが――ええ、私自身が私設秘書の役割をしていた事、その仕事の中に他種族虐殺の内容があった事を知っていた事、それを罪とも思っていない事。全て証言してしまいました。ええ、私自身はそれが教義に則った事であり、罪であると思っていませんでしたので。うんざりした顔で机に突っ伏した弁護士の方を見て、少しばかりかわいそうには思いましたが。
判決は無期懲役。死刑になるかと思いましたが、少し意外でした。姉さまと同じ場所で死ねるならそれも良いと思ったのですが、生きろと言うならば。私は姉さまの言いつけを守るだけです。
「ルシ、後の事はお願いね」
ええ、ええ、分かっております姉さま。
いつか訪れる「偉大なる
そう、これがあなた様からの第三の質問、「何故恩赦を全て断って
ええ、私は教えの勝利を疑っておりません。だってそうでしょう、偉大なる
あの方々が間違う筈などないのです。そして、あの方々が「白エルフこそ世界で最も優れた種族である」とおっしゃったのですから、我々は何も間違ってなどいない。エルフィンドという国が滅び、白エルフ族の大多数が家畜に堕ちようとも、それでも私達はいつか勝利します。
この
ええ、知っております。オルクセンがこの
全て断りました。だってそうでしょう、この監獄が、私と姉さまの終の棲家。全てがオルクセンへと塗り替えられたベレリアの中で、最後に残ったエルフィンドなのです。ここが、ここだけが、私たちに残った最後の聖地、約束の場所なのですから。だから私、言ったのですよ。
「でしたら裁判をやり直せばよろしいでしょう。私の無罪を認めるか、それとも処刑してしまうか。ああ、それとも失輝死するまで拷問で苛みますか?」
我ながら無茶を言いました、所長様には後日謝罪の文を送らせていただきます。
ですが、私は何を言われようともこの
もう
朝、私は点呼を行い看守に報告。その後食事をします。食器は自分達で用意し自分達で洗い、その後はほとんど自由時間です。死刑囚はもうおりませんので教誨師も居ません。所長と何人かの看守と、料理人が2人。それでこの広大な監獄を使っておりますので、収容された者からは冗談交じりに「ホテル暮らし」などと言われております。あまりにも時間がゆっくり進むので、看守様と収容者が雑談するのもよく見る光景となりました。
そういえば、昨日看守様達の話題に上ったのは『万国平和会議』の事でした。永世中立国、でしたか。オルクセンの国際社会における躍進は目覚ましいようですね、ですがどうぞお気を付けて。キャメロット人は舌が二枚あると申しますからね、突然宣戦布告されて国境に雪崩れ込まれるなどという事が無きように――ええ、どこかの国のように。
さて、これであなた様からの質問4つの内、3つにはお答えしましたね。では、あなた様からの提案についてお答え致しましょう。
答えは否です。私はこの
罪を償ったのだからもう静かな所で暮らすのはどうか、というのも間違っております。私は自身が罪人であると思っておりませんし、もう十分静かな暮らしを堪能しております。この地での静謐を奪われる事こそが、耐えがたい苦痛なのです。
あなた様からの配慮を無下にして申し訳ございません。ですが、これが私なのです。世間から教義原理主義者最後の生き残りと言われ、大戦犯ドウラグエル・ダリンウェンの妹と呼ばれるルシエン・ディーアハイルはこのような白エルフなのです。
ですから、どうぞお構いなきように。もし
さて、では次の手紙であなた様の最後の質問――そして、もっとも知りたいであろう事を書かせて頂きます。私の長き語りにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
大いなる白銀樹の加護があらん事を
敬具