星歴九〇〇年の往復書簡【完結】   作:ぼっちクリフ

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星暦六七九年十一月二十三日の別れ②

指導者(ヴィラール)様達は様々なお話をして下さいました。世界の事、種族の事、ベレリアの事。ええ、私達が普段疑問に思う事に、あます事なく答えて下さったのです。その「教え」は、ひとえに私達を世界の主、もっとも優秀な種族として見込んでのものでした。

 

「そ、こっちがえっと、キャメロット。ここがグロワールでその先がイザベリア」

 

指導者(ヴィラール)様の持っている板で見た地図は、今のエルフィンド……いいえ、キャメロットやあなた方オルクセンが持っている地図よりも詳細で、正確な物でした。金髪の指導者(ヴィラール)様が板に指を滑らせれば、キャメロットの首都ログレスの大通りがくっきりと見える程地図は拡大され、その様子がエルフィンドに居ながら詳細に分かったのです。ええ、まさに奇跡としか思えない御力ですわ。

 

「凄いです指導者(ヴィラール)さま!」

 

「ドゥラちゃん、他に見たい所はある?」

 

「エルフィンドが見たいです。白エルフの聖地ベレリアは、さぞ美しいのでしょう!」

 

「うんうん、えっと――」

 

 

拡大された地図を見て、姉さまが一点を指差しました。当時はまだドワーフ領であったモーリアです。

 

 

「ここは何ですか?」

 

「あぁ、そういやドワーフの国が残ってたっけ」

 

「まだ居たんだ、ドワーフ」

 

「そりゃエルフのライバルと言えばドワーフでしょ、まぁ最終的には仲良くなる作品も多いけど……」

 

「見事にベレリア半島に食い込んでるなぁ、想定じゃ主体験エリアは全部エルフの国じゃなかったっけ?」

 

「後からドワーフ追加したんじゃない? 知らんけど」

 

 

姉さまは必死に指導者(ヴィラール)様の言葉を解釈し、そして言われました。

 

 

「じゃあ、ここは本当は私たち白エルフのものなんですよね?」

 

 

指導者(ヴィラール)様達は頷き、姉さまを抱き上げながら撫でまわして言いました。

 

 

「うん、ベレリア半島はエルフの国、これは間違いないよ」

 

「確認したけど、ここ――ドワーフの国も主体験エリア紹介の中に入ってる。って事はエルフの国の一部って事」

 

「最初はエルフ領だったけど後からドワーフ領になったって事?」

 

「いや、多分木が少ない鉱山地帯だったから初期開拓しなかったんじゃない? で、後からドワーフが住み着いた」

 

「空き家にしてたら誰か住んでたみたいなもんかー」

 

 

「じゃあ、大きくなったら私がここを取り返しますね!」

 

 

無邪気に言う姉さまの言葉に、指導者(ヴィラール)様達は面白がって手を叩き、姉さまを褒めて下さいました。きっと出来るよ、と優しく微笑んで下さったのです――あぁ、是非ベレリア半島がエルフの聖地として完成した姿を、見て頂きたかったです。今となっては、叶わぬ夢ではありますが。

 

 

「あ、あの……」

 

今度は私が質問しました。指導者(ヴィラール)様達はとても優しかったので、人見知りの私でもお話する事が出来ましたから、ずっと疑問に思っていた事を聞いてみたのです。

 

 

「私たちは、世界の主として作られたのですよね。では、(デック)もそうなのですか?」

 

 

指導者(ヴィラール)様達は少し面食らったようになっていました。

私の家には当時、(デック)の農奴が居たのです。当時の私は彼女がまるで家畜のように扱われ、働かされている事が疑問でした。(デック)と私達には、どんな違いがあるのか――幼い私は、その疑問を指導者(ヴィラール)様達にぶつけてみたのです。

 

長身の指導者(ヴィラール)様が答えて下さいました。

 

「『(デック)』、ってダークエルフの事かい?」

 

「はい、黒い肌の者たちです」

 

「あー、多分違うと思うよ」

 

 

長身の指導者(ヴィラール)様は例の光る板を操作しながらおっしゃいました。デックアールヴ達が生まれた理由は、私達と違うと。

 

 

「ダークエルフって確か堕落したエルフじゃなかったっけ?」

 

「そこらへん結構世界によって揺れがあるよね。暗黒神の眷属って作品もあれば、ただ肌が褐色の場合もあるし」

 

「エルフが堕落してダークエルフになる作品も多いよねー」

 

「ヴィラールでのダークエルフの扱いはどうだっけな、一応肌が黒いだけだっけ?」

 

「そこらへん不明なままサ終だよ」

 

「やっぱ運営はクソ、はっきり分かんだね」

 

 

「あ、あの……」

 

難解な言葉の波に、少し泣きそうになっていた私を見て指導者(ヴィラール)様達は慌てて私を抱き上げて下さいました。

 

 

「あ、ごめんごめんルシちゃん。うん、要はダークエルフはよく分からない種族なの」

 

「分からない……指導者(ヴィラール)様たちでも、ですか?」

 

「うん、そうなの、ごめんね」

 

「でも、あなた達とは別の種族、それは間違いないよ」

 

「まぁ、うん、そうだね。同じ種族って事はない」

 

「如何にも裏切ります、って感じに配置されてるし……」

 

「あ、それ俺も思った。あの位置はオークが攻めて来た時に裏切るパターン、あるよね」

 

「ダークエルフが闇の勢力に加担するの、まぁ『呪われた島』からのお約束だしなぁ」

 

 

――ふふ、分かりますか、指導者(ヴィラール)様達の先見の明。ええ、ええ、あの御方達の予言通り、(デック)は私達白エルフを裏切りオルクセンに付いた。指導者(ヴィラール)様達の言葉は、いつだって正しいのです。

 

 

陛下、本当に大丈夫ですか? お顔が真っ青ですし、そんな血が滲むほど拳を握られて……一体どうなさったのでしょう?

続き、ですか……はい、かしこまりました。では続きをお話しますが。本当に、ご無理をなさらないで下さいね。

 

 

姉さまと私と指導者(ヴィラール)様達は、一日中色々な話をしました。キャメロット人は舌が二枚も三枚もあるから信用してはいけないとか、巨狼族は指導者(ヴィラール)様達の言う『ウンエイ』の手先なのではないかという話とか、その『ウンエイ』がどれ程無能だったかとか……

ええ、流石の私もこの話を正確には覚えておりません。指導者(ヴィラール)様達は早口ですし、よく分からない単語をいくつもお使いになりますから。けれど事あるごとに私達を褒めて下さいました。私たちの優秀さ、可憐さを愛し、世界も指導者(ヴィラール)様達も愛してくれている事を何度も伝えて下さいました。

 

 

ですが、この幸せが長く続く事は無かったのです。

 

 

指導者(ヴィラール)さま、そろそろ私たちは帰ります。門限に遅れちゃいますから!」

 

「そっか……うん、バイバイ、ドゥラちゃん」

 

「はい、指導者(ヴィラール)さま、また明日!」

 

 

無邪気に言う姉さまに対し、指導者(ヴィラール)様達は困ったような顔をして、そっと私たちの顔を覗き込んでおっしゃったのです。

 

 

「ごめんねドゥラちゃん、私達、もう来れないんだ」

 

「え……?」

 

 

指導者(ヴィラール)様は私と姉さまを抱き上げておっしゃいました。

 

 

「今日で最後なの。もう、私達は会いに来れないの」

 

「どうして……」

 

「帰らなくちゃいけないの、どうしても。ここには次にいつ来れるか、分からないんだ……」

 

 

寂しそうにおっしゃる指導者(ヴィラール)様に、姉さまが縋り付きます。嫌だ、行っちゃ嫌だと泣き出す姉さまを、指導者(ヴィラール)様は優しく抱きしめて下さいました。

 

 

「大丈夫だよドゥラちゃん。きっと、きっとまた会えるから」

 

指導者(ヴィラール)さま……」

 

「いつか、私たちが帰って来るまで。良い子で待っていてくれる?」

 

 

姉さまは涙を拭いて――ええ、拭いてもまだ涙ぐんでいらっしゃいましたが。それでも気丈におっしゃいました。

 

 

「はい、私、指導者(ヴィラール)さまたちをお待ちしてます! ルシも一緒に、きっとこの国を素敵な所にして! きっと、きっと、またお会いできるから、って!」

 

「うん、うん!」

 

指導者(ヴィラール)様達も涙ぐみながら、最後に私達二人を精一杯抱きしめて下さいました。

 

 

「また会おうね、ドゥラちゃん、ルシちゃん」

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