悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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ディエンドの戦い方

ディエンドが変身を終えた瞬間、戦場の温度はさらに一段だけ下がった。

世界を滅ぼそうとする闇の書の意思と、ただ価値あるものを奪おうとする怪盗の欲望では、同じ敵でも質が違う。

なのはもフェイトもその違いを言葉に出来ないまま、目の前の青い仮面が“場を掻き回す者”だと直感していた。

 

ディエンドはネオディエンドライバーを軽く持ち上げ、まるで舞台へ上がる役者のような余裕で笑う。

「さてっと、まずはその力の一端を見せて貰おうか、君がどこまで“お宝”として完成しているのかね」

その声と同時に引き金が弾かれ、放たれた青い弾丸は一直線に闇の書の意思へ向かった。

 

だが、リィンフォースは腕をわずかに動かしただけで、その弾丸をあまりにも簡単に弾き飛ばす。

弾かれた光は空中で砕け、砕けた先から魔力の火花が散り、戦場の空気をさらに不穏な色に染めた。

そして彼女は、まるで感情そのものを削ぎ落とした声で、短く、しかし冷血に呟く。

「死ね」

その一語が落ちた直後、無数の魔法陣が空間へ同時展開し、砲撃、刃、槍、拘束、あらゆる攻撃が一斉にディエンドを飲み込もうとした。

 

ディエンドはそれらを真正面から受ける気など一切なく、身軽な動きで縫うように躱しながら、次のカードをもうネオディエンドライバーへ差し込んでいた。

青い装甲が翻るたびに魔法の光が掠め、まるで嵐の中を踊るような不愉快さで、海東は戦場のど真ん中を横切っていく。

その動きの最中、ドライバーから機械音声が連続して響いた。

『KAMEN RIDE valvarad KAMEN RIDE cross-z』

「さて、それじゃ、まずはこれだね、挨拶代わりには十分だろう」

 

再び引き金が引かれると、ディエンドの前に二つの影が実体を持って立ち上がった。

一人は硬質な装甲を持つヴァルバラドであり、もう一人は鋭く燃えるような気配を纏うクローズだった。

なのはが目を見開き、フェイトが一瞬だけ呼吸を忘れる。

「今のは、一体どういう召喚なの、あんな魔法は見たことがないよ」

「召喚魔法じゃない、けれど何か別の理屈で呼び出している、そんな感じがする……!」

 

だが、闇の書の意思だけは驚きより先に“厄介さ”を見ていた。

「仮面ライダーを召喚する能力、確かに厄介ではある。けれど、無駄な事を」

その言葉に被せるように、ヴァルバラド側ではさらに別の機構が起動し、重い電子音が戦場へ鳴り響く。

『GEKIOCOPTER! イグナイト!ANGELEAD! イグナイト!ガッチャーンコ!バースト!カスタムアップ!エンジェコプター!』

 

次の瞬間、ヴァルバラドの胸部装甲は天使の羽を模した形状へ変化し、右手には羽を象った弓、左手には天使の輪に似たパラフローター付きのガトリング砲が形成された。

その姿は神聖さを模しているのに、海東の手を経由したせいで“天使の皮を被った兵器”にしか見えない。

同時にクローズ側でも変身音が重なり、龍の咆哮みたいな圧を伴って新たな姿が完成していく。

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!』『潰れなーい!』

 

クローズはそのままクローズチャージへと変身し、さらに別のタカフルボトルを使って背中へ翼を生やすと、一気に加速して闇の書の意思へ肉薄する。

ヴァルバラドは両手の武装を最大限に活かし、上空と斜線から遠距離制圧を始め、ガトリングの雨と光矢が交差しながらリィンフォースの退路を狭めていく。

そこへクローズチャージの格闘戦が重なり、ディエンド本人の銃撃まで加わることで、三位一体の攻撃が闇の書を襲った。

砲撃、近接、牽制が秒単位で噛み合い、単独の強敵を削るための“盗賊らしい連携”が、嫌になるほど完成している。

 

「さて、それじゃ、闇の書は――って、やっぱり横から来るよね」

ディエンドが呟いた直後、その側面へ紫電が奔り、フェイトの斬撃が鋭く差し込まれた。

海東は寸前で身を捻って躱すが、フェイトの狙いは確実で、そこに個人的な怒りが混ざっているのが誰の目にも明らかだった。

「おいおい、邪魔をするなんて、僕よりもあっちの方がヤバいんじゃないのかい、優先順位を間違えてないかな」

フェイトはバルディッシュを構えたまま、一歩も引かずに言い返す。

「……あなたが母さんに対して言った事と同じく、このまま何もしないとは考えない、放置していい相手じゃない」

 

その返答を聞いても、ディエンドは傷つくどころか面白がるように肩をすくめる。

「言いがかりだなぁ、それじゃ、君達を散々助けてくれた仮面ライダーには何も思わないのかい」

「仮面ライダー……?」

なのはが反射的に疑問の声を漏らすと、海東はまるで授業でもするみたいに楽しげに続けた。

「そう、僕も、そしてあそこで僕が出した彼らも仮面ライダー。そして、君達を散々助けた彼、ディケイドもね」

 

その言葉は、戦場の空気を一瞬だけ別の色へ変えた。

フェイトの表情が揺れ、なのはの視線が僅かに泳ぐ。

ツカサの存在が、ただの教師ではないかもしれないという線が、ここで初めて現実の重さを持って二人の前へ落ちたからだ。

だが海東は、その揺らぎを味わうようにフェイトを軽く振り払い、距離を取りながらネオディエンドライバーを構え直した。

「最も、僕の邪魔をするならば、容赦はしないけどね、感情に付き合うほど今日は暇じゃない」

 

銃口がフェイトへ向けられた、その瞬間だった。

ディエンドの死角へ三つの影が、まるで最初からそこに潜んでいたみたいに同時に飛び込んだ。

斬撃、爪撃、そして鈍い衝撃が三方向から交差し、ディエンドは舌打ち混じりに大きく後退する。

「おいおい、殺気が溢れているねぇ、仮面ライダー。それも三人一緒だなんて趣味が悪い」

 

そこに立っていたのは、既に変身を終えている三人の仮面ライダーだった。

獣じみた獰猛さを隠さない一人、静かな刃の気配を纏う一人、そして眠たげなのに不気味な機械音を従えた一人。

その正体がデルタ、ゼータ、イータだとは、なのは達にはまだ分からない。

ただ分かるのは、その三人がフェイトとはやてを守る位置へ自然に立ち、ディエンドの進行方向だけを綺麗に潰しているという事実だった。

 

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