悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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別の所に間違って、投稿していたので、こちらで再度、投稿します。ご迷惑をおかげして、申し訳ございません。


3人と三つ巴

海東大樹は、目の前に増えた仮面の数を見て、楽しげに肩を竦めてみせた。

「さてっと、これは厄介な事になったね。せっかく綺麗に盗めそうだったのに、余計な護衛が増えるのは困るよ。」

その軽口を最後まで聞くつもりなどないとでも言うように、最初に動いたのはゼータだった。

「……だったら、さっさと終わらせる。それだけの話でしょう。」

冷えた声と同時にゼータは地を蹴り、無音に近い踏み込みでディエンドの死角へ滑り込む。

彼女の狙いは闇の書ではなく、最初から海東だけに絞られていた。

厄介な盗人を戦場から外せば盤面が多少なりとも静かになると、そう判断した動きだ。

 

「おっと、いきなり急所を狙うなんて、随分と短気な子だね。」

ディエンドはネオディエンドライバーを軸に身体を捻り、ゼータの一撃を紙一重で躱して横へ抜ける。

だがゼータは最初から一撃で仕留めるつもりではなく、海東の“逃げる方向”だけを絞るように次の間合いを潰していた。

正面から奪えないなら、逃げ場ごと奪う。

そのやり方はスパイらしく、そして海東のような相手にはひどく嫌らしい。

 

その最中だった。

闇の書の意思は、ディエンドとゼータの応酬に気を取られることなく、なのはとフェイトへ向けて再び無数の魔法を解き放った。

白く濁った砲撃と拘束の槍が空を裂き、二人の退路を同時に削るように迫る。

なのはとフェイトが構えを取り直すより早く、別の二つの影がその軌道へ割り込んだ。

 

なのはの前へ出たのはイータだった。

眠たげな所作のまま片手を上げると、薄く広がった障壁が砲撃を受け止め、その衝撃を横へ流すように空中で散らしていく。

イータの防御は派手ではないが、計算された角度で力を逃がすせいで、重いはずの魔法が妙に軽く見えてしまう。

フェイトの前へ飛び込んだデルタは、もっと単純で、もっと暴力的だった。

迫る攻撃を腕ごと振り払い、残った槍状の魔力まで噛み砕くみたいな勢いで叩き落としてしまう。

 

「えっ……」

なのはは反応の意味を掴み切れず、ただ自分を庇った仮面ライダーを見上げるしかなかった。

イータは振り返りもせず、あくまで正体を濁すように、ゆったりとした声で言う。

「子供を守るのは、まぁ私達の役目だからね。今は下がって、観察しててくれると助かるかも。」

その言い方は優しいのに、内容は戦場に慣れた大人のそれで、なのはは逆に何も言えなくなる。

 

一方のデルタは、そんな配慮とは正反対だった。

フェイトを庇った後も一歩前に出て、まるで縄張りへ踏み込むなと威嚇する獣みたいに肩を揺らす。

「弱い奴はさっさと下がるです! ここはボスの大事な場所だから、邪魔は困るのです!」

その物言いはあまりに乱暴で、助けられた側ですら反射的に眉を寄せるほどだった。

だがフェイトは引かない。

助けられた事実は受け取りながらも、だからといって何も出来ない位置へ戻るつもりは最初からなかった。

 

「それは、出来ません。あなた達が誰であっても、ここで退くわけにはいかないから。」

フェイトはバルディッシュを構え直し、デルタの威圧へ正面から視線を返した。

目の前の相手が病室で見たあの女性だと気づいていても、その正体が味方だと断定できるほど彼女は甘くない。

母プレシアの件で海東大樹という名を思い出したばかりの今、得体の知れない存在に対して簡単に気を許せるはずもなかった。

 

デルタはその返答に不満げに鼻を鳴らし、しかし即座に噛みつくことはしなかった。

むしろ、退かないフェイトに対して、僅かにだけ目の色を変えた。

弱いから下がれと言ったが、本当に弱い者なら、ここでこんな目はしない。

そんな本能的な評価が、一瞬だけデルタの中を過ったのかもしれない。

 

その間にも、ゼータとディエンドの応酬は激しさを増していた。

海東は楽しげに後退しながらカードを切る隙を探し、ゼータはそれを許さない距離で追い詰め続ける。

完全に仕留め切るにはまだ足りないが、“盗ませない”という一点だけなら十分に機能していた。

イータは結界の補強と解析を同時に進め、なのはの目の前で眠そうに立っているだけに見えて、戦場全体の負荷分散を行っている。

デルタはフェイトの正面に立ちながらも、次に飛んでくる闇の書の砲撃を見逃さず、獣の勘で全部を先読みしていた。

 

三人の仮面ライダーが割って入ったことで、戦場はさらに複雑になった。

なのはとフェイトには、彼女達が敵なのか味方なのかまだ分からない。

だが少なくとも、今この瞬間だけは、自分達を守るために動いているという事実だけがあった。

そして、その事実こそが、逆に一番不気味だった。

味方とも断定できず、敵とも言い切れない三つの影が、まるで最初からここへ来ることを決めていたみたいに、必要な場所へ必要な形で立っているのだから。

 

なのはは砲撃の合間に息を整えながら、目の前のイータへ問いかけようとしたが、その前に遠くで海東の笑い声が響いた。

闇の書、ディエンド、召喚ライダー、そして正体不明の三人。

混戦はもはや収拾など考える段階を越え、誰が誰を止め、誰が誰を守るのか、その線引きすら一秒ごとに塗り替わっていく。

だからこそ、なのはもフェイトも、今は戦うしかなかった。

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