悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

119 / 170
慣れない巨体と共に

ナハトヴァールがこちらを認識した。

夜空に浮かぶ巨大な悪夢が、初めて“自分と同じ大きさで殴り返してくる敵”を見つけたみたいに、触手めいた外殻を広げる。

俺はまず、素手で行くことにした。

ライドブッカーを抜く前に、相手の重さと反応を身体で測る方が早い。

巨体を動かして踏み込むと、空気が壁みたいに圧縮され、こちらの拳だけで海鳴の夜景が小さく揺れる。

ナハトヴァールの突き出した前肢を、俺は正面から拳で叩いた。

 

衝撃は通る。

だが、止まらない。

殴った手応えは生き物より硬く、機械よりしつこく、壊れる前提で組み替わる構造物そのものだった。

押し返しても、その奥で別の部位がすぐ持ち上がる。

「なるほどな。でかいだけじゃない。殴られる前提で出来てるってわけか。」

クロノの声が下から飛ぶ。

「再生している。いや、違うな。受けた損傷を別の構造へ回しているのか!」

ユーノも解析に追いついたらしい。

「自己修復というより、再配置だよ! ただ潰しても意味が薄い!」

 

なら次だ。

俺は巨大ライドブッカーを展開し、大剣として構え直す。

ナハトヴァールが吐き出した広域の砲撃を、斬るというより盾みたいに使って受け、そのまま横へ弾く。

火花では済まない。

巨大な光の奔流が空で砕け、海面と街の境界へ流れそうになった瞬間、なのはの砲撃とフェイトの雷撃がその余波を横から押し返した。

 

「ディケイドさん、右から来るよ! そっちの角度、深い!」

「左側の再生が早い。そこは時間を稼ぐだけでいい!」

二人の声に従うのは癪だが、情報としては正しい。

俺は右から迫る外殻をライドブッカーで受け、押し返し、返す勢いで胴を薙いだ。

斬れた。

確かに斬れた。

だが、斬れたそばから黒い肉とも装甲ともつかない何かが這い寄り、裂け目を埋めていく。

 

「うーん……切断は有効だけど、決定打にはなってないね。核か制御経路を探さないと駄目かも。」

アンニアが眠そうに言う。

ベリスがそれに続けて、冷静に戦況を切る。

「ディケイド、押し返せてはいる。けど、この段階じゃ倒し切れない。次の手を考える時間を作る方が先だよ。」

ケルビムは相変わらず本能でしか喋らない。

「硬いけど、痛そうではあるのです! だったらもっと殴れば、そのうち止まるです!」

「お前は元気でいいな。」

 

俺はもう一度ライドブッカーを振り、ナハトヴァールの巨体を大きく弾き返した。

空の向こうへ押し戻せはする。

だが押し戻すだけで、終わらない。

斬れても、砕いても、再構築が先に来る。

つまり、今の段階では足りない。

 

「……だいたいわかった。でかいだけなら潰せるが、中身が止まらないなら意味がない。」

俺がそう呟いた瞬間、全員の意識が次の段階へ切り替わったのが分かった。

この第一ラウンドで必要だったのは、勝つことじゃない。

どうすれば勝てるかを知ることだ。

そこまでは掴めた。

なら次は、核を暴いて止めるだけだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。