悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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学びの先へ

 夜の街に張りつめた空気が、さらに一段、重く沈んだ。

 ダークバスターは止まらない。さっきの衝突で距離が開いたにもかかわらず、迷いなく踏み込んでくる。その動きは、さっきよりも洗練されていた。俺の間合い、踏み込みの癖、反応速度――全部、学習済みだと言わんばかりに。

 

(……もう俺の“型”は通じない、か)

 

 だからこそ、だ。

 俺は正面から受けない。

 

 横薙ぎの斬撃を、最小限の動きでかわす。次の銃撃は、路地の壁を蹴って軌道をずらす。ダークバスターの攻撃は速く、重く、正確だ。普通の相手なら、ここで詰んでいる。だが――

 

「悪いな。俺は一つのやり方に、固執しない」

 

 回避の動作と同時に、ネオディケイドライバーへ手を伸ばす。

 次のカードを、ためらいなく装填する。

 

『KAMEN RIDE!ZERO-ONE!』

 

 ディケイドの装甲が分解され、再構築される。黒と黄のラインが走り、次世代の戦闘システムが立ち上がる感覚が、全身を駆け抜けた。

 

 だが、まだ終わりじゃない。

 

 間髪入れず、もう一枚。

 

『FORM RIDE!SHINING HOPPER!』

 

 視界が一気に変わる。

 思考が、加速する。

 

 膨大な戦闘データが流れ込む。演算、予測、最適解。ダークバスターの動きを、俺は“追いかける”んじゃない。“先回りする”。さっきまで向こうがやっていたことを、今度は俺がやる番だ。

 

「……っ!?」

 

 ダークバスターが一瞬、動きを止めた。

 初めてだ。こいつが、明確に“想定外”を見たのは。

 

(そうだろ。データを食う相手に、さらに上のデータを叩き込む)

 

 俺は踏み込む。

 速さじゃない。判断が、速い。

 

 ライドブッカーをソードモードに展開し、最短距離で斬り込む。ダークバスターが迎撃に剣を振るうが、既に読んでいる。刃を弾き、懐へ。膝、肘、掌底。ゼロワンの合理的な動きに、俺自身の経験を上乗せする。

 

「……何だ、その動きは!!」

 

 ダークバスターの叫びが、夜に響く。

 焦り。困惑。怒り。感情が、初めて剥き出しになった。

 

「学習しているはずだ! なのに……!」

 

「当たり前だ」

 

 俺は距離を取り、真っ直ぐに言い切る。

 

「学んだだけで、追いつけるなら……誰も苦労しない」

 

 一歩、前へ。

 

「学んで、考えて、壊して、限界の先に行かなきゃ――何も変わらない」

 

 それは、こいつに向けた言葉であり、同時に、俺自身に向けた言葉でもあった。

 世界を渡るたび、俺は何度も限界にぶつかってきた。完璧なんて、幻想だ。進み続けるしか、生き残る道はない。

 

 ダークバスターが吠え、最後の突撃に出る。

 全力。全速。全存在を賭けた一撃。

 

「なら……ッ!!」

 

 俺は構える。

 

 『FINAL ATTACKRIDE ZE ZE ZE ZERO-ONE』

 

 足に力を溜め、全身のエネルギーを一点に集中させる。

 

「終わりだ」

 

 地を蹴る。

 

 跳躍。

 黄金の光を纏った体が、夜空を切り裂く。

 

 高速移動によるラッシュをダークバスターに叩き込み、最期に真っ直ぐと蹴りを放つ。

 

 直撃。衝撃が爆ぜ、ダークバスターの装甲が悲鳴を上げる。路地の奥へと吹き飛び、壁を砕いて地面に叩きつけられた。

 

 静寂。

 俺は着地し、ゆっくりと息を吐く。

 

 瓦礫の中で、ダークバスターは動かない。だが、完全に意識を失う直前、かすれた声が聞こえた。

 

「……この世界なら……生まれ変われると……思ったのに……」

 

 その言葉が、胸に残る。

 転生者。

 別の世界。

 やり直しを願う存在。

 

(……簡単に生まれ変われるほど、世界は甘くない)

 

 だが、同時に思う。

 こいつの言葉は、ただの負け惜しみじゃない。何かの“入口”だ。

 

 未だに解けない謎。

 なぜ、転生者がこの世界に集まるのか。

 なぜ、なのはの周囲で動き始めたのか。

 

 俺は変身を解かず、ダークバスターを見下ろしたまま、静かに呟いた。

 

「……面倒な世界に、来ちまったな」

 

 だが、逃げる気はない。

 この世界で起きることは、この世界で止める。

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