悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

188 / 188
魔法と科学

 黒い魔法陣が俺の足元で火花を散らし、さっきまで赤く輝いていたウィザードの術式を喰い潰していく。ダークウィザードへ変身した複製フィルは、こちらの魔法陣へ重ねるように黒い陣を広げ、魔力の流れを逆向きに捻じ曲げていた。フェイトの移動を封じるために伸びた魔蛇の影は、道路の亀裂だけでなく、崩れたビルの壁面や空中の瓦礫へまで絡みつき、蛇の檻みたいに戦場を狭めている。

 

 ミラージュアギトは正面で揺らぎ、ダークウィザードは後方から魔法を潰し、魔蛇は横から影と亡者の気配で包囲を作る。三体の複製フィルが同じ声で違う役割を担うせいで、こちらが一つの相手へ集中すれば、別の角度から足を取られる構図になっていた。

 

「ツカサ先生、魔蛇の影がこっちの魔法陣に絡んできよる!」

 

 はやての足元に広がるベルカ式魔法陣の外周へ、黒緑の蛇影が這い寄っていた。陣の光が一部濁り、亡者のような影が内側へ指を伸ばしている。力任せに消そうとすれば、影は切れた端から増え、広域魔法の展開範囲そのものを汚染してくるらしい。

 

「ウィザードのまま押すと、向こうの黒い魔法使いに潰される。なら、今度は別の解き方でいく」

 

 俺はウィザーソードガンを一度下げ、ディケイドライバーへカードを差し込んだ。ダークウィザードの黒い魔法陣がさらに圧を増すが、こちらが魔法で押し返さないと分かったのか、ほんのわずかに動きが鈍る。

 

『KAMEN RIDE!DECADE!』

 

 ウィザードの装甲が剥がれ、ディケイドの姿へ戻る。魔法陣が消えたことで黒い陣は空振りし、地面へ走っていた相殺の火花が途切れた。そこへ間を空けず、俺は次のカードを引き抜いた。

 

『KAMEN RIDE!BUILD!』

 

 音声が響いた瞬間、装甲が赤と青へ組み替わる。右半身にラビットの軽さ、左半身にタンクの重さが宿り、視界の内側へ数式のような光が流れ込んだ。戦兎ほど細かく語る気はないが、目の前で動く影の軌道くらいなら十分に見える。蛇影は好き勝手に広がっているようで、必ず魔蛇の中核へ戻る流れを持っていた。

 

「さて、実験好きの連中に、こっちの式を見せてやる」

 

「ツカサ先生、魔蛇の影、全部潰すんやなくて流すんやな」

 

「そういうことだ。相手が蛇なら、巣穴を塞げばいい」

 

 俺が地面を蹴ると、ラビット側の脚が一気に身体を跳ね上げた。蛇影が足首を狙って伸びるが、着地するより先に空中で姿勢を変え、タンク側の脚で壁面を蹴り砕きながら横へ抜ける。亡者の影が群れになって飛びかかってきたので、俺は左腕で受け、装甲越しにその重さを叩き潰すように押し返した。

 

 魔蛇は俺を追うために影を増やした。だが、増やせば増やすほど、戦場には線が走る。道路を這う線、壁を伝う線、空を跨ぐ線。その全部がどこへ帰るのかを見れば、本体が守りたい中心が見える。

 

「はやて、蛇影を全部消そうとするな。流れを見ろ」

 

「流れを見て、戻る場所を押さえるんやな」

 

「勝利の法則は決まった、とは言わないが、逃げ道くらいは潰せる」

 

「了解や、ツカサ先生。拘束陣、三重展開するで!」

 

 はやての声と同時に、戦場の三方向へベルカ式魔法陣が開いた。白銀の光が蛇影の先端を押さえ、魔蛇へ戻ろうとする流れを無理に曲げる。魔蛇はそれを嫌がるように身体を捻り、亡者の影をはやての周囲へ集中させた。広域魔法の要を潰せば、こちらの式が崩れると見たのだろう。

 

「檻は広がる。逃げ道は蛇に食われる」

 

 魔蛇の声が地面の下から響く。蛇影が一斉に膨れ上がり、はやての魔法陣を内側から割ろうとした。亡者の腕が足元へ絡み、魔力の線を黒く染めていく。はやては歯を食いしばるように杖を握り、魔法陣の制御を手放さなかった。

 

「ツカサ先生、魔蛇の中心、固定できます!」

 

「なら、魔法陣を止めるな。こいつはお前を狙っている」

 

 俺はタンク側の足で地面を踏み砕き、無限軌道みたいに回るエネルギーを足元へ集めた。蛇影が俺の脚へ絡みつくが、回転する力で削りながら前へ出る。亡者の影が胸へ爪を立てても、装甲に受けさせて押し切る。先生は生徒の前で簡単に倒れるわけにはいかない、という台詞をわざわざ口にするのは柄じゃないが、今は背中で示せば十分だ。

 

「先生、ほんま無茶しすぎやで!」

 

「無茶を通すために、お前がいるんだろ」

 

「ほんなら、生徒も先生にええところ見せなあかんな!」

 

 はやての魔力が一段強く輝いた。濁りかけていた魔法陣が白銀へ戻り、三重の拘束陣が魔蛇の周囲へ重なる。蛇影は戻ろうとしても戻れず、広がろうとしても魔法陣に誘導され、やがて一本の巨大な線として魔蛇の中核へ束ねられていく。

 

 俺の視界に、グラフのような標的固定装置が立ち上がった。数式の光が魔蛇の位置を示し、そこへはやてのベルカ式魔法陣が外周から重なる。ビルドの幾何学的な軌道と夜天の魔法が一つの形になり、魔蛇の檻を逆に閉じ込める檻へ作り替えていく。

 

「魔蛇、お前の檻はもう閉じた。今度はこっちが閉じ込める番だ」

 

 魔蛇が影を暴れさせる。蛇の牙が地面から突き出し、亡者の腕が俺の身体を引き戻そうとする。だが、はやての拘束陣はもう完成していた。俺はライドブッカーから必殺のカードを抜き、ディケイドライバーへ叩き込む。

 

『FINAL ATTACK RIDE!BI-BI-BI-BUILD!』

 

 音声が響き、グラフ型の標的固定装置が魔蛇を中心に展開された。俺の右脚へビルドのエネルギーが集中し、タンク側の無限軌道が高速で唸る。そこへ、はやての夜天の魔力が巨大な砲撃光として重なり、白銀の魔法陣が俺の進路を一直線に照らした。

 

「はやて、合わせろ。数式の答えに、魔法を重ねる」

 

「了解や、ツカサ先生。夜天の光、先生の一撃に乗せるで!」

 

 俺はラビットの跳躍力で高く跳び、固定された魔蛇へ向けて身体を回転させる。はやての砲撃が背中を押すように軌道へ重なり、蹴りの先端へ魔力の槍が絡みついた。数式、魔法陣、夜天の光、それらが一つの軌道に束ねられて、魔蛇の中心へ突き刺さる。

 

「ボルテック・ナハト・ブレイク!」

 

「これで終いや、魔蛇!」

 

 蹴りが魔蛇の胸部へ届いた瞬間、蛇影と亡者の群れが内側から弾けた。逃げ場を失った影は、はやての魔法陣に押し戻され、ビルドの固定装置の中で砕けていく。魔蛇の身体はひび割れ、緑と黒の光を撒き散らしながら後方へ吹き飛び、最後には巨大な蛇の幻影ごと霧のように消滅した。

 

 戦場から蛇影の気配が薄れていく。フェイトを縛っていた空中の檻も崩れ、なのはの射線を塞いでいた亡者の影も砂のように散った。はやては杖を下ろし、息を整えながらも笑みを浮かべている。

 

「やったな、ツカサ先生」

 

「まだ一体だ。喜ぶのは全部終わってからにしておけ」

 

「先生らしい言い方やな。でも、今のは少しくらい喜んでもええやろ」

 

 俺は返事の代わりに、ダークウィザードへ視線を向けた。黒い魔法陣の向こうで、あいつは今の合体技の余波を吸い込むように記録している。魔蛇を倒したことは間違いないが、その勝利を次の検証材料にしようとしている気配は消えていない。

 

「一つの視点が破損しただけです。検証はまだ継続可能です」

 

 ミラージュアギトが静かに言う。仲間が倒されたという反応ではなく、壊れた観測機材を取り換えるような声音だった。だからこそ、余計に気に食わない。

 

「なら、次は別の答えを出すだけだ」

 

 俺はビルドの拳を握り直し、はやては再び魔法陣を足元へ広げる。ダークウィザードの黒い陣がゆっくりと回転し、ミラージュアギトの蜃気楼が戦場の奥で揺らいだ。魔蛇を倒しても、盤面はまだ終わっていない。だが、一つだけはっきりしたことがある。

 

 こいつらがどれだけ視点を増やそうと、こちらの答えまで決められるわけじゃない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

悪魔と呼ばれ慣れて 2nd(作者:ボルメテウスさん)(原作:僕のヒーローアカデミア)

『世界の破壊者・ディケイド』の力を偶然手に入れた青年・ツカサ。▼彼は、その身に数多くのライダー達の力を受け継ぎながらも、様々な世界を超えながら、ハンドレッドと戦いをくり広げていた。▼そんな戦いの最中、彼らはある世界へと来ていた。▼『個性』と呼ばれ、『ヒーロー』が職業となった世界。▼その世界において、彼の瞳は、何を映す。▼「俺はヒーローじゃない。通りすがりの仮…


総合評価:449/評価:7.46/完結:193話/更新日時:2025年12月15日(月) 00:45 小説情報

悪魔と呼ばれ慣れて(作者:ボルメテウスさん)(原作:陰の実力者になりたくて!)

『悪魔』と、『世界の破壊者』と呼ばれ、旅を続けたディケイド。▼彼が行き着いた先には『悪魔憑き』と呼ばれる存在がいる世界。▼その世界でディケイドは、何を見るのか。▼その先で、何を行うのか。


総合評価:585/評価:7.29/完結:209話/更新日時:2025年06月05日(木) 00:00 小説情報

魔法少女リリカルなのは ダメ人間の覚悟(作者:make_51)(原作:魔法少女リリカルなのは)

これは、一人の元引きこもりなダメ人間と、それを取り巻く環境と人々が送る物語・・・。▼彼は何をし、何を思い成し遂げるのか・・・・。▼そして、そんな彼を周囲は『どうしていくのか?』▼*注意*▼この小説は某ss投稿サイトで投稿された小説と流れが似ておりますが異なりますので、お気に召さなかった方々は『戻る』をしていただいて構いません。


総合評価:881/評価:6.1/連載:93話/更新日時:2026年06月14日(日) 17:17 小説情報

俺は普通の高校生なので、(作者:雨ノ千雨)(オリジナル現代/冒険・バトル)

私立美景台学園はご近所のみなさんが眉を顰めるようなクズ高校だ。風紀委員の弥堂優輝はそんな学園の治安を守る正常で優秀な犬である。▼ある日、弥堂の元に1通のタレコミが。メールに添付されていたのは学園でも人気なクラスメイトのギャルのパンチラ写真だった。弥堂はギャルのおぱんつに強い事件性を感じ、並々ならぬ関心を向ける。“狂犬”と呼ばれる学園随一の“アタオカ”が捜査に…


総合評価:282/評価:7.54/連載:641話/更新日時:2026年06月20日(土) 06:00 小説情報

VRゲームで遊んでいたらペルソナ使いになっていた。(作者:烙印バンザイ)(原作:痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。)

 少し訳ありなゲーマー祐希真は、新発売のゲーム《New Worid Online》を始めるが魔法職を選んだはずが気づいたらペルソナを使えるようになっていた。▼ 少年達は運営が頭を抱える事を気にせず気ままにゲームをプレイしていく。


総合評価:57/評価:-.--/連載:9話/更新日時:2026年05月18日(月) 22:08 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>