悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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この世界の役割

 薄暗くなり始めた通りに、光写真館は変わらず佇んでいた。

 俺が鍵のかかっていない扉を押すと、懐かしい空気が流れ込む。後ろに続いた三人も、それを感じ取ったようだった。

 

「……ここ、ですね。ボス」

 

 デルタは一歩中へ入ると、警戒を解かずに周囲を見渡す。だが声には、はっきりとした安堵が混じっていた。

 

「内装、過去に立ち寄った世界のものと一致率が高いわ」

 

 ゼータは即座に状況を分析しつつも、足取りは軽い。

 

「安全性も高そう。拠点としては悪くない判断ね、ツカサ」

 

「本当に……落ち着く……」

 

 イータは少し遅れて中へ入り、写真が並ぶ壁を見て小さく息を吐いた。

 

「知らない世界なのに……帰ってきたみたい……」

 

 俺は無言のまま、奥の椅子に腰を下ろす。

 

「この手の場所は、だいたい裏切らない。しばらくはここを使う」

 

「了解です、ボス!」

「異論なし、一応、問題なさそうだし」

「……うぃ」

 

 三人の返事は揃っていた。

 世界が変わっても、戦いが続いても、ここに集えば一度立ち止まれる。それを全員が理解していた。

 

 写真館の静けさの中で、四人は次の“役割”が明らかになる時を、ただ待っていた。

 写真館の空気が落ち着いた頃、デルタが改めて口を開いた。

 

「……ボス。この世界での役割、もう掴めているんですか? 前の世界でも、似た立場でしたし」

「まあな」

 

 ツカサはそう答え、写真館の棚に置かれていた書類の束を引き寄せた。その中から、一枚のカードを取り出す。学校名と名前が記された、それは間違いなく教員の証だった。

 

「……教師?」

 ゼータが一瞬だけ目を細める。

 

「調べた結果だ。この世界が俺に用意した役割は、それらしい」

 ツカサは淡々と言った。

 

 その言葉に、ゼータは小さく息を吐き、懐かしむように視線を逸らす。

「そういえば……ここに来る前の世界も、個性社会の世界」

 

 ヒーローと呼ばれる者たちが秩序を守り、未熟な若者を導く世界。

 

「相澤先生が担任で……ボロボロになりながら、生徒を守ってた」

 

 ゼータの脳裏には、無愛想な教師と、その教え子たちの姿が浮かぶ。

 

「……それに、ツカサも轟を弟子にしていたしな」

「まぁ、そうだな、ただ、あいつが立ち止まりそうだったから、背中を押しただけだ」

 

 ゼータはそう言って、わずかに微笑んだ。

 俺は教員証を指で弄びながら、静かに呟く。

 

「……それにしても、俺が教師ねぇ」

「どうする?スライムスーツでまた大人の姿になる?」

「・・・それが、そうもいかないんだよな。大人の姿をどうも知っている奴がこの世界にいるからな。だからまぁ、仕方ないから、この姿のままでやるわ」

「子供先生?」

「まぁ、そうなるなぁ、はぁ」

 

そうしながら、俺はため息を吐く。

 

「果たして、俺に教師が務まるのか」

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