薄暗くなり始めた通りに、光写真館は変わらず佇んでいた。
俺が鍵のかかっていない扉を押すと、懐かしい空気が流れ込む。後ろに続いた三人も、それを感じ取ったようだった。
「……ここ、ですね。ボス」
デルタは一歩中へ入ると、警戒を解かずに周囲を見渡す。だが声には、はっきりとした安堵が混じっていた。
「内装、過去に立ち寄った世界のものと一致率が高いわ」
ゼータは即座に状況を分析しつつも、足取りは軽い。
「安全性も高そう。拠点としては悪くない判断ね、ツカサ」
「本当に……落ち着く……」
イータは少し遅れて中へ入り、写真が並ぶ壁を見て小さく息を吐いた。
「知らない世界なのに……帰ってきたみたい……」
俺は無言のまま、奥の椅子に腰を下ろす。
「この手の場所は、だいたい裏切らない。しばらくはここを使う」
「了解です、ボス!」
「異論なし、一応、問題なさそうだし」
「……うぃ」
三人の返事は揃っていた。
世界が変わっても、戦いが続いても、ここに集えば一度立ち止まれる。それを全員が理解していた。
写真館の静けさの中で、四人は次の“役割”が明らかになる時を、ただ待っていた。
写真館の空気が落ち着いた頃、デルタが改めて口を開いた。
「……ボス。この世界での役割、もう掴めているんですか? 前の世界でも、似た立場でしたし」
「まあな」
ツカサはそう答え、写真館の棚に置かれていた書類の束を引き寄せた。その中から、一枚のカードを取り出す。学校名と名前が記された、それは間違いなく教員の証だった。
「……教師?」
ゼータが一瞬だけ目を細める。
「調べた結果だ。この世界が俺に用意した役割は、それらしい」
ツカサは淡々と言った。
その言葉に、ゼータは小さく息を吐き、懐かしむように視線を逸らす。
「そういえば……ここに来る前の世界も、個性社会の世界」
ヒーローと呼ばれる者たちが秩序を守り、未熟な若者を導く世界。
「相澤先生が担任で……ボロボロになりながら、生徒を守ってた」
ゼータの脳裏には、無愛想な教師と、その教え子たちの姿が浮かぶ。
「……それに、ツカサも轟を弟子にしていたしな」
「まぁ、そうだな、ただ、あいつが立ち止まりそうだったから、背中を押しただけだ」
ゼータはそう言って、わずかに微笑んだ。
俺は教員証を指で弄びながら、静かに呟く。
「……それにしても、俺が教師ねぇ」
「どうする?スライムスーツでまた大人の姿になる?」
「・・・それが、そうもいかないんだよな。大人の姿をどうも知っている奴がこの世界にいるからな。だからまぁ、仕方ないから、この姿のままでやるわ」
「子供先生?」
「まぁ、そうなるなぁ、はぁ」
そうしながら、俺はため息を吐く。
「果たして、俺に教師が務まるのか」