悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

227 / 227
EXCEEDSへのスカウト

シイナはすぐには返事をしなかった。

 

なのはの言葉を聞いて、彼女は散弾銃のストラップを指でなぞっている。何かを考えている時の癖だ。二ヶ月の特訓で、嫌というほど見てきた。

 

「あたし、まだ高校生だし。それに、島のハンターの仕事もあるから」

 

「学校は通信制に切り替えられます。ハンターの資格も、EXCEEDSなら正式な戦闘員として認定できます。島のことは…ごめんなさい、すぐにどうこうできる話じゃないけど」

 

なのはは誠実だった。できない約束はしない。できないことはできないと言う。昔からそういう奴だった。

 

シイナはまだ迷っている。無理もない。ついさっきまで、ただの島のハンターだったんだ。それが突然、国連機関のスカウトだ。誰だって戸惑う。

 

俺は岩場にもたれたまま、シイナの横顔を見た。

 

「悩むことはない。お前がこれからやることは、どっちにしろ同じだ」

 

シイナが顔を上げる。青緑色の瞳が、俺を見た。

 

「侵略種を倒す。その力を吸収する。お前の炎は、倒した相手の力を取り込んで強くなる。セツナがくれた力だ」

 

シイナは左手のリングを見つめた。エンゲージリングが、かすかに光っている。

 

「お前が強くなればなるほど、セツナに近づける。それが、お前の望みだろ」

 

「…うん」

 

「なら、一人でやるより、組織にいた方が効率がいい。情報も、支援も、戦う相手にも困らない。EXCEEDSは侵略種と魔人を相手にしてる。お前の力を試すには、ちょうどいい場所だ」

 

なのはが、俺の顔をじっと見た。先生が生徒をスカウトするのを手伝っているのが、よほど珍しいらしい。

 

「ツカサ先生、ありがとうございます」

 

「礼はいい。俺は事実を言っただけだ」

 

シイナはしばらく黙っていた。指でリングをなぞり、唇を引き結び、何度か小さく息を吸っては吐く。

 

それから、顔を上げた。

 

「…わかった。EXCEEDSに入るよ」

 

「本当ですか!」

 

なのはの顔がぱっと明るくなる。シイナは少しだけ照れたように笑った。

 

「うん。ツカサさんの言う通り、一人で戦うより、そっちの方が強くなれそうだし。それに、セツナのことも調べたいから」

 

「ありがとうございます、シイナさん。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

なのはが右手を差し出す。シイナは一瞬だけその手を見つめてから、自分の手を重ねた。

 

「こちらこそ。でも、まだわからないことばっかりだから、いろいろ教えてほしい」

 

「もちろんです。私でよければ、何でも」

 

二人が握手を交わすのを、俺は壁にもたれたまま眺めていた。なのはは嬉しそうに笑い、シイナはまだ少し緊張した顔をしている。けれど、その目はもう迷っていなかった。

 

「決まったなら、さっさと行くぞ。いつまでも岩場で立ち話もなんだろ」

 

俺は壁から背を離し、歩き出した。背後で、なのはとシイナが並んでついてくる。二人分の足音が、山道に小さく響いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

悪魔と呼ばれ慣れて(作者:ボルメテウスさん)(原作:陰の実力者になりたくて!)

『悪魔』と、『世界の破壊者』と呼ばれ、旅を続けたディケイド。▼彼が行き着いた先には『悪魔憑き』と呼ばれる存在がいる世界。▼その世界でディケイドは、何を見るのか。▼その先で、何を行うのか。


総合評価:581/評価:7.31/完結:209話/更新日時:2025年06月05日(木) 00:00 小説情報

悪魔と呼ばれ慣れて 2nd(作者:ボルメテウスさん)(原作:僕のヒーローアカデミア)

『世界の破壊者・ディケイド』の力を偶然手に入れた青年・ツカサ。▼彼は、その身に数多くのライダー達の力を受け継ぎながらも、様々な世界を超えながら、ハンドレッドと戦いをくり広げていた。▼そんな戦いの最中、彼らはある世界へと来ていた。▼『個性』と呼ばれ、『ヒーロー』が職業となった世界。▼その世界において、彼の瞳は、何を映す。▼「俺はヒーローじゃない。通りすがりの仮…


総合評価:453/評価:7.46/完結:193話/更新日時:2025年12月15日(月) 00:45 小説情報

魔法少女リリカルなのは ダメ人間の覚悟(作者:make_51)(原作:魔法少女リリカルなのは)

これは、一人の元引きこもりなダメ人間と、それを取り巻く環境と人々が送る物語・・・。▼彼は何をし、何を思い成し遂げるのか・・・・。▼そして、そんな彼を周囲は『どうしていくのか?』▼*注意*▼この小説は某ss投稿サイトで投稿された小説と流れが似ておりますが異なりますので、お気に召さなかった方々は『戻る』をしていただいて構いません。


総合評価:925/評価:6/連載:109話/更新日時:2026年07月26日(日) 16:03 小説情報

悪魔の孫は時の王者となって世界最強(作者:MTHR)(原作:ありふれた職業で世界最強)

 悪魔の孫となり、仮面ライダージオウの力を手にした少年・鈴木入間。▼ 彼は神の悪戯により、狂った神の遊技場と化した異世界・トータスへと迷い込むこととなる。▼ そこで彼を待ち受けていたのは、自身を“無能”と蔑む見知らぬ学生達に、【エヒト】と呼ばれる神を盲信する王国。▼ 本来交わることのなかった仮面ライダーがトータスに現れたことで、この世界の運命は本来の歴史から…


総合評価:297/評価:5.78/連載:129話/更新日時:2026年06月26日(金) 01:00 小説情報

某剣客浪漫世界で私は物書きをする。(作者:SUN'S)(原作:るろうに剣心)

▼【挿絵表示】▼彼女は転生者だ。▼慶応後期に生まれて。人斬り抜刀斎の噂を聞き、自分の生まれ変わった世界を理解し、ちょっとだけ絶望しているお姉さんだ。▼ちなみにお姉さんに戦う力はないです。▼現在、最終章開幕中です!▼「るろうに剣心」原作本編完結です。▼第二部「GUN BLAZE WEST」本編完結です。▼第三部「北海道編」本編完結です。▼第三・五部「エンバーミ…


総合評価:5522/評価:7.41/連載:1271話/更新日時:2026年07月28日(火) 21:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>