悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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EXCEEDSへのスカウト

シイナはすぐには返事をしなかった。

 

なのはの言葉を聞いて、彼女は散弾銃のストラップを指でなぞっている。何かを考えている時の癖だ。二ヶ月の特訓で、嫌というほど見てきた。

 

「あたし、まだ高校生だし。それに、島のハンターの仕事もあるから」

 

「学校は通信制に切り替えられます。ハンターの資格も、EXCEEDSなら正式な戦闘員として認定できます。島のことは…ごめんなさい、すぐにどうこうできる話じゃないけど」

 

なのはは誠実だった。できない約束はしない。できないことはできないと言う。昔からそういう奴だった。

 

シイナはまだ迷っている。無理もない。ついさっきまで、ただの島のハンターだったんだ。それが突然、国連機関のスカウトだ。誰だって戸惑う。

 

俺は岩場にもたれたまま、シイナの横顔を見た。

 

「悩むことはない。お前がこれからやることは、どっちにしろ同じだ」

 

シイナが顔を上げる。青緑色の瞳が、俺を見た。

 

「侵略種を倒す。その力を吸収する。お前の炎は、倒した相手の力を取り込んで強くなる。セツナがくれた力だ」

 

シイナは左手のリングを見つめた。エンゲージリングが、かすかに光っている。

 

「お前が強くなればなるほど、セツナに近づける。それが、お前の望みだろ」

 

「…うん」

 

「なら、一人でやるより、組織にいた方が効率がいい。情報も、支援も、戦う相手にも困らない。EXCEEDSは侵略種と魔人を相手にしてる。お前の力を試すには、ちょうどいい場所だ」

 

なのはが、俺の顔をじっと見た。先生が生徒をスカウトするのを手伝っているのが、よほど珍しいらしい。

 

「ツカサ先生、ありがとうございます」

 

「礼はいい。俺は事実を言っただけだ」

 

シイナはしばらく黙っていた。指でリングをなぞり、唇を引き結び、何度か小さく息を吸っては吐く。

 

それから、顔を上げた。

 

「…わかった。EXCEEDSに入るよ」

 

「本当ですか!」

 

なのはの顔がぱっと明るくなる。シイナは少しだけ照れたように笑った。

 

「うん。ツカサさんの言う通り、一人で戦うより、そっちの方が強くなれそうだし。それに、セツナのことも調べたいから」

 

「ありがとうございます、シイナさん。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

なのはが右手を差し出す。シイナは一瞬だけその手を見つめてから、自分の手を重ねた。

 

「こちらこそ。でも、まだわからないことばっかりだから、いろいろ教えてほしい」

 

「もちろんです。私でよければ、何でも」

 

二人が握手を交わすのを、俺は壁にもたれたまま眺めていた。なのはは嬉しそうに笑い、シイナはまだ少し緊張した顔をしている。けれど、その目はもう迷っていなかった。

 

「決まったなら、さっさと行くぞ。いつまでも岩場で立ち話もなんだろ」

 

俺は壁から背を離し、歩き出した。背後で、なのはとシイナが並んでついてくる。二人分の足音が、山道に小さく響いた。

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